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心に映りゆくよしなしごと書きとめどころ

【ある日の六】歩いた! 観た! 飲んだ!

2013-04-21 00:37:09 | よしなしごと
 ここんところ運動不足で血圧も上昇気味、したがって時間が許せば歩くことにしている。
 過日も、名古屋市中区の上前津での会合を終えたあと、伏見まで歩くことにした。
 伏見といっても京都のお稲荷さんではない。同じ名古屋の中区である。地下鉄にして栄経由だと3駅分、鶴舞線だと2駅分ほどになる。

    

 目的地へ着くだけではつまらないので、野次馬根性全開のなんでも観てやろうモードにし、しかもあまりこれまで通らなかった箇所をと歩く。しかし、今どきの都会、そんなに風変わりなものがあるわけではない。

 大須のアメ横近辺を通る。20年ほど前、このへんでパソコンを買ったことがあって、その頃はよく出入りしていたが、今回は久しぶりだ。なんだか往時のほうが活気があったような気がする。
 パソコンを始めとするIT関連の黎明期とあって、そうした熱気が辺りに渦巻いていたのだろう。

    

 そこを通りすぎて名古屋自慢の100メートル道路に出る。銀杏並木が新緑をまとって眩しいほどにきらめいている。路上生活をしているらしいひとのアジトを発見する。この辺りでは、かつて青テントがちょっとした集落を作っていたのだが、機動隊まで動員した掃討作戦により、一斉に撤去されたと聞いていた。
 雑然と並んだものは、それ自身の秩序を備えていて、巧まざる絵模様をなしている。

 歩道橋を渡ると、市の美術館や科学館がある白川公園に至る。ウイークディの昼下がりとあって広いグランドには人っ子一人いない。いきなり頭上で、ヴィーンと音がするので見上げると、伸びすぎた樹木の枝を切る作業をしていた。せっかく伸びたのにとみるか、都会の公園で育ててもらっている樹木の宿命とみるか。

    

 公園をなはれると道路の反対側に名古屋での歌舞伎の殿堂、御園座が見えるはずなのだが、4度目の建て替えのために休館中とあって、外観は普通のビルに過ぎない。
 再建の着手は2年後で、完成は5年後だというから、私はそれを見ることができるだろうか。

 あちこちふらふらしながら目的地の映画館に着いた。さて、チケットを買ってロビーで少し本でも読んでいればやがて・・・と思ったのだが、ない!ないのだ!これから観るはずの映画が。
 カウンターで尋ねたら、「あ、それは明日からです」と、いともあっさりと宣告された。
 え?え?え? じゃあここまでえっちらおっちら歩いてきた私の労力はどうなるのだ。

 

 ムダにするわけにはゆくまい。その日のプログラムをよく見直したら、30分ぐらい待つと『アンナ・カレーニナ』を上映するとある。まあ致し方ないかとそれを観ることにする。
 内容は知っているといえば知っているのだが、それを映像でどう見せてくれるかだ。
 結論をいえば、舞台構成を模した実験的な映像といえるのだろうが、やはりやり過ぎの感があって、ストーリーに馴染みかけた頃にそうした演出がナマで出てくると、かえって興をそがれることとなる。
 ちょっと才に走りすぎたというところか。

 帰途、時々行く居酒屋のカウンターの隅で、遅い夕食兼晩酌。
 「〆張鶴」の純米吟醸酒がうまい。
 ちょっとした小説を読みながらちびちびやっていたら、すぐにグラスの底が見えたのでお代わりを。
 翌日、近くのクリニックへ行ったら、「血圧が高い」といわれてしまった。
 
    

 それからほとんど二日間をかけて、一応、宿題として与えられていたものをやっと為し終えた。とてもたくさんの仕事をこなしたように思うにもかかわらず、なぜか達成感がない。
 漠然とした不安が澱のように全身に残ったままだ。
 きっと、老人性のメランコリーだろう。


コメント (4)
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