イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

昼ドラの流れは絶えずして

2006-12-16 22:13:26 | テレビ番組

『紅の紋章』はすでに歴然と電波の無駄遣いですが、ブログでダメ出しばっかりしてるのもネットの無駄遣いのような気がするので、そもそもいつ頃から昼の連ドラを観るようになったのか、つらつら考えてみました。

うろ覚えでも記憶がある最初の作品は、93年4月期の『ラスト・フレンド』でしょうか。とは言えOPテーマのニルソンの名曲“Without you”だけの記憶。本編は見ていないんですね。宮崎淑子さんと、ガン闘病記を遺して先日亡くなった絵門ゆう子(当時・桐生ユウ子、その前・池田裕子)さんの共演だったことも、OP映像でしか覚えていません。

同年の、その後7月期『誘惑の夏』は本編もかなり観ました。この頃から在宅労働が多くなったからですね。今年『美しい罠』で魅せてくれた櫻井淳子さん、堂々の昼ドラ主役デビュー作です。故・高橋悦史さん扮する名門病院長のお嬢さま役で、いまよりちょっとぽっちゃりめながら目鼻立ちの美しさは際立ち、演技もまだ発展途上ではありつつ、表情の豊かさとみずみずしく伸びやかな挙措がのちの開花を予告していました。不思議なもので、この新人さん演技力はちょっとね…と思わせる人でも、後からどんどんうまくなる人と、いま以上は行かない人とでは印象が全然違うのです。彼女の本命相手である№1ホスト役・沢向要士さん、その間を邪魔するヤクザつながりの悪い医師役・田口トモロヲさんも持ち味を十分に発揮。そしてテーマ曲、男性デュオVOICEの『二十四時間の神話』もとても美しい曲で、お風呂その他、カラオケでもだいぶ、迷惑かえりみず歌わせてもらいました。

この枠は、各クール最終週5日間は次作の予告が流れるのですが、『誘惑』後の10月期『花の咲く家』は、三ヶ月1クールに一ヶ月三話ずつの連作という異色形式の意欲作だったわりには予告からあまり惹きつけられなかったようで、しばらくご無沙汰が続きます。97年4月期の『氷炎~死んでもいい~』で、かつての仮面ライダー・速水亮さんが小川知子さんと共演していたのをちらっと見かけた程度。その次の7月期『砂の城』は某誌コラムで故・ナンシー関さんが、おもにヒロイン役大場久美子さんの演技について赤裸々に書いておられたので、録画して一度は見ようと思っているうちに終了。TV番組は水のように流れるものですから、縁のない時は、観る気はあってもこんなもの。ちなみにこの作品、2~3年前、当地域で再放送されたときに数話観ましたが、ナンシーさんもあれでかなり控えめに書いておられたことがわかりました(爆)。

決定的だったのは01年1月期の『女優・杏子』です。TV誌新年特大号の新番組紹介で、帯ドラマですからゴールデンのドラマに比べるとごく小さな紙面でしたが、荻野目慶子さんが落ち目女優の役、華やかな芸能界のバックステージものかな?ありがちだけど面白いかも…と思って1話見たら、計算された演出にもう、あっさり陥落。1stシーン、荻野目さん扮するヒロイン杏子と、嶋大輔さん扮する熱愛中の共演男優の、会員制秘密クラブからのパパラッチ振り切り大逃走カーチェイス(ハリウッドサイズではなく、あくまで昼ドラ仕様のね)もさることながら、彼女が車中で化粧を直しつつ嫣然と「あの監督ったらやたら長い説明セリフばっかりでうんざりよ。女優はセリフをしゃべる機械じゃないって、全然わかってないんだから」と言う場面で、完全に引き込まれました。ベストセラー小説の主役の座をめぐってライバル女優と色仕掛けの腕くらべ、オーディションで発掘した新人男優に恋の演技指導、共演者の黒い交際疑惑でTV降板ドサ回りへ、復帰すると若手アイドルが主演クラスにおさまっていて老け役扱い…と、“シロウトがワイドショーや週刊誌から想像するいかにもなザ・芸能界”ネタにたくみに肉付けしてエピソードを構成、当時は夜、帰宅すると、部屋の灯りや暖房を点けるより先にビデオ巻き戻し、かじりついて観ていたほど。ひょんなことから付け人を引き受けた、渋谷琴乃さん扮する介護福祉士志望の平凡な女の子との交流をお話のもう一方の軸にして、利に敏いが仕事には誠実なベテラン事務所社長に茅島成美さん、杏子が本気で惚れかける天才肌の野性的な舞台演出家に四方堂亘さん、開局記念ドラマ主演と引き換えに杏子と寝ようとするセコくてキザなサラリーマンPに乃木涼介さん、女優に目のないエロ中年だが杏子の本質を見抜いた不倫小説家に中原丈雄さんなど、これまた“いかにも昼ドラ”なキャストを惜しげなく(?)投入、女優でなくても働く女性が三十代半ばともなれば必ず直面する親の病気と介護、そして永遠の別れもさりげなく織り込んで、杏子が葛藤の末「女優は死ぬまで女優」という手応えを得る感動の結末まで一度もダレさせませんでした。

えっ、アレが噂に聞く“ドロドロ系”の東海ドラマだったの?と、遅まきながら知ったのは『杏子』が終わった後。『杏子』が初めての昼ドラならば、誰もが“ドロドロ系”とは思わなかったのではないでしょうか。この作品に関してもナンシー関さんが慧眼に見抜かれていた通り、唯一無二荻野目慶子さんの起用あってこそとは言えますが、この枠定番の男女の愛憎も、杏子の女優としての上昇志向の中での人間関係と一体で描かれ、杏子、付け人の智子それぞれの“天職を得て、女性としての幸せをも模索しながら階段を昇るビルドゥングス・ロマン”として観られるように、お茶らけずパロディにもならず、首尾一貫、きちんと組み立てられていました。

連ドラ観るなら昼ドラのほうが密度が濃くて見ごたえあるかも…と認識を改めたのはこの作品が端緒でした。

(つづく)

(↑文体も連ドラ調で)

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