イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

孫にも意匠

2009-07-30 00:48:45 | ニュース

麻生太郎さんという人、総理大臣就任前から、“頭がいい”“切れモノ”タイプではないし、さりとて“性格や人柄が良さそげ”にも見えないものの、とりあえず総理経験者の孫ではあり、“毛並み・育ち”だけは良いだろうと、世の中大方は思っていたと思うのですが、どうやら致命的に言語センスのない人だったようですね。頭脳がどう性格がどうっていうんじゃなくて、ものがわからない、カンがはたらかないにもほどがある。

「働くしか才能がない」はないでしょう。“才”の一字取ったら、「能がない」になるもの。高齢者でなく、若いミュージシャンや漫画家だって、「アンタは音楽しか能がない」「漫画描くしか能がない」と言われたら結構キレますよ。

と言うより、選挙控えて“アゲて”行かなきゃならないときに「~しか~ない」というベタネガティヴな修辞がすでにアウトですわね。「元気な高齢者は働くしか才能がない」と言わずに、「元気な高齢者のいちばんの才能は、働く、勤勉である、これこそ一生すりへらない最高の才能です」となぜ言わないのか。

80(歳)過ぎて遊びを覚えても遅い」と言わずに、「人間80歳、新しい遊びを覚えるのもいいが、80年の人生分つちかってきた“勤勉さ”で輝く、社会に貢献する、お爺ちゃんお婆ちゃん物知りだね、頼りになるね、ありがとうと若い人に喜んでもらう、お爺ちゃんお婆ちゃんのような仕事のできる人に、ボクも、私もなりたいと言われる、これ、ゴルフやゲートボールや社交ダンス習うより、何倍も楽しい80歳だと思いませんか」と言ったらどうだったか。

これくらい、言葉やスピーチのプロでもなんでもない、ドシロウトの月河でも速攻思いつきます。演説って綺麗事でも、多少大ボラでもいいんですよ。聞いててなんらかの“アゲ”があれば。

毛並みのいい麻生さん、何だかんだで現職総理大臣、日本の国でいちばん偉い人なわけです。モノは言いようだということを、教える人がどうして周りにひとりもいないのでしょう。

教えて教えられるもんじゃないってんなら、せめて、「こうれいしゃは、はたらくしかさい…」まで言った段階で、「ヤバい!」と察知して、後ろから羽交い絞めにして、あの角度のついたおクチにサルグツワかまして黙らせる俊敏な“逆シークレット・ポリス”はべらせておくとかさ。野放し失言垂れ流しさせて、後ろで指さして笑ってるような卑怯な真似しないで、何か防護策、救済策、政府与党の皆さんも「頼りないけど選ばれた人だ、あのボスが失脚したら、オレらも失業だぞ」ぐらいの危機感持って考えればいいのに。そういう、身命を賭してくれる真剣なブレーン、ガーディアンが身近に誰もいない時点で、やはり麻生さん、総理のウツワじゃなかったんだなぁと思うのです。

『夏の秘密』43話。蔦子さん(姿晴香さん)の期待通り、リフォーム依頼の顧客(←蔦子旧知の車椅子の娘さん)と打ち合わせのためあの下町を再び訪れた紀保(山田麻衣子さん)の“友がみな我より偉く見ゆる日よ”的な状況でした。

一年を経て、柴山工作所は借金を克服し工員も増員して新工場の落成待ち、フキ(小橋めぐみさん)はその社長におさまり、伊織(瀬川亮さん)は新人工員の指導にあたっている。自殺未遂・不起訴の後「仕事が見つからない」と嘆いていた引きこもり博士・柏木(坂田聡さん)も技術開発担当として工作所の一員となり、宅建主任試験に合格した雄介(橋爪遼さん)は家業を継いで「若社長」と呼ばれている。

皆が前に進み、輝きを増しているのに、自分だけがあの日、亡き母の犯した罪と憎しみに震えた日のまま凍りついている。龍一の求婚にこたえ結婚することもできず、さりとて婚約解消も受け入れてもらえず、アトリエ主宰でありながらデザインも描けなくなって、パートナーの杏子(松田沙紀さん)に申し出られるままひそかに代筆させている。

紀保にはすべてが、“ガラスを隔てた輝き、笑いさざめき”に見えたことでしょう。あたかも拘置所に囚われて、窓から外界の太陽を見ているように。

工場の将来やネジのことを語るときだけ心底からのポジティヴさを垣間見せるものの、“本当は幸せ全開じゃないんだよ光線”をひたひたと放ちながら紀保を気遣い注ぐ伊織の眼差しも切ない。この43話が、いままででいちばん“哀切なラブストーリー”らしかったように思います。

振幅が大きくては成立しない役を、“イン/アウトコーナーの出し入れ”で表現する、瀬川亮さんの静かな力量に日々驚いています。同年代近似期デビューの俳優さんたち比ではタッパで目立つほうではなく、顔立ちのパーツも小作りめで決して“表面積”が有利なタイプではありませんが、“すべてが順風で動き始め、過去は振り返らないことにした、でも…”のイエスバットが、これだけ見せられる人とは正直思わなかった。あるいは『夏の秘密』、何年か後に、真っ先に“瀬川亮さんのドラマ”として想起される作品になるかもしれません。

コメント
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