から揚げが好きだ。

映画とサウナ。

渡辺謙の生き様にシビれ、感動した件。

2015-05-26 11:00:00 | 日記


来月発表されるトニー賞について、今月嬉しいニュースが飛び込んできた。
ブロードウェイミュージカル「王様と私」で主演を演じた渡辺謙が主演男優賞候補に名を連ねたのだ。その受賞の行方を期待するのは野暮なことだ。ミュージカルの本場であるアメリカで評価され、名誉ある賞の候補に挙がった、それだけで大変な快挙である。

このニュースに心躍らされていたなか、今日、NHKの番組「プロフェッショナル」で、渡辺謙の今回のミュージカルに挑戦する舞台裏に密着したドキュメンタリーが放送されていたので、録画し、さっそく観た。

渡辺謙の壮絶な生き様にシビれた。そして、感動しました。

55歳という年齢で、初めて挑むミュージカル劇。しかも、舞台は異言語圏、かつ、誤魔化しの効かないブロードウェイ。挑むのは、50年以上前に映画界の伝説的名優ユル・ブリンナーが演じ、カッコたる地位を築いた「王様と私」だ。
想像を絶するプレッシャーと試練が、渡辺謙を待ち受ける。俳優として、日本の映画界の頂点を極めた男が、簡単に叩きのめされる。それでも彼は食らいつく。あきらめない。猛稽古をひたすら反復する。
「試す。捨てる。試す。捨てる。」
そして、血反吐を吐いて足掻いた先にようやく光が見えてくる。

「断崖絶壁をよじ登るように生きなければ」
「役者という職業は恥を掻く商売」
「捨てることの勇気を持つこと」
「キャリアは何の役にも立たない」
「朝、自分の声を聞いて、今日も演じられると実感する」

彼の口から発せられる言葉の一言一言が、圧倒的な迫力と説得力をもって響く。彼の生活、生きることすべてが真っ直ぐ、役者という仕事に向かっている。

番組は現在の渡辺謙という俳優が形成された道のりを、本人のインタビューを交えて遡る。
20代で大河ドラマの主役に抜擢され、その後も映画、テレビで活躍し、輝かしいキャリアを築いてきたこと。2度の白血病で役者という仕事に対する意識が変わったこと。初の海外進出だけでなく、演技の価値観を覆された「ラストサムライ」。俳優である前に日本人として、与えられた役柄を演じるだけでなく、映画の製作(脚本)の訂正を行った「硫黄島からの手紙」、などなど。

仕事に対して、どこまでも謙虚であり、どこまでも情熱を持ち続ける彼の生き様に強い感銘を受けた。過去にテレビのバラエティに出ていた時は茶目っ気たっぷりで、気さくでサービス精神が旺盛だった。いやーどこまで素敵でカッコいい人なんだ。

番組恒例の「プロフェッショナルとは?」という最後の問いに対して、「与えれた状況のなかでベストをつくすこと」と答えた。何度も聞いたことのある言葉であるが、彼の生き様はまさにその言葉に集約されていた。

自分の生き方も自然と振り返ってしまう。
日頃、ついつい妥協点を探してしまう自分が恥ずかしくなる。
もう少し頑張らば、違う結果が現われるかもしれない。
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メイズ・ランナー 【感想】

2015-05-26 08:00:00 | 映画


若さがほとばしっている。あまり期待していなかったが全然面白いじゃない。思わず前のめりで観てしまった。

記憶を消されワケもわからず、巨大な迷路に囲まれた世界に放り出された青年たちのサバイバル&脱出劇を描く。

「ハンガーゲーム」や「ダイバージェント」と同様に、10代が活躍するディストピアの世界を描いた映画だ。しかしそれらと明らかに違うのは、主人公にはじまり、画面の多くが男子で埋め尽くされている点だ。そこに不思議とむさ苦しさはない。どんなに泥だらけになっても、汗だらけになっても、一定の清潔感が保たれる。男子コミュニティーで想起される生活臭も感じさせない。リアリティよりもファンタジーを優先した点が大きい。「イケメン揃い」まではいかず、程良く顔立ちの整った若き俳優たちのキャスティングも効果的だ。

また、女子のいない映画は、恋愛要素などの展開に幅を持たすことができない。多感な10代が主人公であればなおさらだ。しかし、本作はそれをハンデとしない。主人公たちの目的は「脱出」の一点にあり、その実現には「脚力」が必須というのが面白い。男子に身体能力で劣る女子を、同レベルで混合させては、アクションの多くに説得力をもたせることはできなかっただろう。原作通りの結果論であるにせよ、男子だけで(1人だけ女子が加わるが)構成した物語は正解だった。

とにかく走る。全速力で突っ走る。タイトル通りの「ランナー」なアクションが本作の魅力だ。
それは、走らないと潰される・襲われる、という「追われる」状況だけでなく、自らが仕掛ける「攻める」状況でも発動される。若さ故の無尽蔵の体力と、脚力によってもたらされるのスピード感は、アクションスリラーと非常に相性がよい。ギリギリのところでセーフになる気持ちよさ♪自分もなぜか全速力で走りたくなってきた。

主人公のトーマス演じるのは、本作で初めて観たディラン・オブライエン。直面する危機に対して、ルールを突き破り変化をもたらす救世主を熱演する。顔立ちがローガン・ラーマンと被っているのが惜しいが、驚くほど演技力が仕上がっており、映画の座長を張るのに十分な存在感だ。彼の迫真の演技により、映画の緊張感が持続すると言ってもよい。走り姿もサマになる。その他のメンバーも、一部テレビドラマで活躍する俳優が散見されるが、皆ほぼ無名に近い。とりあえず、主演のオブライエンが立ちまくっているので、この中から次世代のスターを見つけだすのは難しいかも。主人公の1つ上の先輩にあたるチャックがデブっこで可愛く、アニメ映画「パラノーマン」に出てきた男の子にソックリだ。

「いったい何のために?」という疑問に対して「すべてのことに理由がある」とする本作。全3部作で明かされるであろう、謎解きが本作の引力になっているようだが、果たして納得のいく答えを観客側に提示できるのか、甚だ疑問である。今のところ、興味を引かせるためだけの餌をばらまいているようにしか見えないのだが、シンプルにアクションスリラーとして楽しめるシリーズになりそうだ。次回作が楽しみ。

【65点】
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駆込み女と駆出し男 【感想】

2015-05-22 08:00:00 | 映画


原田眞人が自身初となる時代劇を撮ったが、その面白さは健在。時代劇の深い味わいと、現代劇の娯楽性が仲良く手を繋いだ。日本映画としては稀有な、真に笑って泣ける映画だ。劇中のセリフを借りるならば『素敵』。

江戸時代、幕府公認の「縁切り寺」として知られた東慶寺を舞台に、そこに駆け込んできたワケあり女子たちと、離婚調停人として彼女たちの手助けをする、医師見習い兼、作家志望の男を描く。

冒頭、まず目に飛び込んでくるのは男尊女卑の価値観が沁みついた江戸時代の風景だ。何かしらの罪状を言い渡されたのだろうか、乱暴に縄に繋がれ、街中に晒される女性たちの姿から時代の闇が滲む。物語の主要キャラとなる鉄練り屋に嫁いだ「じょご」は、夫の浮気を目の前で見せつけられた挙句、暴力を振るわれ、奴隷のように扱われる。妻から「別れる」ことが認められなかった時代だ。虐げられながらも耐えることしかできなかった女性たちを想うと胸が痛む。ドラマ化もされた漫画「JIN-仁」をふと思い出す。

そんな中、女性たちを救済する寺が実在した。このこと自体が初めて知った史実であったが、その他にも、思わず「へぇ~」と呟いてしまう発見が満載で、非常に興味深い。綿密な時代考証をもとに製作されたのだろう。女性たちが離縁に至るまでのプロセスが丁寧に描かれている。女性たちが東慶寺に入る前には然るべき手順があり、そこで重要な役割を果たしていたのが「御用宿」というもの。今でいう家庭裁判所みたいなところで、女性たちの事情聴取から離婚の調整までを行う。そこで働くのは駆け込み女たちの強い見方となる宿主たちだ。堂々と時代の理不尽さに対して反目する彼らの姿が頼もしく、何とも嬉しい。

様々な事情があって駆け込む女たち。その背景の多くは深刻なものであるが、映画は女性を弱者として描くのではなく、女性の逞しさを描くことに注力する。じょごが自立心に目覚め、見違えるように成長する姿。じょごと共に駆け込んでくる、妾の女「お吟」の艶と粋(イキ)。それぞれを演じる戸田恵梨香と満島ひかりの確かな演技力も手伝って、彼女たちの姿が実にしなやかで魅力的に描かれる。また、「じょご」と「お吟」の2人の友情物語が胸を打ち、涙腺を刺激する。

物語の語り口は気負うことなく軽快で、ユーモアがふんだんに盛り込まれる。もう一度見たいと思わせる楽しい掛け合いが多いなか、「はちみつ」のクダリは抱腹絶倒の爆笑ものだ。おふざけによる笑いではなく、人間が持つ生真面目さの延長にあるユーモア。この辺の描き方は原田監督が得意とする部分であり、自分も『ド真ん中』でツボである。

時にシリアス、時にユーモア、時にスリリング。多くのイベントが待ち受けるが、印象的なのはそのテンポの良さだ。展開の余韻を切り上げるほどの見切りの良さが、本作においては確実に吉と出た。疾走感すら感じさせ、2時間半という上映時間があっという間に過ぎた。大泉洋演じる信次郎のキビキビとしたテンポの良い江戸弁も気持ち良い。

四季の美しさ、空間のマにあるワビとサビ。時代劇の旨みもしっかりと抑えてられている。そのうえで、信次郎とじょごのロマンスにも象徴されるように、ドラマの描き方は意外と現代的でとっつきやすい作りになっている。
年配層だけに支持されるには勿体ない傑作の時代劇だった。

【70点】
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フランシス・ハ 【感想】

2015-05-21 11:00:00 | 映画


ダンスカンパニーの実習生の女子が、彼氏と別れ、同居の親友と別れ、仕事をクビになったことをきっかけに、新たな一歩を踏み出すために奔走する姿を描く。
主人公の女子の年齢は27歳。良い大人だ。恋愛よりも友情。見てくれもガタイのよい長身で、一人で何とかやっていけそうな逞しさがある。だけど、その中身は「喧嘩ごっこ」という親友とのじゃれ合いでキャッキャッ言っているような子どもだ。自分の本意ではないところで、次々と環境が変わっていく。その環境の変化に素直に順応していくのが、ある意味大人だと思うが、主人公は当たり前のようにその状況を受け入れない。自分自身が変わるのではなく、身の周りの状況を変えてみれば何か好転するのでは?といろいろ試みるが、ことごとく裏目に出る。思いつきで向かったパリで、何も起こらないのが最高に可笑しい。映画は主人公に特別なイベントを用意するなど甘やかすこともなく、絶望の淵に追いやるように突き放すこともない。ただただ、主人公を見つめる。ドラマチックな展開とも無縁だ。
大人になれない主人公の取り柄は、常に前向きであること。立ち止まることなく、常に動き続ける。空回りによる退屈もモノともしない(笑)。ニューヨークの街を疾走するシーンが印象的だ。前を向いてひたすら走っていたら、いつの間にか状況が変わっているではないか。「確かに〜」と、極めて共感指数の高い映画だ。
ラストに明かされるタイトルに込められたメッセージを目撃し、清々しい陽光を感じた。

【65点】
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マップ・トゥ・ザ・スターズ 【感想】

2015-05-21 10:00:00 | 映画


ハリウッドセレブたちの裏側をシニカルで毒ッ気たっぷりに描いたコメディドラマ。クローネンバーグ映画の中では珍しく取っつきやすい内容であるが、登場人物を見つめる視線はやはり残酷(笑)。
かつて女優であった母を描く映画への出演を切望する中年女優、国民的ドラマで名を轟かす子役タレント。登場するキャラクターはアメリカのエンタメ界を支えるステレオタイプな人間たちだ。彼らが活躍する華やかなメディアの裏側にある、嫉妬、虚栄、金、家族の問題。映画は綺麗ゴトよりも汚物を捉えることを優先し、その姿はどれをとっても歪な形をしている。ハリウッドの隠れたスキャンダルを笑ってしまおうという、クローネンバーグのニヤニヤ顔が透けて見える。オスカー女優となったジュリアン・ムーアによる圧巻のキレ芸と、ミア・ワシコウスカの陰鬱な迫力に魅了される。2人の演技合戦がシンプルに面白い。物語は必然的に悲惨な展開へと導かれるが、そのままの流れで終わった印象が強くやや物足りなかった。

【60点】
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ある優しき殺人者の記録 【感想】

2015-05-21 09:00:00 | 映画


指名手配中の連続殺人犯の取材に向かったジャーナリストが、その取材先の廃屋マンションの一室で殺人犯の凶行に巻き込まれていくという話。ホラー寄りな、純度の高いサスペンススリラー。ほぼ全編ワンカットの長回し。POV撮影によるアナログな撮影手法と、密室劇による閉塞感、韓国人キャストの熱演が、観る者に緊張感を与え続ける。先の読めない展開に釘付けになり、リアリティとファンタジーをミックスさせた世界観が楽しい。韓国語と日本語の不通を活かした脚本もとても巧い。
白石映画は本作が初体験。個人的にイタダケなかったのは「エロ」の描写。そのシーンの放り込み方が手慣れた感じであり、おそらく白石監督映画のお約束と思われるが、その必要性は全くない(笑)。無駄にB級感を煽っているようで自分は冷めてしまった。しかしながら、韓国映画らしい友情ドラマに結びつけたエンディングはお見事で、想定外の充足感を得ることができた。

【65点】
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0.5ミリ 【感想】

2015-05-20 13:58:25 | 映画


勤務先でトラブルに巻き込まれヘルパーをクビになった女子が、町を徘徊し、目をつけた老人の家に押しかけ、居候しながら彼らの世話をするという話。新作DVDレンタルにて。
主人公の女子は善意の元に老人たちの弱みにつけ込み、老人たちの懐にスルリと入っていく。その手際が見事で楽しい。そんな主人公に老人たちも最初は抵抗しながらも、次第に心を通わせていく。主人公は何でも器用にこなすことのできるスーパー介護士であると共に、老人たちの孤独に寄り添うことができる。「違う時代を生きてきた人間と同じ時代に生きている」。タイトルの「0.5ミリ」の解釈がなかなか難解で十分に咀嚼できていないが、おそらく人間同士の繋がりを描いているのだと思う。個人的には「老い」というテーマに向き合ったドラマと受け取ったほうがスンナリ観られた。唐突気味に戦争体験までに遡るクダリや、冒頭で縁を持った家族に関わる最後のエピソードが蛇足気味に映るなど、196分の長尺は個人的には長く感じられてしまったが、とても見応えのある寓話だった。エンディングの曲も胸に沁みる。
自らが持つチャームを最大限に発揮した安藤サクラの好演は勿論だが、老人の1人を演じた坂田利夫(アホの坂田)の味わい深さが忘れられない。偏屈で臆病で心優しいお爺ちゃんの姿から、これまでの生きてきた老人の人生が浮上する。監督の演出力の賜だと思うが、素晴らしい存在感だった。

【65点】
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マッドマックスの新作の評価が、トンデモないことになっている件。

2015-05-16 07:00:00 | 気になる映画


これは事件だ。

日本で来月20日に公開される「マッドマックス 怒りのデス・ロード」が北米で封切られた。

オリジナルシリーズの監督、ジョージ・ミラーが同作を30年ぶりに復活させたわけだが、北米での評価がありえないことになっている。
RottenTomatoで早くも200近いレビューが寄せられているが、
その支持率が何と「99%」!!!!
驚愕だ。

このテのアクション映画としては、前代未聞の超絶ハイスコアであり、今年最も評価された映画は本作で確定ではないだろうか。
作風からして、アカデミー賞をはじめとする賞レース向きではないが、それでもこの圧倒的な評価は無視できないだろう。

何がそこまで人々の絶賛をかっさらっているのか。
期待が高まる。何とか試写で早く観てみたいものだ。

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スケルトン・ツインズ 幸せな人生のはじめ方 【感想】

2015-05-11 09:00:00 | 映画


今年の劇場未公開映画のベスト候補。作品の優劣よりも「好き」と言いたい映画。

弟の自殺未遂をきっかけに10年ぶりに再会した双子(姉弟)を描く。筆致はポップで軽快なのだが、中身は意外なほどシリアスなドラマだ。

「スケルトン」(骸骨)は、幼い頃に父が2人に贈った骸骨人形に由来する。それは不格好な人形だった。「決して離れてはならない」と父から言われた仲良しな2人は、その父の自殺後、いつしか音信不通で離れ離れになる。父親から多くの欠点の受け継いだ2人は、大人になっても器用に生きることができない。理解ある優しい夫と暮らしている姉は一見幸せそうだが、衝動的に男性と肉体関係をもってしまう「アバズレ」だ。その 病気を自覚する彼女は母親になることを恐れる。一方の弟は、筋金入りのゲイであり、精神的に打たれ弱い。2人とも不完全であり、壊れやすい人間だ。

そんな2人の再会は、それぞれの環境に大きな変化をもたらす。2人は血を分け合った双子であると共に、互いの本音を隠さず打ち明けることができる無二の親友だ。互いの性質を知ったる仲。そこには理解者こそが相手に影響を与えることができるという事実がある。2人の絆の形成は、幼少期から青年期までに遡る。直接的な過去の回想シーンは幼少期の断片的な記憶に留まり、その多くは2人のやりとりによって明らかになっていく。輝ける思い出と、悲しい思い出が鮮やかに浮かび上がってくる。劇中、2人が昔に良くやったであろう、スターシップの「愛は止まらない」の口パクごっこがとても楽しい。2人が仮装して出かけるハロウィーンのシーンも素敵だ。ノスタルジーが涙を誘う。

双子を演じるのは、SNL出身でコメディ映画の印象が強いクリステン・ウィグとビル・ヘイダーだ。本作の2人は今までに観たことのない繊細な演技をみせる。コメディアンが本気を出して演技をすると化けてしまう良い例だ。特にビル・ヘイダーのゲイ役はハマり役で、「モダンファミリー」のパパ役で御馴染みのタイ・バーレルとの秘められた情事がとてもリアルに見えてくる。

「大抵の人間はジタバタしながら、パッとしない人生を受け入れようとしている」
高校生のときに思い描いていた未来の自分はもっと違っていた。当時、運動バカのアメフトのスター選手だった同級生は挫折して悲惨な将来を送るに違いないと思ってたら、幸せになっている。悲惨な人生は自分のほうだった。。。映画で描かれる2人の境遇とはまったく違うのだけれど、思い描いていた過去と現在のギャップについては身に沁みて共感できるものだ。但し、それが不幸であるかといえばそうではない。自分含め、多くの人が現状を受け入れていると思うからだ。
「ベスト」ではなく「ベター」が本当の幸せなのかもしれない。結末の納まりの悪さも印象的で、観る人によってはバッドエンドに映るかもしれない。だけど、本作においてはこの締め方が正解なのだと思う。2人は幸せになったのだから。

【70点】

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セッション(2回目) 【感想】

2015-05-10 13:00:00 | 映画


熱狂。熱狂。熱狂。

辛抱堪らず、今年初のリピート鑑賞。2回目も漏れなく面白い。
「セッション」最高。

先の読める2回目は、キャストのパフォーマンスや監督の演出をじっくり味わう。

鬼教師フレッチャーのパフォーマンスが病みつきになる。

「ノー、ダブルタイム、ダブルッ!!」
「ファースター!、ファースター!」
「アンサーーーっ!!!」
「ファッキンッ、テンポッ!!!!」

血管ブチ切れ寸前のスキンヘッド頭に、シワシワの皮と分厚い唇。
演奏を止めるときの右腕のスピードと力こぶ。
そのセリフ、動きを、映画を思い出す度にマネしてしまう。

「挫折する奴はいない」というフレッチャーの予言通りのクライマックス 。
クライマックスのセッション時のフレッチャーの顔面がまた最高である。
「もっとくれ!、もっとくれ!」と、ネイマンの発奮に呼応する姿が絶品だ。

クライマックスのナンバー「キャラバン」は本作のサントラで聞きまくっているのだが、
映像の迫力が合わさると、また新鮮に映る。そしてボルテージが一気に上がる。
多くのカットを物凄いスピードで繰り出し、セッションのダイナミズムを伝える。
ネイマンがトラブルを起こすときの映像しかり、本作の編集手腕に何度も唸る。
「6才のボクが~」を差し置いて、本作がオスカー編集賞を受賞したのも納得である。

監督のデイミアン・チャゼルは本作の成功で、早くも次回作の製作が決定。
また、本人の完全オリジナルの脚本で、ミュージカル映画になるらしい。
間違いなく面白い映画になるだろう。待ち遠しい。

おそらく数年に1本あるかないかの、「誰が観ても面白い」映画であり、
TOHOシネマズなど、公開劇場が限られているのが非常にもったいない。
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プロミスト・ランド 【感想】

2015-05-10 13:00:00 | 映画


観終わって心地よい風を感じるような良作。エネルギー会社の男が農業地帯の地主か らシェールガスの採掘権を得るために奔走する話。エネルギー開発における負の側面が描かれるが、映画はそれを一方的に悪者にしない。財政に苦しむ自治体、そして、そこに住まう家族たちの重要な収入元になることは明白であり、映画もどちらかに答えを出さない。環境問題を扱った社会派ドラマとしてではなく、地主たちと同様に農業地帯で生まれ育った主人公の「信念」が描かれている。「守るべきものは何か」その結論に達したクライマックス前のシークエンスが印象的だ。レモネード売りの少女が、わずか25セントのレモネードのお釣りを主人公に渡すシーンだ。純粋な少女の良心に胸がキュンとなると共に、それが本作のテーマを象徴しているようだった。このテのキャラクターには主演のマッド・デ イモンの個性が抜群にハマる。彼は本作の脚本も共同執筆しているとのこと。高級車を先走って買ってしまった男の行く末が気になったり、フランシス・マクドーマンド演じる相方の子煩悩ぶりが物語上、あまり機能していない等、すっきりしないことも少なくないが、自身の生き方をつい振り返ってしまう物語だった。

【65点】
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劇場版「進撃の巨人」前編 紅蓮の弓矢 【感想】

2015-05-10 09:30:00 | 映画


実写版の予告編放映による劇場のどよめきから、自分も興味を引かれた。漫画を読み返そうと思ったが、原作のダイジェストをアニメ映画でやってくれているとのことで、新作DVDレンタルで観てみた。残念ながら、個人的にはその世界観にうまく乗れなかった。「巨人に支配される世界からの解放」みたいなテーマが強く叫ばれているが、観たところ、巨人は人間を捕食するためだけにやってきた感じだ。巨人はとても単細胞。塀に囲まれた都市で、人々が何不自由なく暮らしていることも、主人公の言う「屈辱」には繋がらず釈然としない。「巨人を駆除する」というシンプルな動機であれば、いっそよかったのかも。キャラクターの過剰な熱量も、力技でドラマを演出してい るようでイマイチだ。原作ファンである知人にそのことを伝えると、巨人の背景についてはその後解き明かされていくので、ある程度胸のつかえはなくなると思うが、根本的に自分には合わないのでは?とのこと。しかし、巨人たちを相手にワイヤーを駆使した空中殺法で戦いを挑むアクション描写がなかなかのものだ。寄生獣と同様に、日本映画のクオリティでこのアクションを再現するのは甚だ心配だ。神谷浩史(声優)演じるリヴァイ兵長がカッコいいのだが、実写版では登場しないらしい。劇場で観るのかは検討中。いずれにせよ、本作の実写映画は夏興行の台風の目になるのだろう。

【60点】
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ピルスナー・ウルケルを飲んだ件。

2015-05-10 09:00:00 | 日記


GW中、ジム通いで泳ぎまくった。で、お土産でもらったチェコビール「ピルスナー・ウルケル」を満を持して飲むことにした。

通販で日本の酒屋でも350ml瓶は購入できるみたいなのだが、この500mlは日本では売ってないようだ。
開封することに抵抗があったが、いざ飲む事に。

炭酸少なめでフルーティ、かつ軽快なのど越し。
あぁ、やっぱ旨い。

学生のときに、チェコに旅行で1週間ほど滞在していた。1人あたりのビールの消費量が世界一のお国だけあって、どこでもビールを飲みまくっている。チェコがEUに加盟する前だったので、物価も安く、ビールもジュース並に安かった。自分も食事の際にはもれなく飲んでいた。苦味の強い日本のビールとは違って、どのビールも非常に飲みやすく、その中でも一番飲んだのがこのビールだ。

あの頃の思い出が蘇るわ。あーもっと飲みたい。
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ウォーキング・デッド シーズン5 【感想】

2015-05-10 08:00:00 | 海外ドラマ


ウォーキング・デッド シーズン5をようやく観終わったので感想を残す。

その前に視聴方法について前置きを残す。
日本で独占放送であったFOXで一挙放送を見逃してしまったため、観る手段として残されていたドコモの「dTV」。当然ながら、スマホか、タブレットを利用しないといけない。専らガラケーの自分は、辛うじてWiFi専用のタブレットを持っていたたため、それを活用する。タブレットの小さい画面で字幕付きのドラマはさすがに観たくない。運よく、昨年購入したSONYのテレビが「dTV」に対応していた。しかし、テレビ単体の操作で済むかと思いきや、モバイル端末の利用が前提になる。毎話ごとにタブレットで操作して、テレビでデータを受信して、視聴する形だ。かなり面倒くさい。また、大きい画面で観られるのは良かったが、モバイル端末用の画質をテレビサイズに引き伸ばしたせいか、画質が粗い(HDと書いてあるのだが。。。)。暗い夜のシーンでは画面全体がつぶれてしまう。huluとは画質面でもまったく比較にならない。テレビでの視聴を考えた場合は「dTV」という選択肢はあり得ない。ドラマを観終わって早々に解約した。

で、ドラマの感想は一言で言うと「前シーズンよりは面白くなったが、まあまあ」。
急激に中だるみしたシーズン4から、物語は大きく前進する。シーズン4で行きついた「終着駅」は、実は悪の巣窟で(出た!カニバリズム!!)、リックたち一向の大脱出から始まる。リックは完全に鬼と化す。動きの少なかったシーズン4の鬱憤を晴らすようなロケットスタートだ。その顛末は意外とあっさり切り上げられ、次のステージへと向かう。ダリルと行動を共にしていたベスが連れ去られ、幽閉される病院だ。ベスが可愛い。頬の傷が痛々しくて可哀そう。舞台は都市部に変わる。荒廃したビル群の多くはCGによるものだろうが、風景が一気にスケールアップする。病院でベスを閉じ込めるのは、女性警官をリーダーにした新たなコミュニティだ。そのコミュニティの位置づけが良くわからなかった。釈然としないまま、マギー救出のために、リックたちが人質交換を行う。これはなかなかスリリング。そしてまさかの事態に。。。。

それにしても、人を殺し過ぎだ(笑)。シーズン5でいなくなるメンバーが残念で仕方ない。あれはないよ~。
このドラマはいくらでもエピソードが作られるだろう。コミュ ニティを作って、そこにリックたちと出会わせ、ひと悶着ある。新たな仲間が加わり、旧メンバーを殺していく。これの無限ループだ。コミュニティごとに変化をつければ、それほど飽きられることはないだろう。人間VS人間、ときどきVSゾンビという構図からは様々なプロットが思いつくはずだ。

ゾンビのクオリティもどんどん上がっている。ひたすらに気持ち悪い(笑)。消防ホースで溶けるようにゾンビを撃退するシーンが笑える。あんなに脆かったら、拳一突きで撃退できそうなもので、ゾンビの襲撃がまったく脅威にならないと思うのだが。。。

中盤以降のステージでは、シーズン2以来となる、安住の地に赴く。ここからがなかなか面白い。ゾンビ出現前の不自由のない社会が再来し、リッ クたちが新たな生き方を模索するのだ。リックがそこで出会う人妻に魅かれ「オス」となる。その人妻の夫から妻を寝取ろうとする気が満々で苦笑する。夫はDV男で、リックが人妻を救う理由をわざわざ作るなど、お膳立てが過ぎて「早くエッチすればいいじゃん」と呆れる。
シーズン5が物語のステージ、展開は十分面白いのだが、細部がかなり粗い。

それでも次のシーズンが待ち遠しくなる。あんな終わり方をしたら、次の展開が気になってしまう。ずるい。

【65点】

追伸>>
シーズン6以降、目も当てらないほどつまらなくなった。もう卒業します。

ウォーキング・デッド シーズン6 【感想】
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物語る私たち 【感想】

2015-05-04 09:00:00 | 映画


女優サラ・ポーリーが自身の出生の秘密を探るドキュメンタリー映画。監督サラ・ポーリーの映像作家としてのセンスが光る感動作。出生の秘密を探るなかで、幼い頃に亡くした母の知られざる恋が明らかになる。「当時、母親に何が起こったのか?」。映画は、父親(夫)、兄弟、異父兄弟、母の友人たちの証言によって、その答えを見出そうとする。浮上するのは母の人物像だ。舞台女優であった母は、明るく外交的な性格であり、誰かを愛し、誰かに愛されることに忠実な人だった。女優として、母親として、女として、生前輝いていた母の生き様が1つの物語として鮮やかに蘇る。真実は1つであり、それを語れるのは本人しかいないのだが、それは当然叶わない。どんなに彼女を思いやり、どんなに彼女を理解している関係者であっても、個人の意思と記憶が介在する証言(物語)からは、母の真実に辿りつくことができないのだ。それぞれの証言を編集し、1つの映画にまとめ上げるこの映画製作自体も真実を歪める行為であることをサラ本人も承知している。そして、その真実を導く行為は、いわば「暴露」であり、サラ本人、そして母親の名誉に繋がるものだ。それでも映画は「物語る」意味があると示す。それに気付いたときに、縁もゆかりもない一家の問題が、身近で普遍的な物語となって目の前に現れる。完全にしてやられた。「人生は喜劇からは逃れらない」。エンドクレジットに明かされる、もう1つの証言が印象的で思わずニヤリ。サラ・ポーリー凄い!そして素敵!

【75点】
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