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【知財記事(商標)】校名変更騒動(「京都芸大」)

2019年08月30日 08時47分09秒 | 知財記事コメント
おはようございます!
…雨ですな。こんな日に限って、雨ですな、、、な@湘南地方です。

今日は、月末。短期決戦。集中していきましょう、と今両頬を自分で張ってみました。

さて、今日はこんな記事

(日刊スポーツより引用)
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校名変更反対の市立が同名称商標出願 京都芸大騒動

学校法人京都造形芸術大学(京都市左京区)が来春に「京都芸術大学」と校名変更すると発表したことについて、法的措置も辞さない構えで反対している京都市立芸術大学(西京区)が、「京都芸術大学」という名称を商標登録出願していたことが29日、分かった。
7月11日付で普段から呼ばれている「京都芸大」「京芸」など4点、7月18日付で「京都芸術大学」を出願し、いずれも8月20日までに情報公開されている。



なお、文科省大学設置室によると、校名変更は文科省が「認可」するものではなく、「大学設置基準」にのっとった校名であれば届け出ることができ、原則受理される。造形芸術大の届け出を8月27日に受理した大学設置室は、当事者同士の協議を見守る姿勢だ。

(以下略)
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(引用終わり)

記事によると事の経緯は以下のとおり。
1)今月27日、学校法人瓜生山学園(=京都造形芸術大学を運営)が、開学30周年事業の一環として2020年4月に校名を「京都芸術大」に変更すると発表(こちら)。
2)これに対して翌28日、京都市立芸術大学はHP上で理事長名にて「京都造形芸術大学の名称変更について」とのタイトルで声明発表。
  なお、同日付で京都市長のコメントも京都市HP上でリリースされている。

で、出願状況を調べてみた。



なんと、両者とも出願している。それも1日違いで。
瓜生山学園の出願(「出願1」)の出願日は   「2019/07/17」。
京都市立芸術大学の出願(「出願2」)の出願日は「2019/07/18」。

但し、京都市立芸術大学は「京都市立芸術大学」という商標をその1週間前=2019/07/11にしている(「出願3」)。


日本の商標方法は先願主義が原則。なので原則的な判断による限り、「出願1」と「出願2」の関係では、瓜生山学園の出願=出願1が優位な状況
但し、仮に「京都芸術大学」と「京都市立芸術大学」が類似と判断される場合、「出願3」は「出願1」の先願なので、出願3に基づいて出願1が拒絶されることとなる。
そうすると出願3としては障害がなくなり、出願1、出願3が登録されることになる。


また、仮に「京都芸術大学」と「京都市立芸術大学」が非類似(=似ていない)と判断される場合。
その場合でも、先に出願したら必ずそちらが登録される、というわけではなく、
例えば「京都芸術大学」の商標を使用した場合に京都市立芸術大学が提供するサービスと混同を生じる、とか、
瓜生山学園が「京都芸術大学」を使用することが公序良俗に反する、といった事情がある場合、
別の理由で瓜生山学園の出願は拒絶され、それが確定すれば出願1は出願2との関係で先願の地位を失い、後願の出願2=京都市立芸術大学の出願が登録されることになる。

両者のHPの記載、及び上記両者の出願状況を見る限り、両者間での協議はされていたのではないかと想像されるところ。

(京都造形芸術大学HP)
※その略称としては、「瓜芸(うりげい)」「KUA(ケーユーエー)」を使用し、「京芸」「京都芸大」は使用いたしません。
※なお、申し上げるまでもなく、本学は、公立大学法人「京都市立芸術大学」とは異なる大学です

(京都市立芸術大学HP)
…京都造形芸術大学に対しては名称変更を中止再考されるようお願いしてまいりましたが,その願いを聞き届けていただけなかったことは誠に残念です。


少なくとも出願2との関係においては先願権を持っている瓜生山学園側としては、適正に手続をしているわけだし、粛々と審査の結果を待つことになるのだろう、と想像する。
“当事者同士の協議”といったって、30周年事業としてやっている以上相当の覚悟があってのことであるのは想像に難くない。
これだけ話題になってしまったのであれば、特許庁としては何らかの拒絶理由を出して更に両者の協議を促すことになるのかなぁ、と想像。
いずれにしろ、現状12か月以上かかっている通常審査では、来年4月までには結論が出ないことが予想される。
早期審査したとしても数か月は要することが見込まれ、そこから意見書なり協議なりで更に時間が経過する、となると、やはり間に合わない公算が高い。

さあ、どう落ち着けるのが良策なのか。推移を見守るしかないが、「KIMONO」騒動の際にもコメントを発していた京都市長、今年は商標絡みの騒動に巻き込まれがちだなぁ。。
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