大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・堕天使マヤ・第三章 遍路歴程・15『「し」んだいしゃ・1』

2019-01-29 14:04:06 | ノベル

堕天使マヤ・第三章 遍路歴程・15
『「し」んだいしゃ・1』
        

 

 

 いつもとちがう……

 

 列車に圧倒されて恵美が呟くように言った。

 十二両連結のそれは、濃紺の車体もさることながら、並の列車よりも背が高くて、ホームに入ってきた時の威圧感はベルリンの壁の前に立ったようだった。

 どうやら寝台車だ。

 鉄道博物館の展示車両のように静かだ……微かにコンプレッサーやベントの開閉音はするのだけども、とても小さい音だ。

 夕暮れ間近とはいえ、乗客みんなが就寝するには早すぎる。

――ご乗車ありがとうございます、この列車は18:15分発車の○○行き寝台車でございます。お手元の寝台特急券で座席番号をご確認のうえお席におつきくださいませ。なお、お休みになられているお客様がいらっしゃいますので車内放送はこれにて終了させていただきます。ご用の方は十三両目の車掌室までお越し願います――

 車内放送は、息をひそめるくらいに小さな声だった。

 ま、しかし、車内放送というのは定型文なので、乗った列車がなんなのかが分かっていれば聞かなくても分かる。

「特急寝台券て……」

 心細そうに恵美が振り返る。

「ポケットを探ってみ」

 ……あった。

 

 ガックン

 

 唐突に列車が動き出した。勢いで恵美が倒れ込んでくる。

 抱きかかえるようにして支えてやる。当たり前だが、服を通して恵美の温もりが伝わってくる。

 わたしに百合の趣味は無いが、いつになく、この温もりが愛おしい。

 十数秒、そのままでいると、わたしの方が恥ずかしくなってきて、恵美を引き剥がす。

「さ、席に着こう」

 寝台特急券には四号車堕天使・1、恵美のは堕天使・2とある。

「わたし、堕天使なの?」

「わたしの相棒だからだろう」

「ふふ、相棒なんだ(n*´ω`*n)」

「喜ぶところじゃない、チケットの便宜上の表現だ」

「わたしって、寝台車初めてなの、すごいね、通路が端っこに寄ってるんだ!」

「これが普通だ」

「マヤさんには普通なんだろうけど、わたし的には新鮮なんだよ~🎵」

「あんまり喋るな」

「ハ、ハイ!」

「声大きい!」

 

 お静かに願います

 

 四号車めざしてデッキに出たところで声を掛けられた。

 白衣の老医者が怖い顔で睨んでいった。

「なんだ、あいつ……」

「お客さん? ま、静かにと言う注意はあってるんだから、静かにいこ」

 

 四号車はコンパートメント(個室)になっていた。

 

「カッコいい、これならゆっくり休めるよ~🎵」

 堕天使と書かれたコンパートメントに入る。

「わ~~~~~!」

 凄かった。

 乗ったことは無いけど、オリエント急行というのはこういう感じなんじゃないかと思うくらいにシックで豪華だ。

 

 カチャリ

 

 背後で音がしたかと思うと、コンパートメントの外から鍵を掛けられてしまった!

 

 

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高校ライトノベル・🍑・MOMOTO・🍑デブだって彼女が欲しい!・23『桜子の肋骨』

2019-01-29 06:40:41 | ノベル2

🍑・MOMOTO・🍑デブだって彼女が欲しい!

23『桜子の肋骨』


 食堂へ行こうとして階段を下りたところで桜子に会った。

 カバンをぶら下げて、首にマフラーを巻いている。
「なんだ、いま来たところか?」
「桃斗のせいよ」
 ジト目の桜子は怖い。
「え、オレ……?」
「肋骨にヒビが入ってた」
「あ…………」
 きのう国富川の土手を歩いていて、オレも桜子も『子どもスイッチ』が入ってしまい、土手道を100メートルほどダッシュした。で、よろけてしまって、二人そろって土手下に転落。桜子はオレの下になって、瞬間気絶した。
 元気にプリプリしていたので、なんともないと思っていた。
「110キロが被さってきたら、瞬間300キロぐらいの衝撃があるんだって! 死ぬかと思ったけど、ほんと、そのとおりだった!」
「CTとか撮ったのか?」
 八瀬が顔を曇らせて聞いた。
「ううん、レントゲンと触診」
「ショクシン?」
「お医者さんが触んの、ここんとこにバシっとヒビ」
 桜子は、自分で右の胸を示した。
「触った……」
 桜子の裸の胸が思い浮かんで、ドキッとする。
「変なこと想像したでしょ!」
「いや、そんな……ウ!」
 鼻血が垂れるのが自分でも分かった。
「もう、サイッテーのエロデブ!」

 その昼の校内放送、桜子のアナウンスには棘があった。
「こういう桜子もクールでいいよな」
 デザ-トのラーメンをすすりながら、八瀬が呟く。他の男子にも聞き耳を立てている者がいる。桜子の人気はすごい。オレは桜子のお友だちレベルからも陥落したような気がした。
「「先輩、がんばってくださいね!」」
 デブの会の沙紀が、友だちを連れ、オレの前に座ってエールを送ってくれる。
「先輩、これ食べて元気出してください!」
 野呂がブタまん大を差し出す。
「あ、すまんな……」
 近頃は、デザートのラーメンもひかえている。しかし、後輩たちの円らな瞳に、ダイエットの決心は脆くも潰えていく……。
 

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