最近、午前中10:00台に、80年代の『必殺仕事人』シリーズ再放送を不定期でやっていて、どういう時系列なのか、見かけるたびに中村主水の藤田まことさんが微妙に若返ったりちょい老けたりしているのですが、ここのところは『必殺仕事人V 風雲竜虎篇』。村上弘明さん扮する鍛冶屋の政が、“裏の仕事”に赴く前、ウォームアップよろしく必ず鉄棒に両脚かけて逆上がりしたりベンチプレスしたりしてるんですよ。もちろん半裸。
このシリーズのメンバーが主水以下、なんでも屋お玉(かとうかず子さん)に南京玉簾使いのかげろうの影太郎(三浦友和さん)に絵馬坊主の蝶丸(桂朝丸‘現・桂ざこば’さん)という面子なので、村上さんの政はただひとりのワイルド&肉体担当。
『つばさ』の翔太(小柳友さん)を思い出さずにはいられませんな。ひょっとしたら翔太のほうが、“ヒロインの初恋担当”プラス“ドラマ世界自体の肉体担当”ってことなのかもしれない。台詞がなくてひとり映りのシーンでも半裸でウェイトレですもんね。80年代当時は花の金曜日夜22:00台の放送だった『必殺』シリーズならともかく、朝に半裸汗ダラのワイルドは要らないと思うけどな。
長身で南方系濃厚フェイスなだけで、どこかJリーガーにあるまじくヒョロい翔太に比べると、本放送当時30歳、身長185センチ、元・仮面ライダー筑波洋の村上さんのウェイトレシーンは、毎話数秒のカットだけど結構見応えありますよ。設定がオモテの本業鍛冶屋なのに、何で仕事場に鉄棒やバーベルがあるんだ?なんて野暮なツッコみは自重の方向で。
ただ、『風雲竜虎篇』というすごいサブタイのこのシリーズ、共演の男性陣が藤田まことさんと三浦友和さんと桂ざこば師匠ですから、“純粋頭脳担当”が不在で、村上さん扮する政の肉体ワイルドがちょっと空回りな印象は否めません。熱血でフィジカルな政の対極となるべきクール&精神性、言わば戦隊におけるブルー担当は影太郎の三浦さんのはずですが、当時35歳の三浦さん、すでに結構肉づきが良くて、総髪ロン毛に派手な陣羽織の大道芸人ルックでも、カスミを食って生きてる様な傾(かぶ)き者感、非日常感があまり無いんだな。体温高そう、米のメシしっかり食べてそうで、人として生気があり過ぎなんですよ。
その点、この前に放送していた『旋風篇』には、長崎留学帰りでアタマでっかち新し物好きのイマドキ青年で、“仕事”よりドクター中松みたいな殺しの小道具考え出すほうが得意だったっぽい歯科医(←この前のシリーズまでは医学校受験生だったはずですが、医者二世の出来のよくないのの例にもれず、結局歯医者止まりだったらしい)の西順之助(ひかる一平さん)がいましたから、一応ギリでバランスが取れた。
こうしてみると『仕事人Ⅲ』『同Ⅳ』までの、三味線屋勇次(中条きよしさん)と錺職人秀(三田村邦彦さん)とのバランスは唯一無二でしたね。軟と硬、と言うより彩色とモノクローム。勇次はレッドのタイプとはお世辞にも言えないけれど、さりとて秀もブルータイプではない。
陽と陰でも、光と影でもない、強いて言えば、昼の日影と夜の月影。そもそも仕事人自体、正義の存在ではないのですから。言わば、“追加戦士が2人いる”ような贅沢感がありました。
『Ⅳ』時点で中条さん37歳、三田村さん30歳、対極のキャラながらいずれ劣らぬ二枚目の2人、ワンセットの仕事を請け負っても決してわかりやすいチームワークは無く、水と油みたいなのもよかったですね。大人の戦隊は仲良しこよしじゃいけない。要所要所で、世間知的なこと(特にオンナ関係)ならより長けていると思われる勇次が、不器用で融通が利かない秀をリスペクトして、助言を与える場面もあったり。さりとて秀がスペック的に劣っているわけではなく、『Ⅳ』では“幼い子供に慕われる”というお茶の間最強の属性を全開、同24話での加納竜さんとの空中戦など、“男対男”の局面では他を寄せ付けませんでした。
やはりチームもの、バディものは初めにキャラありきですね。俳優さんの持ち味や表現力、表現させてみてどう出るかの結果に俟つ部分も大きいですが、役者に本を渡し、現場に入れる前に、作り手にどういう風景が見えているか、どういうやりとりが頭の中で聞こえているかがいちばん重要だと思います。
『つばさ』も、公式サイトの“キャスト”ページのデザインから連想される通り、基本“大きな戦隊”で、“毎週替わりで敵怪人来襲(“来襲”と言うより“来訪”)”みたいな構造のドラマですが、最近は、翔太よりつばさ弟・知秋(冨浦智嗣さん)のほうが、ユニセックスヴォイスはそのまま、いいカラダになってきつつありますね。或る日突然、意味無く2人並んでウェイトレしてたらうけるんじゃないかな。翔太が宮崎に帰る前にぜひ。