弁理士『三色眼鏡』の業務日誌     ~大海原編~

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【知財記事(著作権)】コロナ周りの著作権騒動もろもろ

2020年04月15日 09時23分01秒 | 知財記事コメント
おはようございます!
今日も引き続き快晴っ!な@湘南地方です。

さて、こんな春うららかな日々に多くの方々は巣篭り生活を余儀なくされているわけです。
子供たちも休校になったり自宅学習になったり、或いはオンライン授業になったりしているところもあるようです。

そんな中、著作権関連のニュースを何点か。

(1)遠隔授業での教科書利用
日経新聞より引用
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遠隔授業で教科書利用可能に 改正著作権法、28日施行

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府は10日、教科書などの著作物をインターネットなどによる遠隔授業で使えるようにする改正著作権法を28日に施行する政令を閣議決定した。政府の緊急事態宣言発令で多くの小中高校や大学などで休校が続く中、遠隔授業をしやすい環境を整えて学習の遅れが生じないようにする。

ネットやテレビを通じた遠隔授業で、教科書などの著作物を自由に無償で使えるようになる。このほか、予習・復習用の教材を、教員がメールで子どもに送ったり、外部のサーバーで共有したりできるようになる。
(以下略)
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(引用終わり)

もともと2018年に成立していた改正著作権法の、第33条の2→第35条ですね。
音楽のデジタル化補償金の教科書バージョンですな(ちょっと乱暴?)。

経緯が少しわかりにくいかもしれないので平たく言うと
・改正法の施行にあたって補償金で関係者調整が遅れていた
・ここにきてこんなコロナ騒ぎ→オンライン授業全面導入待ったなし
→ひとまず今年度に限っては補償金無償でやろうや

という流れ。

その管理団体=SARTRAS(一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会)のサイトがこちら

専門家なのにバカっぽい発言させてもらうとすれば、
“「文化の発展に寄与することを目的とする」著作権法の枠組みで、きょうび教科書の「デジタル化」で金取るのが基本的枠組みになってるのってどうなん??”
と思う面も正直ある。
いまどきオンライン化で手数料取るなんて…特〇庁の窓口じゃあるまいし(ボソッ)。

とはいえ、事態に即して速やかに適切な措置が取れたことについては歓迎して良いんじゃないかと思う。
いっそこのまま恒久無償化で。必要なのは文化の発展と教育環境の改善であって天…(以下自粛)。

(2)絵本の読み聞かせ動画

BuzzFeedJAPANより引用
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「好きだから」こそ思いとどまって。“愛ある”著作権侵害に悩む、絵本出版社の嘆き

1歳の息子に見せるYouTubeの動画を探す時、いつも気になっていることがあった。「この絵本の読み聞かせ動画たち……アウトだよね?」

数分で読み終わる絵本。短い本文はもちろん全文転載……ならぬ全文読み上げで、挿絵もたっぷり入っている。
出版社や作者の名義で公式にあげられているものもあるが、多くは個人によるもののように見える。
人気動画の中には、広告が入っているものも少なくない。1000万回を超える再生数のものも複数ある。
マンガの海賊版サイト「漫画村」の騒動は記憶に新しいが、絵本ももちろん著作権がある作品だ。
動画のコメント欄には「子どもが大好きなので助かります!」なんて無邪気なものもあるが、立派な著作権侵害にあたる。 特に読み聞かせ動画が目立つ「だるまさん」シリーズを刊行しているブロンズ新社に現状を聞くと、出版社側もネット上での著作権侵害の対応に苦慮している実態がわかってきた。
(以下略)
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(引用終わり)

良いものだからネット上で拡散したい。。
このご時勢、おうちで子供のお相手に困っている人もいるだろうから少しでもそのお役に立てば。。
善意に発する行動であるケースもあるだろうし、広告収入目当ての場合もあるでしょう。

後者は当然にNGだとして、前者も法律的にアウト。
善意だから違法を免れるわけじゃない。

この、
「良かれと思ってやったこと」
というのは結構厄介で、ともすると
なんでそんな法律になってるの?誰得? とか、
みんな喜んでくれるのに とか
つい考えてしまいがち。そして実際それで喜んでくれる人がいるのも事実。

だけどこの考えには、「クリエイターに対する敬意」という視点が抜け落ちている。

当方、個人的には、

(コロナ云々という意味じゃなくこれだけ情報通信手段が充実しているという意味で)
こんな時代なんだから可能な限りシェアできるものはシェアして、
金銭的な解決を図れば良いじゃん

というスタンスの側ではあるのだけど、
その前提としては「それをクリエイターが(明示的であれ黙示的であれ)許容していれば」 という条件が付く。
(この時代だから、クリエイターもそのあたりはもうちょっと柔軟に対処しようよ、という思いもあるけど、そのあたりは掘り下げだすとこのブログ内では収拾付かなくなりそうなのでここらで止めておく)

星野源の動画に乗っかった某首相の件も、根本にあるのはこの点かなあ、と。
この(某首相の)ケースは当然「違法」じゃないんだけど、クリエイターがどういう思いで作ったものか、を汲み取ることは最低限の礼儀かなと思う。


未曽有の国難に著作権とか細かいことをぐじゃぐじゃ言うな!という風潮にはまだなっていないことに、逆に少しほっとしている。
法律が先にあって人の気持ちがあるんじゃなくて、人と人とが立場も利害も違う中で共存する中のルールとして法律があるのだから、
まずは“自分が同じことされたらどう思う?”というシンプルな視点で捉えてみることは大事じゃないかな、と思う次第。
コメント
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