大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・アンドロイド アン・6『今日から学校・1』

2018-08-11 11:36:30 | ノベル

アンドロイド アン・6
『今日から学校・1』

 

 

 今日から学校だ。

 

 いや、俺は学校は毎日いってる。

 アンだよアン。

 いろいろ手続きとかがあって、アンの登校が今日からって意味なんだ。

 

「ど、似合ってる?」

 

 自治会の運動会が終わって、飯の前に風呂に入って、出て来てぶったまげた。

 レディーファーストでアンを先に入れてやって、その間に米を研ぐとか、俺のやれる範囲で晩飯の用意をした。

――お風呂空いたわよ~🎵――の声に「おお」と返事して、ざざっと一風呂浴びて出て来たところ。

 制服モデルみたく、フワリと旋回してポーズを決めるアンが居た。

「明日っから学校だっけ……」

「そだよ、おソロのお弁当とか作ってあげっから、いっしょに行こうね!」

「それは断る!」

「えーーなんでえ!?」

 

 俺は、なにごとも目立たないことをモットーにしている。

 女と一緒に、たとえそれがアンドロイドで従妹設定であっても、いっしょに学校なんてあり得ない。

 それに、アンのデータベースにある女子高生というのは、かなり偏差値の高いそれだ。

 制服モデルか、アイドルの制服姿。渋谷なんか歩いていたら確実にスカウトされそうなオーラに満ち満ちている。

 さらに、言葉遣いが「そだよ」とか「おソロ」とか「えーなんでえ!?」とか微妙にJKスラング。うちの男子生徒からはギャップ萌えの高偏差値で見られることは確実だ。

 

 それで、いろいろ言い渡した。

 

 制服の着こなしはともかく、男子を瞬殺しそうなスマイルとか視線の送り方とか言葉遣い、それに一緒に登校することなんぞの禁止事項を申し渡した。

 それで、一夜明けての今朝。

 俺より七分後に出ることを申し渡して、俺は家を出た。七分違うと同じ電車に乗ることがないからだ。

 そうして、通勤通学のモブキャラに溶け込み、無事に、その角を曲がったら学校の正門というところまでやってきた。

 

 登校のピークにさしかかる時間で、正門前の4メートル道路は制服姿でいっぱいだ。

 そのいっぱいの制服の背中が微妙に向かって左、学校の看板があるほうの門柱に傾斜している。

 また捨て猫か?

 高校生と言うのは萌とか可愛いものが大好きで、それをいいことに捨て猫をする事件が二度ほどあった。

 また、その伝かと思い、子猫の顔ぐらい拝んでやろうと背中を傾斜させながら近づいた。

 

 おにいちゃ~ん💦

 

 背中群の向こうからヘタレ眉でブンブン手を振って飛び出してきたのは、夕べ言って聞かせたばかりのアンだった!

 

 

 

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高校ライトノベル・ライトノベルベスト『リセウォッチング奇譚・2』

2018-08-11 06:07:32 | ライトノベルベスト

ライトノベルベスト
『リセウォッチング奇譚・2』
          


 省吾は、その子に誘われるようにして谷四で降りた。

 別に北浜高校の女生徒が誘ったわけではない。地下鉄のドアが開くと、北浜の子はさっさと降りてしまい、慌てて省吾が付いていったというのが、実際であったらしい。

 ちょうど造幣局の通り抜けからの帰りというMが、同じ車両に乗っていて、その一部始終を見て居た。シートの端から端へ話しかけていたのなら、その内容はMにも聞こえるはずだが、Mには、そんな風には見えなかった。
 女生徒が谷四で降りると、省吾は、その女生徒とは無関係に降りて行ったというのだ。

「どこに行くのん?」
「ついて来たら分かる」

 その短い会話だけで、二人は地下鉄の地上出口から出て無言で歩き始めた。

 谷四は、府庁なんかもある言わば官庁街で、夜の九時過ぎにもなると、府知事にこき使われている気の毒で僅かな公務員を除いては人通りは無い。

 二人は、府知事公舎近くの公園にいった。

 夜の官庁街の公園なんて、街灯が灯るだけで、人の気配など無いはずだった。ところが、そこには百人近い高校生が集まっていた。

「ここ、府労連広場て言うの。普段は学校の先生やら、府の公務員の組合が集合場所やら、小さな決起集会を開いてるとこ……」
 省吾は目を見張った、ほとんどの高校の制服に見覚えが無い。
 むろん知った顔など無かったが、みんな、どこか大人びた昭和の女子高生の匂いをさせていた。

「では、みんな、演壇に注目してくれる」

 古い工科高校……というよりは、工業高校という古い呼称が似合う眉尻の高い女子高生が演壇……は無いのに、その高さに上った。
「まずは、出席をとるね。安治川高校、上本町高校、戎橋商業高校、江坂工業高校……北浜高校……城北高校、清遊高校……」
 省吾は無意識に数えた。八十を超える数で、聞き覚えのある高校が十数校含まれていた。

 その聞き覚えのある高校は、省吾が小学校から今までに廃校になった高校だった。

「うちら、今夜旅立つのん」
「旅立つ?」
「聞いてくれて分かったと思うねんけど、うちら廃校になった高校の校霊……」
「校霊?」
「そう、学校には出来た時から魂が宿るのん。人間には仄かにしか分からへんけど、なんでか自分の学校は母校て言うでしょ?」
「あ、それでみんな女子高生のナリなんや……」
「さすが、リセウォッチャーやな」
「で、オレがなんで……」
「あんたやったら、託せる思うて」
「託す。オレに……」

 その時、集まった女子高生たちの視線が省吾に集中した。

 百に近い学校の思い出が嵐のように省吾の頭の中に飛び込んできた。

「しばらく、オレ姿消すから……」
 そう言って、その夜の遅くに省吾がお別れにきた。訳は以上のようなことで、オレはただ頷くしかなかった。

 それから、五年後に省吾はひょっこりと現れた。

 天満の小さなギャラリーで、廃校になった高校のリセウォッチャーとしての展示会をやっていた。
 百点あまりのイラストの前に立つと、直接頭の中に、その学校の歴史の情景が、夢のように浮かんできた。

 そのイラストたちは様々な物語を聞かせてくれたが、共通していたのは寂しさだ。
 特に1970年代に創立され、わずか三十年余りで廃校になった学校の寂しさは痛かった。

――あたしたちを消耗品のように作って壊すくらいなら、もっと他の道があったはず。あたしたちは一生懸命やったんです――

 世間は東京オリンピックで湧いて、この展示会はあまり注目されなかったけど、卒業生や元の教職員の人たちがちらほらやってきては胸を熱くして帰って行った。

 おれは新聞記者の一年生だけど、いつか新聞で特集を組めればと思う。今は、こうやってブログに書くしかない。

 省吾の姿は、それ以来見かけることは無かった。


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高校ライトノベル・秋物語り・23『目黒のサンマン・2』

2018-08-11 05:50:05 | 小説4

秋物語り・23
『目黒のサンマン・2』
        

 主な人物:水沢亜紀(サトコ:縮めてトコ=わたし) 杉井麗(シホ) 高階美花=呉美花(サキ)

 ※( )内は、大阪のガールズバーのころの源氏名


 AKG48の第一巻『目黒のさんま』の売り上げは好調だった、話が面白い。


 ある日殿様が目黒まで遠乗りに出た際に、供の家来が弁当を忘れてしまった。
 殿様以下腹をすかせているところに、今まで嗅いだことのない旨そうな匂いが漂ってくる。そこで殿様が何の匂いかと尋ねる、家来は「この匂いは下衆庶民の食べる下衆魚、さんまというものを焼く匂いです。決して殿のお口に合う物ではございません」と答える。
 殿様は「こんなときにそんなことを言うておられるか」と家来にさんまを持ってこさせた。それはサンマを直接炭火に突っ込んで焼かれた「隠亡焼き」と呼ばれるもので、殿様の口に入れるようなものであるはずがない。と……食べてみると非常に美味しい。殿様はさんまという魚の存在を初めて知り、そして大好きになった。

 それからというもの、殿様はさんまを食べたいと御所望である。ある日、殿様の親族の集まりで好きなものが食べられるというので、殿様は「余はさんまを所望する」と言う。だが庶民の魚であるさんまなど置いていない。家来は急いでさんまを買ってくる。

 さんまを焼くと脂が、いっぱい出る。これでは体に悪いということで脂をしっかり抜き、骨がのどに刺さるといけないと骨を一本一本抜くと、さんまはグズグズになってしまった。こんな形では出せないので、椀の中に入れて出す。魚河岸から取り寄せた新鮮なさんまが、家来のいらぬ世話により醍醐味を台なしにして出され、これはかえって不味くなってしまった。殿様はそのさんまがまずいので、家来に問いただす。
「いずれで求めたさんまだ」
「はい、日本橋魚河岸で求めてまいりました」
「ううむ。それはいかん。さんまは目黒に限る」

 家でDVDを見た、コロコロと笑った。枕の話しもナルホドだった。最近は、さんまが不漁で、高級魚並み。これは、海流の流れが変わったせいらしく。こんなことが、もう十年も続いたら落語にならない。
 また、落語の中には季節ものというのがあり『目黒のさんま』は秋ものになることなど勉強になる。
 一瞬、学校の勉強も、こんな具合ならいいのにと思った。

 で、もう一つの目黒。

 目黒のガールズバーは、渋谷ほどの競争もなく、一見穏やかで素人っぽく。客あしらいに慣れた麗には、余裕というか、物足りなささえ感じた。
 バイトの数が多く。店全部で二十五六人。シフトがややこしく、まだ顔を見たことも無い子が何人もいるらしい。そして、客の中にAKG48の第一巻『目黒のさんま』を持ってくる男がチラホラいることに気づいた。女の子がカクテルを渡すときに、ナニゲにとりあげて、「おもしろそう」「あたし知ってる」などと言っている。

 そして一週間ほどで見てしまった。

 自分より、ほんの少し早く上がった子が、駅前でタクシーではない自動車に乗り込むのを。
 麗はピンと来た。お持ち帰りだ……。
 で、その子がさっきお店で『目黒のさんま』を見て、客となにやら言葉を交わしているところも見た。
 それ以来、目黒の店に出ることを止めた。

「なんだ、麗ちゃん。目黒の店は?」
「店長、あの店、お持ち帰りやってる」
 その時の店長の顔色で、渋谷の店長は知らないことが分かった。
「あいつ、客あしらいのイイ子が欲しいって言うから……」
「あたし、そういう仕事はやらないから」

 数日後、目黒の店に警察のガサイレが入った。どうやら『目黒のさんま』を手に取ることがOKのサインだったようだ。それ以前は「コースター替えてくれる」が符丁だった。「はい」と言って違うコースターを出せばOK、同じ種類のコースターならNGあるいは、お持ち帰り不可のサインだった。相場は九十分三万。店には一万のキックバック。客あしらいの下手な子が、沢山いるのもうなづける。明くる日の新聞には「目黒のサンマン」と出ていた。

 麗は美花も誘って、渋谷のその店もやめた。

 しばらく様子を見て、真っ当な店を探すつもりらしい。

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