から揚げが好きだ。

映画とサウナ。

ファーザー 【感想】

2021-05-23 07:27:23 | 映画


傑作。これは新たな体験だった。
いつか訪れる老い。認知症を患う当人の視点から見る世界。これまでの人生で育んだ豊かな世界が壊れていく恐怖。その喪失の大きさと絶望感に打ちのめされる。どこからが真実で、どこからが幻想か。観客をミステリーの世界に否応なしに巻き込み、翻弄し、結末への引力に転化する。その筆致はホラー寄り。
6人しか登場しない本作は、元は舞台劇という。「なるほど」という内容だが、本作のテーマを効果的に描くにあたり、撮影、美術、編集、音楽の使い方の技が練り上げられ、映画化することの価値を十二分に感じさせる。脚本も手掛けた監督、天才か。劇中の伏線が回収される終盤は鮮やかであり、その様相は一見シンプルにも見えるが、見れば見るほど新たな発見がありそうな深みもある。
主演のアンソニー・ホプキンスに圧倒される。そのパフォーマンスに鳥肌が立った。断トツにオスカーに相応しく、アカデミー賞の選考が公平だったことが証明された。彼が体現するのは自分を失うことの悲しみと、監督が切り離せなかった人間愛である。俳優がキャラクターを演じるということは、観客がスクリーンの世界を自分ゴト化する上で、必要不可欠なプロセスなのだと改めて認識した。

【85点】
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ジェントルメン 【感想】

2021-05-14 20:36:46 | 映画


ガイ・リッチーの原点回帰。錆びない切れ味に痺れた。
ロンドンの小汚い下町とチンピラ風情な人たち。ミステリーを孕んだ緻密なストーリーテリング。一癖も二癖もあるキャラクターたちが全力で走りぬく疾走感。あーこれですよ。

「ジェントルメン」と皮肉った、ワルたちの狂騒劇が楽しいのなんの。内容はマフィアたちの権力闘争。当然、緊迫感ある状況が頻発するけれど、高まったスリルを軽くイナす感じとか、弱者が強者に一泡吹かすみたいなプロットが気持ちよく、これぞガイ・リッチーの真骨頂と、ニヤニヤする。

大手映画の制作を一周し、ミニマムスケールで「久々に好きな映画を撮ったるか」みたいなガイ・リッチーの変わらぬエネルギーを感じる。「ロックストック~」「スナッチ」に親しんだ世代としては懐かくもあり、若い黒人青年たちの躍動を見て、新しい時代をしなやかに取り込む姿勢もみられたりする。

現代劇でみるミシェル・ドッカリーを楽しみにしていたけど、ちょっと周りのオッサンたちのパワーに負けてしまったか。筋肉を封印したチャーリー・ハナムはやっぱ良いし、ヒュー・グラントも良いキャリアを積んでいるなーとしみじみ。ロンドンストリートなファッションも大いに見もの、とりわけコリン・ファレルの着こなしが絶品だった。

【70点】

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

るろうに剣心 最終章 The Final【感想】

2021-05-08 00:41:26 | 映画


「るろ剣」を超えるは「るろ剣」のみ。そんな言葉を証明するようなシリーズの最終章。
GW中に甥っ子の付き合いで2回目の鑑賞に至ったが、スクリーンからほとばしる熱量に再び圧倒された。

和製アクション映画としては文句なしの最高峰。海外に発信しても「これが日本のアクション映画の力」と大いに胸を張れるレベル。

演者、スタントマン、振付師、カメラマン、音響担当。本作における5者のコラボは、もはやアートの域。エンドロールで「応援」スタッフが多いように、美術、照明、衣装、メイクといった技術面の完成度も目を見張る。これを劇場で見られることの幸福。

主人公の十字傷に秘められた過去と、刻まれた悲しき因縁が、戦乱から平和へと移行した明治初期の江戸を火の海にする。極度のシスコンである義弟の個人的な恨みによるもので、描かれる「人誅」はさすがにやりすぎ感あり。主人公と面識がないのに恨みを持つ黒集団のモチベーションもよくわからない。主人公「剣心」と、彼の義弟である「縁」、2人の交錯する複雑な感情をアクションで表現した、、という意図が透けるものの、ツッコミどころも含めてこれまでのシリーズと比べるとドラマパートは粗さがある。

前作に続き、本作も2部作だが、終わりを先に公開して、物語の始まりを後に公開する変則型。本作はアクションとスペクタクルを優先した設計だったと勝手に捉えた。

とにもかくにもアクションが素晴らしい。これまでのシリーズで描いてきたアクションの、豪華絢爛&幕の内弁当状態である。1対集団、チーム連携、一騎討ち、といった「るろ剣」ならではのアクションをこれでもかと魅せきり、いずれも過去のレベルを更新する。スリルと迫力、そして美しさを感じさせる稀有な仕上がりに驚かされる。近接戦がメインでごまかしが効かない状況下、空間の使い方、体の使い方、道具の使い方、どれほどの計算がなされただろう。本作を超える剣劇がこれから出現するとは思えないほど。特にクライマックスの2人の死闘は屈指の名シーン。

役者陣が生身で挑むアクションは映像に厚みをもたす。佐藤健の身体能力とプロ意識を本作でも強く感じる。本作に新たに加わった、新田真剣佑のアクションスターとしての華が炸裂する。隆起する血管と筋肉、スケール感ある肉体はそれだけで才能である。フィナーレを飾る敵役に不足なしだった。

終盤のバトルシーンは、2回目の鑑賞で「わざわざ」な魅せ方が鼻につく場面もあったが、ここまでやってくれたサービス精神に感謝だ。

おそらくアクションメインは本作までで、次作はドラマパートに重きを置いた「原点」が描かれるとみた。逆刃刀で相手を傷つけない剣心が、人斬りとして血の雨を降らせていた頃の話。来月の公開が待ち遠しい。

【75点】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

台湾パイナップルを食した件。

2021-05-05 08:17:09 | 日記


南国系のフルーツが好きだ。
パイナップルにも目がなく、スーパーで安売りしていると丸のまま購入してしまう。そんななか、台湾産のパイナップルが日本で販売されるようになった。背景にあるのは台中関係の悪化だが、そんな政治的な問題はさておいて美味しいフルーツにありつける機会を逃す手はない。
いつも食べているのはフィリピン産のパイナップルだが、それよりも一回り小さい印象。価格は近くのスーパーでフィリピン産が398円に対して、台湾産が598円、約1.5倍高い。税込みだと600円で超え、やや抵抗感があったものの思い切って買ってみた。



フィリピン産は緑色に対して、台湾産はベージュベースでときどきピンク。細かいトゲトゲがあって触ると痛い。品種が違うようだ。ネットがしてあるのは、果肉を守るというより、手にとる人のケガ防止の目的が強そうだ。

さっそく切ってみる。包丁の入りがスムーズであまりスジが感じられない。皮を削いでみる。あれ?果肉に食い込んでいる茶色いヘッコミがほとんどない。皮を薄く切っても、可食部がそのまま残るのだ。ちょっと感動。食べられる芯の部分も含めて、フィリピン産よりも可食部が明らかに多い。

食べてみる。「甘っ」。濃厚な甘みは「蜜」という表現が合っている。実際、芯に向かって蜜が入っていて、リンゴの蜜にソックリである。フィリピン産は酸っぱい箇所と甘い箇所で味が分かれているものの、台湾産はどこを食べても甘い。芯は甘くサクサクしていて新触感。筋っぽいところもない。パイナップルの概念が変わる!というのは大げさだが、台湾産を食べてしまうとフィリピン産には戻れそうにない。どうしてこれまで日本で販売されてなかったのだろう。
あとは価格だ。ワンコインで買えるようになると有難い。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

パーム・スプリングス 【感想】

2021-05-02 08:34:34 | 映画


恒例の「コナン」の公開2日目と被る。昨年の「鬼滅~」と同じく、上映スケジュールの「コナン」の枠が笑っちゃうほど多い(エグい)。おかげで見たい映画が公開2週目にかかわらず、1日1回のみの上映。洋画好きのあるあるだ。

で、コナンの大行列を横目に「パーム・スプリングス」を観る。
世界一「今日」を知り尽くした男と、その男の世界に入ってしまった女の話。1日を終える、または、死亡することで朝に戻り「今日」を永遠と繰り返す。前に進まず、何をやっても許される世界で「飽き」を回避するためにありとあらゆることを試す。まさにコメディにうってつけで、これまでいろいろと描かれてきたタイムループものだが、なかなかのオリジナルでフレッシュに映る。パームスプリングスのカラッとした陽光が気持ちよく、楽天的な主人公の個性とシンクロする。
前に進むことを諦め楽しむことを選択した男と、不安があっても前に進みたいと願う女子。未来なき世界は幸福か、そんなテーマが浮上する。と思いきや、深くなりそうで深くならない温度感を本作はキープ。クライマックスにかかるSF設定もややピンと来ず。北米で絶賛された本作だが、楽しい映画であるものの、やや期待ハズレか。アンディ・サムバーグのチャームが効いていてSNLの臭い強し。また、本作は「缶ビール映画」といえる。ことあるごとに主人公は「シュパッ」と缶ビールを開けて、くいっと一口飲む。どんだけ飲んだことだろう。アメリカのビールシーンは瓶が主流だが、缶にした理由が気になった。

【65点】





コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする