漫画に疎い自分でも「寄生獣」は特別なものだった。
映画の公開に備え、久しぶりに読み返したが、興奮と感動が全く色褪せない凄い漫画だった。
期待と不安が入り交じるなか、ついに観ることができた。
原作ファンとして、この映画は「実写化」(再現)ではなく、
「映画化」として楽しむことができた。とても満足。
原作は完成度の高い傑作である。原作の「再現」に期待し、
それを望むファンの中には許容できない部分が多々あることも理解できる。
自分が強く感じたのは、新一、ミギー、里美、3名のキャスティングに紐付く個性の違い。
ミギーとの同化後、心身ともにシャープになった新一は、
染谷将太のプヨプヨ肌では表現しきれない。
冷徹さと知性の固まりのようなミギーは、阿部サダヲのパフォーマンスとはミスマッチ。
天然で少しヌケているが母性を感じさせる里美は、イケてる女子高生の橋本愛とは食い違う。
また、物語のキモとなる新一とミギーの関係性も原作と少し異なる。
自分の右手が寄生体に乗っ取られたばかりに、望まずして、
凄惨な死を目撃する毎日を追うことになる新一である。
それを受け入れることは容易なことではなく、強い拒絶反応を示して然るべきであり、
「人喰」を肯定するミギーに対しても同じことだ。
映画版は違う。一応セリフ上ではその心理をなぞっているが、
新一の葛藤を省略しているため、起きる事態に対して新一が面白がっているようにも見える。
ミギーについては、風変わりな価値観をもった、ひょうきんな「相棒」である。
ミギーに人間性を持たせ、新一と横並びの関係として見せる。
実際に物事の決断は序盤から新一が主導権を握ることも多い。
原作はあくまで「ミギー>新一」である(中盤まで)。
ただし、これらの不一致に対して目くじらを立てることもないと思う。
映画は映画版として楽しめば良いし、
葛藤や対立といった描写を省略することで得られるスピードは、
物語のテンションを保つというメリットに繋がっている(製作側の意図は不明だが)。
そして、寄生獣のビジュアルの再現性も実に良く出来ている。
特に、島田の酸をかけられてからの気持ち悪さが素晴らしい。
また、戦闘バトルにもアツくなる。原作では表現しきれなかった触手のシナる動きが、
頭で想像していた通りだった。予告編でも流れている島田にトドメを刺すシーンも
原作と異なるものの、前半シーンの伏線が生かされていて巧い。
新一の身体能力が覚醒したラストのバトルもカッコよくて
「それが観たかったんだよー」と唸る。
早々にミギーと仲良くなってしまっただけに、原作で涙してしまったラストに
ドラマ不足が懸念されるが、もしそうであっても仕方ないだろう。
原作ファンとしてはアクション映画として楽しむつもりだ。
エンドロール後に流れる完結編の予告編でテンションがマックスに。
いよいよ最強の寄生獣「後藤」の登場である。どう魅せてくれるのか、待ち遠しい。
なお、現在テレビでもアニメ版で「寄生獣」が放映中。
再現性だけでみれば、アニメ版のほうが優れている。
決してアニメオタクではないが、アニメ版のミギーを演じる平野綾のほうが、
阿部サダヲよりも普通に良い。映画版のモーションキャプチャーの効果も不明(笑)。
本作の製作は、ハリウッドでのリメイクが見送られてことによるものだったと聞くが、
個人的な想いとしてはハリウッド版も観てみたかった。
監督は誰が良いか勝手に考えてみる。ジョシュ・トランクはどうだろう。
「クロニクル」で見せたドラマ表現とイマジネーションできっと傑作を生み出してくれるのでは。
【65点】
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