から揚げが好きだ。

映画とサウナ。

レ・ミゼラブル 【感想】

2012-12-24 12:41:18 | 映画


今から4年前にやった第81回アカデミー賞授賞式が忘れ難い。

授賞式のコンセプトは「ミュージカル」で、
ホスト役を務めたヒュー・ジャックマンが華麗なダンスとともに
その年、映画界を賑わせた映画をオリジナルの楽曲で歌い上げ紹介。
そのパフォーマンスに酔いしれた。当時「レイチェルの結婚」で
主演女優賞にノミネートされていたアン・ハサウェイも途中から、
彼のパフォーマンスに加わり、壇上でその美声と見事な歌唱力を披露した。

「この2人のミュージカル、いつか見てみたいな~」
と思っていたけど、その願いは叶った。

「レ・ミゼラブル」
今年下半期1番観たかった映画を一昨日観た。

すごい映画だと思う。
間違いなくミュージカル映画史に刻まれるであろう映画だった。

自分も課題図書で読んだことのある、あまりにも有名な原作、
そして世界中で舞台化され、愛され続けているミュージカルをいかに映像化するのか。

前作「英国王のスピーチ」という名作を生み出した監督トム・フーパー。
この映画を観て感じたのは、彼の本作にかける覚悟と揺るぎない自信。

「生声」「生録」「全編楽曲」

吹き替えなしの本人「生声」は普通だが、
これまで観てきたミュージカル映画・ドラマでは通常、
スタジオで別録りした唄声を、あとで本編にくっつけるのだが、
本作は劇中で演技しながら唄った声をそのまま録っている。
また、劇中のセリフは99%唄を通して発せられる。
これも自分が観たことのあるミュージカル映画・ドラマではなかったことだ。
当然ながら、普段の会話の延長であるセリフ回しより、
楽曲でのセリフ回しのほうが感情を表現することは難しい。
前例がないということで、自分にはかなり挑戦的な映画に思えた。

しかし、本作はそれら難題をすべてクリアし、
ある意味、新たなミュージカル映画を創ったともいえる。

それは、紛れも無く本作キャストがもれなく本物だったからだろう。

キャスト陣のパフォーマンスが圧巻だった。
演技力、歌唱力は勿論のこと、感情を唄で表す表現力が
言葉では言い尽くせぬほど素晴らしい。

高潔の人、ジャン・バルジャンを演じたヒュー・ジャックマンと、
ジャン~が愛に生きるきっかけを与えたファンティーヌ演じるアン・ハサウェイ、
彼らの魂のパフォーマンスに吸い込まれ、何度もウルウル・・・
舞台でも同じ役を演じたエポニーヌ役のサマンサ・バークスはさすがといったところ、
コゼット役のアマンダ・サイフリッドをやや食ってしまっている。
ヒュー・ジャックマン同様トニー賞俳優のエディ・レッドメインも期待以上に素晴らしかった。
一緒に観に行った知人は舞台版を知っていたようで、ジャベール役のラッセル・クロウは
物足りなかったらしい。自分は当初心配していたけど、全然よかったけどな~。

ミュージカル映画としては文句のつけようがないが、
ミュージカル(舞台)版「レ・ミゼラブル」を見たことのなかった自分にとっては、
物語の構成にやや違和感をもってしまった。
サシャ・バロン・コーエン(意外な歌の巧さ!)演じるテナルディエらが完全なお笑い要員だったり、
全体的に駆け足気味で、ジャン~とコゼットが親子愛を育む過程もバッサリ切られていたり。。。

ジャン・バルジャンという一人の男の生き様が「レ・ミゼラブル」の魅力と捉えていたが、
中盤以降、その時代に活きた「民衆たちの賛歌」、みたいな内容になっていた。
一緒に行った知人曰く、舞台版も同様の構成らしいが、個人的にはやや肩透かし。
ちなみに知人は、これ以上ない舞台版の映画化!と大絶賛していた。

本作が公開されることを知って舞台版「レ・ミゼラブル」のDVDを観ることを我慢していたが、
その逆で、事前に観ていれば良かったのだと思う。

今年のオスカー。ヒュー・ジャックマン主演男優獲ってほしいな。難しいと思うけど。
前哨戦の結果からも本作でのアン・ハサウェイの助演女優賞は確実の模様だ。

【70点】


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のぼうの城 【感想】

2012-12-22 23:13:43 | 映画
映画「のぼうの城」を観た。

昨今の邦画人気を表すように、
公開1ヶ月を過ぎたタイミングであったが、
そこそこ席が埋まっていた。

映画はまあまあ。

500の少数軍勢VS2万の大軍の攻防を描いた内容と聞いていたので、
痛快さを期待していたが、イマイチ。
原作は読んでいないので、それが原作の内容としてのなのか、
映画の脚色力によるものなのかは不明だが、
そんな程度の戦術で、2万の大軍を困らせたのかと、ちょっとがっかり。

成宮演じる酒巻をはじめ、一部のキャラの言葉使いしかり、人格しかり、
(あえてだと思うが)現代人に近い描かれ方だった。
個人的にはどうにも違和感があった。びしっと古風にキめてほしかった。

肝心の主役である「のぼう」こと成田長親は、
結構な道化師ぶりで、民衆の愛されキャラの域を出ず、残念。
もっと魅力的でカッコいいキャラにしていたら、
魅せ場の田楽のシーンとかも、もっと面白かったのにな。。。

しかしながら、お目当ての萬斎さんはさすがのパフォーマンス。
彼の表現力、所作、身体能力がキャラの弱さを補填しているようだった。
萬斎さん、やっぱカッコよい。40超えても、あーいう素敵な男子になりたいものだ。

個人的に苦手な榮倉奈々はやっぱダメ。彼女のセリフはどうにも棒読みに聞こえる。。。
なので彼女と萬斎さんの絡みにイチイチシラケる。
芦田愛菜のシーンを必要以上に盛り込むあたりとか、意味がわからない。
本作では成田長親以上に、魅力的に描かれる敵軍大将、
石田三成演じた上地雄輔は意外な好演だったが、
萬斎さんを相手にしては、迫力不足か。

面白い映画だけを観たい自分にとって、
邦画は残念なクオリティが多いことを再実感。

・・・にしても、本作でも出演していた山田孝之。
今年の観た邦画には、ほぼ出ていた印象。大忙しだな。
先週「勇者ヨシヒコ~」が終わったばかりだし、寝る時間あるのかな~。

【60点】




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ホビット 思いがけない冒険 【感想】

2012-12-15 12:52:57 | 映画


2001年~2003年に3部作として公開された「ロード・オブ・ザ・リング」は
映画史に新たな金字塔を打ち立てた。

自分にとっては神映画。
「好き」という次元を超えた特別な映画だ。

最終章となる「王の帰還」は、オスカー11部門制覇という快挙を成したように、
文句のつけようのない結末で壮大な物語を締めくくった。
ファンタジー映画というジャンルで、
これほどまで称賛された映画は後にも先にもないだろう。

それはもはや伝説であり、本作は3部作で完全燃焼したはず。。。
なのに続編(というより前日譚なのだが)ってどうなのよ?って
個人的に思っていたが、その不安は見事に一蹴された。

新シリーズ「ホビット」は、ピーター・ジャクソンという監督が
無二の映画人であることを再証明するには充分過ぎる映画だった。

感無量。
「ロード~」を初めて観たときのワクワクして体中がシビれた感覚が蘇った。

本作はロード~の劇中、昔話として少し語られていた、
主役のフロドの養父であるビルボが60年前の若い頃に体験した冒険の物語だ。

サブタイトルの「思いがけない冒険」とは良く言ったもので、
平和と安定を愛するホビット族のビルボが、まさに思いもしなかった壮絶な冒険の旅に出る。

物語の起点となる歴史的背景が壮大だ。

ロード~では「ギムリ」としてサブキャラだったドアーフ族が、本作のメインストリーム。
彼ら一族が、ありあまる金銀財宝を有し栄華を極めていた頃から物語が始まる。
ドアーフ族たちの生き生きとした姿、彼らが住む地底宮殿の煌びやかで豪華な装飾と
とてつもないスケールにのっけから目を奪われる。
その後、財宝に目がくらんだ王、財宝に魅了され襲いかかる強大で邪悪なドラゴン、
美しく幻想的なエルフ族との確執・・・等々、怒涛のように歴史が変遷する。

開始10分足らずで「中つ国」に引きずり込まれる。

ロード~と決定的に違うところは(今のところ)「人間」が出てこないことだ。
すべて想像のキャラだけで物語が進む。
人間という、ある種のリアリティがなくなったことで、よりファンタジー色が強くなった。
魅せる演出、楽しませるためのユーモアがロード~よりも多い気がした。
荘厳で深いドラマだった前作と比較されるのは避けがたいので
その点を好意的に受け止められるか、否定的に受け止められるかで、
評価は分かれそうだが、自分は大いに共感し、楽しめた。

ドアーフ族一行、ビルボ、ガンダルフと、彼らが進む旅路には
ニュージーランドの雄大で美しい風景がどこまでも広がる。あぁ惚れ惚れ。
エルフ族の里やオークの巣窟など、CGで作られた風景も息を呑むほどに圧巻。
ヨダレものの映像の数々。その魅せ場には際限がないほどだ。

多種多様なクリーチャーと魅力的な新キャラたちも楽しい。
中でも「灰色の魔法使い」のガンダルフとは別に登場した、
動物たちと会話し森の秩序を守る心優しき「茶色の魔法使い」が素敵だった。
小さく可愛い兎たちの乗り物と、醜く獰猛で残忍なオークとのスピード勝負が秀逸。

息継ぎのない展開でありながら、置き去りにされないドラマも健在。

自分が勤める会社の女子に、すこぶる人気のある海外ドラマ「シャーロック」の、
主人公ビルボ演じたマーティン・フリーマンは特段面白みがなかった。
しかし、クセがなく凡人であることを見せられたという点で
彼のキャスティングは成功だったのかも。
ロード~に続き、登場するゴラムの表情の豊かさたるや。
演じたアンディ・サーキスの偉大さを再認識する。

物語の展開に一喜一憂して、手に汗握って興奮して、喝采して。。。
観ている間、完全に本作に埋没してしまった。

ピーター・ジャクソンという人は何と情熱的で、
映画に対して献身的なのだろうと思う。

大スクリーンと大音響という環境で映画を観ることの楽しさを、
久々に味わわせてくれた本作。何とも贅沢な180分だった。

下半期「アルゴ」以来の2発目のホームラン。

アメリカでは評価、興行収入ともに伸びなかったようだが、
自分はモロタイプ。

これだから映画はやめられない。

【95点】
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今年のアメリカ映画協会の年間映画10選。

2012-12-12 00:53:31 | 映画
毎年恒例のアメリカ映画協会による年間映画10選が発表された。

『アルゴ』
『Beasts of the Southern Wild』
『ダークナイト ライジング』
『ジャンゴ 繋がれざる者』
『レ・ミゼラブル』
『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』
『リンカーン』
『ムーンライズ・キングダム』
『世界にひとつのプレイブック』
『ゼロ・ダーク・サーティ』

日本公開されたものは「ダークナイト~」と「アルゴ」のみ。
公開時期が極端に遅いガラパゴスニッポンということか~と思いきや、
そのタイトルを見ると、アメリカ本国でも半分近くがこの年末で公開されたもの。
ってか、「レ・ミゼラブル」「ゼロ・ダーク・サーティ」「ジャンゴ~」らへんは
まだアメリカでも公開されていない。

以下、昨年の10選を振り返ると、このチョイスが
オスカノミニーに繋がっていることがよくわかる。

『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』
『ファミリー・ツリー』
『ドラゴン・タトゥーの女』
『ヘルプ 心がつなぐストーリー』
『J・エドガー』
『ヒューゴの不思議な発明』
『ミッドナイト・イン・パリ』
『マネーボール』
『ツリー・オブ・ライフ』
『戦火の馬』

年末に差し掛かり、アカデミー賞の前哨戦となるアメリカ国内の各映画賞も
発表されてきた。今のところ「ゼロ・ダーク・サーティ」の独走状態。
その監督はジェームズ・キャメロンの元嫁、キャスリン・ ビグロー。
2009年の「ハート・ロッカー」に続き、2度目の受賞になりそうな勢い。

爆弾処理班の活躍をひたすた見せられ、色気のない作風に面白みを感じられず、
「ハート・ロッカー」の作品賞、監督賞の授賞はかなりの大ブーイングだったが、
今回も同じ軍事スリラーもので授賞するなんて、何ともつまらない。

うう、何とか「レ・ミゼラブル」頑張ってほしい。

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今日、キミに会えたら 【感想】

2012-12-10 23:49:07 | 映画
日本での公開を待ちわびていた映画「Like Crazy」が劇場公開スルーで
DVD化されたのでレンタルして観た。



邦題は「今日、キミに会えたら」。
どこかで聞いたことのある、アリガチなタイトルのつけ方に
日本の配給会社のやる気のなさを感じる。

劇中で和訳される「Like Crazy」は「切ないほど好き」だ。

アメリカ本国で多くの支持を受けたことに納得。
まさに切ない、そして美しい映画。

運命の恋をしてしまった若いカップルの遠距離恋愛を通して
人を愛することの喜びや苦しみを清々しく、時に生々しく描く。

人を愛するが故におかしてしまう過ちや、
想いが近づくほど、すれ違うやるせなさ。。。
「若気の至り」という言葉で片づけたくないほど、
本作2人の姿がピュアで愛おしい。

かといって甘ったるいラブストーリーではない。
否応なく続いていく人生の中で、
若い頃の恋愛はいつかの想い出となってしまう。。。
心の片隅に持っていた感覚をつっついてくる。

あとでわかったことだが、本作のセリフはアドリブだったらしい。
本作監督はドレイク・ドレマスという、未だ20代の人。演出巧いな~。
主役2人を演じたアントン・イェルチンとフェリシティ・ジョーンズが素晴らしい。
2人が放つ柔らかな光が本作の世界観をより鮮明にしている。
日本でも馴染みのあるクリクリ天然パーマのアントンは若禿傾向にあるので
ラブストーリーはこれで最初で最後かもしれない。。。
本作で初めて見たフェリシティ・ジョーンズ。
油断すると上歯がポカンと出るのだが、それがとてもキュートに映った。
次世代を担う若き演技派のジェニファー・ローレンスはさすがの存在感。

物語のラストの2人の表情が秀逸。
2人に胸に去来したものは何だったのだろうか。

以前、公開された「500日のサマー」(大好き)は
本作同様に日本でまだ知られていない若い俳優を配した恋愛ドラマだったが、
単館公開され、日本でもヒットしたような記憶がある。

邦高洋低が加速した今年の映画界。
こういう良作が無視されることが非常に残念だ。

【75点】
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007 スカイフォール 【感想】

2012-12-02 08:19:57 | 映画
007シリーズの新作スカイフォールを観た。

公開初日の土曜日、映画の日(1000円)ということもあり、
劇場は満員御礼だった。

主役のボンドは大好きなダニエル・クレイグ。

今回の敵役はハビエル・バルデムで、過去2作に続いて、
米国俳優を使わないナイスなキャスティング。
監督は超意外なオスカー監督サム・メンデス、
Rottenでは90超えのフレッシュ(支持)と
期待するには十分な前情報が揃っていたが、
個人的にはイマイチだった。

今回の007はかなり毛色が違う。

アクションやボンド(クレイグ)の存在感で魅せるのではなく、
今回はボンドの生い立ちを辿りながら、人間ボンドを描こうとしていた。

こうした本作が目指した方向性については歓迎。
おそらく普通に観れば満足できる映画だと思われるが、
人間ボンドを描くために、今回特にスポットが当たった、
ジュディ・デンチ演じる「M」がどうにもハマらなかった。

海外レビューにもあったが、
今回のボンドガールは間違いなくM。

Mはボンドにとってボスであり、母である。
彼女とボンドの絆が本作の前提となっている。

ジュディ・デンチは嫌いなわけではなく、
むしろ齢を重ねて、ますます光るその存在感には恐れ入るが、
本作での、彼女が演じるMにはスケールを感じることができなかった。
物語の布石とするため、あえてだと思うが、
冒頭から彼女の言動がかなり横暴で、口うるさいおばさん状態。

その後、そんなMにボンドが忠誠を誓う理由が描かれていくのだと思うのだが、
途中何度も睡魔に襲われて、そのあたりを確認することができず。

眠かったから睡魔が襲ってきたのか、
冗長でつまらなかったから眠くなったのか。。。

クレイグ、ハビエル・バルデムのデカいシルエットの中にあって、
ジュディ・デンチが妙に小さく見えたことも手伝っているかもしれない。

期待していたアクションは、冒頭のシーンがマックス。
クライマックスでのアクションは、ひたすらパワープレイ。
007ってこんな芸のないアクションだったっけ!?
期待していたハビエル・バルデムの敵役は中途半端で気の毒。
いつものクレイグのセクシーさも影を潜める。。。

・・・となると、やはり人間ドラマとして楽しむのが正解のようだ。
その入口となるボンドとMの関係に共感できないと厳しいということか。

見返すと、「面白い」ということになるかもしれないが、
見終わっての感想は「長かった」。

DVD化を待つ。

【60点】














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