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から揚げが好きだ。

映画とサウナ。

2022年海外ドラマ トップ10

2023-01-09 00:57:25 | 海外ドラマ
映画に続いて、2022年の海外ドラマの振り返り。
なかなかの豊作で順位付けが難航。6位以降は同率。

1位 ベター・コール・ソウル 最終シーズン


本家「ブレイキング・バッド(BB)」のスピンオフから始まったドラマは、その完結をもって伝説のドラマへと昇華。BBが終わった2013年以来、最高のテレビドラマであり、昨年の映画を含めたオールコンテンツのなかで断トツの1位。
取り戻すことのできない過去の記憶。過去はカラーで、今はモノクロ。”ショーマン”として生きた男の回想録は、ユーモア、スリル、ロマンスを孕んで、「正しいこと」を巡る人間の業を映し出していく。視聴者のイマジネーションを常に刺激し、挑戦することをやめない演出は回を追うごとに神がかる。毎エピソードが傑作。とりわけ10話の「ニッピ―」と最終話の「すべてさよなら」はその演出力がよくわかる逸品。本ドラマで新たに加わる、キム、ナチョ、ラロのキャラクター造形がとにかく秀逸。その生き様は何度も心を鷲掴む。演技、演出、脚本、撮影、編集、音楽と、いずれも最高レベル。海外ドラマも映画と並ぶ総合芸術であること改めて知らしめた。

2位 ウ・ヨンウ弁護士は天才肌


2022年の夏はこのドラマに恋をした。「自閉症」を障害ではなく個性と捉える。不器用にも懸命に正義に挑む主人公の成長ドラマに魅了される。また、彼女の目から通して見える世界から、より良き社会の在り方が浮上する。一見、ミニマムなテーマの企画に巨額な製作費を投じるに至った英断。韓国エンタメの強さが垣間見えた。(独り言、この欧米ドラマの並びで本作も見ている人ってレアだろうな。。。)

3位 ハウス・オブ・ザ・ドラゴン シーズン1


HBOの本気、再び。王家の後継者選びという、GOTに比べると一気にスケールダウンした立ち上がりから、世界を揺るがし、戦争へと導く大いなる事変としてスケールアップ。見出すと止まらなくなる中毒性。中世の風俗描写が生々しく、ときに容赦なく残酷。序盤からドラゴンは大暴れし、展開のスリルとカタルシスに寄与。ジェンダー論という現代に繋がるテーマも違和感なく調和し、それがまた本作を見るモチベーションに繋がっていく。凄いドラマが始まった。

4位 キャシアン・アンドー シーズン1


ディズニープラスの本気。フォースなきSWドラマは、正義の在りかが見つからない異色作。私的にはこれまでのディズニープラスの配信作のなかで一番面白かった。ギルロイ兄弟、やってくれるな~。信念なく巻き込まれ型の主人公を通して見える「反乱」のメカニズム。それぞれの正義を遂行しようとするキャラクターたち。それらが織りなすサスペンスは群像劇としても濃密。スケールと緻密さを併せ持つ脚本、こだわりまくった映像、美術、衣装も圧巻。

5位 Succession(メディア王~) シーズン3


新たなステージに上がったものの、結局、家族内の権力争いを繰り返している。なのに、最高に面白い。序盤からフルスロットル。「紫禁城の最後の宦官なんて面白くもない」どうしたらそんなセリフを思いつくの?、の雨あられ。軽薄さと緊張感の波状攻撃。キャラクター同士の駆け引きとキレッキレッの会話の応酬はまさに黄金の脚本。

6位 The Bear(「一流シェフの~」) シーズン1


邦題で損している2022年初登場ドラマ。そして昨年ドラマの中で、シンプルに一番、次シーズンが見たいと思ったドラマ。天才シェフのひとり奮闘記で終わるでなく、彼の短所も織り込み、キャラクター同士の化学反応で見せているのが勝因の1つ。変化を受け入れ前進すること。成長を促した「シドニー」が魅力的で応援必至。ワンカットで見せた第7話は、昨年の全ドラマエピソードの中でも白眉な仕上がり。「イエス、シェフ!」。

7位 ストレンジャー・シングス シーズン4


Netflixの黄金期を担ったドラマがまた1つ幕を閉じた。物理的ロケーションを分ける新たなチャレンジ。その難易度に敢闘賞。大きく成長した子供たちに容赦なく待ち受けるハードな展開は見ごたえあり。シーズン1からの伏線も見事に回収。しっかりホラーで絞めてくれた。

8位 ピースメーカー シーズン1


結局、ジェームズ・ガンはドラマを撮っても”最高”ということ。「スーサイド・スクワッド」のテンションをそのまま引継ぎ、「平和のためなら子供も殺す」という、新しいヒーロー(?)像を描く。そのイタさと可笑しさは映画「スーパー」に近いものあり。ぶっ飛びのクライマックス。楽しくてニヤニヤが止まらない。

9位 ナルコの神


韓国エンタメが描く麻薬戦争。史実をどこまで再現するかより、いかに面白く脚色するか。「バレたらお終い」の命をかけたダマし合い、カマし合いが最高にスリリング。男汁120%の役者陣が、もれなく輝く演出が施され、応える彼らの熱量が本作のボルテージを上げていく。

10位 セヴェランス シーズン1


公私の絶対的断絶。その発想の大勝利と、サスペンススリラーとしてテンションを維持させる脚本力。気持ち悪いオープニングは本作のメタファーとして秀逸、昨年のベストオープニング賞。一方で、個人的にはこの1シーズンで決着してほしかったけど。

次点 ミセス・アメリカ


厳密には2021年の作品だが、印象に残ったため言及。1970年代に起きた「男女平等憲法修正条項」を巡る論争は、2つの正義が対立する。男女不平等も、ある種の女性の解放であるという保守的思想が目からウロコ。その先鋒に立つ主人公の自己矛盾や、保守派メンバーの変容にも触れ、正義は1つだったという現代に繋がる。非常に見ごたえがあり、未来(今)のために戦ってくれた先人たちに敬意を表する歴史劇。ケイト・ブランシェットをはじめ、豪華女優陣の名演も大きな見どころだった。

ウ・ヨンウ弁護士は天才肌【感想】

2022-09-22 23:25:56 | 海外ドラマ


最終話が終わって1ヵ月以上が経った。リピート鑑賞の2周目も終わり、感想を残す。

海外ドラマ史で語り継がれるであろう、あまりにも完璧な幕切れ。
もう見られなくなるという「喪失」よりも、素晴らしいドラマを見させてもらったという「感謝」がこみ上げる。圧倒的多幸感。主人公の満開のダイヤモンドスマイルで終幕。
ウ・ヨンウ、あの笑顔を見るだけで、私は当分生きていけるよ。

「好き」は勿論なのだけど、ドラマ作品としてどれだけ優れているか語りつくせない。

どうして韓国ドラマは面白いのか、ということを考えた。日本のドラマとの決定的な違いは、ストーリーを語るためにキャラクターがセリフをしゃべっている日本に対して、韓国ドラマは、キャラクターの生き様を描き込んだ結果、ストーリーが後からくっついてくる感じ。アプローチが全く違うように思えた。一方、欧米の傑作ドラマは、どちらのパターンもありだが、そのどちらか一方でも完成度が高かったりする。(余談だが、最近見た欧米ドラマで脚本(ストーリー)の完成度で突っ切って印象的だったのは「セクセッションS3」)

本作で描き込まれるキャラクターは、主人公のウ・ヨンウである。本作の内容を一言で表現するなら、彼女の成長ドラマだ。彼女は自閉症という障害を持つが、一方でギフテッドな高い知能を持つ。「障害を持っているけど凄い有能なキャラクター」ということで、難事件を次々と解決していく、そんな活躍劇として描くこともできただろう。だけど、本作はそれを選択しなかった。

障害や高い知能は、あくまで主人公の個性として捉えるまで。それらを持たない一般人と変わらぬ存在として描く。初めて社会に飛び立ち、弁護士という責任ある仕事につく。そこでいくつもの壁にぶち当たり、苦悩し、葛藤する。障害自体よりも、彼女の人間としての未熟さがベースに据えられている。だから強く共感する。そして、それを乗り越えた先に彼女の成長があり、自身のなかに新たな”感情リスト”を追加していく。

主人公を通して描かれるのは、自閉症という障害に対する正しい理解、それがどのような歴史を辿り、現在の社会ではどのように受け止められるいるかだ。自閉症といっても様々な症状やレベルがあって一括りにすることはできない。ウ・ヨンウは軽度の自閉症だが(なので就業することができる)、3話で出てくる被疑者は重度な自閉症で他人とコミュニケーションを取ることが困難。「同じ自閉症だから、気持ちがわかるよね?」と悪気なく話してしまう浅はかさは自分自身にも言えたことだ。

ウ・ヨンウは自身が自閉症であることを客観的に分析できている。”自閉症の人は純粋というよりも、他者と自分がいる世界ではなく自分だけの世界に慣れているので、他者は自分と考えが異なること、嘘をつく可能性もあることを頭でわかっていてもすぐ忘れてしまいます”とその生きづらさを吐露する。彼女は健常者と同じ社会のなかで生きてきて、その個性ゆえに、学生時代では多くのいじめや嘲笑の的にされてきた。では、彼女は完全な弱者かというとそうではなくて、高IQによって学校では常に成績トップ。いじめる相手には「嫉妬」の感情があったことも無視されない。

また、その辛い過去を彼女の哀しい黒歴史として描くだけではない。その頃に彼女の味方になってくれたグラミやスヨン(”春の日差し”泣)とのかけがえのない友情の起点になったことにフォーカスする。本作の脚本のスタンスとして貫かれているのは、深刻な問題を悲壮感でまとめるでなく、上を見上げて希望へと好転させる筆致である。そのバランス感覚が非常に優れていて、しっかり思考させながらも、心地よいエンタメ作として味付けされている。自閉症のウ・ヨンウに対して寛容な人が多い印象なのも、「現実的ではない」じゃなく、あえて意図的に設計している。

全16話。基本一話完結型。ほぼ全ての回が神回といって良いだろう。言い換えると、惰性の回がない。なのでリピート鑑賞しても毎回面白い。ちょっとユニークだけど身近にもありそうな弁護依頼を引き受けるところから話が進む。その難事件を試行錯誤して解決していく法廷ドラマとしてもかなり面白いのだけど(このポイントだけでもかなり語れる)、エピソードごとに明確なテーマが設定されているのがポイント。現代の社会問題や、人間の普遍的な感情や業を事件を通して描き出していく。

なかでも10話以降の後半パートがとりわけ素晴らしい。第10話の「手をつなぐのはまた今度」(タイトルセンスも毎回巧い)では、知的障がいのある女性に性的暴行を働いたとする男子を弁護する展開から、”障害者にも悪い男を好きになる自由(権利)”を描く。その発想は目からウロコであり、そこに拭いきれない偏見があったことに気づかされる。第11話の「お塩君、胡椒ちゃん、しょうゆ弁護士」では高額な宝くじの賞金をめぐる問題から、人為ではコントロールすることのできない運命の気まぐれさを描く(なかなかあんな結末は描けない)。第12話の「ヨウスコウカワイルカ」では不当解雇の訴訟問題から、韓国に息づく家父長制、正義や弁護士のあり方を見つめる。第13話と第14話の「済州島の青い夜」では、理不尽な事件と思わた背景に環境問題が横たわっていた。この回は裁判の勝敗だけではなく、関わった人全員が幸せになる結末が見事だった。

そしてそれぞれのテーマにドライブして、ウ・ヨンウは成長を遂げていく。第5話の「ドタバタVS腹黒策士」ではATMメーカー2社の間で起こった技術権利を巡る問題を通して、ウ・ヨンウは大きな挫折を味わうことになる。依頼人の勝利で終わらせることができたが、それは正義ではないとわかっていながら「自分を騙した」と後悔する。本作において弁護士という立場はあくまで「人助け」であるが、一方で、社会正義を実現するか依頼人の利益を守るかという弁護士の性(サガ)、選択の難しさも抑えられている。そのどちらをとるか、おそらく正解はないが、ウ・ヨンウは「正しい」弁護を懸命に模索する。ウ・ヨンウの良きメンターである上司のミョンソクは初回と最終回で「君は普通の弁護士じゃない」と発するが、それは彼女が自閉症の弁護士であることではなく、己の良心を信じ正義を貫こうとする彼女への愛が籠っている。

これも彼女の大きな成長過程といえるのだが、彼女が初めて知る「恋愛」感情も本作の大きな見どころだ。その相手はイケメンで人気者、なのに性格もめちゃくちゃナイスガイという反則キャラのジュノ。こういったキャラをドストレートに描けるのも韓国ドラマの1つの強みといえる。回転扉を通過できないウ・ヨンウに対して「ワルツを一緒に踊りましょうか」とか、なんて素敵なセリフ(笑)。その後、互いの魅力に触れ、距離を縮めていく。ジュノがウ・ヨンウに惹かれていく経緯も必然的でナチュラルに描かれる。”好きです。好きすぎて、これじゃまるで病気です”とか、人を恋することの衝動を発したジュノのセリフが堪らない。

障害者と健常者の関係(あえてここでは区別)である2人のラブラインは、時にドラマチックであり時に切なくもある。第10話で原告側の知的障がいのある女性の、容疑者を助けたいという願いは叶わず、”障害があると好きというだけではダメみたいです”と社会の偏見の根深さを突きつけた顛末。けれど、そんな社会の残酷さをも突破するほど二人の想いは強く、そこにこのドラマとしても大きな希望を宿しているようにも思えた。どこまでもピュアな2人のキスシーンの美しさたるや。神がかり的な照明による演出に唸らされる。2人の黒いシルエットを遠景で捉え、夜景のバックはまるで彼女が空想する海中のようだ。

一方で、2人の恋愛を美談では終わらせない。自閉症によるコミュニケーションの弊害は理想論では片付けられず、そのリアルと覚悟を2人のキャラクターを通して丁寧に描いている。これまで比較的、ウ・ヨンウに対して寛容だった周りの反応から一変、恋人になったジュノの姉夫婦との会食シーンではしっかりリアルな反応が描かれている。”面倒を見る人ではなく、あなたを幸せにできる人か”と。一見、偏見にも聞こえる言葉だが、至極当然の反応であり「そんなことはない」は嘘である。2人の間にある障害物をしっかり認めたうえで、それでも愛し合う価値があると”猫の片思い”から”猫の両想い”へと流れた展開に強く感動した。あの車内からの飛び出したシーン、最終話で初めて使われる音楽の旋律が素晴らしく、スローモーションで捉えた2人の見つめ合いがこれまた美しいこと。

これまで私が見てきた”伝説”と称えるべき傑作ドラマの条件は、最終回が最高傑作であるということ。このドラマも鮮やかにその条件をクリアする。最終話のハイライトはやはり、この言葉だろう。

”私の人生はおかしくて風変わりだけど価値があって美しいです”

自閉症という障害をもった主人公を通して、製作陣がこのドラマで一番伝えたかったメッセージと思う。主人公ウ・ヨンウの成長と、彼女に関わった周りのキャラクターたちの幸福な発展を見届け、感無量だった。

私はパク・ウンビンという女優さんの虜になった。ウ・ヨンウは、ピュアでユーモラスで優しく勇敢で美しい。そんなドラマ史に残る愛されるべきアイコンを体現したパク・ウンビンに心から賛辞を送る。また、彼女のキャスティングのために制作を1年遅らせたという製作陣の大英断に感謝する。「彼女以外の選択肢はなかった」という勝算はどこにあったのか、製作陣側の分析がとても気になるところだ。自閉症の人を演じるという点で、仕草や表情の特徴を似せるというテクニックが必要とされるが、リピートで見てみると表情筋の細かい揺れ、目の高速瞬きなど、実際の症状をもった当人でないと再現できないような筋肉の動きをしている。なので、メイキングでオフ状態になっているパク・ウンビンとは衣装や髪型が一緒なのだけど別人に見えてしまう。また、自閉症という動きの制限があるなかでの表現力は、まさに圧巻。セリフを全く発さずとも、ウ・ヨンウの心境の変化を繊細に体現し、視聴者には手に取るように理解させてくれる。その裏にはパク・ウンビンのウ・ヨンウに対する深い洞察と理解が潜んでいる。彼女の大変な努力の賜物であることは想像に難くない。

また、彼女を知れば知るほど好きになる。おそらくYouTubeで彼女のインタビュー動画を日本で一番見ているのは私だ。一日の癒し。。。彼女の透明で清冽なる美貌と、心地よい声と話し方。インタビューでの受け答えは、誠実でスマート(語彙力高し)。そして、演じるキャラクターへの深い愛がみてとれる。そんな真面目な印象の一方で、メイキングや他キャストとのオフの絡みでは、天真爛漫で、良い意味でサバサバして男らしい性格がとても魅力的(カンテオには塩対応、完全に弟扱いw)。ネアカに生きることをモットーにしているようで、何かあれば「アハハ!」と笑っているご様子。メイキングのカメラを見つけるなり、真剣な表情から一変、笑顔で手を振る。他のキャストがわかっていて手を振らないと「あなたも手を振りなさいよ」と笑いながら促す。自然と彼女の周りの現場は明るくなる。子役時代から芸能界を知っている人であり、現場のムードメーカーになることを意識しているのかもしれない。

一流の役者でありスターであるパク・ウンビン様。。。羨望に近い愛は増すばかりだ。そんな彼女が11月に日本にやってくるというビッグニュースが今日舞い込んだ。私のようなニワカは他の方に席を譲ったほうが良いかもしれない。女子が殺到して浮きそうだし。配信があれば絶対にチケットを買う。

ドラマの話に戻る。この作品を称えるのに無視できないのは、キャストへの演出を施した監督と、黄金の本を書いた脚本家の存在だろう。演出は単に脚本を実態化させる作業ではなく、脚本で書かれたキャラクターに命を吹き込む作業である。複雑な心理描写も、Yes、Noの2択ではなく、その間の選択肢を追加する。このあたりは欧米の映像作品にも共通するところだが、日本のTVドラマをたまたま見るにつけ、もうずっと同じ脚本をなぞるだけの演出をやっている。そして脚本である。本作の脚本家は傑作映画「無垢なる証明」を手がけた人。同作でも扱った自閉症というテーマ。障害への理解というアドバンテージがあっただろうが、自閉症をもったキャラクターを主人公に据え、そこから見た世界を描くという難しいアプローチに見事に成功。また、個人的に唸ったのは、ウ・ヨンウと心のなかで繋がる海洋生物たちの習性や実態を各回のテーマに絡ませているということ。第6話の「私がクジラだったら…」で描いたのは母性。捕鯨での残酷な「子殺し」漁をとりあげ、クジラの強い母性からウ・ヨンウの母への想いを描いていた。

あ、、もういい加減、感想が長いな。。。他にも、スキップしたくないオープニングや、いつもの韓ドラの回想静止画ではなく1枚のイラストで締めるエンディングとか(本当に毎回素敵)、初回と最終回が繋がるオープンエンドが秀逸だとか、カンテオがカッコいいとか、脇を固めるキャスト陣が素晴らしいとか、端役のキャストの人までガチで芝居が巧いとか、語りたいことはたくさんある。

続編についてだ。この一大ブームを受け、2023年の放送目標で続編製作が決まったとか決まらないとか。本作のファンの間ではその報道に賛否が分かれている模様。否定の理由は、完璧に綺麗に終わったので、後付けの続編の失敗で、この美しい記憶を汚さないほしいというもの。わかる、非常にわかる。もともと続編は想定せずに作成したパターンで、人気が出たため、無理くり続編を製作し、大失敗した例は過去にたくさんある。通常の作品であれば私も全くの同意見。。。だが、本作はあまりにも自身のなかで特別な存在になってしまった。どう失敗しようがどう転ぼうが、ウ・ヨンウに再会できることの喜びが上回る。なので、2023年までは死ねない。

最後に「こんなウ・ヨンウが好きだ」で締める。
自己紹介時「キツツキ、トマト、スイス・・」の口上を高速で繰り出すウヨンウ、オープニングでアイマスクをポンとするウヨンウ、会話中「ア」「エ」と低音で反応するウヨンウ、「ヨボセヨ(もしもし)」と丁寧めに電話に応答するウヨンウ、クジラの話をしたくてしょうがないウヨンウ、指揮者のタクトを振るように弁論するウヨンウ、キンパを作っている父にキンパのお土産をするウヨンウ、一言が多くなっちゃうウヨンウ、左右対称に整頓しないと気が済まないウヨンウ、グラミの濃厚なハグに悶えるウヨンウ、1666.66666(ニョンニョンニョン・・・)と発するウヨンウ、水族館のイルカに反対するガチ勢のウヨンウ、ジュノにモテたい一心で絶対に道路側を取らせないウヨンウ、遠慮なくジュノをガン見するウヨンウ、グラミとの挨拶をスカされたミョンソクに、こっそりポーズをとってあげるウヨンウ。

以上、最高でした。

【100点】

韓ドラ「ウ・ヨンウ弁護士」にドハマっている件。

2022-08-03 20:57:44 | 海外ドラマ


自分は今、我慢をしている。

現在ネトフリで配信中の韓国ドラマ「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」のことだ。

沼もしくは中毒。

現在配信中は10話。そのうち8話で踏み留まっている。

分かっている。このドラマは一話完結なのでイッキ見にこだわる必要もない。
でも違うのだ。9話に進んでしまうと16話の終点までの折り返しに入るということ。
それはつまり、このドラマとの別れに近づくということだ。
現在、1話から8話まで見返している(見返した)状況である。

今日と明日で11話と12話が配信されるため我慢の結界を壊そう。
とりあえず、10話まで進めることにしよう。。。

ラブコメドラマ、もしくはヒーリングドラマと言った表現が行き交っているけれど、そんなジャンルの枠には到底納まりきらない。
「弁護士になった自閉症の女の子のドタバタ劇」という予告編から察する入り口からは、想像できないほどに物語は奥行きと深さあり。
主人公の目を通して描かれる世界は、自分にとっても新しい世界だった。

各エピソードごとに明確なテーマあり。それらのテーマがドライブして主人公の成長の糧になっていく。胸を打つ名シーンの数々。一話完結のリーガルドラマとしても見事な完成度。このドラマの魅力を上げるのはキリがないからやめよう。

中心にあるのが主人公のゆるぎない魅力。愛おしくてたまらない。演じるパク・ウンビンの繊細な演技、そして障害者を演じることへの覚悟と真心。YouTubeのオススメで出てくるパク・ウンビンの動画を繰り返し見ている状況になっていて、いいオッサンが気持ち悪いな。。。。

お願いです。シーズン2が制作されるという朗報を早く聞かせてください。

とりあえず感情に身を任せた記録として残しておく。

2021年海外ドラマ トップ10

2021-12-31 18:19:22 | 海外ドラマ
映画もそうだけど、今年はあまり海外ドラマも見なかった。例年の半分くらい。年明けまで時間がないのでタイトルだけ並べてみる。感想は年明け。

1位 イカゲーム


2位 ギャング・オブ・ロンドン シーズン1


3位 真夜中のミサ


4位 賢い医師生活 シーズン2


5位 シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア


6位 マンダロリアン シーズン2


7位 D.P.脱走兵追跡官


8位 ファルコン&ウィンター・ソルジャー


9位 メイドの手帖


10位 地獄が呼んでいる

賢い医師生活 シーズン2 【感想】

2021-11-06 09:26:17 | 海外ドラマ


海外ドラマ生活再開後、一発目に見たのがこのドラマ。
全話を完走してもう1ヶ月以上たつが、感想を残さずにはいられない。

笑って、気づいたら泣いていて、そして笑って。。。その連続だ。
ワルモノは登場せず、人間の良心だけを描いている。なのに、これほど面白い作品に仕上げてしまう韓国ドラマの強さよ。到底、日本のテレビドラマにはたどり着けない境地だ。

昨年、自身のハートを鷲掴みにしたシーズン1の続編。主人公ら5人組と同世代である自分は、本シーズンでさらにその距離感を縮めた。5人の友情ドラマの印象が強かったシーズン1と比べて、彼らの関係性が築かれている前提のもと、シーズン2では、医療ドラマとしての充実度、完成度が一層増した。

引き続き、医師と患者の幸福な関係が描かれる。命を救うものと救われるもの。5人は、韓国医療の最後の砦である第3次病院(「ユルジェ病院」が何度もw)で活躍するエース中のエース。その技量は成熟期にあり、彼らが誤った判断、誤った処置をすることはない。個性が異なる5人だが、共通するのは、患者の気持ちに寄り添うことを諦めないこと、そして、全身全霊で医療に取り組む姿勢だ。患者、そしてその家族のプレッシャーを自身の力にすることができる強い人たちでもある。

名セリフばかりのドラマであるが、なかでも特に胸を打たれた金言を以下に記録する。

<ジュンワン>
医師も人間だ。感情を抑える必要はない。ただし、やることはやれ。感情とやるべきことを分けて判断することも医師の仕事だ。

<イクジュン>
この病院が患者にとっての最後の砦なんだ。家族の命がかかってるのにどう見られるかなんて関係ないだろ。患者や患者の家族が何も知らないと思うな。俺たちだってそうなれば同じだと思う。だから理解しよう。理解するように努力するんだ。

<ソッキョン>
どんな決定を下すべきか、どんな選択がマシか その時はこう考えるとうまく解決できます。「僕の家族なら?」、「もし奥さんが僕の妹なら?」、「医師が希望を示しているのになぜ治療をしないのか」。「妊娠を維持しながら抗がん剤治療を受けろ」と言います。

医師の理想形が描かれる一方で、人の手による医術のあり方にも触れており、医師によって判断が異なるリアルと、それによって患者の運命が変わる実態が描かれたりする。多くが救われる命だが、救われない命もあるわけで、特に印象に残ったのは臓器提供の問題だ。法的、倫理的な問題を描きつつ、臓器移植という手段が医療の限界を突破する救世主であることが改めて示される。

印象に残ったエピソードとしては、同世代として「老い」と向き合うことになる親の存在を描いた第8話や、主人公5人以外の日陰の医療関係者たちに光をあてた第9話などだ。特に後者の看護師さんたちと妊婦さんとのエピソードは涙なしには見られなかった(どこにでもある普遍的な話だからなおさら)。様々な角度から医療の実態とドラマが描かれるが、どれもこれも的が外れていない。

多くの命をめぐる悲喜が描かれるなか、その場面1つ1つに家族の物語を感じてしまうのは、端役に至るまで、出演する俳優陣の演技力によるところも大きい。イチ患者の役、またはその家族の役で、出演時間が少ないのに繊細な演技が求められる。それをナチュラルに演じ切り、観るものを感情移入させる。韓国エンタメにおいて俳優たちの役作り、パフォーマンスのレベルも卓越している点は見逃せない。

前シーズンに続き、ユーモアセンスも抜群に冴えている。それもキャラクターの「天然」をネタにしているから誰も傷つかず、気持ちが良い。本シーズンの個人的サブキャラMVPはソッキョンに片思いする女子ミナである。彼女がソッキョンを想って「クマ」のぬいぐるみとやりとりするシーンが絶品。彼女のパフォーマンスもさることながら、そのシーンだけでもコメディの描き方が巧いと感じる。日本であれば、一人芝居をしていのがバレた場面、「てへへ(恥)」で終わるところを、「あなたは疲れてるのね、寝たほうがいいわ」で切り返すあたりとか、さすがと思う。

ミナ役の女優さんしかり、本作で出演される俳優陣の多くがミュージカルや舞台出身者が多いようだ。ジュンワンの”ストーカー”(笑)であり、相思相愛の師弟関係にあるジェハク演じる俳優さんと、5人のうちの紅一点、ソンファ演じるチョン・ミドがミュージカルで共演歴があったとか。キャスト陣を調べていくと楽しい発見があったりする。

本シーズンの見どころであった、ソッキョンとミナのロマンスについて、ソッキョンがミナの愛に応えるきっかけがよくわからなかたり、展開の導火線として主要キャラが深刻なケガや病気する状況になるも、あっさり治ってしまったり、完璧だったシーズン1と比べるとやや消化不良があったものの、シーズンを見終わってしばらく「ロス」状態が続いた。前シーズンと同じく、最終話のエンディングで本作の撮影風景を流れる。コロナ禍で、その影響をまったく感じさせない仕上がりに驚かされた。

この「賢い医師生活」はどうやらこのシーズン2で終わりとのこと。非常に残念に思う一方で、幕引きとしては綺麗だったとも思える。本作もまた、これから名作として語り継がれるに違いない。10年後でも良いので、愛すべき5人に再会できたら嬉しい。

【85点】

ギャング・オブ・ロンドン シーズン1 【感想】

2021-03-06 07:07:15 | 海外ドラマ


圧巻。こりゃ、スゲーわ。
TVドラマの尺でアクション映画を撮ってみた、的な海外ドラマ。TVドラマ界に新たな新風を吹き込んだといっても過言ではないのでは。。。そのボリューム、緻密さ、秀逸さ、残忍さ、製作陣の熱量がほとばしる。傑作ドラマシリーズの誕生か。

昨年末より、一部の海外ドラマフリークを賑わせていたドラマだ。
Amazonチャンネルに加わったSTARZPLAYより、計9話、久々のイッキ見にて完走した。

ロンドンを牛耳るギャングのボスが殺害されたことで起きる、抗争を描く。アメリカ同様、移民国家のイギリス。本国、アイルランド、アルジェリア、パキスタン、クルド、ジプシーなど、多様な民族のギャングが存在する設定で、一部の対立関係はあるものの、それぞれが連携し、和平的均衡が保たれていた状況が、事件をきっかけに崩れていく。

暴力で制し、暴力は暴力で返すギャングの所業だ。
「血で血を洗う」これほどしっくりくる言葉はない。



原案・監督は何せ、「ザ・レイド」で名を馳せたギャレス・エヴァンスだ。本作がTVドラマデビューとなるが、やることは彼が手掛ける映画そのものだ。肉弾アクションとガンアクションの高次元の融合に魅せられる。彼が実際に監督としてメガホンをとったのは、1話と5話。1話の尺は90分近くあり、シリーズの方向性と成功を決定づける見事なオープニングだ。アクションのコーディネートも勿論だが、空間の使い方が唸るほどの巧さ。その1話目があまりにも素晴らしかったので、以降、パワーダウンすることも十分想定されたが、最終話まで同じ熱量のまま駆け抜けた。

ハズレ回が見当たらず、全話が神回といってよいが、中でも独立したエピソードの色が濃い5話目が白眉な仕上がり。穏やかな田舎の1軒家で起きる壮絶な「戦争」。命からがら逃れてきた男たちと、そこに住まう女と子どもたち。武装集団が容赦ない銃撃の雨を降らせる皆殺しの絵から、反撃の火が灯され、その行方を見届けるなか、興奮と緊張で体が硬直し釘付けになった。これらのアクションは、裏方のスタントマンたちの仕事によるものであり、彼らへのギャレス・エヴァンスの愛を感じる。



決して痛快ではない。本作のアクションに常にあるのが、生と死を分ける瀬戸際の攻防であり、そこに慈悲という足かせはない。銃弾で瞬殺される場合も、しっかり肉片が飛び散り、痛覚を刺激する。本作の残酷描写は奇をてらったものでなくて、暴力を描くことの誠実さに見える。

何かとアクション描写に注目が行きがちだが、連続モノとして見せきるTVドラマの必要条件もハイレベルでクリアしている。ギャングの抗争のベースにある「家族」というコミュニティの強固な絆。抗争の間に割って入る潜入捜査官が生み出すスリル。ギャングが表社会も牛耳っているという大見栄のスケール。複数のキャラクターを通して描かれる異形だが、貫かれる母性。ギャング抗争の裏にあった大いなる陰謀。。。主人公演じる不敵なジョー・コールや、GOTの悲劇の母親から一転、狂母を演じたミシェル・フェアリーもめちゃくちゃいい。

シーズン2の製作が決まっているとのこと。「凄いものを見た」後の、シーズン2への期待と不安が入り混じる感覚は、ドラマ「ファーゴ」の時に近い。物語として一定の区切りがついたなか、シーズン2はいったいどんな展開になるだろう。

あと、内容があまりにもシリアスなため、視聴後、キャスト陣が温和な姿で本作を振り返るインタビュー映像をYoutubeで漁った。

【90点】

2020年海外ドラマ トップ10

2021-01-14 01:38:15 | 海外ドラマ
2021年が明けきって2週間が経過。
遅まきながら、映画に続き、2020年の海外ドラマのベスト10を勝手に決めてみる。

1位 ベター・コール・ソウル シーズン5

もはやスピンオフとは言わせない。ついにブレインキングバッドの世界と交錯。圧巻。磨き上げられた脚本と演出に悶える。

2位 賢い医師生活 シーズン1

「大好きです!」そう告白したい1本。人間の良心と医術の幸福な関係。同年代の5人に感情移入。シーズン2が待ち遠しい。

3位 クイーンズ・ギャンビット

今年のリミテッドドラマのベスト。盤上の戦いと、主人公女子の生き様が美しくシンクロ。アニャ・テイラー=ジョイ、最高。

4位 愛の不時着

自身に「韓国ドラマ」というジャンルを拓かせた記念作。主演2人の交際発表にテンションが上がってしまった。

5位 DEUCE シーズン3

今はなき「DEUCE」に咲き乱れた青春群像劇の感動のフィーナーレ。「夢のあと」の邦題タイトル、グッジョブ!

6位 キングダム シーズン2

シーズン1を軽く凌駕。1話から6話まで全力疾走で駆け抜ける。韓国エンタメの層の厚さよ。

7位 マンダロリアン シーズン1

スターウォーズの見事な継承。まさかのSF子連れ狼から、ヒーローの美学を見る。

8位 ザ・クラウン シーズン4

ついに来ました。女帝×悲しみのアイドル×鉄の女、激動かつ黄金のイギリス時代を堂々の映像化。

9位 アンオーソドックス

宗教という未知の世界。戒律による制約は人生の鎖か糧か。希望に帰結したラストに感動。

10位 コブラ会 シーズン1,2

気持ちいいほどのわかりやすさ。かつ、これほど、綺麗に仕上げられたリブート作は稀有。

次点
ウォッチメン、サクセッションS2

ワースト(ガッカリ)ドラマ
ザ・ボーイズ シーズン2
シーズン1はどうして面白かったのかな。。。

殿堂入り ミセン~未生

韓国エンタメの覚醒は、昨年に始まったわけではなかったのね。「名作」の定義は、いつの時代にみても色あせない感動をもたらす作品といえるか。であれば、その称号に本作こそが相応しい。あなたは一生懸命に生きてますか。愛すべきキャラクターたちと、名シーンに彩られた人生を応援してくれるドラマ。


クイーンズ・ギャンビット 【感想】

2020-11-29 06:16:28 | 海外ドラマ


ネトフリは、たまにホームラン級のオリジナルドラマをぶっこんでくる。ネトフリのリミテッドシリーズにおける2019年の最高傑作は「アンビリーバブル」であるならば、今年2020年の最高傑作は「クイーンズ・ギャンビット」になるだろう。

映画や海外ドラマの感想アップが滞るなか、本作については残しておかねば。。。と、1か月前に視聴した記憶を辿りながら簡単にまとめる。

米ソ冷戦期を舞台に、チェスの天才女子の活躍を描いたドラマだ。一見、ありがちな「実話」ベースの話と思われたが、完全なフィクションの模様。但し、実話という鎧をまとわずとも、ドラマの世界に終始引き込まれた。

少女期に起きた壮絶な悲劇。その呪縛からの解放。天から与えられた頭脳と、チェスとの運命的な出会い。主人公の師であった無口な用務員との絆。孤児院で出会い、彼女の心の糧となる友情。新しい家族と築く新たな人生。人を知り、異性を知り、無垢だった少女時代からの成長。忘れることのできない恋。チェスによってもたらされた世界の広がり。紅一点、男性社会のチェス界で躍進する痛快さ。初めて知る屈辱。酒とドラッグ、ダークサイドへの転落と、鮮やかな復活、その先にある新たな境地。

「勝ち負けだけではない。チェスは美しい。」と、自身のアイデンティティの証明だけでなく、純粋なチェスへの想いが貫かれるのがいい。一方で、基本、チェスをスポーツとして見せるドラマだ。小さな盤上で完結し、プレイヤーの思考や動きが見えにくい競技にあって、ここまでわかりやすく、スリリングでダイナミックな世界を表現できたのは、かなりの離れ技だ。スポーツマンシップの美学もしっかり捉えられる。

劇中、主人公を取材する記者が発した「創造と心の闇は表裏一体」という言葉が、主人公の個性を象徴する。演じるアニャ・テイラー=ジョイが最高の最高。今後、彼女のキャリアを振り返るうえで大きな意味を持つ作品になるのではないか。「ザ・ウィッチ」「スプリット」と映画界での活躍もそうだが、自身が彼女のファンになったのは「ダーククリスタル~(人形劇)」での声優としてのパフォーマンスだった。彼女の才能が、いよいよ本作で見事に花開き、魅力全開である。チェスの勝負に勝ったときのクールなドヤ顔が堪んねーし。

脚本、演出、編集、音楽、衣装、メイク、美術と、あらゆる要素が研ぎ澄まさた一級映像作品でもある。ワンショット、ワンショットがいちいち楽しい。計7話というサイズ感だからここまでのパワーがあるのかも。久々に海外ドラマを見て痺れた。

【85点】






海外ドラマ「ダーク」 【感想】

2020-07-22 07:00:00 | 海外ドラマ


ドイツ産の海外ドラマ「ダーク」。シーズン1~3をイッキに完走したので感想を残す。

Netflixの海外ドラマ、あるいは、数あるSFドラマの中でも屈指の独創性を持った作品だ。タイムトラベルの究極系ドラマともいえる。今年配信されたばかりの作品だが、これはカルトな名作として語り継がれそうだ。

本作の一言でいえば、時間に挑んだ人間たちのドラマである。小さな田舎町を舞台に4人の家族がタイムトラベルを繰り返す。ブラックホールの向こう側には何があるのか。。。

残念ながら話の1割くらいしか理解できていない(鬼難しw)。こんなにも理解できなかったドラマは初めてだ。キューブリックの作品を理解できない難解さとは違う。世界観にハマれないのではない。シンプルに話が複雑すぎて理解が追いつかないのだ。

話の発端は、6人の中高生男女が夜の森で遊んでいる最中、一番下の男子が神隠しにあう事件。突如消えた男子は、33年前の同じ場所にタイムスリップしていたことがわかる。当初は、その男子を元の時代(2019年)に戻すことができるか、というシンプルな話だった。しかし、それはやがて訪れる、壮大な時間旅行と、世界の「終焉」の始まりを告げるきっかけに過ぎなかった。

過去の人間として生きることになった男子は、その後、その時代で年齢を重ねることになる。狭い田舎町であり、まだ高校生だった頃の両親たちにも早々に出会う。そして、現在の登場人物たちにも影響を及ぼす関係に至る。

「過去が未来を変える」はタイムトラベルのセオリーだが、本作では、そこに「未来が過去を変える」を追加する。時間の「裂け目」である洞窟内の穴、もしくはタイムトラベル装置により、「33年」という区切りのなかで、登場人物らが、フレキシブルに過去と現在と未来を行き来する。とすると、同じ自分でも、過去の自分と、今の自分、未来の自分の3人が存在することになる。本作ではその3人がそれぞれでタイムトラベルをすることになる。キャラクター数×時代 になり、登場人物の数が膨らむ。

同系のSF作品では、これまでご法度であったはずの「異なる時代の自分がその時代の自分に会う」は、このドラマでは当たり前に許容される。未来の自分が、今の自分に会いに行き、おもいっきり干渉する。必要とあらば「消す」ことも辞さない。そこで変わった人生が、未来へと影響を及ぼす。過去を変えようとすると未来の自分が追いかけてくる。こうした連鎖が、あらゆる目的意識をもった登場人物単位、異なる時代単位で続いていく。

さらに最終のシーズン3では、これまでの時間的な関係という「縦」で繋がった世界から、第三の世界(パラレルワールド?)という横で繋がった世界が新たに加わる。同じ時代の同一人物でも、同時並行で存在する2人の人物が存在することになり、この人物間でも様々なドラマが展開する。

辿り着く結末は1つだけなのだが、それに向かうまでの過程が極めて複雑。但し、煩雑とは違う。すべての登場人物が物語を紡ぐ当事者として配置される。気が遠くなるような緻密な設計図をもとに脚本が書かれていることがわかる。「愛」を軸とした、登場キャラたちのそれぞれの感情もしっかりと描きこむ。何を選択して何を捨てるのか、自分のため、あるいは家族のため、ひいては世界のために時間をコントロールしようとする。

芸術的でありグロテスクにも見えるオープニングが本作のイロを見事に表現している。凄惨な描写や、人間のの時間経過を表現する特殊メイク、時間旅行を表現するアイテムの美術や視覚効果の完成度、役者陣のパフォーマンスも申し分ない(ヌードシーンに抵抗がないのはドイツでは普通なのかな)。「反・原発」という裏テーマが透けてくるあたりも巧い。

「時間は無慈悲で、生まれた瞬間から死へのカウントダウンが始まる」「目の前にある宿命は因果関係の連鎖でしかない」「終わりは始まりであり、始まりは終わりである」。

シーズン3の「楽園探し」になってからは完全に置いてきぼりを喰らった。おそらく、ミステリー小説など読書に慣れ、想像の世界で読み解くことに長けた人には、これ以上ないご馳走になると思う。自分はまだまだですな。。。

【70点】

賢い医師生活 【感想!】

2020-07-05 09:50:20 | 海外ドラマ


追いかける海外ドラマシリーズが新たに加わった。「賢い医師生活」は自身にとって特別なドラマだった。毎話、見終わる度に「このドラマ、ホント好きだわ」と独り言が漏れてしまう。好きが止まらなかった。

「愛の不時着」「梨泰院クラス」と、韓国ドラマの実力に唸らされ、魅せられた自分にとって、もはやネトフリや、HBOと並ぶジャンルになった韓国ドラマ。かつて「韓流」と言われたメロドラマ一辺倒の印象は完全に払拭された。で、最新の韓国ドラマ事情を調べたところ、韓国本国で放送が終了したばかりの本作が面白いとの記事を見つけ、その直後、ネトフリで配信がスタートする情報をキャッチして飛び上がった。

1話あたり90分程度は、他の韓国ドラマと同じだが、全12話でやや少なめのボリューム。たいていの海外ドラマは、シーズンを通して1つのストーリーラインをを追いかけていく設計だが、本作の場合は、複数のキャラクターが織りなす群像劇であり(ちょっと違うか)、話は続くものの、ほぼ1話で完結する作りになっている。

なのに、見始めると、時間が許す限り見続けてしまう。先の展開を気にするのではない。主人公である5人が醸す物語に、ずっと浸っていたいという心地よい中毒性というか。サウナで例えるならば、飲める天然水「サウナしきじ」の水風呂といえる。

同じ大学病院で働く、5人の医師の仕事ぶりと私生活を描く。5人は大学の同級生であり20年来の大親友のグループ。固い友情は大人になった今も変わっていない。大学という舞台が、病院に変わっただけという見方もできる。今でもしっかり青春しているからだ。変わったのは年齢が40歳になったということと、医師として責任ある仕事に就いていること。40歳という年齢設定が本作のポイントであり、社会に出て修行の期間はとっくに過ぎ、プレイヤーとして実績を積み重ね、成熟期に達している状況だ。若い医師たちを育てるメンターとしての役割も担い、組織の第一線で活躍するエースでもある。彼らは、自分と同世代であり、いろいろと重ね合わせてしまった。

たぶん、ありそうでなかった医療ドラマだ。特別なイベントを用意するでなく、病院内で5人組が経験する日常を、気負いのない筆致で描いていく。面白くしようとか、わかりやすくしようとか、脚本側の作為があまり見えない。ただ、本作の舞台は命のやりとりが日常的に繰り広げられる病院だ。医療専門用語が容赦なく飛び交うなか、命の最前線で戦う医師たちの日常はそれだけでドラマになる。

腹部外科、脳神経外科、胸部外科、小児外科、産婦人科と、5人が働くフィールドは異なる。個性もバラバラな5人だが、仕事に対するモチベーションは同じだ。目の前の命を救うことに全力を尽くすこと、患者とその家族の心情に寄り添うこと。医師としてあるべき姿、理想的な良心を体現する。そのキャラクター設定に「リアルじゃない」などと水を差すこともできたかもしれないが、他人の人生を救済するほどの力をもったプロフェッショナルを描く「覚悟」みたいなものにも見え、彼らの生き様を肯定するほうが自然だった。

彼らはとにかく忙しい。命の現場は待ってくれない。休憩中はもちろんのこと、プライベートな時間も「必要」とあらば、病院にかけつける。彼らの多くは外科であり、手術に10時間以上かけることもある。殺人的な忙しさにも、それを不満として口に出すことはないし、深刻になることもなく、軽やかにこなしていく。一方、患者とその家族の想いもしっかり受け止める。「必要な資質は責任感があること」、逃げてはダメだ。状況を楽観的に見ることはなく、あらゆるリスクを視野に入れる。人の命を救う力を持っている、だけど神ではない。「最善を尽くす」と宣言して、全力で医療に向かう。

彼らを通して見えるのは、医師という仕事はフィジカルと同等にメンタルを鍛錬しなければ務まらないということ。患者の命を預かる、とんでもなく大変な仕事だ。ただ、それ以上に仕事を通して得られるものがある。目の前の命を救い、患者とその家族の人生を救うこと、そこで発生する様々ば幸福のドラマを自身のエネルギーに転化している。彼らも医療現場で感動を与えられていることがよくわかる。もちろん、命を救えないこともある。その悔しさが彼らをさらに強くする。

という具合に、ガチでシリアスな医療現場のドラマが展開する一方、筆致はあくまで軽快だ。仲良し5人組の個性が最高に魅力的。キャラクターを輝かせることに秀でた韓国ドラマの真骨頂がここにある。そして、5人が集まったときの空気が溜まらない。ノリが学生のときのままで、じゃれ合って遊ぶ。一方、大人として互いの仕事や生活への理解もしっかりしている。「友情」というテーマをこれほど、ユーモアとドラマに昇華できた作品もあまりないのではないか。学生の頃より築かれた友情と、積み重ねられた思い出。同じ時代を生き、同じ命の現場で戦ってきた戦友でもある。5人という人数になれば、たいていその中で仲良しの偏りが出てくるものだが、彼らの関係性は完全なフルフラット。この風通しの良さがとても気持ちいい。

転職を繰り返しきた自分にとって、会社の「同期」が羨ましい。一部を除いて大学の同期たちともすっかり疎遠になっている。劇中の彼らと同じく、親の老後を心配するタイミングに差し掛かっている。後輩たちへの接し方にも共感でき、体育会系で上から締め付けを喰らった最後の世代で(たぶん)、後輩たちには同じ思いはさせないよう気を配る。彼らは定期的にバンドの練習をしているのだが、そこで使われる音楽は彼らが学生時、流行ったポップスのようだ。どれもこれも全く知らない音楽だが、日本の自分たちからすると、ミスチルや、スピッツ、椎名林檎あたりだろうか。

「自分の好きなことや、やりたいことを諦めずに生きたいんだ」という言葉が、5人の生き様を的確に表現している。演じる5人のキャストの飾らない快演も絶品。チャーミングでカッコイイ。5人が時間を合わせて囲む食事シーンも印象的で、こっちの胃酸を刺激する。あぁ、韓国に行きたい。クライマックスに押し寄せるロマンスにもすっかりヤラれてしまった。泣かせてくれるわ。

特に何かが終わるでもないし、始まるでもなく、ぬるっと終わった。
なのに余韻にしばし浸った。
そして「来年、続編やりますよ」にガッツポーズをした。

【90点】

梨泰院クラス 【感想】

2020-06-20 05:51:51 | 海外ドラマ


「りたいいんクラス?」

最初、その読み方がわからなかった。韓国語で「イテウォンクラス」という読み方が正解。「愛の不時着」と共に、コロナ自粛中、ネトフリの視聴ランキング上位に居続けた本作(現在もなお)。「信念に生きる男のドラマ」みたいな作品の概要紹介にあったが、意味がわからず、遠ざけていた。が、「愛の不時着」が刺さったため、韓国ドラマ繋がりでそのまま見ることにした。90分×16話。韓国ドラマのボリューム仕様は変わらず、1週間以上かけて見終わった。

わかりやすくいうと、「半沢直樹」×「東京ラブストーリー」か。壮大な復讐劇をベースに、切ないラブストーリーが展開する。さらに加えるならば(いや、もしかするとこれがメインテーマかもしれない)、主人公「パク・セロン」が自身の生きる意味、失われたアイデンティティを取り戻す長い道のりを描いた物語なのかもしれない。「タンバム(甘い夜)」の店名に込められた想いを噛みしめる。

復讐劇の引き金は、主人公の父の死である。パク・セロンにとってたった1人の家族であり、誰よりも敬愛していた父親だ。その死の黒幕は韓国で最大の飲食企業である「チャンガ(長家と書いて)」グループの会長と息子。パク・セロンは復讐することを人生の目標にする。その復讐とは、暴力によるものではなく、飲食ビジネスの成功によって、巨大企業チャンガを駆逐することだ。前科持ち、金なし、コネなし、悲劇の男「パク・セロン」が、己の信念と努力でどこまで成り上がっていくのかを見届ける。

それはダイナミックなサクセスストーリーだった。パク・セロンのやり方は特殊だ。駆け引きがモノを言うビジネスの現場で、嘘や偽りの一切を排除する。信じた良心のままに生き、信じた人間を最後まで信じ抜く。その過程で築かれるのが友情や人脈だ。彼の大きな武器となり財産になる。己の生き様を見せることで、周りを突き動かす。「信念に生きることは難しくない。言い訳という逃げ道を作っているだけだ」、次々と繰り出される名言が響く。パク・セロンというキャラクターも、演じるパク・ソジュンもカッコいい。

対するチャンガの壁は高く厚く、成功の兆しがみえても、即、潰される。起死回生の一手を出したと思えば、さらなる反撃で打ちのめす。このマウントの取り合いが予想よりもハードだった。長きに渡る苦闘があって、後半の展開が効いてくる。

本作はパク・セロンのドラマである一方、彼に恋する優秀な部下「チョ・イソ」の恋愛ドラマでもある。見方を変えれば、彼女が主人公といってもよい。演じるキム・ダミは個性的な顔立ちで、決してヒロイン顔の美形ではない。彼女のキャスティングにも韓国エンタメの強さの一端が見える。登場時は「ソシオパス(反社会的精神疾患者)」として紹介され、展開をかき回すトラブルメーカーとして認識した。ところがどっこい、回を追うごとに彼女がどんどん魅力的に映っていく。終わってみれば、彼女以外のヒロインは考えれないと思えるほど。パク・セロンへの恋はやがて愛へと変わり、彼女が人生を賭ける対象になる。「好きと言う資格を得るために仕事で成功する」、それでも叶わぬ切なさが胸を締め付ける。その奔放さと影に「東京ラブストーリー」の赤名リカを思い浮かべた。おそらく現時点で世界一、二重アゴが可愛い女子。

その他、チャンガの大ボス「チャン・デヒ」の存在も大きい。勝者に固執し、自らが築いた城にしがみつく姿は、単なるヒールという役割を超え、ドラマに深みを与える。チョ・イソとは対照的に、圧倒的な美貌を兼ね備え、チャンガで生きることを決めた「オ・スア」とパク・セロン、チョ・イソの三角関係も面白い。個人的にチョ・イソと同じくらいに印象的だったのは、彼女を一途に愛した「チャン・グンス」という青年キャラ。パク・セロンとチャン・デヒの2つのDNAを同時に感じさせる青年であり、このドラマで最も変化の振り幅が大きいキャラだ。絶対に叶わぬ恋への男の未練が、痛ましくてリアル。可哀そうなヒロインに見えたチョ・イソは、同時に、男を振り回す罪な女子だったという構図。恋は魔性という裏テーマが浮上する。

あとは加点要素から減点要素へ。

タンバムが成功する足掛かりはもっとちゃんと描いてほしい。料理こそ「基本」だけど、ちょっとの試行錯誤で客を呼び込む力にはならない。パク・セロンの父親のレシピを絡ませたほうが説得力が出たし、面白かったのでは。テレビでの連続勝利も捻りがなくて、逆に流れがルーズになった。今どき「トランスジェンダー」で騒ぎ立てる展開が古い(韓国では余ほど特別なことか)。「愛は力になる」といわんばかりの危篤状態からの奇跡的生還、、、からの大活躍にはやや閉口。終盤、卑怯な手を使ったチャン・グンスが謝罪に回るシーンとか、描写過多ですべて描かないと気が済まない感じが野暮ったかったり、といろいろシラける場面も多かったが、結局のところ、めちゃくちゃ面白かった。「愛の不時着」と同様に、演者陣のレベルも高く圧倒された。

「でー(はい)」「けっちゃなよ(大丈夫)」「みやねー(ごめん)」

本作で韓国女子が使う韓国語がめちゃくちゃ可愛いことに気付いた。最近、韓国の唐揚げYoutube動画にもハマっていて、韓国への渡航欲求が高まっている。

引き続き「賢い医師生活」に突入する。(今10話目、ゾッコン)
韓国熱はしばらく冷めない。

【75点】

愛の不時着 【感想】

2020-06-13 08:35:56 | 海外ドラマ


もう1ヶ月ほど前になるが、韓国ドラマ「愛の不時着」を見ていたので感想を残す。
「韓流ドラマ」は「どうせ、おばさん見るもの」と距離を置いていたが、完全にナメていた。リスペクトする韓国映画と同様、こんなに完成度の高い映像作品だったとは。食わず嫌いはダメだなとまたまた痛感。

韓国の財閥令嬢が、パラグライダーで北朝鮮に不時着。そこで出会った北朝鮮の軍人男性と恋に落ちるという話。

ネトフリが今年に入り、デイリーの視聴回数ランキングを画面上に出すようになった。そこで、配信が開始された2月から、ずーっとランキング1位になっていた本作。「日本人ってこういうの好きだよね」と斜に構えていたが、このコロナ自粛で試しに見てみたら、止まらなくなってしまった(笑)。

1話あたり80分~90分、そして全16話。1週間以上かけてようやく見終わる。
普段から見慣れているアメリカの海外ドラマでいえば、2シーズンに相当するボリュームだ。見ている間、実際になかなか終わらないという感覚をもったが、惰性を感じさせることはなかった。おそらく韓国ドラマには、複数のシーズンに分けるという概念がなさそうである。1シーズンで全てを完結させる、そんな文化なのかもしれない。なので、終了時には大河ドラマを見届けたくらいの達成感と、もう会えないという喪失感が残る。

シリアスと、笑いと、スリルと。いろんな味わいがバランスよく含まれる。時にカタルシスを伴うダイナミックな展開もしっかり理論武装してるし、伏線回収の作りこみや、スマートで魅力的なキャラクター設計、一筋縄ではいかない人間の感情表現など、隙という隙がない。南北に分断された朝鮮問題を社会的な視点でしっかり見ているし、ドラマや笑いにも巧く転化している。映画界でもそうであるように、韓国エンタメの脚本力はドラマ界でも根付いていたのだ。

そして、とにもかくにも貫かれる純愛だ。禁じられた2人の関係は「朝鮮版ロミオとジュリエット」ともいえる構図。自身が愛をつかみ取ることではない、相手を想い続け、時に自己犠牲を払ってでも相手の幸福を守り願うこと。偶然だった2人の関係が、必然なものへと昇華する過程が胸を熱くさせる。その形は終始プラトニックであり、燃え上がればすぐにベッドインする欧米のそれとは一線を画す。触れることなく、見つめ合うことの熱さ、美しさが輝いて見えて、恥ずかしながらすっかり心を奪われてしまった。

その大前提にあるのが、主演2人のキャスティングの力だろう。ヒョンビンとソン・イェジン、知性と美貌を兼ね備えた2人に何度恋したことか。高身長で筋肉質、抜群のスタイルと丹精な顔立ち、日本の俳優にはない韓国人俳優は、男が憧れる男である。自分のなかでその一角に加わったヒョンビンの無自覚な優しさと強さにヤラれる。「童顔の財閥令嬢が売りだったのに」と、ソン・イェジンのナチュラルなコメディセンスと、クールビューティにも変化する器用さ(ちゃんと美脚)、目と鼻を真っ赤にして涙を流す表情の愛おしさったらない。萌えが止まらない2人を見るためだけに本作を追いかけていたといっても過言ではない。あの2人、結婚してくれないかな。。。彼らだけでなく、他のキャスト陣も自らの役割をしっかりと見定め、見事な熱演でドラマを献身的に盛り上げる。韓国のドラマ界の俳優さんたち、日本や欧米以上にレベル高いわ。

もちろん気になる点もある。「ここから笑っていいパートですよ」と予告する音楽の使い方、悪役をヒールでしか描けない勿体なさ、「実は2人は過去に会っていた」のエピソードは途中から過剰になっていく。個人的には北朝鮮を舞台にした10話までが盛り上がりのピーク。韓国を舞台にした11話以降のエピソードも十分面白いんだけど、ファンサービスのためのスピンオフみたいな話かな。軍服を脱ぎ、スタイリッシュなファッションでキメたヒョンビンはかなりの眼福だった。

ファンが求めることは全て描き切る、そんな熱量が余計に思える一方、その画を待ち望んでいた自分もある。結果、あの結末でよかったのだと思う。

例のごとく、主演2人のYoutube映像を漁る日々がしばらく続いた。韓国エンタメの実力を再認識し、引き続き「梨泰院クラス」に突入(完走済み)。「韓国ドラマ」という、見なければならないジャンルが1つ増えてしまった。

【85点】

マイケル・ジョーダン: ラストダンス 【感想】

2020-06-07 10:19:17 | 海外ドラマ


伝説の裏側が明かされる。ドキュメンタリーを超えたドキュメンタリーだ。新たなジャンルのスポーツ映画を見たような衝撃。見終わったあとの余韻ったらない。これ、NBAファンじゃなくても絶対に楽しめるコンテンツ。あまりにもドラマチックで、スポーツの醍醐味が凝縮されている。邦題に付け加えられている「マイケル・ジョーダン」のタイトルはいらなくていい。

NBA史上最強と言われた80年代から90年代のシカゴ・ブルズ。常勝軍団でありながら、フロント(経営陣)と選手間に存在した確執により、チーム解体が決定的となった1998年。奇しくも2回目の3連覇という偉業がかかった年。ブルズ率いるフィル・ジャクソンは、この年を「ラストダンス」と称した。そのチームの中心にいたのは”神”こと、マイケル・ジョーダンだ。

本作はアメリカ本国では週一の連ドラ形式でテレビ放送されていた模様。ネトフリによって全世界配信されているが、本国と合わせて週一での配信。スポーツのドキュメンタリーなんて、長くても2時間で十分、1話50分のボリュームを10話に渡って放送する価値ってあるの??と懐疑的だったが、トンデモなかった。全エピソードの完成度が高く、イッキ見を誘発する引力が持続した。常人には想像もできない一流のプロスポーツ界で活躍する人間たちの戦いだ。つまらないわけはなかった。どこまで映画的な物語だった。

1998年のブルズの1年を、特別に密着を許可されたカメラクルーによる秘蔵映像を通して描いていく(デジタル処理されたと思われる高精細映像が凄い!)。各エピソードごとの主役、テーマにスポットを当て、さらにその背景にあるルーツを膨大な資料映像を交えて深堀る。本作の実質的主人公であるジョーダンをはじめとする「レジェンド」たちの現在のインタビュー映像が差し込まれるが、明け透けな本音と、真意を突きまくる名言の応酬が見もの。

本作を傑作たらしめるのは、その編集力だろう。過去の映像と、インタビュー映像によって紡がれる映像は、1つのドラマとして淀みなく流れ、まるでリアルタイムで進行しているような臨場感を放つ。当時の証人である登場人物らはカメラ相手にインタビューしているものの、まるで同じ空間で会話を交わしているみたいだ。スポーツ映画同様、クライマックスは試合のシーンだ。目まぐるしいアクションのなか、彼らは何を考え、何を信じていたか、勝利への渇望、プライドがぶつかり合う。紙一重で決まる勝敗の分かれ目。濃密なドラマが展開する。ディテールとダイナミズムが同居する描写に手に汗握り、「スラム・ダンク」を読んだときの興奮を思い出した。

全10話、全てが見どころだ。賢者フィル・ジャクソン、最強の相棒ピッペン、暴れん坊ロッドマン、努力の人スティーブ・カー、こんなにも魅力的な人だったのか。人にドラマあり。そのなかでも最も強烈なのは、やはりマイケル・ジョーダンの個性である。彼がバスケ界、いや、スポーツ界の「神」といわれる所以がよくわかった。自らの力で栄光をつかみ、スポーツ界を超えた新たな文化までも築く。そんなジョーダンの意外な一面は、彼のモチベーションの起こし方だ。それは「怒り」。火種のないところでも無理やり火をつけて、「やられたら、やり返す、倍返しだ!」という具合で、半ば無理やりにでも戦う目的を作っていく。また、絶大な影響力も持っていたなかで、頑なに「政治」と一線を引き、スポーツマンに徹したのも印象的だ。

当時、高校生だった自分にとって、ブルズはヒールだった。大好きだったPGプレイヤー「ジョン・ストックトン」が属するユタ・ジャズの優勝を2度もブルズが阻んだからだ。ジョーダンが凄いのはわかってる、だけど好きじゃない。そのストックトンの現在のインタビュー映像もしっかり入っている。彼はジョーダンと同期であり、ジョーダンは空中の覇者であるのに対して、ストックトンは地上の覇者だ。「ジョーダンにオーラなんて感じたことない」と言い放つストックトンがカッコよかった。

【90点】




デッド・トゥ・ミー シーズン2 【感想】

2020-05-30 09:36:10 | 海外ドラマ


シーズン1を超える面白さ。
「死を軸に運命の悪戯に翻弄される人たちを描いたコメディ」、シーズン1から続く作風はブレない。半ば事故だったものの、しっかり加害者になってしまった主人公のジェン。図らずして、シーズン1におけるジュディーと立場が入れ替わってしまう。2人は協力するが、素人による死体の隠蔽劇はスリルよりも笑いに傾く。いかにバレずに普段の生活を取り戻すか、これがシーズン2の話だ。



そこでまさかの、被害者の双子の弟が登場www。シーズン1に続き、ジェームズ・マーデンが再登板する。演じる弟は、ジェンによって殺された兄とは、正反対のナイスガイだ。体に傷を負うコンプレックスがあって、ジェンとの共通点があるのがポイント。シーズン1と同様、加害者と被害者にありながら友情を育んだ流れと同じく、今度は、ラブロマンスへと舵を切る。思春期に入ったジェンの長男の動きも大きな役割を担っていて、非常に脚本が練られている。執拗な女刑事との関係性も見どころ。

本シーズンで唸らされたのは、単に悲喜劇に踊らされるだけでなく、殺人事件を通して加害者が背負ってしまうもの、残された遺族の喪失、悲しみの深さに向き合っていることだ。加害者と遺族が密着するこのドラマの特性により、それぞれのキャラクターの想いが強く響いてくる。ジェンとジュディーを演じる2人のエモーショナルな演技も素晴らしく、次のシーズン3も楽しみになった。

【75点】



ジ・エディ 【感想】

2020-05-21 08:30:15 | 海外ドラマ


あのデミアン・チャゼルがネトフリで、連続ドラマを撮る_
否が応でも期待していたが、ドラマを見終わって思うのは、チャゼルはやっぱり映画を撮りたい人なんだということ。

「ジ・エディ」というジャズクラブでの人間模様を描く。
計8話。

チャゼルが監督するということだし、ジャズを扱うので、アメリカの話かと思いきや、まさかのパリが舞台。しかし、「花の都」なんていう観光名所は一切出てこない。知られざる、治安が悪めで小汚い「裏パリ」の街並みが新鮮。また、アフリカ系、アラブ系の人たちも多く住んでいて、他民族国家の一面も垣間見れる。

物語は、クラブを経営する親友2人組のうち、グレーな組織に関わった1人が犯罪に巻き込まれる。それをきっかけに多額の借金が判明、クラブの存続危機を回避しながら、メジャーデビューを目指すクラブの専属バンドの奮闘ぶりが描かれる。

このドラマを見て改めて思うのは、海外の語学力。劇中、フランス語と英語が当たり前のように使い分けられ、同じ会話の中でも何度も入れ替わる。バイリンガルは当たり前で、移民してきた人たちは、その2つの言語の他に母国語も話す。まともに英語も話せない自分が恥ずかしい。

バンドのメンバーは国際色豊か。それぞれの国籍はしっかり明かされないが、主人公であるバンドのプロデューサー兼、クラブのオーナー「エリオット」はアフリカ系アメリカ人。悲劇に遭う、彼の相方「ファリド」はフランス人。バンドのボーカルで「エリオット」の元恋人でもある「マヤ」はポーランド人。エリオット役は「ムーンライト」に出ていたアンドレ・ホランド(名前は知らなかった)、ファリドはお馴染みのフランス人俳優タハール・ラヒム、そしてマヤ役は「コールド・ウォー」(オヨヨ~♪)のヨアンナ・クーリク。ヨアンナ・クーリクは、映画の雰囲気とかなり違って、恰幅の良いおばさんに変貌していた。但しその美声は健在だ。



本作を一言でいうと、音楽ドラマ。喜怒哀楽、様々な状況下にも常に音楽が寄り添う。音楽でいかに魅せるか、それが製作の前提にあるようで、女優&歌手のヨアンナ・クーリクをはじめ、バンドメンバーはガチの一流のミュージシャンである。本物の演奏から、本物の音楽を提供するというアプローチだ。バンドメンバーをはじめとする登場キャラごとに、エピソードが構成されており、演技未経験のミュージシャンながら、なかなかしっかり演技をしている。なかでも、女性ドラマーの「カタリナ」に注目。前髪を短く切りそろえ、長髪の後ろ髪はドレッドでまとめる、彼女のドラム演奏がめちゃくちゃカッコいい。Youtubeで彼女の普段の演奏シーンを探してしまった。



肝心のチャゼル監督はというと、1話と2話だけで、お役ご免。彼が操るのは映画と同様にフィルムカメラであり、3話目以降の監督交代と共にデジタルカメラに切り替わる。スマホで見直すと、違いはそんなにわからないけれど、テレビ画面でみると、フィルムならではの粗めの質感が、光の明暗でグッと艶やかさを増す。ジャズの演奏シーンが美しく、チャゼルの音楽に対する熱量を強く感じる。しかし、それも2話目まで。元々、脚本には干渉していないので、3話目以降で仕上がりが大きく変わることはないけれど、彼が全話撮っていたら、また印象が変わっていたかもしれない。ネトフリとしては、チャゼルに全話、監督してもらいたかったはずだが。

このドラマが難しいのは、音楽にシリアスなクライムサスペンスを掛け合わせたことだ。本作を見る限り、この2つは相性が良くない。音楽の高揚感に、犯罪のスリルが水を差してしまう。エリオットと警察のやりとりも、冗長で締まらない。もっと爆発的な音楽の盛り上がりが欲しかった。最終話まで、モヤモヤが残る。

一方、思わぬ収穫は、エリオットの娘「ジュリー」演じたアマンドラ・ステンバーグ。映画「ヘイト・ユー・ギブ」も素晴らしかったんだけど、本作では、己の感情をコントロールできない役柄を繊細に演じてみせた。笑顔が抜群に可愛いし、演技は巧いし、参ってしまう。今後の彼女の動向に目が離せない。

【65点】