弁理士『三色眼鏡』の業務日誌     ~大海原編~

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【知財記事コメント(特許)】ワクチン関連の知的財産権

2021年04月23日 08時49分14秒 | 実務関係(特・実・意)
おはようございます!
今日も快晴!@湘南地方です。

昨日は一日都内をあちらこちらと飛び回っておりました。
人、多いなー、と思います。そんなもんだよな、と。
緊急事態宣言が明後日には発令される見込みらしいですが、今更それで人の流れを止められるのか。。
ほぼほぼ「オオカミ少年」のような状態になっているわ、
そもそもアクリル板やらなんやら購入させといて営業自粛とかいっているわ、
なんかもう無茶苦茶やな、と思います。

これ以上、今の子供たちの負の遺産を増やす政策の選択はやめていただきたい、というのが率直な気持ちです。

さて、今朝はこんな記事。

(Bloombergより引用)
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コロナワクチン関連の知的財産権、米政府が保護免除の提案支持を検討

バイデン米政権は、世界各国が新型コロナウイルスワクチンにより迅速にアクセスできるよう、知的財産権の保護を免除する提案を支持することを検討している。民主党の進歩派議員が主張しているもので、大手医薬品メーカー各社は反対している。

サンダース上院議員やウォーレン上院議員らは先週、特許や企業秘密を含む知的財産権保護の義務を幅広く免除する提案を支持するようバイデン大統領に求めた。この案は世界貿易機関(WTO)で提示されたもので、コロナ対策に必要なワクチンやその他医療品の生産・輸出に関する規則の緩和が狙い。
(以下略)
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(引用終わり)

メーカーにしちゃたまったもんじゃないでしょうが、
健全な競争状態じゃないコロナ禍にあっては、あってよい選択肢だと個人的には思います。
メーカーに対する一定程度の補償は必要だとは思いますが、それが連邦政府主導のものなのか、はたまた社会的なプレゼンスに基づくものなのか。

国際的な取り決めとしては「TRIPS協定」において以下のような規定があります。
第31条 特許権者の許諾を得ていない他の使用
加盟国の国内法令により,特許権者の許諾を得ていない特許の対象の他の使用(政府による使用又は政府により許諾された第三者による使用を含む。)を認める場合には,次の規定を尊重する。
(f) 他の使用は,主として当該他の使用を許諾する加盟国の国内市場への供給のために許諾される。
第31条の2
(1) 前条(f)に規定する輸出加盟国の義務は,この協定の附属書の(2)に定める条件に従い,医薬品を生産し,及びそれを輸入する資格を有する加盟国に輸出するために必要な範囲において当該輸出加盟国が与える強制実施許諾については,適用しない。

ちなみに日本の特許法の場合、以下のような規定があります。
(公共の利益のための通常実施権の設定の裁定)
第九十三条 特許発明の実施が公共の利益のため特に必要であるときは、その特許発明の実施をしようとする者は、特許権者又は専用実施権者に対し通常実施権の許諾について協議を求めることができる。
2 前項の協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、その特許発明の実施をしようとする者は、経済産業大臣の裁定を請求することができる。
3 第八十四条、第八十四条の二、第八十五条第一項及び第八十六条から第九十一条の二までの規定は、前項の裁定に準用する。


逐条解説(いわゆる「青本」と呼ばれるもの)によれば、
・旧法では「特許権の制限、収容、取消」といった制度があったが廃止された
・旧法では通常実施権の設定を受けることができるのは政府のみであったが、その制限もなくなった

といった経緯が書かれているほか、「公共の利益のため特に必要であるとき」の例示として
・発電に関する発明であってその発明を実施すれば発電原価が著しく減少し需要者の負担が半減するような場合
・ガス事業に関する発明であってその発明を実施すればガス漏れがなくなりガス中毒者が著しく少なくなるような場合

を想定してます。
なお、他の裁定通常実施権と異なり裁定請求の権限を有するのが「経済産業大臣」(他は「特許庁長官」)という点は短答試験のチェックポイントのひとつ。

ちなみに、他の裁定通常実施権も含め、これまで裁定により通常実施権が設定されたことは無い模様です。
(H16年とかなり古い資料ではあるけれどこちらがソース)


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