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心に映りゆくよしなしごと書きとめどころ

【童話かな?】しろとシロと白

2006-11-17 16:44:23 | よしなしごと
 二匹の兄弟の犬がいました。
 二匹とも、頭から尾の先まで真っ白でした。
 (「尾も白い」などというつもりはありません)

 
 
 兄の方の名前は「しろ」でした。
 弟の方の名前は「シロ」でした。

 こうして字にすると違いが分かりますが、音では区別が付きません。ですから、時折、困ったことがおこります。

 「しろ!こっちへ来い」と人間が呼ぶので、シロがそちらへ行くと、「おまえじゃない!」といわれたりします。

 「僕のスニーカーをシロがくわえてっちゃった」という子供の訴えに、「コラッ!しろ!いたずらをするんじゃないっ!」と叱られたりします。


 
 そこで兄弟は相談しました。
 その結果、これからは、名前を「白」とすることにしました。
 今度は、字で書くと一緒ですが、音が違います。

 兄の方は、今までどおり「しろ」にしました。
 弟の方は、音読みにして「はく」にしました。
 
 兄弟は、関係する人間を集めて、それを宣言しました。
 人間たちは、「お前たちがそうしたければしそうしろ」といいました。

 

 兄は、「ああ、よかった」と胸をなで下ろしましたが、弟の方は、最後の人間の言葉、「そうしろ」が、「しろ」や「シロ」、そして「白」とは聞こえたのですが、決して「はく」とは聞こえなかったので、少し淋しい思いをしました。

 空を見上げると、白い雲がぽっかり浮かんでいました。
 弟はそっと思いました。
 「あれは、しらくもではなくはくうんというんだ」と。
コメント
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