から揚げが好きだ。

映画とサウナ。

スキャンダル 【感想】

2020-02-29 11:20:18 | 映画


ついこの間に起こった「Me Too」運動を発端となった話。そのネタの鮮度に驚かされる。忖度なく映画作りができるハリウッドの強さ。「いつの時代だよ」ってツッコミたくなる時代錯誤なエロおやじに、大企業の組織が振り回されていたことが明らかになる。”通例”としてまかり通ってきたセクハラ、あるいは、パワハラにようやく終止符が打たれるが、その恩恵を受けていた女性たちが、保身ゆえにエロおやじを擁護していた動きもあって「キャリア」に対する意識が日本とアメリカでは段違いに違う。架空のキャラとして配置される新人キャスターが社長にセクハラを受ける場面が印象的だ。その痛みから性差別の実態が浮き彫りになる。3人の名女優の共演は見もので、彼女たちが1つのフレームのなかに揃うのが、エレベーターの瞬間的シーンのみというのが面白い。半面、それぞれが別の動きを見せるから、期待した化学反応もなく迫力不足。その後のムーブメントに繋がる、彼女たちが果たした役割の大きさもわかりにくい。史実を関係者ごとにまとめた再現ドラマの域を出ず、事実を知った以上の読後感は得られなかった。
【60点】

マルシンスパに行ってきた件。

2020-02-26 00:55:24 | サウナ


転職して2か月が過ぎようとしている。職場が大崎から初台に代わり、通勤経路が変わったことから、朝の通勤がハードになり、腰を痛めるようになった。そんな転職先の会社の良い(?)ところは休日出勤が多いことである。休日出勤をすると、平日に振替休日をもらえる。その初めての振替休日となった先週の金曜日、前から行きたかったサウナに行ってきた。

マルシン。。。。マルシン♪、マルシン♪、ハンバーグ♪♪ と、「マルシン」と聞けば、往年のCMソングを想起するが、関東に住むサウナ―にとっての「マルシン」は「マルシンスパ」である(たぶん)。
職場である初台から、2駅先にある笹塚に立地し、ドラマ「サ道」でも荒川良々が出ていた回で、取り上げられていた。とても人気のあるサウナと聞いていたので、会社帰りに立ち寄るための下見として、比較的空いているであろう平日の朝に行った。やや朝寝坊したため、9時到着の予定が10時到着となってしまった。午後イチ、映画の席を予約していたため、2時間半くらいしかいられない。3時間のコースで2040円、ちょっと高めかな。
雑居ビルの10階と11階の2フロア、受付が10階にあって、サウナ(浴場)は11階にある。聞いていたとおり、浴場は狭い。シャワースペースの背面に水風呂があるため、水風呂に入る際に気を付けないと、飛び散る水が、シャワーをしている人の背中にかかってしまう。
シャワーの水圧は弱い。4つくらいあった、シャワーをそれぞれ試したが、どれも似たようなもの。体を洗おうにも気持ちよく洗えない。場所が場所だけに仕方ないか。
サウナスペースも狭い。座れるスペースは8人までで、地べたに座れば、10人までは何とか入れそう。そんな狭いスペースなのだが、ドデカいサウナストーブが中央に鎮座している。これが、多くのサウナ―を引き寄せる秘密だ。サウナが熱いのだ。通常時でも100℃超え。しかも、セルフロウリュウができる。昨今のサウナブームで、自分のように初めて利用する人も多いようで、セルフロウリュウを遠慮している雰囲気があった。3セット目でようやく、自分から「ロウリュウ、いいですか?」と切り出すと「待ってました」と歓迎ムード。杓子で2杯かけるだけで十分、調子にのって3杯目をかけたら、蒸気熱で軽く手を火傷した。その後、隣に座っていたお兄さんが小声で「ナイスです」と言ってくれて可笑しかった。

サウナ後、お楽しみの水風呂は17℃で、しっかり冷たい。程よく長く入っていられる適温だ。定員2人くらいの(狭っ)湯船に対して、定員6人くらいの大きめの水風呂である。深さも確保されている。気持ちいいが、やや濁り気味なのが気になる。おそらく前日がイベントだったので、利用者が多かったのだろうと察する。平日の午前中、わざわざサウナに入りに来る人たちだ。みんな良識あるサウナーであり、みんなマナーが良い。サウナ帽子の出現率も高い。中には水風呂で潜水している人もいたが、その前にしっかり全身の汗を流していたので、目をつむる。3セット目以降は、かなりの頻度でロウリュウする。おそらく発汗量だけでいえば、自身のサウナ史上、最多かもしれない。それほど汗をかいた。サウナ後も水分補給も、ホシザキの給水機でしっかり冷やされた水を飲みことができる。

そして整いの場である、外気浴スペースが素晴らしい。一旦、更衣室を経由しなければならないが、京王線の線路を眼下に、新宿の街を一望できる。その解放感と、高所による風が吹き抜け、何とも心地よい。「天空のアジト」のネーミングはカッコよすぎだが、このサウナのファンになる人の気持ちがよくわかった。

2時間半で浴場を出る。浴場が小さい割に、休憩スペースが広い。飲食スペースにて名物だという「オロポ」を注文する。オロナミンCとポカリスエットを混ぜたもので、想像通りの味だが、これがサウナ上がりの全身に効く。大ジョッキで出されるが、8割の容積を氷が占めているため、一気に飲み干せる。これに味を占め、さっそく自宅でも「オロポ」を作るようになった。



結論、素晴らしいサウナだが、施設のキャパに対して、利用者が多すぎるようだ。最も空いている午前中ですら、サウナ室に入れないタイミングがあった。清掃も追っついていないようで、鏡の水垢や、水風呂や湯舟の汚れが少し気になった。リピートは大いにありだが、会社帰りの夜なんて、混雑でまともにサウナに入れそうにないのでやめることにする。

サウナ  :★★★★★
水風呂  :★★★★☆
お風呂  :★★☆☆☆
シャワー :★★☆☆☆
外気浴  :★★★★★+★
アメニティ:★★★★☆
アクセス :★★★★★
館内着  :★★★★☆
給水   :★★★★★



ミッドサマー 【感想】

2020-02-23 17:32:04 | 映画


確信するのは、アリ・アスターが比類なきホラーセンスを有していることと、自分はそれが大好物ということ。前作で現代ホラーの金字塔を打ち立てた監督の2作目である。観客の心臓に、ジワジワと恐怖を染み込ませる手法は変わらないが、「闇」を効果的に操った前作から一転、「闇」を排除した「白夜」で勝負する。ポスターにも採用されている、美しい衣装を身にまといながらも悲痛で顔が歪むヒロインの表情が象徴的。
主人公が抱える心の傷、かみ合わないカップルの感情、異文化交流で発生する価値観の溝。クスリによるトランス状態も手伝って、主人公らが体験する出来事は睡眠中の脳内で起きた悪夢とも受け取れる。冒頭から積み重なる「ズレ」が肥大化し、怒涛のクライマックスへとなだれ込むストーリーは流石。どこまでも美しく描きこんだ世界に見惚れていたら、突如、目を背けたくなるゴア描写を容赦なく観客の前に差し出す。前作でも感じた監督のサディズムか、それともホラー映画に対する明確な意思表示か。
今回は、実在の北欧のイベントを創作した設定である。「生まれ変わる」という、一見まともな死生観もあんな感じで作られては、現地の人はどう感じるのだろう。変態的な笑いドコロを随所に内包させたあたりは、「あくまで創作ですから」的な監督の気遣いのようにも思えた。あと、注目するのは主演のフローレンス・ピュー。お世辞にもスタイルは良いとは言えないが、その演技力は本物。「ファイティング・ファミリー」、見ておくべきだったと後悔。メンヘラ全開、恐怖と怒りと悲しみで狂い泣く姿が素晴らしい。
会社の振替休で初日の昼の回に見ることができたが、地元のシネコンでも満席であった。まさかと思い、他の映画を見に行った別日に、上映前の本作のスクリーンを覗いたら、前席までパンパンだった。何が要因なのか不思議だった。
【70点】

1917 命をかけた伝令 【感想】

2020-02-16 18:17:33 | 映画


動物の本能は生きることへの執着だ。そのうえで、人間が他の動物と異なるのは、感情によって突き動かされるエンジンをもっていること。生きることの本能と、友情により託された使命を全うする理性がせめぎ合う。
舞台となる第一次世界大戦は、戦争の実態がまだ朧気で、参加したイギリスの若い兵隊たちの多くは志願兵だったという。きっと「こんなはずじゃ」の現実を突きつけられたはずだ。
観客は有無も言わさず、2人のミッションに同行する。乗り気の男子と、乗り気じゃない男子。伝令を届けるために、ただひたすらに前進する。後戻りはない。その道中はまるでアーケードゲームのようで、ステージごとに様々な関門、イベントが待ち受ける。但し、そこは命を奪い合う戦場。生と死の境界は、ほんのさじ加減で変わる。
途切れることのないワンショット(風)撮影は、彼らが圧せられる緊迫の空気を逃さない。多くのシーンは時間の経過すらもリアルタイムに合わせてくる。圧倒的な没入感。。。と言いたいところだが、あまりにもカメラワークが技巧過ぎて、撮影風景の不思議が頭をよぎってしまう。起伏ある地形を収める画面構成や、実写によるアクションもすべては綿密な計算によるもの。。。と、これまた余計な詮索がストーリーを邪魔する。
戦争のリアルを描いた映画としては、「プライベートライアン」や「野火」のような臭気が感じられない。なので、戦争ジャンルというよりも、人間のピュアな生存本能を描いたドラマとしてみた。安い例えだが「火事場の糞力」。飲まず食わずで動き回り、敵の襲撃に備えて神経をとがらせる。休む間もない。演じるジョージ・マッケイの抜け殻な表情から、疲労の度合が痛いほどに伝わる。肉体はとっくに電池切れのはずだが、いざ、生命の危機に瀕するとなりふり構わず、体を躍動させる。激流の川を下り、ほんの一瞬、水の浮力に身を任せた瞬間、睡魔が襲う。しかし、溺れかけて目を覚ます。生きるか死ぬかの瀬戸際が何の前触れもなく襲い掛かる。
屋外ローケーションにも、舞台ばりの照明演出がなされる。夜の塹壕シーンが目に焼き付く。光と闇のコントラストは、襲い掛かる死の恐怖と、生きることへの固執とシンクロして実に鮮烈だ。
主人公の2人は、個性も背景も削がれた状態で物語を出発するが、すっかり最後には主人公らに感情移入する。やはり巧いなーと感心するジョージ・マッケイの熱演。脇役に徹した豪華英国俳優陣もカッコよい。予告編の情報量が玉にキズ。シンプルなストーリーで、映像的見どころを予告編で出しきってしまうのはいかがなものだろう。
【70点】

第92回(2020年)アカデミー賞が発表された件。

2020-02-11 18:21:12 | 映画
第92回(2020年)アカデミー賞の授賞式が終わった。アカデミーの歴史がついに動く。

仕事を早く切り上げる予定が、タイミングが悪く、帰宅が夜の10時を過ぎた。急いで風呂に入り、10時半から録画した授賞式を見る。仕事中、帰宅中もあらゆる情報接触をシャットアウトし、結果がわからない状態で視聴。WOWOWのレッドカーペット中継から見たので見終わったのは3時だった。翌日、休みで助かった。
今年のリポーターはいつもの尾崎さんが引退し、代わりに中島健人が担当。カメラ目線になった時の、顔をキメたがる癖がやや気になるが、映画少年な好奇心を全面に出したインタビューが好印象。共演の河北麻友子も流暢な英語力を武器に、的確な質問をしていて関心してしまった。2人ともお疲れさまでした。来年もこの2人のタッグかも。

さて、今年の授賞式も司会者不在。昨年は物足りない感じがしたけれど、プレゼンターの人たちは芸達者ばかりなので、この形も悪くないと思えてきた。時間が短縮されたせいか、受賞コメントに充てられる時間も長くなったような気もする(気のせい!?)。

受賞結果は、個人的に非常に非常に納得感のあるものだった。1つの作品に偏ることなく、各部門ごとに正当な評価がなされているという印象。会員票を海外に大きく撒いた効果だろうか。

結果は下記のとおり。[△]は予想ハズレ。

【作品賞】 パラサイト 半地下の家族 [△]
【監督賞】 ポン・ジュノ(パラサイト 半地下の家族)
【主演男優賞】 ホアキン・フェニックス(ジョーカー)
【主演女優賞】 レニー・ゼルウィガー(ジュディ 虹の彼方に)
【助演男優賞】 ブラッド・ピット(ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド)
【助演女優賞】 ローラ・ダーン(マリッジ・ストーリー)

まず、主要部門。作品賞史上初となる海外作品が選出、「パラサイト」が栄冠に輝く。まだ「1917」を見ていないので、この結果が良かったのか判断はできないけれど、アカデミー賞を愛する人間としては、多くの海外作品にチャンスを広げたという点で歓迎すべき事態といえる。授賞式の序盤で発表された脚本賞、ノミニーとして、「パラサイト」の名前が紹介されただけで、会場が沸いた。この反応の大きさ、SAGで「パラサイト」がキャスト賞を受賞したときと同じだった。「ハリウッドの映画人たちは、本当にパラサイトの虜になっているなー」と実感し、その後の結果を予感させた。受賞の要因を考えると、まずは普通に作品の力。アカデミー賞が好む、芸術性と社会性(時代性)がありながら、高い娯楽性を持っていたこと。誰が見ても「面白い」と感じる映画であり、「いい映画と思うけど、自分はつまらなかった」ではなく、「いい映画だし、面白かった」と評される稀有な作品だったと思う。もう1つの要因は、「アカデミー賞も変わるべき」という内なる変革意識が投票に反映されたと考えられる。作品の力が多様性受容の波に乗ったという見方だ。だけど、それでもまだまだネトフリ作品には厳しいな(笑)。

演技部門については、サプライズなし。前哨戦で、各受賞者が良いコメントを出し尽くしてしまったため、正直、どれもこれもあまりパッとしなかった。ホアキンは、ここぞとばかりに作品に関係ないところで延々と社会的メッセージを吐くし、レニー・ゼルウィガーも散漫な言葉をシナリオ通りに並べているだけで味気ない。一方、監督賞に選ばれたポン・ジュノ、普通に戸惑っている様子で、前の国際映画賞でコメントを出し切っちゃっている感じが可笑しかった。引き出しとして残っていたであろう、スコセッシへの敬意、タランティーノへの感謝を述べたスピーチに感動してしまった。

他の部門の結果は、下記のとおり。

【脚本賞】 パラサイト 半地下の家族
【脚色賞】 ジョジョ・ラビット
【編集賞】 フォードvsフェラーリ [△]
【撮影賞】 1917 命をかけた伝令
【美術賞】 ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド
【衣装デザイン賞】 ストーリー・オブ・マイライフ [△]
【メイキャップ&ヘアスタイリング賞】 スキャンダル
【視覚効果賞】 1917 命をかけた伝令
【録音賞】 1917 命をかけた伝令
【音響効果賞】 フォードvsフェラーリ [△]
【作曲賞】 ジョーカー
【主題歌賞】 「(I'm Gonna) Love Me Again」(ロケットマン)
【長編アニメーション賞】 トイ・ストーリー4 [△]
【国際映画賞】 パラサイト 半地下の家族
【長編ドキュメンタリー賞】 アメリカン・ファクトリー

綺麗にバラけてくれた。とてもイイ。予想を外したけど、「編集賞」と「音響効果賞」に、「フォードvsフェラーリ」がしっかり選ばれたことが飛び跳ねるくらいに嬉しかった。あと、作曲賞の「ジョーカー」、作曲家の人、あんな愛らしい女性だったのね。名だたる巨匠たちの中から選ばれ、「恐縮です」といわんばかりに謙遜しながらも、自然体のスピーチがとても素敵だった。彼女を抜擢したトッド・フィリップスにも拍手。最多候補入りした「ジョーカー」は、予想通り、2部門の受賞に留まる。好き嫌いが分かれる作品内容のなか、堂々の結果といえる。なお、「ジョーカー」は、日本の名だたる映画賞をほぼ総ナメ。キネ旬の評論家選出、読者選出でも1位。映画秘宝は惜しくも2位で、「マッドマックス(2015)」以来の、キネ旬と映画秘宝の1位が重なる奇跡は実現しなかった。

ほか、WOWOWの放送内容も含め、感じたことを以下にまとめる。

◆グレタ・ガーウィグは泣き虫(笑)。伴侶のノア・バームバックにもらい泣き。他でもしょっちゅう泣き顔を見せる。可愛い。
◆ノア・バームバック、ポン・ジュノに抱擁する姿に、人の好さが滲む。
◆エミネム、懐かしい!、ノリノリの会場の人たち、同世代のようで親近感。エミネムも腹出たなぁ。
◆ウトカルシュのラップ、それまでの受賞結果を盛り込ん巧い!
◆文字通り、視覚効果の重要さを知る、「キャッツ」の二人の自虐ネタに爆笑。
◆ベストスピーチは、監督賞でのポン・ジュノ。学生時の「師」であったスコセッシへの想いに、映画愛が溢れていた。スコセッシの反応もチャーミングで良かった。互いの映画を讃える姿に、みんな映画人である前に、映画ファンであることを実感。
◆解説者の町山さん、今年も素晴らしいフォローを連発。なかなか触れることのない短編映画の内容を紹介してくれたり、時間が押す中、「ザ・ピーナッツバター・ファルコン」のダウン症の子を一生懸命、紹介していた。
◆キネ旬の監督賞に選ばれたばかりの白石監督、「マリッジ・ストーリー」推しが嬉しい。コメントも秀逸で、是枝監督の時と同様、優れた監督は優れた表現者なのだと思える。
◆町山さんと白石監督の「パラサイト」に対するコメント。国策として映画に取り組んできた韓国と、映画芸術を後回しにする日本との違いが痛すぎる。「韓国映画の受賞は必然の結果」。

授賞式の終わりは、次のアカデミー賞に向けた新たな始まりでもある。豊作だった昨年同様、今年も映画ファンをたくさん楽しませてほしい。

第92回(2020年)アカデミー賞の最終予想

2020-02-09 09:50:10 | 映画
第92回アカデミー賞受賞式まで、約24時間後になった。
今年は会社を休めないため、13年ぶりに、ライブで授賞式を見ることができない(泣)。当日は丸一日、スマホを触ることやめて情報を完全にシャットアウトする。帰りの電車のニュースも目に入らないようにしなければ。。。。
とはいえ、今年の主要部門の受賞予想は作品賞と監督賞を除いて、鉄板の状態。他部門も含めて最終の予想をしてみる。

【作品賞】
1917 命をかけた伝令

【監督賞】
ポン・ジュノ(パサライト 半地下の家族)

【主演男優賞】
ホアキン・フェニックス(ジョーカー)

【主演女優賞】
レニー・ゼルウィガー(Judy)

【助演男優賞】
ブラッド・ピット(ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド)

【助演女優賞】
ローラ・ダーン(マリッジ・ストーリー)

演技部門は、もはやこの4人以外はないだろう。前哨戦の結果がそれだけ偏っている。主演男優賞、個人的にはホアキンよりも、アダム・ドライヴァー推しなのだけれど。問題は作品賞と監督賞。下馬評だと、どちらも「1917」が確実だけど、「パラサイト」がSAGを獲ったのが、引っかかるのだ。昨年のSAGは、「ブラックパンサー」だったり、受賞傾向とあまり親和性はないのだけど、外国語映画にも関わらず受賞したことに、思っている以上に俳優たちは「パラサイト」を評価していると考えるのだ。サプライズがあるとすれば、「パラサイト」が作品賞と監督賞のどちらかを受賞すること。

【脚本賞】
パサライト 半地下の家族

【脚色賞】
ジョジョ・ラビット

【編集賞】
パサライト 半地下の家族

【撮影賞】
1917 命をかけた伝令

【美術賞】
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド

【衣装デザイン賞】
ジョーカー

【メイキャップ&ヘアスタイリング賞】
スキャンダル

【視覚効果賞】
1917 命をかけた伝令

【録音賞】
1917 命をかけた伝令

【音響効果賞】
1917 命をかけた伝令

【作曲賞】
ジョーカー

【主題歌賞】
「(I'm Gonna) Love Me Again」(ロケットマン)

【長編アニメーション賞】
クロース

【国際映画賞】(←外国語映画賞から訂正)
パサライト 半地下の家族

【長編ドキュメンタリー賞】
アメリカン・ファクトリー

主要部門ほかは、技術部門を中心に「1917」が複数受賞するとみる。「1917」、早く見たいわ。あとは、外国語映画賞は勿論のこと、「パラサイト」が脚本、編集も受賞すると思われる。それだけで凄い快挙だ。









アンカット・ダイヤモンド 【感想】

2020-02-09 02:03:00 | 映画


不完全な人間の不完全な人生を完璧に捉えた傑作。黄金の1月を締めくくる本作は、早くも2020年のベスト候補に躍り出た。ありがとう、ネトフリ。
序盤からとにかくガチャガチャしている。宝石商の主人公は病的なギャンブル癖があって、周りに多くの借りを作っている。主人公を中心に「要あり」の人間たちが次々と絡んでいき、途切れなく会話が交錯していく。その中を忙しなく、すり抜けていく主人公をカメラは密着していく。サフディ兄弟のアプローチはおそらく、描きたいストーリーのためにセリフを配置するのではない。物事は理路整然には進まず、ときに混沌として、前触れもなく予想だにしない方向に向かっていく。生かされるのではなく、生きた人間を描くことが監督の作家性だろう。なので必然的に長回しが多用される。空気の温度も下がらない。(ここがサフディ映画の好き嫌いが分かれそうなポイントだけど)
主人公は一発逆転をかけて「宝石の原石」を密輸する(ダイヤじゃないねw)。その石の扱いを見誤った主人公の失敗談か、それとも、その石が持つ魔性によってもたらされた悲喜劇か。ダメ男を描く系譜は前作「グッド・タイム」から続くものだが、本作はより練られた物語のプロットになっている。主人公は然るべき計画を練っていたものの、思わぬ邪魔が入って、事態は難航、主人公だけでなく、石に接触した周りの運命までも狂わされていく。なかでも、本人役として登場する元NBAスター、ケビン・ガーネットの存在が効いている。彼が現役バリバリで活躍していた当時、その裏には本作の石の存在があったという設定(フィクション)で、主人公の運命と背中合わせの関係になる。「やらなきゃいいのに」とツッコミたくなる主人公の選択は、登っては落ちて、落ちては登ってを繰り返す。目まぐるしく蛇行する生き様に引き込まれる。
主人公はほとほと冴えない男だ。妻とは離婚、子供たちとは離れて暮らし、そのきっかけとなった若い愛人とマンション暮らしだが、その愛人の浮気現場を目の前にして怒り心頭。妻の元へ、カッコいい顔をして「俺がバカだった」とヨりを戻そうにも、「触るのもキショい」と一蹴される。マが悪く、順調に行こうとすれば、棒に引っかかって転んでボコられる。それにしても本作で登場する女性キャラの描き方、前作に続き、フェミニストたちの反感を買いそうでちょっと心配になる。
優れた監督は優れた演出家でなければならない。前作でアイドル俳優だったロバート・パティンソンを演技派へと脱皮させたが、本作ではラジー賞常連のアダム・サンドラーの主役に据えて、まさかの化学反応を披露する。宝石商特有の胡散臭さと、欲望に忠実で、打たれ脆い人間臭さ。そして、クライマックスの大勝負、さらなる絶頂へ向かわんとする狂気を孕んだ怪物性を爆発させる。間違いなく、本作が俳優サンドラーのキャリアベストであり、彼にとっても本作が大きなターニングポイントになったと察する。
結末が本作を傑作へと至らしめた。人間の人生には、忖度はないということ。
【85点】



ナイブズ・アウト 【感想】

2020-02-08 00:58:46 | 映画
ミステリー作家は家族を愛していたに違いない。命をかけたゲームを仕掛け、家族の未来を託したのは”真実の口”を持った一人の女子。コメディに振った味付けとドンデン返しな展開にも、確かなドラマを感じて余韻を引きずるのはそのせいだ。しかも同時に痛快な結末でもある。善良な魂は、人種、境遇に関係なくゲームの勝者であるべきなのだ。
謎解きが肝であるミステリーにおいて、あえて真実を吐き散らかすキャラクターを中心に据えた面白設計。オリジナルでこんな面白い本を書いてしまう、ライアン・ジョンソン、やっぱスゲーわ。出し惜しみなく伏線が回収されていく気持ちよさ。多重のトリックが仕掛けられるも脱線することなく、1つの真相に突き進んでいく。ひたすら巧い。古典ミステリーの外見ながら、中身はユニークで現代的な映画だ。箱モノ映画でありがちな編集で切りまくって見せかけのセンスでアピールする必要はなし。本作は脚本の力、そして、演者たちのパフォーマンスで観るものを食いつかせる。ヨダレが止まらないキャスティングは、個性をぶつけ、せめぎ合うゲームのプレイヤーとして映画を大いに盛り上げる。実は主人公だった、アナ・デ・アルマスのコメディとシリアスの両面を器用に操る表現力に驚かされた。その存在感は際立ち、哀楽の泣き顔に萌えた。
【75点】

キャッツ 【感想】

2020-02-03 22:38:00 | 映画
それは肝だめしだった。アメリカでの公開時、酷評を超えた悲鳴を聞いて、劇場で見ることに決めた。年間ベスト級のタイトルが乱立する黄金の1月に水を差すかのように降臨した本作。リアルな”人面猫”のキャラ造形は想定通りのホラーであり、序盤、クネクネした体の動きもCGで施すものだから、さらに気持ち悪くなる。中盤以降、目が慣れ、ミュージカルシーンを中心に、演者の実際の体技が採用されるようになって違和感が薄れる。ミュージカル版の「キャッツ」は未見。有名なナンバーが2つくらい耳に残っているくらい。見た目の課題をクリアしたものの、物語を楽しむ映画としてはシンプルにつまらない。まるで綿アメのようで、ぎゅっと握りしめると5分くらいで語れる内容だ。猫たちの戯れを、音楽とダンスで楽しむ、っていうコンセプトのようだ。なので「長老が来たぞ~」っていうクダリだけで、5分近いミュージカルにする。。。展開を変えるイベントも随所にあるのだけど、長い歌唱パフォーマンスが逆に足を引っ張って集中力を切らす。これほど上映時間を長く感じた映画も久しぶりだ。
たぶん、素材として映画化に向いていないのだろう。あるいは、映像作品としてアレンジすることが不向きなのかもしれない。同じ空間を共有しながら、生身の肉体から奏でられる舞台劇でこそ輝く物語か。新しく転職した職場でも軽く話題になった。賛否は真っ二つ。ミュージカルの「キャッツ」を見ている人には響いている模様。自分はもう見ることはないだろう。
【50点】


湯らっくすに行ってきた件。

2020-02-02 14:56:34 | サウナ


北中米旅行から帰国してから2週間後、「水まわり」で感じたストレスを発散するために、去年の年末、熊本に2泊3日で旅行してきた。
テーマは、”名水と温泉とサウナ”を楽しむ旅。
熊本は阿蘇エリアを中心に、そこら中に湧水エリアが点在しており、レンタカーで回りまくった。美しい水を愛で、味わう。聞きしに勝る湧水量と水の透明度に感動しきりだった。そして夜は、貸し切り風呂で「10回まで」温泉を入れ替えることができる「守護陣温泉」でひたすら温泉を堪能した。それは、人生で最も贅沢な温泉体験だった。

で、2泊目の夜は、サウナの西の横綱ともいうべき「湯らっくす」に泊まってきた。もう1か月以上前だが、体験した記録を残しておく。

阿蘇から菊池を経由し、熊本市街に入る。夜の7時ごろに湯らっくすに到着。施設の手前から第一、第二と駐車場が分かれているが、第一駐車場は満車で、第二駐車場に車を止める。胸の高鳴りを抑えながら入館、お洒落なカウンターで「泊まりコースでお願いします」と受付を済ます。料金は2500円、宿泊料金としても、サウナを朝まで堪能できるコースとしてもめちゃくちゃリーズナブル。ロッカーが置いてある2階のフロアに上がる。ドラマ「サ道」で見たとおり、広くて、スタイリッシュ、そして清潔な空間が広がる。浴場に入る前にトイレに入る。小便器には、おそらく臭い消しのためか、大量の氷が溜めてある。しかも、その氷を供給するためだけにトイレ内にホシザキの冷蔵庫が設置してある。早々に「この施設は凄いぞ」と確信する。
そしていざ、浴場へ。ドアを開けると、凄い蒸気で先が見えない。期待に胸が膨らむ。まずは洗体。シャンプー、ボディーソープは勿論のこと、洗顔フォームが別に設置してある。シャワーの水圧もいうことなし。シャンプーやボディーソープの泡立ちの良さから、品質の良い商品を置いていることがわかる。気持ちよく全身を清めたのち、温泉に入る。



サウナ日本一の実力。
夜の7時過ぎ。浴場内はまあまあの混み具合だが、浴槽内で人と人が密着するほどではなく、ゆっくりお湯に浸かれる。広い内風呂の奥には、ビーチチェアが沈められていて、リラックスした体勢で寝湯を楽しむことができる。寝湯で白い蒸気に包まれながら、天井を見上げる。あぁ至福。その後、露天の岩風呂にも入り、いざ、サウナへ。「しきじ」同様、サウナマットが使えて清潔。3つある、サウナのうち、最も大きいドライサウナに入る。おそらく20人以上は裕に入れる広さ。室内にはサウナ帽を被っている人がいたり、やはりサウナ好きが全国から集まっている模様。サウナの温度はそれほど熱くないが、ここのスゴいところは、夜中の1時まで1時間毎にロウリュが開催されていること。しかもロウリュ中は、他の人がサウナに入室することができない。このルール、素晴らしい。ロウリュ使いのお兄さんもトレーニングされているようで、上質の熱波を受けられる。時間によって担当者も変わるので、熱波に個性が出るのも面白い。

マッドマックス
いっぱい汗をかいたら、お楽しみの水風呂に突入する。入水前、立ったまま、掛水をする形になるので、汗をしっかり洗い流すことができる。日本一深い水風呂は、最深部で170センチ。常に天然水が掛け流されているので、底まで青く澄んでいる。清潔に利用するサウナ―を信じているようで、普通はご法度の潜水もここではOKなのだ。水温はたぶん17度前後。いつも利用しているサウナは19度なので、結構冷たく感じる。「しきじ」よりも冷たく、「しきじ」が水に包まれている感覚に対して、「湯らっくす」は水が絡みついてくる感じ。どっちも気持ち良し。
「湯らっくす」の名を世に轟かす、「マッドマックス」ボタンを押す。結構、強めに押さないと反応しないようだ。大量の掛水が頭上に落ちてくる。それ自体は楽しいのだが、その水温が明らかにぬるい。健康上のリスクを考慮しているのかもしれないが、自分は浴槽内と同じくらい冷たい水のほうが良かった。それを知ってか、意外とマッドマックスをしている人がいない。ボタンを押しているのは自分のように初心者のミーハーなのだろう。直立潜水できるだけで、この水風呂は尊いのだ。最高。

日本一おいしい水
ドライサウナと水風呂を何回か往復したのち、セルフロウリュができる「メディテーションサウナ」に入る。薄く暗く狭い空間。8人入ったら満室になる。なので、混み具合によっては入れない場面もある。セルフロウリュは初めての体験だったが、「ジュワ~」という蒸気音が気持ちよい。そして蒸気熱によって、一気に体が蒸され、あっという間に汗ダクになる。気持ちいい。6分ほどで水風呂に入る。このサイクル、病みつきになる。サウナと露天風呂の間に外気浴スペースがあり、あっという間に整う。当然、のどはカラカラになり、水分を欲したくなる。浴室入口に給水場があるが、ここでもホシザキ製の給水機が設置してある。隣に置かれている紙コップに、勢いよく水が注がれる。高品質な給水機はやっぱり違う。キンキンに水が冷やされている。熊本市の水道水は、地下水のミネラルウォーターなので普通に美味しい。「しきじ」の天然水も美味しかったのだけど、この冷たさは乾いた体内の五臓六腑に染み渡る。極上のサウナ体験もあって、今現時点では、日本で最も美味なる水を飲むことができる場所と思えた。



徹底したおもてなし
翌朝のサウナを楽しむため、9時ごろに浴室を出る。ロッカー内にある、ドライヤーはまさかのダイソンw。初めて使ったが、凄い風量だ。あらゆる必要なものが、清潔な状態で置かれている。また、感動したのは、トイレ(大)のトイレットペーパー。めちゃくちゃ柔らかい。絶対高いトイレットペーパーだ。たかが、サウナにここまで金をかけるかって驚かされる。すべては、おもてなしサービスのためだろうか。唯一気になったのは、館内着。ごわごわしたジャージ素材ってのも肌さわりがあまり良くなかったが、ズボンの紐が問題で、蝶々結びにしても、非常に解けにくい。
2階の休憩スペースは、結構、人で埋まっている。おそらく1年で最も人が少ないと思われる日にいったのだが、それでもこの盛況ぶり。この調子だと、ドミトリーの睡眠スペース(カプセル)も早くに埋まると思い、夜9時半ごろにカプセルスペースに入る。寝心地はまあまあ、宿泊施設ではないので文句なし。これも仕方のないことだが、ドミトリーなので、近くの人のイビキがうるさくてあまり寝られなかった。
朝の5時に起床。空いたサウナを楽しもうと思ったのだけれど、全然空いてないwww。みな、同じことを考えて早起きするのだろう。また、24時間営業なので、出社前にサウナという地元客も多いようだ。7時近くになると、お客さんが引き、メディテーションサウナもほぼ貸し切り状態になった。7時半くらいに浴室を出て、その後、食堂スペースで朝食を楽しむ。朝食はセットで500円、CP高し。水が良いせいか、白米がとても美味しかった。

大満足で湯らっくすを後にする。もちろん、オリジナルタオルを購入。タオルのデザインもセンスがいい。自分の中では、「しきじ」を超えて、日本一のサウナに更新された。この施設に利用するだけでも、熊本に来る価値があると思える。絶対、リピートする。

サウナ  :★★★★★+★
水風呂  :★★★★★+★
お風呂  :★★★★☆
アメニティ:★★★★★+★
アクセス :★★★★★
館内着  :★☆☆☆☆
給水   :★★★★★+★