から揚げが好きだ。

映画とサウナ。

寄生獣 【感想】

2014-11-30 15:46:49 | 映画


漫画に疎い自分でも「寄生獣」は特別なものだった。
映画の公開に備え、久しぶりに読み返したが、興奮と感動が全く色褪せない凄い漫画だった。
期待と不安が入り交じるなか、ついに観ることができた。

原作ファンとして、この映画は「実写化」(再現)ではなく、
「映画化」として楽しむことができた。とても満足。

原作は完成度の高い傑作である。原作の「再現」に期待し、
それを望むファンの中には許容できない部分が多々あることも理解できる。

自分が強く感じたのは、新一、ミギー、里美、3名のキャスティングに紐付く個性の違い。
ミギーとの同化後、心身ともにシャープになった新一は、
染谷将太のプヨプヨ肌では表現しきれない。
冷徹さと知性の固まりのようなミギーは、阿部サダヲのパフォーマンスとはミスマッチ。
天然で少しヌケているが母性を感じさせる里美は、イケてる女子高生の橋本愛とは食い違う。

また、物語のキモとなる新一とミギーの関係性も原作と少し異なる。
自分の右手が寄生体に乗っ取られたばかりに、望まずして、
凄惨な死を目撃する毎日を追うことになる新一である。
それを受け入れることは容易なことではなく、強い拒絶反応を示して然るべきであり、
「人喰」を肯定するミギーに対しても同じことだ。

映画版は違う。一応セリフ上ではその心理をなぞっているが、
新一の葛藤を省略しているため、起きる事態に対して新一が面白がっているようにも見える。
ミギーについては、風変わりな価値観をもった、ひょうきんな「相棒」である。
ミギーに人間性を持たせ、新一と横並びの関係として見せる。
実際に物事の決断は序盤から新一が主導権を握ることも多い。
原作はあくまで「ミギー>新一」である(中盤まで)。

ただし、これらの不一致に対して目くじらを立てることもないと思う。
映画は映画版として楽しめば良いし、
葛藤や対立といった描写を省略することで得られるスピードは、
物語のテンションを保つというメリットに繋がっている(製作側の意図は不明だが)。

そして、寄生獣のビジュアルの再現性も実に良く出来ている。
特に、島田の酸をかけられてからの気持ち悪さが素晴らしい。
また、戦闘バトルにもアツくなる。原作では表現しきれなかった触手のシナる動きが、
頭で想像していた通りだった。予告編でも流れている島田にトドメを刺すシーンも
原作と異なるものの、前半シーンの伏線が生かされていて巧い。
新一の身体能力が覚醒したラストのバトルもカッコよくて
「それが観たかったんだよー」と唸る。

早々にミギーと仲良くなってしまっただけに、原作で涙してしまったラストに
ドラマ不足が懸念されるが、もしそうであっても仕方ないだろう。
原作ファンとしてはアクション映画として楽しむつもりだ。
エンドロール後に流れる完結編の予告編でテンションがマックスに。
いよいよ最強の寄生獣「後藤」の登場である。どう魅せてくれるのか、待ち遠しい。

なお、現在テレビでもアニメ版で「寄生獣」が放映中。
再現性だけでみれば、アニメ版のほうが優れている。
決してアニメオタクではないが、アニメ版のミギーを演じる平野綾のほうが、
阿部サダヲよりも普通に良い。映画版のモーションキャプチャーの効果も不明(笑)。

本作の製作は、ハリウッドでのリメイクが見送られてことによるものだったと聞くが、
個人的な想いとしてはハリウッド版も観てみたかった。
監督は誰が良いか勝手に考えてみる。ジョシュ・トランクはどうだろう。
「クロニクル」で見せたドラマ表現とイマジネーションできっと傑作を生み出してくれるのでは。

【65点】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

フューリー 【感想】

2014-11-29 16:42:37 | 映画


昔からの疑問がつい最近解消された。戦時中、戦闘機や戦艦が爆撃する映像で、
鉄の塊である弾丸がビーム光線のように発光して弾道を残すことである。
調べたところ、撃ち手がその弾道を確認できるように、
弾丸に曳光物が含まれていることがその理由らしい。
映画「フューリー」の予告編を見て調べずにはいられなかった。

で、ブラピの新作であり、デヴィッド・エアーの新作である「フューリー」を観た。
前評判に違わぬ、凄い力作だった。

第二次世界大戦の末期、ドイツ軍陣地にわずかな戦力で突っ込むアメリカの戦車部隊を描く。
主要キャラは同じ戦車に乗り込む5人の兵士だ。広くない戦車の中で、
大の大人が5人も寝食を共にするということにまず驚いた。戦車の中でオシッコもする。
戦車は銃弾を通さない鉄板に覆われた屈強な砦であるとともに、逃げ場のない巣箱だ。
その戦車ならではの強さと脆さが、観る者のスリルと恐怖に転化していく。
死と隣合わせになる状況を共有する仲間たちの絆が強固になっていくのは必然である。

本作で描かれる戦争での殺し合いは、「やったらやり返す」という憎しみと、
「やらねばやられる」という自己防衛の元に成り立っている。
「望郷」あるいは「愛国心」などという綺麗な大義は排除されている。
状況は、数々の仲間を殺したナチスという存在が目の前にいるというだけであり、
彼らを見つければ「殺す」あるいは「苦痛を与える」 という選択肢しかない。
「生き返らないように弾をぶち込め」。良心が失われた世界が広がる。

そんな中、ローガン・ラーマン演じる新人兵士が、ブラピ演じる隊長の戦車隊に加わる。
相手が誰であれ同じ人間を殺すことを頑なに拒み、
「いっそ自分を殺せ」と嘆願する新人兵士の姿が観客側の視点と重なる。
しかし、戦争は人を変えることが容易だ。度重なる修羅場を経験する中で、
その良心はすっかり曇り、人を殺すことを「最高の仕事」と言える兵士になる。

時代設定が「大戦末期」というのがポイントだ。
アメリカ軍の攻勢にナチス軍が息絶え絶えになっている状況である。
戦力不足により戦闘に加わらない自国民を殺すナチス、
わずかな物資と引き換えにアメリカ兵に体を売るドイツ人女性など、
あまりイメージできなかった事実が突き付けられ、胸が痛んだ。

言わずもがな、戦闘アクションは想像以上の迫力だった。
戦車による重量級の爆撃戦が繰り広げられるが、
人間の肉体をいとも簡単に肉片にしてしまう瞬間が躊躇なく描かれる。
その描写は凄まじく、敵、見方に関係なく平等に描かれる。
この戦いに「英雄」も「正義」も存在しないことに気づく。
娯楽作として「血湧き肉躍るアクション」と面白がることもできるのだろうが、
戦場に横たわる虚しさを前に、そんな余裕は自分には全くなかった。

1つ、どうしもて引っかかったシーンがある。
新人兵士とドイツ人女子の急展開なロマンスだ。あそこはプラトニックに描いてほしい。
兵士として「女を知る」過程は必要だったのかもしれないが、
あの状況では絶対にあり得ないので、ドイツ側の感情がないがしろになる。
逆に、ラストでのドイツ人兵士がとった行動の描き方が誠実であり、
余韻として残っただけに勿体ない。

主要キャラ5人のキャスティングは見事にハマった。
4人の部下たちの命を預かる隊長を演じたブラピの圧倒的な存在感。
「狂った男」と揶揄されながらも、戦争の虚しさを誰よりも感じる男の悲哀が、
逞しい背中から伝わる。新人兵士を演じたローガン・ラーマンは期待通りの熱演だった。
しかし、個人的にラーマンよりも後を引いたのは、想定外のシャイア・ラブーフだった。
何と良い面構えだろう。寡黙な中に覚悟を決めた彼の表情に何度も涙腺が緩む。
WDのシェーンこと、ジョン・バーンサルの下品極まりない言動がリアリティを感じさせた。
あと、スティーヴン・プライスの音楽がめちゃくちゃ良かった。

宣伝文句の「オスカー最有力」はイキり過ぎだが、とても良い映画だった。

【70点】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

オオカミは嘘をつく 【感想】

2014-11-29 16:30:16 | 映画


そんなに彼のファンではないのだけれど、
タランティーノが選ぶ昨年のベスト映画10に選ばれていた映画、ということで観に行く。
いやはや、つまらない。。。。それよりも嫌いな映画と言ったほうが適当かも。

女子の惨殺事件を軸に、犯人の疑いをかけられた容疑者と、その被害者家族、
その事件を追う刑事の3者を追った物語だ。

邦題の「オオカミは嘘をつく」が完全にネタばれ。
登場人物が3者にほぼ限られているため、「誰が犯人なのか」その回答予想が容易である。
「ミステリーではなく、サスペンススリラーとして観れば良いのか」と思うが、
その描き方がミステリーっぽくて不可解。

オープニングに引き込まれる。
美しい紅葉のなか、男女の 子どもたちが田舎の空き地で無邪気にかくれんぼしている。
その映像だけ観ていると愛らしい光景なのだが、スローモーションと音楽を巧く活用し、
不穏で不気味な空気を充満させる。その後、隠れていた女子の1人が
綺麗な赤い靴を1つ残して、忽然と姿を消すのだ。
胸騒ぎがするオープニングに、これは「傑作の予感!」と期待に胸を膨らませるが、
みるみるうちにしぼんでいった。退屈さと相まって何度も眠気が襲う。。。

キャラクターの個性を裏付ける行動パターンがルーティンで変わることがなかった。
また、中盤から加勢する爺さん含め、すべての展開が結局、予想の延長線上にしかない。

本作のテーマとして、「プリズナーズ」みないな「罪と復讐の境界線」みたいなものを感じるが、
本作にはその境界線を越えることへの葛藤が皆無で、「疑わしきは罰を」の一点張りである。
何とも共感しづらい。復讐に狂った被害者家族が際限なく、容疑者に拷問を与え続けるのだ。
エスカレートする拷問ショーは実に味気ないもので、「良い人」であり続ける容疑者を前に、
冗長さと嫌悪感だけが募る一方だ。
途中、劇場から退席する女性もいて「やっぱりそうなるよなー」と思ったりする。

展開の底が見え、嫌な予感を感じつつも、どんな結末になるのか多少期待して追っていくが、
「どうだ!」とイキったようなラストカットに軽い憤りすら感じた。
「散々見させておいて、それかよ!」とツッコむ。

イスラエル映画だ。狂った被害者家族の姿から、テロに慄くイスラエル人たちの社会的背景が読み取れる、
みたいなレビューを見たが、その解釈は寛容過ぎであり、無理があるというもの。
単純に面白くない、それで良いと思う。

タランティーノが、このバイオレンス描写だけで称賛しているということであれば、
かなりセンスが悪いと思った。

【40点】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

そこのみにて光輝く 【感想】

2014-11-29 16:19:26 | 映画


新作DVDレンタル短評。

そこのみにて光輝く 【65点】
函館を舞台に社会の底辺に住み、出口のない見えない暗闇を漂う男女を描く。匂い立つような貧困とセックスの描写、役者の演技力にかけた演出など、とてもクラシカルな作り。今年のキネ旬の決算で批評家たちから絶賛されそうな映画。そんな中、自分は本作を「既視」と感じてしまった。この時代に作られたワケがよくわからず。絶望の中、一縷の光を見出すことに、作り手の想いがあるならば、終盤のシークエンスだけでは不十分。出演者のパフォーマンスは必見、それを目撃することは映画ファンにとって今年の重要課題かも。


グランド・ブダペスト・ホテル 【65点】
レンタルでようやく観る。唯一無二の映像作家、ウェス・アンダーソンの美学が頂きに達したような映画。画面の隅々まで行き渡った画作りと、クスリ笑いのユーモアでずっと楽しい。超豪華共演者たちもアンダーソン世界の住人になってしまう。これがまた楽しい。「ヒトラーの贋札」のソロビッチ役の人も端役で出ていた。事前情報をまったく持たずに観たが、想定外のアドベンチャー映画で面食らう。これまでのアンダーソン映画に比べるとややストーリーに捻りがないか。また、自宅TVで観ると、意図された画面寸法の移り変わりがいささか目障りだった。


超高速!参勤交代 【65点】
評判通りの面白さ。「走れメロス」ならぬ「走れ貧乏侍」。「参勤交代」という史実を元に、フィクションを追い風に使った痛快時代劇。江戸老中の陰謀により、とりつぶしの危機に瀕した湯長谷藩(現いわき市)。お人よしで人情に厚い藩主と家臣たち、文字通り、知力、体力を駆使して無理難題を突破するその姿に、熱をもって応援してしまう。福島訛りが温かくて心地よい(懐かしいな)。「強そうに見えない奴が強い」、そのカタルシスも加わり、お約束のチャンバラシーンもまた違った味わい。キャストがテレ朝ドラマのオールスターっぽい(笑)。藩主を演じた佐々木蔵之介もさることながら、その右腕となる家老を演じた西村雅彦が絶品、巧いなー。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

西遊記~はじまりのはじまり 【感想】

2014-11-22 12:34:04 | 映画


自分はイチ映画ファンに過ぎないので、安くない映画料金を払う以上、
もれなく面白い映画を観たいと思う。つまらない映画は劇場で観たくない。

今日観た「西遊記~はじまりのはじまり」が最高につまらなかった。

自分が知る「西遊記」は、三蔵法師と孫悟空一行が天竺を目指して旅をするという話だが、
本作は、その手前の話で、三蔵法師というキャラがいかにして生まれたのか、
そして孫悟空、沙悟浄、猪八戒の御馴染みのメンツと、どうようにして出会ったのかを描く。

「少林サッカー」「カンフーハッスル」のチャウ・シンチーが、あの「西遊記」を描く!、
面白そうな匂いがする、つまらないワケはないと期待は大きかった。
しかし 、チャウ・シンチーは自身の強みである作家性を本作で放棄したようだ。
その代わりに小手先の陳腐な技に陶酔し、しつこいほどに繰り返す。
「ミラクル7号」は未見なので、そこで付いたクセなのかもしれない。

アニメ(漫画)の世界で生み出されるケレン味を、過剰なアクションをもって実写化する。
そこに気恥ずかしさなどはなく、生々堂々と観客の前に差し出すのだ。
「笑うか、圧倒されるか、ヒくか、ご自由にどうぞ」と。チープなCGも堪らない。
単純な自分は、それを見て「カッコいい」と思い、カタルシスすら感じてしまった。

本作でのアクションだけをみれば、その作り方は変わっていないようだ。
しかし、上映時間の多くを、センスなきロマンスと、寒いコント劇に割いているのがツライ。
なんというドン臭さ。「下手くそか」と何度も心の中でつぶやく。

三蔵法師の誕生には、知られざるロマンスがあったという設定。
これが結構重要なのだが、全く面白くない。
主人公のヘナチョコ妖怪ハンター (村上淳に激似) が、
いつの間にかイケてる女性妖怪ハンターに惚れられるという状況になっている。
「何で?」がないまま先に進むが、その後も2人のキャラ設定が一向に定まらない。
意味不明なドタバタ劇と歌唱パフォーマンスが繰り返され、
気づけば「感情移入してください」のラスト。。。

笑、苦笑、スベリの比率は1:4:5。
その多くが狙いにいったユーモアだから余計に寒い。
過剰なアクションで笑いを取りにいくのが過去作の正攻法だったのに、
キャラ同士の掛け合いで笑いを取ろうとする。それで笑いを取れないのは、
そもそもユーモアセンスが欠如していたということだが、
その場の退屈凌ぎのグダグダコントを見せられても時間の無駄である。
序盤の妖怪魚とのバトルしかり、同じ画の中で見せる変化のスピードが冗長過ぎるのも退屈。
映画を見て、これほど時間を長く感じたのは久しぶりだ。

終盤の孫悟空登場で、ようやく「らしさ」を見せつけるが、遅過ぎだった。
孫悟空の個性は最高。
好感度を意識していない醜い顔つき、無敵過ぎる強さと、惜しみない残虐性。
もっと早くに見たかった。非常に勿体ない。
なお、ドラゴンボールのパクリは許容の範囲。
孫悟空の暴れっぷりに一気にボルテ ージが上がるが、
その後、強引過ぎる結末で、あっさり終宴した。

観た劇場が吹き替え版しかやっておらず、主人公を演じた斎藤工は浮いているが、
ヒロインを演じた貫地谷しほりがプロの声優バリに自然で驚いた。

続編を匂わせる終わり方だった。
最後は少し面白かったので、次回作には期待できるかも。

【45点】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ショートターム 【感想】

2014-11-21 11:00:00 | 映画


映画「ショートターム」を観る。
昨夏の北米公開時から、Rottenで99%のフレッシュを獲得するなど、
ありえないほどの激賞を獲得し注目していた本作。待ちに待った劇場公開だった。

児童養護施設「ショートターム21」を舞台に、傷を負った子どもたちと、
その世話役であるスタッフたちの交流を描く。
子どもたちの心のケアを行う更生施設のようなものを勝手にイメージしていたが、
そこは一時的な預かり所のような施設であり、
現場スタッフも「安全に生活を送る」手伝いをするだけのサポートメンバーだ。
出てくる登場人物は皆、立場が違うだけで、並列な存在として位置付けられており、
これが本作が描こうとするテーマに繋がっていく。

リストカットなどの自傷行為は、精神的ストレスから逃避するために行われることが多いらしい。
自分の肉体から血が出ているのを見て「早く止血しなきゃ」ではなく、
「眺めていたい」という衝動は、今の自分には到底共感しうるものではない。
結局、同じ痛みを知る人間でしか、本当の意味で理解することはできないのだと思う。
本作で描かれる世話役の主人公と、施設に新しく加わる女子の関係はまさにそうだ。
しかし、本作では同じ境遇の人間による、傷のなめ合いを描こうなどどはしていない。

「嫌いになってもいい、待ってるから」。

子どもたちを受け入れ、寄り添うことで、自立の手助けをする。
理解の強要ではなく、肯定に基づく信頼関係がそこにある。
実践的に最も効果的な手法なのかもしれないが、それは結構勇気がいることで、
大きな困難も孕んでいる。手持ちカメラを多用する本作は、その様子を生々しく映し出す。

物語の視線の先は、傷を負った子どもたちよりも、
その世話役である主人公グレイスに向けられていた印象が強い。
彼女がなぜ、この施設で働いているのか、なぜ、幸せになることに臆病になるのか、
次第に明らかになる事実に息を呑んだ。グレイスの強く、繊細な眼差しから、
過去の壮絶な経験を想像することは容易だ。勇敢で心優しいパートナーとともに、
自らの壁を乗り越える過程が描かれるが、世話役である子どもたちからも
多大な影響を与えられている点が感慨深い。上手い言葉が見つからないが、
本作で描こうとしているテーマは、そんな人間関係に中にあるような気がする。

新しい命を授かった喜びに抗えず、涙した彼女を見て、自分も感涙してしまう。
その命は、負の継承者ではなく、希望の継承 者であってほしいと願う。

グレイスを演じたブリー・ラーソンが素晴らしい。
昨年のオスカー候補から漏れたのが解せないほどの名演だ。
ド傑作痛快コメディ「21ジャンプストリート」での彼女役でしか印象がなかったけど、
凄いポテンシャルを持っていた女優さんだったのだな、と振り返る。

好きな俳優ができると、映画を見る楽しみが1つ増える。
今後の彼女の活躍に注目だ。

【75点】

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

フォックスキャッチャー 【気になる映画】

2014-11-20 08:00:00 | 気になる映画


アメリカでオスカー候補注目作の公開が続く。
ベネット・ミラーの新作「foxcatcher」が先週より北米で公開された。

本作も、ベネット・ミラーの代名詞となっている「実話モノ」映画だ。

1996年に実際に起きた、米国レスリングチームのスポンサーであった大富豪が、
チームの金メダリストを殺害したジョン・デュポン事件を描く。

6館からのスタートで、今後、拡大公開されていく見込み。
Rottenで現時点(11月18日)のスコアは83%のフレッシュを獲得。
「マネーボール」など、ここ最近のミラー映画は90%超えは当たり前だったので、
相対的に期待値よりは伸び悩んだ評価だと思われる。

しかし、キャストのパフォーマンスで大きな賛辞を獲得している。
早くから話題になっていた殺人犯を演じたスティーブ・カレルと、
チームプレイヤーの兄弟を演じるチャイニング・テイタムとマーク・ラファロだ。

すでに、先週のハリウッド映画祭では「アンサンブル演技賞」を受賞し、
主演のスティーブ・カレルはサンタバーバラ映画祭にて「Performer of the Year」を受賞。

本作で、これまでのコメディイメージを封印したスティーブ・カレルは、
病的な思想に取りつかれた主人公を怪演しているとのこと。
その迫力は圧巻のようで、オスカーノミネートは間違いなさそう。

また、演技派のイメージのつかないチャイニング・テイタムについては
本作でキャリアベストのパフォーマンスを魅せたという称賛もチラホラ。

日本での公開も決まった。
邦題は原題のままで「フォックスキャッチャー」。来年の2月14日の公開。

2月22日のアカデミー賞に間に合ってくれて良かった。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

紙の月 【感想】

2014-11-18 12:00:00 | 映画


映画「紙の月」を観た。傑作。
ドラマ版(原作)にはないアレンジが、ツボに入った。

劇中のセリフ同様、ストーリー自体は「ありがち」だ。
人生に渇きを覚える女性が、金銭横領という甘い蜜の味を覚え、
どこまでも堕ちていく話。。。。

しかし、その背景にあるものは「ありがち」なものではない。
その入り口は、「ふとしたきっかけ」ではなく、
主人公の学生時代に培われた特異な人格形成に紐づく。
「受けるより与えるが幸い」と、他者へ施しをすることに
無償の悦びを感じるようになる。その手段が主人公にとっては「お金」だったということ。
それは紙きれのようなもので、手を伸ばせば容易に得ることができる場所にあった。
主人公の目に「お金」は人の幸福を生み出すことができる魔法のように映った。
但し、魔法は魔法。その実態は本物なのか、それともニセモノなのか。

映画版の本作では、この主人公の「必然性」がきちんと描かれている。
原作は未読だが、原田知世が主人公を演じたドラマ版は視聴済み。
おそらくドラマ版が原作に近いものだったと思う。なので、
計5話に渡る物語を、本質を壊さず巧く2時間にまとめられたなーと感心した。
「桐島~」で自信を付けた吉田監督の編集力が冴えている。
観客の想像力に委ねてよい部分を見極められている印象だ。
こういう優れた編集は日本映画には滅法少ない。

主人公が他者に与え、見返りを得ることに快感を覚えたのか、
それとも、無償の愛に快感を覚えたのか、人によって見方は分かれそうだが 、
自分は後者のように感じた。
若い大学生との情事においても彼女が欲したことが口火ではない。
求められたことで、秘めたアイデンティティーが呼び覚まされたのだ。
高い洋服を買って着飾ることも彼女自身の物欲を満たすものではない。
なので、欲望を前面に打ち出す描写が少ないのは当然のように思えた。
主人公と大学生が惹かれあう地下鉄のシーンが幻想的で美しく、目に焼きつく。

映画版のアレンジで素晴らしかったのは、
オリジナルのキャラとして、銀行のお局様こと「より子」を置いたことだ。
冷徹でモラルを貫くより子を、主人公と対立させるのではなく、
共鳴する立場として描いてみせる。より子が発した答えの迫力が凄い。
正当化することが許されない罪を背負いながらも、自由を勝ち得た主人公と、
自由を知る術を知らないより子、2人の優位性が揺らぐ。。。
そのせめぎ合いを余すところなく描いたクライマックスに鳥肌が立ち、引き込まれた。

「美しき横領犯」という安い宣伝文句は不適当。
主人公演じた宮沢りえは千載一遇という役を得て、見事に輝いた。
彼女の声色がとても綺麗で魅了されると共に、惑わす魔力になる。
実生活で母になった彼女の母性は隠されず、
肉体的な盛りを過ぎた佇まいが強い説得力を出す。
その一方で宮沢りえは宮沢りえ。劇中で磨かれると一気に絶世の美女になる。
やはり女優はこうあって欲しい。

そして助演として大きな賛辞を送りたいのは、より子を演じた小林聡美だ。
彼女の存在感なくして本作は成功はなかったと思う。

池松壮亮の若さの利点を理解し、それを十分に発揮したパフォーマンスはさすが。
懸念していた大島優子も名だたる俳優たちを前に一歩も引けをとらない好演だった。

前作ではキャリアの浅い役者陣を相手に見事なタクトを振るった吉田監督だが、
本作ではガチな実力派俳優たちを前に堂々のオーケストラを奏でる。
音楽も前作と対照的で、ほぼBGMのなかった前作から、一転、
登場人物たちの心理描写、展開の波に多くの音楽を多用する。
起伏の少ない展開の中、とても効果的に使われていると感じた。
役者陣の名演を引き出した演出手腕は勿論のことだ。

惜しむらくは、場面が変わったラストシーン。
お金が持つ力を再認識させる、重要な意味を持つシーンだと思うが、
少し芸が無さすぎだ。

ただ、それを含めても、今年見逃さなくて良かったと思える日本映画だった。

【75点】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

6才のボクが、大人になるまで。 【感想】

2014-11-15 13:03:57 | 映画


「時間」は誰しもに平等に与えられるものだ。
積み重ねられる時間によってもたらされる肉体的、精神的な変化を、
子どもは「成長」と言い、大人は「老い」と言う。

1人の少年が青年に成長する過程を、
12年というリアルな歳月をかけて追った本作。
その撮影方法は前代未聞の試みだったが、3時間弱という時間で、
現実の時間の流れを観客に疑似体験させることに、
見事に成功していると思う。凄い映画だ。

人の個性を形成していく過程で大きな比重を占めるのは、
まさに本作の「少年時代」(原題)だと思う。

家族、親戚、友人、恋人、社会、文化・・・・
その時代で出会ったものに影響を受けながら自身の世界が確立されていく。

本作では、特に主人公と家族の関わりを中心に描く。
生真面目で口うるさいが、いつも家族を守ってくれる母がいて、
身勝手だがカッコいい大好きな父がいて、
誰よりも冷静で自分を見失わない姉がいる。

人生は思うようにはいかず、家族の形はいろいろと変化していく。
但し、本作では家族に変化をもたらす要因を劇的に魅せることを極力避ける。
むしろ、そのきっかけすら、バッサリ省略してたりする。
その代わり、平凡でとりとめのない日常のやりとりに多くの時間を割く。

ここが本作の感慨深い点だ。
「あー、こんなこと話したっけなー」などと、
案外、人の記憶に残るのは何気ない日常の中にあったりするものだと思う。
その記憶は人によって曖昧であり、同じ家族の中であってもまちまちだ。
過ぎ去った記憶は次第に薄れ、人は今を生きながら、
新しい記憶を生み出すことに人生を費やしていく。

監督はリンクレーター。本作は、現時点までの彼の最高傑作だ。
誰しもが成し得ないプロジェクトに挑戦し、映画の完成度に結実させた。
リンクレーターならではの脚本と演出も素晴らしい冴えを見せる。
魅力たっぷりな登場人物の個性を引き立たせ、その会話を1つとっても
観るものを飽きさせることがない。劇場で幾度も笑いが起きる。
そして何より、描かれるどの日常も輝きに満ちているのだ。

両親を演じたパトリシア・アークウェッドと、
監督の盟友イーサン・ホークがキャリアベストのパフォーマンス。
加齢とともに増える、ぜい肉とシワ。肉体の変化も隠さない。素敵だ。
それぞれ本作により、次のオスカー助演候補は間違いないようだが、とても嬉しい。

素晴らしい映画に出会えた。

【85点】

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

恵比寿のフカヒレ料理

2014-11-15 12:00:00 | グルメ


恵比寿にある中華料理店「筑紫楼」に行ってきた。
フカヒレ料理で知られる有名な店らしい。
富裕層ではないのであくまでランチ利用。

お店は恵比寿駅前のラブホテルに囲まれた場所にあった。
フカヒレを扱うだけあって、高級感漂う店構えだ。
店内に入ると正面のウィンドウに巨大なフカヒレが展示されている。

席に案内される。周りに自分のような1人サラリーマンはおらず、
みな、お金を持っている人たちに見えて、心なしか落ち着かない。

昨今の急激な円安により、少し恩恵を受けたので少し贅沢する。
3000円のフカヒレの姿煮セットを注文。。。。

まず、ジャスミンティーがポットで出てくる。と ても美味しい。
冷めないように、ろうそくで保温されている。

10分ほど待って、料理が一品ずつ届く。
「セット」だったので一気に並べられると思いきや、コース料理のようだ。

「大海老のマヨネーズ和え」「青菜の蟹のあんかけ」「豚肉の蒸篭」
「ごはん」「中華スープ」「フカヒレ煮込み」「杏仁豆腐」








どれも、もれなく美味しい。さすが高級中華といった感じ。

ご飯とスープはおかわり自由とのことだが、
ご飯はおひつで出てくるし(茶碗2杯くらいの量だが)、
そもそもお代わりすることが恥ずかしいため、やめた。
スープとご飯だけで攻め続けることも可能なので、
がっつり食べようと思えば、その要望に応えてくれるサービスだ。

肝心のフカヒレの姿煮は、間違いなく美味しいが予想の範囲。
当たり前だが、肉厚で繊維質が見える高級なフカヒレは使っておらず、
ペロンとして薄い皮のような、ランチ用のフカヒレである。
だが、その分、ボリュームはそこそこあるので、不足感はあまりない。
食べログ情報では、「味付けが濃い」と言われていたが、
結構あっさり目の味付けで全く問題なかった。
姿煮で残ったスープをご飯にかければいくらでもイケそう。
スープを飲み干すことも視野に入れたが、恥ずかしいのでやめた。

デザートの杏仁豆腐が結構な量で嬉しい。
思ったより杏仁の香りがせず、バニラ味のババロアに近い印象。
杏仁のクセが苦手という人にも食べられるようにしているのかも。

料理もさることながら、普段行くことのない高級店なので
そのサービスがとても印象に残った。
デザートのスプーンはキンキンに冷え 、
おしぼりは食前と食後の2回出てくるし、
爪楊枝は取りやすいように並べられている。

お会計をしたフロアマネージャーっぽい人が
愛想がやけに悪かったくらいで、大変満足。

3000円のランチを、再び食べたいとは思わないが、
1500円くらいのセットもあるみたいなので、
誰かと恵比寿でメシを食う機会があればリピートしたいと思った。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

新宿のシュークリーム

2014-11-15 09:00:00 | グルメ


最近、テレビでもたびたび紹介されている、
新宿にある行列ができるシュークリーム屋に行った。

「クロッカンシュー ザクザク ZAKUZAKU」という店。

駅から東口のビックカメラ前に出る構内通路にある。
駅から外に出ない立地にあってとても便利だ。

平日の夜、会社帰りに行く。行列の待ち時間は20分くらいだった。
ショーウィンドウには細長い独特の形状のシュー皮が山積みされている。



1個(1本)、220円。
6個買うと、100円くらい安くなるので、
家族の分を含めて6個購入した。

1時間後、自宅に戻って食べる。
シュー皮とザラメの堅さでザクザクという食感。

シュー皮がとても甘い。クリームの甘さは控えめ。
2つ一緒に食べてちょうど良いバランスだ。

だが、クリームの少なさに拍子抜けする。
食べ始めて「端っこだから少ないのか」と思うが、
食べ進めても一向にクリームの量は変わらず、そのまま終了。

「ここのシュークリームはシュー皮を楽しむものなのだろう」と割り切るが、
シュー皮と同等にクリームの美味しさを楽しみたい自分にはかなり不満。
何とかならないかな。。。

家の人間は大喜びで「美味しい!」と言っていたが、
200円台であれば、並ばずにもっと美味しいシュークリームがある。

あの行列も一過性かも。いつまで続くのだろうか。

調べてみたら「きのとや」が運営している店のようだ。
普通に「きのとや」が関東に出店してほしい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ベイマックス 【気になる映画】

2014-11-14 12:00:00 | 気になる映画


先週のアメリカの映画興行は、2つのビッグタイトルが激突した。
「ベイマックス」と「インターステラー」だ。

軍配は「ベイマックス」に挙がった。オープニング成績で
「ベイマックス」が5600万ドルに対して「インターステラー」が5000万ドル。
金曜日の時点では「インターステラー」が上だったが、
土日のファミリー層の取り込みで「ベイマックス」が追い抜いたようだ。
ノーラン映画としては「インセプション」を下回る興収となったが
3時間近い映画なので大健闘といえるのかもしれない。

客層が違うとはいえ、両タイトルにとって、
公開日がカブってしまったことは不運だっただろう。

作品の評価についても「ベイマックス」が上回った。
現時点(11/13)のロッテンスコア、「ベイマックス」88%フレッシュに対して、
「インターステラー」は74%のフレッシュだ。(これも悪くない数字だが。)
予想通り「インターステラー」については評価が分かれている模様。
「インターステラー」のオスカー作品賞への道は、ほぼ断たれた。

一方「ベイマックス」については、オスカーアニメーション部門への候補が確実に。
賞レースは先に公開された「LEGOムービー」との対決になるだろう。
評価、興収ともに「LEGOムービー」が圧勝しているが。

興味深いのは邦題と原題タイトルとの違い。
映画の中身は「戦隊モノ」らしく、血沸き肉躍るアクション映画とのこと。
その内容に近いのが原題の「Big Hero 6」だろう。

日本の「ベイマックス」の予告編からは、本作がアクション映画とは想像できない。
「マシュマロなロボットが出てくる癒し系映画」という連想に留まる。

日本において、アクション映画というジャンルが女子ウケされないのは
先に公開してコケてしまった「ガーディアン~」で証明されたばかりだ。
いわば「女子に嫌われない」マーケティングに徹したものだと思った。
映画のタイトルだけでなく、予告編をみてもアメリカとはかなり違っていて、
アメリカの予告編からは「戦隊アクション映画」が連想しやすい。

まーどちらにせよ、面白ければそれで良い。

日本でも10月に開催された東京国際映画祭で先行公開されており、
東京国際映画祭で最も席が取れな かった映画らしい。

ネットでも様々なレビューが出回っており、すごい絶賛ぶりだ。
日本公開は来月の20日。甥っ子と観に行く予定。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

代々木の羊料理

2014-11-14 09:00:00 | グルメ




コスパの高い店が好きだ。

代々木駅から徒歩5分程度にある「Bistro ひつじや」という羊料理の店。
新宿方面への外出アポがある際、たまに行くようになった。

一番高いランチでも650円という安さ。
注文する度に「この金額設定で大丈夫か」と思うほどのコスパだ。

頼むのは、スペアリブのセットか、シシカバブのセット。

丸っこい美味しいパンが最初に出てきて、
そのあとに別途ご飯を盛られた、お肉プレートが出てくる。

メインのスペアリブ、シシカバブともに
羊肉特有の臭みは全くなくて、驚くほど食べやすくて美味しい。
それぞれ2本出てくるが、スペアリブは自分からすると、
ボリューム不足なので、 最近は専らシシカバブを頼むようにしてる。

しかし、このセットの一番の魅力はお肉の右側についてくる、
チュニジア風揚げ餃子である。これがとても美味しい。

薄くパリッとした皮の中に、羊のひき肉と半熟玉子が入っている。
トマトソース、皮、ひき肉、半熟玉子のハーモニーが素晴らしく、ご飯が進む。
料金上げてもらってもよいので、この餃子をもう一つ付けてほしい。

食べログでも評判の店だ。
14時を過ぎてお店に行っても、結構お客さんが入っている。

おそらく夜の料理も間違いなく美味しいのだろう。
会社の近くにないことが残念だ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

かしこい狗は、吠えずに笑う 【感想っ!】

2014-11-11 12:00:00 | 映画


2014年の日本映画界における最大の事件は「るろうに剣心2部作」による、
「日本のアクション映画の新たな夜明け~」と勝手に考えていた。

が、違った。

先週より「TSUTAYA限定レンタル」としてリリースされた、
「かしこい狗は、吠えずに笑う」がそれに代わる事件だった。
厳密にいうと2013年に公開された映画だが、限定公開だったこともあり、
DVDレンタルで広く観られる状況になった今年の事件と捉えたい。

観終わって本作が自主製作映画と聞いて驚愕した。
そして、監督デビュー作ということに驚愕した。

物語は女子高を舞台に2人の女子高生を描いた話だ。
ブサイクで(可愛いけどな)周りから蔑まれる「ミサ」と、
美人であるために 周りから妬まれる「イズミ」の友情物語。

「ブルドッグ」と「チワワ」に例えられた2人。
友達がいないモノ同志、2人は親友になる。
校内で陰湿ないじめに遭い、闇に彷徨う2人の世界が輝き出す。
青春ガールズムービーの様相を呈してきたと思いきや、
次第に2人の友情の歯車が狂い出す。
気配と感じていた歪みが膨張し、暴走を始める。
そして、欲望が狂気に変わる瞬間に引きずりこまれる。。。

「犬は鎖に。鳥は籠に。金魚は水槽に。」と、劇中冒頭のナレーション。
それはペットを慈しむ、あるいは守りたいという人間の愛情なのか。
それとも、それは人間による一方的なエゴによるものなのか。。。

本作は、愛情とエゴの狭間で起きる、1つの友情の形を描いている。
観終わ って「恐怖」よりも「切なさ」を感じてしまった。
単なるスリラーではない、やはりこの映画は青春映画なのだ。

めちゃくちゃ面白い。魅了され溜息が止まらない90分だった。
学生のときに初めて岩井俊二の映画を観た時の衝撃に似てる。

やや観念的で説明が不十分な描写も少なくないが、
日本映画というジャンルでこれほどの映画に出会えた喜びには勝らない。

脚本、演出、編集、カメラワーク、音楽、音響の使い方。。。
その全てが日本映画の凡作にはないレベル感であり、
少なくとも予算150万で製作した映画とはにわかに信じ難い。
日本映画に散見される空回りや、停滞感を感じさせる淀みがないのだ。
優れた作家性とともに強い娯楽性があるのも素晴らしい。
日本映画界に「渡部亮平」という待望の新星が現れた!

そしてもう1つ、観る者を惹きつけてやまないのは、
主人公の2人を演じたmimpi*β(歌手)と 岡村いずみのパフォーマンスだ。
非常に非常に素晴らしい!今後の彼女たちの飛躍を心から応援したい。

【80点】

PS/
本作、自主製作映画ということもあり、DVD化まで時間がかかった模様。
おそらくCCC(TSUTAYA)が本作の魅力に注目し、名乗りを上げたのだろう。
「TSUTAYA限定レンタル」、久々のファインプレーだ!!
特典映像を交え、セル化を激しく希望。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

マダム・イン・ニューヨーク 【感想】

2014-11-11 09:00:00 | 映画


新作DVDの感想を短く残しておく。みんなアタリ映画。

マダム・イン・ニューヨーク 【70点】
「女性のための映画」とは勿体ない。もれなく元気にさせてくれる力強い痛快作。主人公がNYで挑む語学力の修得は物語のフックに過ぎない。淡いロマンスも交え、1人の女性が自信と誇りを取り戻す過程をドラマチックに描く。未知の世界に飛び込み、壁にぶち当たり、それを越えた先に新しい自分に出会う。性別を問わず普遍的なメッセージとして刺さった。心憎い演出を施した、鮮やかなラストに感涙。軽快で洗練された脚本は、これまでのボリウッド映画とは一線を画す。NYの描写も素晴らしい。主人公を演じた女優さんは50代とは思えぬ美貌。インドのお菓子「ラドゥー」、いつか食べてみたい。


WOOD JOB!(ウッジョブ)~神去なあなあ日常~ 【65点】
予想以上に面白かった。林業とは、先祖と子孫の繋がりの上に成立する仕事であり、山の神と共にする仕事。美しい日本の森の風景と、山人たちの風土文化をちゃんと抑え、その仕事のディテールを丁寧に描いてくれた。主人公の成長物語よりも林業の特異性に純粋に惹かれた。「ええ仕事をしたか結果が出るのは、わいらが死んだ後なんや」にグッときた。伊藤英明の役作りが素晴らしく、現実感を失わない範囲でアツい男を巧く好演している。ラストの主人公が行きついた「香り」に感動。ちゃんと繋がってるのね、と。


ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う! 【65点】
中年男子による中年男子のためのSF劇。エドガーライトならではの早いカット割りがそのまま作品の勢いに。最後の最後までハチャメチャでハイテンション。アクションの派手さが目立つが、中身は結構、硬派な作りで実は社会派ドラマ。想定外に笑えなかったが、それなりに楽しむ。イギリスのパブ文化に憧れる。ビールが美味しい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする