大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・臨時増刊・SF&青春ラノベ『レイカの花・5』

2018-08-04 06:27:14 | ライトノベルベスト

臨時増刊・SF&青春ラノベ
『レイカの花・5』
       

 お調子者のハナは中学からの友だち優香とともに神楽坂高校の演劇部に入った。部長が「村長」以下、サン、カンゴ、ミサイル、モグ、ユウと変なニックネームと個性の仲間の中でも「ハナ」と呼ばれた。今年の作品は『すみれの花さくころ』に決まる。そんな中、ハナは右の膝が、重度の骨肉腫であると分かる。村長は、なぜか夜中に、尖閣諸島でドンパチ。そんな中ハナの手術。サゲサゲのハナを村長は、どう励ますか!?


 村長は、アメリカ軍と自衛隊、そしてC国の政府に無理矢理条件を呑ませた!

 三国とも、女子高生の手を借りた。あるいは女子高生にヤラレタとは言えないので、しぶしぶ要求を呑んだ。
「裏稼業がやっと、役にたったかな……」
 村長は、そう呟いて、ハナの病室に足を運んだ。

「オス、いよいよ明日だな。まだビビッてんのか?」
「そりゃあ、ビビリますよ。足が片方無くなっちゃうんですよ。でもって、かなりの確率で転移して、あたしは来年の正月も迎えられなくなっちゃうんですよ!」
「ドーしようもないわね……。もうサゲサゲの最低ブスだよ」
「ブスでもいいから、生きていたいんです……明日の降水確率も10%、ウ、ウウウウ」
 しばらく村長は、ハナが泣きたいだけ泣かした。そして、おもむろに言った。
「じゃ、取りあえず、本番は雨降らないようにしよう」
「……え?」
「みんな入っといで」
 その一言で、サン、カンゴ、ユウ、ミサイル、モグの五人が入ってきた。
「では、明日降るかもしれない雨を、今から降らせるから。みんな神経を集中……かかれ!」
 みんなは、サッと印を結ぶと、呪文を唱え始めた……。

「臨兵闘者 皆陣列在前! マジホンダラソワカ、マブナンダラソワカ……」

 みんなが、呪文を唱えて5分もすると、くすんでいた空が、にわかに曇り、しとしとと雨が降り。10分後には、車軸を流す大雨になってきた。
「これだけ降れば明日は大丈夫でしょ」

 村長の呟きは、電波に乗って、はるか上空を飛んでいる米軍の大型輸送機に届いた。
――ちょうど、よかった。C国からもらったヨウカ銀も、今切れたとこだ――
 カーネルの声が、村長の頭に直接届いた。気づくと、村長以外の仲間も居なくなっていた。
「あたしの、話、ちょっと聞いてくれる?」
「え、話……?」
「あたし、人間じゃないの」

「は……?」

「元人間と言ったほうがいいかな……25年前に大きな交通事故があったと思って。4人乗っていた人間の3人が即死、1人の17歳の女子高生が瀕死の重傷を負った。で、その子も多臓器不全になったあと、脳死寸前になった。そこで、病院は厚生省と防衛庁に連絡したの。適合者が現れたって……」
「テキゴウシャ?」
「ある実験の適合者……それから、その子は防衛庁の施設に運ばれて、処置されたの」
「処置?」
「義体って分かるかな……義手、義足の義に体って書くの」
「それって、体全体の、ナニですか?」
「そう、脳みそ以外は、みんな機械と、バイオの表面組織で出来ていて、いわばサイボーグ。元々はアメリカが開発していた技術だけど、行き詰まってアイデアは『ターミネーター』って映画のモチーフにされた」
「あ……シュワちゃん!?」
「日本は、将来の高齢化対策。体が利かなくなったお年寄りの体を廃棄して、元気な義体に替えることを主目的に始めたの。理論的には、脳みその寿命の125歳まで、元気に仕事も生活もできる。でも、研究者の性ね。もっとすごいことを考えた。脳みそそのものをCPUにインストールして、メンテナンスさえしたら、半永久的に使えるものを作りたくなった。その適合者が、その子。当時は別の名前だったけど、今は鈴木友子。通称村長……ってわけ」

「ア、アハ、アハハハ」
「………………」
 村長は、芝居の稽古中のように無言で真剣な顔になった。
「せ、先輩、そんな、あたしを励まそうとしてSFじみた話を……」
「見ててね」

 村長は、窓からジャンプすると、向かいのビルに飛び、また、戻ってきた。そして、ハルのベッドを片手で、水平に持ち上げた。

「こんなこと、並の人間に出来ると思う?」
「う、ううん」
「こんな、お化けみたいなのを20体作ったの。でも、拒絶反応やら、脳みその原因不明の壊死で18人が死んだ。脳みそをCPUに置き換えた2体は、去年まで生きていた。でも、軍事的なスキルを上げるために無理をして、去年残りの1体が、暴走してCPUがだめになった。で、残っているのが、このあたし1人……分かった?」
「じゃ、先輩は……村長さんは、もう42歳なんですか?」
「ううん、17歳。CPUにインストールしたら、精神年齢も歳をとらないの。これ、三代目の義体なんだよ。最初のは、とてもでっかくてねマツコデラックスほどあった。三代目でやっとこの大きさ。まあ、ちょっと大きめの女の子で通るでしょ」
「どこから、見ても、完全無欠な女子高生です」
「そりゃ、25年も女子高生やってるからね。でも、完全無欠じゃないよ。しょせん人間が作ったものだからね、いつバグるかもしれない。危ないプロジェクトだから、今は、あたしのメンテナンスだけ残して、研究は中止になったけどね」
「村長さん……」
「雨止んだね。あれだけ降ったら、明日は大丈夫だよ……ほら、明日の降水確率ゼロになっちゃった」
 村長は、スマホをハルに見せた。
「ほんとだ。ありがとう村長さん」
「ま、せっかく作ってきたから、てるてる坊主下げとくね」

 村長は、窓辺にてるてる坊主をぶら下げて、帰っていった。それを見ていると、窓の下から「がんばれよ!」と、村長トドメの励ましの声がした……。

 

 つづく

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高校ライトノベル・秋物語り2018・16『ねえ、ちょっと』

2018-08-04 06:06:57 | 小説4

秋物語り2018・16
『ねえ、ちょっと』


 主な人物:水沢亜紀(サトコ:縮めてトコ=わたし) 杉井麗(シホ) 高階美花=呉美花(サキ)

 ※( )内は、大阪のガールズバーのころの源氏名


 明日から暑さが戻ってくるらしいけど、取りあえず今日は秋らしい陽気。


 大阪から戻って、あのボンヤリした不安は無くなった。人生の将来に対する漠然とした不安。
 取りあえず、その日の天気がよくって、楽しくバイトの半日が終われば、それでよし。

 学校?

 そんなの関係有馬線(ハハ、関係ごと変換したら、こんなになっちゃった)ただ卒業証書もらうためだけに行ってます。

 バイトも、それなりに大変なとこがあるんだけど、ガールズバーに比べればしれている。ただ万引き見つけた時には緊張する。
 一番あぶないのは、レジでお客さんの相手をしているとき。どうしても手許の商品やレジに目が行ってしまう。先輩の本職から、そういうときは、二度ほど顔を上げろと教えてもらった。不審な動きをしている人は、その時に、たいてい分かる。わたしは慣れてきたので、本のカバー掛けなどは、ほとんど見ないでもやれる。
 万引きは週に一二度見かける。

「田中さん、○番コーナー在庫点検ねがいま~す」

 これが符丁。直ぐに私服の警備員さんが行って処理してくれる。ガールズバーで、滝川さんがやっていたような仕事だ。
 学校の授業中に、新聞の書評や新刊本を気を付けてチェック。新刊本の並べ方などの参考にする。気に入った本……といっても、わたしはラノベや児童書だけど、日頃読んでおき、ポップを書いたりする。これが結構楽しい。元来アニメーター志望なんで、ちょっとした絵には自信がある。
 要は、本屋さんの店員としては自信がついたので、将来、軽いオミズ系や本屋の店員さんとしては、やっていけそう。

「ねえ、ちょっと」

 休憩時間がいっしょになったので、秋元君に声を掛ける。

 秋元君がバイトに入ってきたのは、この春だ。T大学の一年。関西方面からやって来たのは、言葉で直ぐに分かった。でも連休のころに、彼が、あのひっかけ橋マンモス交番の秋元警部補の息子さんだと分かった時にはタマゲタ。だって、ぜんぜん似ていない。秋元警部補は、ずんぐりむっくりの四角い顔のオッサンで、いつも笑顔だったけど、目だけはヤラシ~デカ目。念のためデカ目ってのは、大きい目じゃなくて、デカ(刑事)の、ヤラシ~目という意味。
 息子の方は、身長175センチのイケメン。多分お母さん似か、突然変異。女で苦労しそうだと店長が言っていた。

 ひょっとして、わたしたちのこと知ってるのかと心配したけど、大丈夫だった。秋元警部補は、その点は職務に忠実で、仕事のことは一切身内には漏らしていないようだった。
 大学生なんで、いっこ年上なんだけど。バイトとしては、わたしが先輩なんで、秋元君で通している。

 その秋元君に元気がない。で、「ねえ、ちょっと」になったわけ。

「ちょっち、変だよ、このごろの秋元君」
「あ……やっぱ分かりますか」
「丸わかり。そのままじゃ、仕事でヘマしちゃうよ。わたしで良かったら、話してみそ」

 秋元君は、ツルリと顔を撫で、ため息一つして言った。

「実は、女の子のことで……」

 その唐突な切り出し方に、少し驚いた……。

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