先日、いつもの買い物コースからちょっと離れた大手スーパーチェーンに寄る機会があったので、最近ご無沙汰している間にリニューアルされたか、ご新規さんの銘柄、何かないかな?と酒類の冷蔵ケースを物色すると、“泡麦”という見慣れないラベルを発見。
青空バックに氷山からジョッキが生えたみたいな、一歩間違えばルネ・マグリットの絵画かよっていう図柄、なんかとっても観光地の絵看板的なB級さが漂うな、どこのメーカーさんがどこの広告代理店に考えさせたシロモノかしら…と思いめぐらしつつ缶面表示をよくよく追うと、「原産国・韓国」。
日本酒類販売(株)が輸入販売している、れっきとした“舶来もの”らしいです。お値段も仰天の350ml、88円。確かに国内同業メーカーは、自社だけ、1ブランドだけ独走でこの価格では売らないでしょうね。他社だけでなく自社他製品のクビを絞めますもんね。
「原材料・発泡酒、スピリッツ(大麦、米)」とあり、所謂新ジャンルの中でもリキュール類、サントリー金麦やKIRINコクの時間、クリアアサヒといったところの仲間です。
しかし…韓国って。どうなんでしょう。居酒屋で鏡月グリーンとか眞露は飲んだことがありますが、韓国に“泡モノ”のイメージはあまりありません。その国の料理やお菓子や嗜好品の味レベルは、結局“好んで飲み、食べるファンがどれくらいいるか”にかかっていると思うんです。日本はやはり水田稲作農耕文化の国、かつ周囲を海に取り囲まれた島国、仏教伝来以来の伝統もあるので、酪農乳製品や肉料理よりは、お米と魚介を使った寿司や、豆製食品のほうが技術力が高く世界に冠たる水準でしょう。
韓国の皆さんも、居酒屋行くと「とりあえずビール」とか頼むのかしら。おウチ晩酌のときは「家計にやさしい発泡酒で」と考えて、奥さんが買いおきして「アワムギ冷やして待ってるから~!」と檀れいさんのようにほんのりヒラヒラしたりしてるのかな。
そもそも“泡麦”って韓国語でどう発音するのかな。
…いろいろ考えて結局買わずに帰りました。いっそ88円じゃなく他の国産新ジャンル並みのお値段だったら、騙されたと思って買ったかも。
80年代の中盤ぐらいかな?職場がそっち方面に近しいところだったので、海外ビールに一時はまったことはあります。ドイツのヘニンガー、ベルギーのステラ・アルトワ、デンマークのカールスバーグ、USAのクアーズ、あのへんは確かに美味しかった。でも売っているお店が圧倒的に少なく、いまのようにネット通販で送料無料まとめてお届けなんてサービスもなかったので、万難を排して国産じゃなくこの銘柄だけを飲む、ってほどには熱狂しませんでした。
当時の月河の“肝臓年齢”の若さが、冷えた泡モノより、10代からのこよなき憧れ=ケンタッキーバーボンウィスキーに傾倒せしめてもいました。
当時のヘニンガー、缶でいくらだったかいまとなっては思い出せませんが、ペーペーのサラリーマンでも「目の玉が飛び出るほど高くて、尻尾を巻いて国産に帰る」ほどではなかったと記憶しています。月河が嵌まったのとちょうど前後して、アメリカンスタイルの“カフェバー”なんてぇふざけたものが流行って、円高もあって海外ビールの敷居はぐんと低くもなりました。
嗚呼カフェバー。あれこそは80年代日本の汚点そのものですな。カウンターに、バドだのハイネケンだのミラーだのモルソンだの…のパッケージがずらっと並んで、フロアには中途半端なラムネ壜みたいなボトルの詰まった冷蔵ケースがおっ立って、なんかほにゃっとしたとらえどころのないAORが流れて、天井で蜘蛛か蛾の化け物みたいなでっかい扇風機がでろんでろん回ってるような店、地方の最たる当地でもずいぶんありました。
飲むなら飲む、料理食うなら食う、音楽聴くなら聴く、異性口説くなら口説く、はっきりしろみたいな。ああいう、アメリカンと言うのも恥ずかしい国籍不明な、植民地みたいのがお洒落で最先端とされていたんですね。バブルと言われる時代の前夜です。
バブルの夜が明けて日が沈んで、何度めかの夜が過ぎ昼も過ぎ、いまや、新ジャンルならば舶来のほうが国産より安価という時代。88円というお値段に釣られて、わざわざ選んで舶来モノ買わんでも、“ビールよりは安い”まあまあのところで、日本人が、日本人の嗜好に合わせて作って売ってるやつでいいんじゃないかと思っていますね。
非高齢家族の情報によれば、国産どころの主要新ジャンルに比べて、とりたてて不味くも、目覚ましく旨くもない、普通の味らしいですね“泡麦”。だったらこの次、あのスーパーチェーンに寄る機会があったら買ってみようかな。マグリット風、観光地看板風の缶パケデザイン限定で言えば結構気に入ったので。88円だし(結局値段かい)。
「乾杯!」って韓国語でどう言うのかしら。