六文錢の部屋へようこそ!

心に映りゆくよしなしごと書きとめどころ

集中治療室で聞いたそれは・・・・除夜の鐘あれこれ

2017-12-31 11:44:08 | 日記
 いよいよ大晦日。
 陰湿な雨が降っている。洗濯物が乾かない。乾燥機能を使う。この機能は電気代を食う。電気は熱にすると消費量が多いようだ。

 新聞を読んでいて、除夜の鐘に「うるさいっ」というクレームがあちこちでつくとあって、ご時世とはいえいささか白けた思いがした。
 
 いまから60年以上前、大晦日にも受験勉強をしていると、いまほど夜間は車も走らず静かなこともあって、あちこちの寺から除夜の鐘が聞こえたものだ。遠くからのもの、こんな近くに寺があったのかと思われるもの、たまたま重なり合ったり、あるいは追いかけるようにしてロンドのように響くものなどと、ちょっとした梵鐘のアンサンブルが聞こえたものだ。

           

 一番記憶に残るそれは、いまから二十数年前、父が重篤な病いで倒れ、集中治療室に入っていた際、私が志願して大晦日の付き添いをしていた折のことだ。夜中近くになると、除夜の鐘が聞こえた。しかも複数だ。
 病院の集中治療室という場所は、だいたいが奥まった場所で窓際ではない。いったいどこから聞こえるのだろうと見回したら、無機的な壁の上方に換気のための小さな窓があり、どうやらそこから聞こえるようであった。

 昏睡状態にあった父にこの音が聞こえているだろうかと思った。と同時に、血縁のない私を引き取って育ててくれた父とのさまざまなシーンが思い出されて、じんわりこみ上げるものがあった。
 父はそのまま逝ってしまったので、とりわけその夜のことは鮮明に思い出す。

 もうこの老体では、除夜の鐘を撞きに出かけることはないが、今夜はじっくりとその音を聞いてみたいと思う。
 そんな父の寿命に、私自身あと数年と迫った。あと何回除夜の鐘を聞くことができるだろうか。

                 

 正月前に、いくぶん辛気臭い話になったが、みなさんが良いお年を迎えられますよう祈っている。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする