高校ライトノベル・メガ盛りマイマイ
09『ちょっと難儀な相手だ』
あんな妹だけど仁義はわきまえている。
俺にラブレターを見せないのだ。
「読まなきゃアドバイスもできないぞ」
「キモイ、妹に来たラブレター読もうなんて!」
「おまえ、さっきは俺に恋文男と対決しろって言ってたじゃねーか、ラブレター読まなきゃ対決のしようもねーだろが」
「それはもう止めたんだから、とやかく言うな!」
「矛盾だらけじゃねーか、俺は、もう知らん!」
回れ右をすると、三歩で到達して、ドアに手を掛けた。
「待ってよ!」
反射神経をいかんなく発揮して、俺のシャツをムンズと掴みやがった。
ブチ!
俺の堪忍袋が破れたと一瞬思ったが、シャツの前ボタン二つがブッチギレル音だった。
「……ひと傷つけるのやだもん」
実の兄を虫けらほどにも思っていないくせに、他人への気配りは人並み以上だ。
七つも部活を掛け持ちし、生徒会の学年代表を務め、こないだは関根さんの勧めるままにモデルになったのも気配りのしすぎという側面がある。この1%も俺に気配りすれば、俺の生傷も半分以下になるだろう。
「概略を言えよ」
「えと……」
「その感じじゃ、昼休みか放課後に呼ばれて、コクられる予感なんだろ」
「う、うん……昼休みに屋上」
「どっちの?」
「南館」
うちの学校は、南館と新館の屋上が解放されている。広い方が南館で、昼休みは生徒の憩いの場所になっている。
新館は狭いうえに階段室と給水タンクが邪魔で、部活に使われる以外は、あまり生徒は寄り付かない。
ま、南館の方が健康的ではある。
「相手は?」
「三年の梶川さん」
「カジカワ……それって、先代の生徒会長の?」
「え、あ、うん」
梶川俊也……ちょっと難儀な相手だ。