イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

ここでいったんCMです

2007-03-18 18:32:15 | テレビ番組

『ハゲタカ』第5話“ホワイトナイト”(17日21:00~)。エンディング間際、もみ合った末に暴発した銃弾を受けて鷲津(大森南朋さん)が倒れたとき、松田龍平さんに「なんじゃこりゃ~~!!」って言ってほしいと思った視聴者は全国に何万人いたのでしょうか(ここに一人いますが)。

ホリエモン一審判決の直後ということもありましたが、松田さん扮する新興IT社長、目が常にテンパってるわ宗教がかってるわヤクザとつながってるわ、ちょっとなんぼなんでもいかがわしキャラに造形され過ぎ気もしますが。NHK地上波は地方の、特に高齢者に支持が多いそうだし、放送を見た田舎のお父さんお母さんたちが焦って、東京遊学中の息子に「オマエ就職あいてぃー系だけはよしときなよ」って電話したりしてないでしょうかね。

付き合いがないのでよくわかりませんが、IT業界もマスコミの作ったイメージ通りの、目から鼻に抜けた利の亡者ばかりではなく、おっとりした人や地に足のついた人、素朴な人もいっぱいいると思うんですけどね。どんな業界もそうしたもんです。

松田さん扮するハイパー西野が鷲津の頭を越えようと足掻くのも、鷲津が銀行員時代に潰しかけた町工場三島製作所の救済にこだわるのも、そのとき自殺した三島の娘・由香がジャーナリストとして鷲津の動向を執拗に追い続けるのも、すべては“過去の悔恨からのリターンマッチ”。銀行を辞していまは鷲津の標的たる大空電機の再建担当役員となった芝野は、西野に性急な業務提携の真意を質し「お父さんの弔い合戦ならやめた方がいい、鷲津がしたことと同じことをしようとしているんじゃないですか」と諭しますが、その芝野もかつては銀行マンとして、結局融資先企業再生より銀行の保身を優先させなければならなかった自分への憤懣があるから、経営陣の一員になって痛みを分かち合う再建策を試みる現在がある。

言わば全員“復讐(リベンジ)の連鎖”。

しかもそのエネルギーのベクトルは、誰かを破滅させ、一敗地に塗れさせれば胸がすくという方向性のものではない。根源は過去にあるから、誰かをいま負かしても、死んだ三島も、西野父ももう生き返っては来ない。そっくり埋め合わせることはもう不可能なのです。自分の中の、永遠の欠落感、敗北感、飢渇感を、未来に向かってどう御しどう処理するのか。死んだ者、過ぎ去った年月のためにではなく、いまもこの先も生きて行く自分のために何をするのが正しいのか。

人間は過去によって形づくられる。でも人間が何かをできるとしたらそれは現在および未来のためにのみです。この世は死んだ人のためにはない。生きている人、明日も明後日も生きて行こうとする人のために、政治も経済もお金も動いている。

鷲津も西野も三島由香も芝野も、“カネで傷を負った過去”から出発し、“カネへのリターンマッチ”を動機に現在を生きている人たちです。戦うべき相手はここではない何処かにある“カネ”という漠然たるものではなく、もちろん自分以外の誰かでもない。残りあと1話ですが、彼らは彼らを駆り立ててやまない、内なるリベンジの矢が指す方向に、本当に気がついているでしょうか。西野が鷲津に向けかけた銃口を、咆哮一声自分の頭に向けて、止めようとした鷲津ともみ合った末あらぬ方に誤発射した弾が鷲津に当たる、第1話冒頭に回帰するラストシーンは象徴的です。

彼らの戦いの行き着く先。来週最終回の1話だけで描き切れるでしょうか。

それにしても、NHKのドラマで「いったんCMです」のフレーズを聞くとは思いませんでした。“センセーションに群がり競う、愚かでせこいマスコミ”の中に、NHK自身を加えないで民放の東洋テレビに代表させる、NHKそこはちょっとズルいよ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする