から揚げが好きだ。

映画とサウナ。

第85回アカデミー賞 直前勝手に予想。

2013-02-24 22:11:12 | 映画
待ちに待った第85回アカデミー賞がいよいよ明日に迫った。

映画年がオスカーで終わって、オスカーで始まる私にとって、
その年の映画を総括する意味合いもあり、
一年で最も重要なイベントである。

で、受賞結果(主要部門)を予想して一人で盛り上がってみる。

今年はホント予想が難しい。。。。

前哨戦の結果からすると順当に行けば作品賞は『アルゴ』だが、
『リンカーン』こそ作品賞に相応しい等の声も、本国アメリカでも未だ根強い。
混戦必死の主演女優と助演男優は、映画を観てジェニファーとデ・ニーロが獲りそうな気がした。


◆作品賞(予想)

 『アルゴ』

◆監督賞(予想)

 スティーブン・スピルバーグ 『リンカーン』

◆主演男優賞(予想)

 ダニエル・デイ=ルイス 『リンカーン』

◆主演女優賞(予想)

 ジェニファー・ローレンス 『世界にひとつのプレイブック』

◆助演男優賞(予想)

 ロバート・デ・ニーロ 『世界にひとつのプレイブック』

◆助演女優賞(予想)

 アン・ハサウェイ 『レ・ミゼラブル』

昨年はほぼ予想通り「アーティスト」旋風だったが、
今年の予想はまったく自信なし。

明日の授賞式、どうなることやら。
ワクワク。
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世界にひとつのプレイブック 【感想】

2013-02-24 11:59:12 | 映画


明日に迫った第85回アカデミー賞。
主要部門ノミネート映画の1つ、「世界にひとつのプレイブック」を滑り込みで観る。

この映画、好きだ。

派手さはないものの、こういう良質映画が全米で興行収入1億ドルを超えるあたり、
「良い映画を作ればヒットする」というアメリカ市場の健全さを伺い知ることができる。
自分が観た日本公開2日目の劇場はガラ空きだったけど。。。

本作は、妻の浮気をきっかけに精神を病んでしまった男と、
夫の死をきっかけにビッチになってしまった女の物語だ。

心に傷を追ったもの同士がどうこうという話はよくありがちだけど、
本作が特筆しているのは、その描き方。

語り口はあくまで軽く、主人公2人を囲む仲間たちの存在も手伝い、
終始、笑いに包まれている。そのテンポが非情に楽しくてニヤニヤしてしまう。

キャラクターたちが好き勝手に話す、喧騒にも似たセリフの節々に、
生の人間の可笑しさが滲み出ていて最高。
脚本も書いた監督デヴィッド・O・ラッセルの本領が発揮された模様。

その一方で、事態の深刻さを見失わない理性もあり、
触れてはならない琴線に触れた途端、崩れる人間のモロさも丁寧に描いていて
そのパワーバランスが絶妙だった。自分の好きなタイプの「笑って泣ける」映画だった。

そして、本作を特別なものにしているのは、スクリーンを眩い光で覆った、
主演のブラッドリー・クーパーとジェニファー・ローレンスの存在。

2人の個性がぶつかり合うダイナーでの舌戦が素晴らしい。
クライマックスの2人のダンス大会と、ロマンスたっぷりのラストには高揚感とともに感涙。

ジェニファー・ローレンスは言わずもがな、その実力からして文句なしに素晴らしいのだが、
自分が注目したのは、これまでのイメージを一新したブラッドリー・クーパーの名演。

芯は純粋で繊細だが、精神を病み、キレると歯止めがきかなくなる男を
情感たっぷりに体現して魅せた。当初、この役をデヴィッド・O・ラッセル映画の
常連であるマーク・ウォールバーグが演じる予定だったが、彼で正解だったと思う。
見方を変えれば身勝手にも映る男が、彼のチャームによって愛すべき男に見えてくる。
物語の終盤、過去の自分と決別し、吹っ切れた彼の表情が実に素敵だった。

本作、明日のアカデミー賞において、演技部門のすべてでノミネートされている。
これはアカデミー賞では30数年ぶりとなる快挙らしい。
助演女優の母親役のジャッキー・ウィーヴァーの存在はさほど気にはならなかったが、
父親役のデ・ニーロの、ある意味わかりやすい助演ぶりがよかった。
他にも、近所の親友役のジョン・オーティスや、精神病院での友達役のクリス・タッカーなど、
本作を彩るキャスト陣のアンサンブルが実に見事だった。

本作は希望と再生の物語。
劇中、主人公が目指すものとして何度も連呼する「エクセルシオール!」。
字幕では「より高く」と翻訳されていたが、それは本作のメッセージそのままだ。
ひたすら前向きに、本作で描かれる人生の必勝法を観て、めっちゃ元気になった。

【80点】


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ゼロ・ダーク・サーティ 【感想】

2013-02-21 01:17:07 | 映画


ただいま、日本の映画興行は洋画のゴールドラッシュ中。

アカデミー賞前後のこの時期は、
毎年、堰を切ったように賞レースに絡む話題作が次々と公開される。

で、先週末、アメリカで大評判だった「ゼロ・ダーク・サーティ」を観た。

監督は2008年「ハート・ロッカー」で、愛する「アバター」を
オスカー賞レースで蹴落とした、にっくきキャスリン・ビグロー。。。

本作は2001年に起きた9.11の首謀者、ウサマ・ビン・ラディンを
抹殺しようとするアメリカCIAと特殊部隊の姿を追ったドラマ。

9.11の2001年から2011年のウサマ・ビン・ラディン殺害までを描いており、
その10年間という歳月にあった、舞台裏の真実(?)を余すところなく、見せている印象。

CIAのビン・ラディンを見つけ出すための諜報活動や、
ニュースにも出た、物語のクライマックスとなる特殊部隊の奇襲作戦等、
ホントのところはわからないが、フィクションを排し
「リアル」を突き詰めたような数々の描写に目を奪われた。

3時間近い映画ながら、緩まぬ緊張感が本作の力を表しているよう。
ただし、その分疲れるので、退屈ではないものの、
上映時間の長さはそれなりに感じた。

満足感というより、満腹感という表現が適当かも。

「ハート・ロッカー」同様、本作の主人公も面白い。
本作の主人公はジェシカ・チャスティン演じる女子のCIA分析官。
任務として課せられたビン・ラディン抹殺というミッションへの動機が、
当初の義務感、正義感といったものから、ある事件をきっかけに
やたらと人間臭い感情に変貌するあたりが描き方として巧い。
彼女のビン・ラディンを追い詰める執念が、やがてリアルな狂気を帯びてくる。。。

来週に迫ったアカデミー賞では、主演女優賞の座をめぐり、
ジェニファー・ローレンスと評価が拮抗している、ジェシカ・チャスティンだが、
静と動を自在に、かつ凄味たっぷりのド迫力演技を魅せる。
昨年の「ヘルプ」「ツリーオブライフ」「テイクシェルター」等、
彼女が演じたいずれのキャラともイメージが全く被らず、さすがの実力派といったところ。

このテの映画は「アメリカ万歳映画」に見えるものが多いなか、
監督ビグローの一貫したドライな視点のもと、ありのままの史実を再現した印象で、
ビン・ラディン殺害に至る一連のシーンなどは、「テロは悪」と念頭にありながらも
かなり複雑な心境になった。

本作、Rottenで90%超え(評価)のことはあるな~と見終わって思ったが、
「ハート・ロッカー」の時と同様、「そうだったか。。。(以上)」という感想。

映画は嗜好品。面白い映画だと思うが、個人的にタイプではない映画。
多少ウェットでも良いので、監督の主観があったほうが好きだ。

あと、前作「ハート・ロッカー」とテーマは違えど、
「中東」「乾いた風景」「爆弾(爆破)」「銃撃」など、
スクリーンに映る表情が前作とほぼ変わらず、質感も同じなのが残念。

【70点】

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キラー・スナイパー 【感想】

2013-02-16 11:31:36 | 映画
DVD鑑賞で面白い映画があったので感想を残す。

その前に他観たDVDの寸評。

【リンカーン弁護士】(70点)
面白い。シリーズ化希望。マシュー・マコノヒー演じる型破りな弁護士が素敵。
利害関係を軸に複雑に絡み合う人物相関と読めない展開にワクワク。ラストはスカッと爽快。

【ムカデ人間】(50点)
今更ながら観てみた。思いのほかグロくはなかったが、「痛み」を感じる描写はやっぱ苦手。
話のアイデアはホラーとして興味が持てたものの、結局、何も進まない話にややガッカリ。

【バイオハザードV リトリビューション】(35点)
3D表現を勘違いした駄作。もっともらしく魅せる、センスのないアクションが鼻につく。
テレビゲームのように各ステージクリア型の展開もひたすら退屈。脚本がつまらない。
こんな映画が傑作「アベンジャーズ」よりも日本でヒットしたことに絶句。日本人はよいカモだ。

で、面白かったDVD映画は日本で公開されなかった映画「キラー・スナイパー」だ。

一昨年(2011年)アメリカで最も活躍した俳優はライアン・ゴズリングだ。
で、昨年(2012年)は、本作の主演でもあるマシュー・マコノヒーだと思われる。

日本でも馴染みのある「評決のとき」から、はや十数年。
コンスタントに映画出演はするも作品に恵まれなかったのか、
活躍の潜伏期間を経て、昨年は「リンカーン弁護士」、「Magic Mike」(萌)、
「Mud」、「Bernie」、「Magic Mike」(この3本、日本で早く公開して!!)と
ほぼすべての映画、演じた役柄で批評家の絶賛を浴びた。

彼の活躍年を知る上で本作「キラー・スナイパー」も欠かせぬ一本。
原題は「Killer Joe」。映画自体も日本映画未公開が惜しい面白さだった。

本作は、とある一家が資金調達のために、保険金をかけた母親を殺すため、
依頼した殺し屋(ジョー)が、依頼料の払えない一家の娘(少女)を担保にしたことで
その一家と深く関わるようになる、という話だ。

邦題の付け方がまたよろしくない。「スナイパー」という表現だと、
ゴルゴ13的な男の活躍をイメージするが、本作には殺すシーンが全く出てこない。

本作をジャンルでカテゴライズするのであれば「ホームドラマ」。
ゴミ溜めのような一家に、狂気な殺し屋が関わることで展開していく喜劇。
ただし、ひどくサディスティックでバイオレンスな仕上がりのため、18禁必至かも。

マシュー・マコノヒー演じる殺し屋ジョーが絶品。

ジョーは本業は警官(笑)。
場所はテキサスなので映画でも見覚えのある、サングラスにテンガロンハット、茶色のブーツ・・と、
お決まりのコスチュームだが、それらがすべて手入れされていて、バシっとキマっている。
神経質、そして性格はひたすらクール。光のない目元からはダークなキャラが浮かび上がる。
しかし、その実態はなかなかの変態野郎。思い出すだけで、笑ってしまう可笑しさ。。。
ジョーが、殺しの依頼をかけた一家の少女に恋をする話なのだが、ロリコン丸出し。
その恋はプラトニックなものかと思いきや、「ヤっちゃうんかい」とズッコケ。
不貞と嘘を働いた一家の継母にキレると、顔面流血&フライドチキンを噛ますフ●ラを強要。
その自身のサディスティックに陶酔し、まぶたが痙攣するほどのイキ顔が最高(爆笑)。
ジョーの濃ゆいキャラは、「ノーカントリー」でのシュガーなどにも匹敵するものだ。
すっかり演技派となったマコノヒーの変貌ぶりを実感。ホント楽しいわ。

家族の絆など、微塵もない一家において、ジョーという存在が果たす役割も興味深い。
不条理さを抱えつつも、家族という、ある意味宿命に似た関係だけで成立する姿は、
今はなき森田芳光の代表作「家族ゲーム」によく似ているなと思った。

監督は「エクソシスト」で馴染みのウィリアム・フリードキン。
老齢ながらも、こんなにエッジの効いた映画を撮るパワーに感服。

今後が楽しみなエミール・ハーシュやジュノー・テンプルの熱演も嬉しい。

観る側を喰ったようなラストも、本作ならではタッチで好きだ。

【75点】






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2013年度 注目映画10選 【洋画】

2013-02-11 13:04:18 | 映画
2013年にとっくに入ってしまったが、
備忘録として今年、個人的に注目している映画を10個選んでみた。

対象は2013年日本公開が予定(★)されているもの、
あるいは全米で公開が予定されているもの。

後者の多くは、日本での公開が来年になるものを思われるが。。。

1 The Place Beyond the Pines(★)
 監督デレック・シアンフランス/出演ライアン・ ゴズリング、ブラッドリー・クーパー他
 
 「ブルーバレンタイン」の監督とゴズリングの再タッグ。予告編から大傑作の予感。

2 Elysium
 監督ニール・ブロムカンプ/出演マット・デイモン、ジョディ・フォスター他
 
 「第9地区」のブロムカンプの待ちに待った新作。今年中に日本で公開されないものか。。。

3 パシフィック・リム(★)
 監督ギレルモ・デル・トロ
 
 予告編を見て一番興奮した映画。デル・トロが撮る怪獣VSロボット映画、何て面白そうなんだ!

4 Only God Forgives
 監督ニコラス・ウィンディング・レフン/出演ライアン・ ゴズリング他
 
 「ドライヴ」で世の映画ファンをメロメロにしたコンビの新作だ!!舞台は何とバンコク。

5 Magic Mike(★)
 監督スティーブン・ソダーバーグ/出演チャニング・テイタム、マシュー・マコノヒー他
 
 昨年全米で絶賛された、男性ストリッパーたちの青春映画。筋肉のお祭りワッショイ♪

6 オズ はじまりの戦い(★)
 監督サム・ライミ/出演ジェームズ・フランコ他
 
 敬愛するサム・ライミが撮るファンタジーはどんな味付けか。ジェームズ・フランコも楽しみ。

7 ホビット スマウグの荒らし場(★)
 監督ピーター・ジャクソン/出演マーティン・フリーマン他
 
 やっぱ、中つ国が大好きということで。続編楽しみで仕方ないわ。あの巨大竜とどう戦うのか。。。

8 Side Effects
 監督スティーブン・ソダーバーグ/出演ルーニー・マーラ他
 
 ソダーバーグが描く精神薬理学スリラー、面白そう。そして愛しのルーニー・マーラ、久々の新作。
 
9 Warm Bodies(★)
 監督ジョナサン・レヴィン/出演ニコラス・ホルト、テレサ・ パルマー他
 
 全米で只今大ヒット中。ゾンビ青年と(真人間)女子のラブロマンスを描いたハートウォーミングストーリー。日本でも既にBuzzが相当上がってる模様。監督はジョナサン・レヴィンだから、ちゃんとした映画になってそう。

10 ハッシュパピー バスタブ島の少女(★)
 監督ベン・ザイトリン/出演クヮヴェンジャネ・ウォレス他
 
 ベン・アフレック(アルゴ)の監督賞ノミニーを蹴落とした映画。面白くないと許しません。。。

他、ザックスナイダーの新生スーパーマン「マン・オブ・スティール」や、
オスカー作品賞最有力のスピルバーグの「リンカーン」、脚本賞最有力の「ジャンゴ繋がれざる者」、
英国ドラマ「シャーロック」のカンバーバッチが出演する新作「スタートレック」も捨てがたし。
世界で大ヒット間違いなしの「アイアンマン3」は、
予告編観たら、「2」と同様、アイアンマンが複数出てきそうな気配。
「アイアンマン」はオンリーワンでなきゃダメ。なので、期待薄。

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マリーゴールド・ホテルで会いましょう 【感想】

2013-02-04 01:56:54 | 映画
先週末になるが、「マリーゴールド・ホテルで会いましょう」を観た。

久々に日比谷のシャンテで観た。

公開直後だったということもあり、
シャンテのスクリーンの中でも一番環境の良いスクリーンで上映していた。
ミニシアターにありがちな、前席の人の頭が被るということもなかったので良かった。

で、本作は、年末から続く海外の賞レースでちらほらノミネートされていたり、
Rottenでも高評価だったので「もしや面白いのかも?」という淡い期待をもって観たのだが、
まー良くも悪くもなく、といった感じだった。

物語はイギリスのおじいちゃん、おばあちゃんたちが、
新たな生活の場としてインドに赴き、余生を楽しむ。みたいな話だ。

ジュディ・デンチをはじめ、英国ベテラン俳優たちの豪華競演が楽しかった。

齢を経て、余裕たっぷりな演技が気持ち良い。

ハリポタで馴染みのマギー・スミスは、そのヤクドコロのおいしさもあったが、
悲哀を感じさせる、ファニーな人種差別主義者を好演していた。

主人公のジュディ・デンチは基本ちびっ子なおばあちゃんなので
個人的にはスカイフォール(007)よりもシックリ来ていた。

ベテラン俳優たちの小粋な演技を見ていると、
上質なコメディ映画になりそうな雰囲気があったが、
肝心な物語はしごく平凡で、これといった面白さはなく、
とってつけたような人物描写に、やや閉口するシーンもあり残念。

あとは舞台でもあるインドの鮮やかな情景、

「インドという国は人の感覚を絶え間なく刺激する」

と言っていたジュディ・デンチ演じるおばあちゃんのセリフに
なるほど~だった。

【60点】


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ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日 【感想】

2013-02-02 10:58:01 | 映画


2009年に公開された「アバター」は3Dという新たな映像表現で
「体感」という新次元に映画ファンを引き上げてくれた。

それ以来、幾多の3D映画が作られてきたが、
個人的にどれも「アバター」を超える、もしくは
それに並ぶ充足感はなかった。

「アバター」から3年。
公開を待ちに待っていた「ライフ・オブ・パイ」は
その不足感を補って余りある映像体験をさせてくれた。

大満足。
2013年に入ってまだ間もないけど、第1号ホームランだ。

本作はご丁寧な副題にもあるとおり、
インド人の少年(青年?)「パイ」が、貨物船の沈没により海に投げ出され、
ベンガルトラと一緒に太平洋を漂流する話だ。

「摩訶不思議」「奇想天外」という言葉がぴったりハマる映画だった。
そんな突拍子もない話が、こんなエモーショナルな映画になるなんて予想もせず。

映画の冒頭は、少年パイが漂流に至るまでの経緯を説明する話なのだが、
彼の幼少期までに遡り、その前置きがやたらと長く、いろんなエピソードを放りこんでくる。

「いったいこの映画は何を描こうとしているのか。。。」と、
少年が漂流する話ということは知っていたが、その後の展開が読めなくなる。

彼の一家が動物たちと共に船に乗って引っ越すという話になって「ようやくか~」と思うが、
以降の漂流記で、余分とも思えたその前日譚が、本作のテーマに繋がっていくことになる。

「トラと一緒に漂流する」
トラと心を通わせて仲良く助け合う絵を思い浮かべるが(実際にそうなると思ってた)
そういったある種の「逃げ」に近い甘えは、本作に皆無だった。

パイとトラの関係性が、終始クールに描かれるのだ。

「リチャード」という名を付けられた(その経緯も面白い)ベンガルトラはあくまで猛獣。
パイを襲う存在である猛獣と、一艘の小舟の中でどう生き長らえるのか。。。

漂流というタダでさえ大変な局面に「泣きっ面に蜂」状態。
過酷でハードなサバイバルの中でパイがとった術が
リチャードを活かすことだった。

パイから餌を与えられるリチャードは、パイに活かされる格好なのだが、
次第に、パイ自身がリチャードに活かされていくことに気づいてくる。
常に一定の距離感、緊張感を保ちながら、両者が共存している様。
ココの描き方が実に深い。

そんなリアルに近い感覚を覚えながらも、
先の見えない広い太平洋で描かれる情景、エピソードは
大自然がもたらす神秘的な美しさに満ち満ちていて
パイとリチャードの運命を鮮やかに彩っていくのだ。

その雄大で幻想的な映像は3Dで味わって大正解。IMAXだったから尚正解。
ストーリーに共感できなかったとしても、
自分はこの映像体験だけで満足していたと思う。

リアルと虚構の世界が目の前で行ったり来たり。。。
まるで夢の中にいるような感覚に入った。

トラのリチャードが丸顔で可愛い。(猫好きには特に)
彼はフルCGによる作り物なのだが、その姿に途中何度も胸が張り裂けそうな気分になったり、
余韻を残されるほどの感動を与えられてしまったりと、完全にヤられてしまった。

パイとトラの漂流記を通して見えてくる、生命の尊厳、希望、信仰といった様々なテーマ。
それが違和感なく浸透していくのは、監督アン・リーのフェアで誠実な視点があってこそに思えた。
彼のアカデミー賞、監督賞ノミネートに遅ればせながら拍手。

ラストの捻りもニクい。
自分の答えは「信じる」。

【85点】
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