から揚げが好きだ。

映画とサウナ。

第84回アカデミー賞 授賞式を振り返る。

2012-02-28 01:23:26 | 映画
第84回アカデミー賞、WOWOWの字幕放送を見終わった。

その結果については満足したものの、
授賞式の演出は自分の知っている中で
一番つまらなかったかも。

今回の授賞式のコンセプトは「映画愛」。

映画を観ることの楽しさと、映画を作ることの楽しさを
オリジナルの劇中映像やシルク・ドゥ・ソレイユのパフォーマンス、
オスカーにゆかりのある俳優たちのインタビュー映像を交えて魅せた。

まるで、今回の賞レースが映画愛の「アーティスト」と「ヒューゴ」で
盛り上がることが事前ににわかっていたかのよう。
オリジナル劇中映像に「ニューシネマパラダイス」や「アメリ」の
お気に入りのシーンが使われていたりもして、
「映画愛」というコンセプトには個人的に大賛成だったが、
ショーとしての魅せ方がとにかくショボかった。

視聴率が毎年下がっているとのことで、予算も厳しかったのか、
まずステージセットが例年に比べて寂しい。あっと言わせる演出も一切なかった。
1年間に1度の映画界の最大の祭典なのだから、もう少し考えてほしい。
映画で夢を見るという今回のコンセプトだったら尚更である。

エディー・マーフィの降板で、急遽ホストになったビリー・クリスタルがイマイチ。
そつなくこなしすぎで、優等生。用意された脚本どおり、そのまま進行させた感じ。
笑いを狙ってか、話し方、すごいためまくる。(都度セリフを思い出してる??)
全く面白くないので、その空いた時間を返してほしい。
オープニングのパフォーマンスも口パクっぽいし、かなり地味だった。
特段、粋なコメントもなく、期待値は下回った。

シルク・ドゥ・ソレイユのパフォーマンスはさすがの迫力だったが、
プロデューサーが他に良い企画が思い当たらなかったので、
シルク・ドゥ・ソレイユにコンセプトだけ伝えて丸投げした印象だ。

他、感想。

オクタヴィア・スペンサーの受賞コメント。
感情が吹き出し、言葉にできなかったリアクションがよかった。

クリストファー・プラマーの受賞コメント。
他ノミニーたちに敬意を表しつつ、
愛のあるジョークがカッコよかった。
トラップ大佐おめでとう!(^◇^)_/

そして、メリル・ストリープの受賞コメント。。。素敵すぎて泣けた。
最愛の家族や、「友人」と呼んだ会場の俳優、映画スタッフたちに対して
飾らないけど、ありったけの感謝を込めたその言葉に、
彼女の人柄、彼女が歩んできた道が透けて見えた。
会場全体も大きな感動に包まれて、涙ぐむ人も多し。

「ドラゴン・タトゥー~」演じたリズベッドの強烈な脅迫シーンの紹介のあと、
恥じらうルーニー・マーラの可愛い素顔に極萌え。。。

ナタリー・ポートマンから紹介を受けたゲイリー・オールドマンの
小さな投げキスがカッコええわ。
「レオン」もう一回見たくなった。

ミシェル・ウィリアムズのドレス姿がパーフェクト。
間違いなく今回のベストドレッサー。

受賞にも関わらず、相変わらず受賞式に顔を出さない
ウディ・アレンはさすが。

男装役だった、グレンクローズとジャネットマクティア。
そのゴージャスぶりと巨乳っぷりに、すごいギャップ。

クライマックスの作品賞の紹介映像は素晴らしかった。
「マネーボール」の大好きなBGMに載せて
ノミネートされた映画の様々な感情(映像)をシンクロさせる巧さ。
その感動的な仕上がりに脱帽。これだからハリウッドは最高。
ハリウッド、そして映画愛の象徴であるトム・クルーズを
最後のプレゼンターにしたのも大成功だったと思う。

WOWOWの放送はかなりよかった。

コメンテーターとして出演した斎藤工は
当初知ったかぶり俳優かと思ったが、とても的を得たコメント。よく知ってる。
オスカーに対する個人的な想いを代弁してくれたようなコメント連発で嬉しかった。

同じくコメンテーターとして出演した三谷幸喜、
アカデミー賞によく精通しているのでかなり驚いた。
彼らしい視点のコメントがとても良いな。

ジョン・カビラの決してハズレることのない、
添える気の利いたコメントも見事だった。

アカデミー賞受賞式、
期待が大きかったせいかもしれないが、
「よかった」より「終わった」という印象。

来年の授賞式はヒュー・ジャックマン、
ホストやってくれないかな~~~

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第84回アカデミー賞、終わる。

2012-02-27 18:59:37 | 映画
第84回アカデミー賞が終わった。

受賞結果は以下。

◆作品賞:アーティスト
◆監督賞:ミシェル・アザナヴィシウス(アーティスト)
◆主演男優賞:ジャン・デュジャルダン(アーティスト)
◆主演女優賞:メリル・ストリープ(マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙)←Oh!
◆助演男優賞:クリストファー・プラマー(人生はビギナーズ)
◆助演女優賞:オクタヴィア・スペンサー(ヘルプ 心がつなぐストーリー)
◆脚本賞:ミッドナイト・イン・パリ
◆脚色賞:ファミリー・ツリー
◆撮影賞:ヒューゴの不思議な発明
◆編集賞:ドラゴン・タトゥーの女
◆美術賞:ヒューゴの不思議な発明
◆衣装デザイン賞:アーティスト
◆メイキャップ賞:マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙
◆視覚効果賞:ヒューゴの不思議な発明
◆録音賞:ヒューゴの不思議な発明
◆音響効果賞:ヒューゴの不思議な発明
◆作曲賞:アーティスト
◆アニメーション映画賞:ランゴ
◆外国語映画賞:別離(イラン)

多くが予想していた「アーティスト」と「ヒューゴ~」の
一騎打ちの構図はやはり変わらなかった。
双方ともに5部門ずつの受賞。

しかし、そのすべてが技術部門での受賞となった「ヒューゴ~」に対して、
作品賞を初めとして、主要部門を獲得した「アーティスト」が今回の勝者といえそう。

予想していた作品賞と個人賞。
ヨミが際どかった主演女優賞は予想が外れて、メリル・ストリープになった。
個人的にはヴィオラ・デイヴィスにとってほしかったが、
受賞発表後、ヴィオラに歩みよりキスをしたメリルに、「さすがー」と納得した。

「アーティスト」はまだ見ていないため、面白い映画かどうか、
まだわからないけど、デジタルが席巻するハリウッドにおいて、
モノクロサイレント映画が受賞するとは何とも痛快だ。
また、フランス映画という外国語映画が主要部門と獲得したことで
アカデミー賞の公正さを示した形となり、多くの映画人に勇気を与えたと思う。

他にもウディ・アレンが脚本賞をとったり、
ドラゴン・タトゥーの女が編集賞をとったりと、
その結果に対しては昨年同様、大満足であった。

これからまた新しい映画年が始まる。

来年(今年)はできるだけ多くの映画が
受賞式前に日本公開されることをひたすら祈る。












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第84回アカデミー賞 直前勝手に予想。

2012-02-27 00:21:57 | 映画
第84回アカデミー賞がいよいよ明日に迫った。

厳密に言うと日付変わって今日の朝から始まる。

映画年がオスカーで終わって、オスカーで始まる私にとって、
その年の映画を総括する意味合いもあり、
一年で最も重要なイベントである。

で、受賞結果を予想して一人で盛り上がってみる。

◆作品賞(予想)

 アーティスト

◆監督賞(予想)

 ミシェル・アザナヴィシウス(アーティスト)

◆主演男優賞(予想)

 ジャン・デュジャルダン(アーティスト)

◆主演女優賞(予想)

 ヴィオラ・デイヴィス(ヘルプ 心がつなぐストーリー)

◆助演男優賞(予想)

 クリストファー・プラマー(人生はビギナーズ)

◆助演女優賞(予想)

 オクタヴィア・スペンサー(ヘルプ 心がつなぐストーリー)


今年のアカデミー賞予想は、主演女優賞以外は、ほぼ堅いと思われる。

「アーティスト」は上記主要部門の他にも各賞を複数獲得しそう。
ゴールデングローブ賞以降のの前哨戦後半から一気に、
他作品を追い抜いていった印象だ。

いずれにせよ明日の授賞式、どんなドラマが繰り広げられるのか、
WOWOWの放送が楽しみだ。

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ヤング≒アダルト 【感想】

2012-02-26 08:37:51 | 映画
ジェイソン・ライトマンの新作「ヤング≒アダルト」を観た。

本作はバツイチのアラフォー女子が、かつて(花の高校時代)の栄光を
取り戻すために、子どもが生まれたばかりで家庭円満の元カレを奪いに行く話だ。

まだ34歳というハリウッドの若き名匠、ライトマンの映画、
本作もやっぱり面白い。

この人の映画のプロットはいつもユニークで巧妙である。
そして描かれるキャラクターは皆魅力的だ。

長編デビュー作となった「サンキュー・スモーキング」では
喫煙を推奨するために奔走するタバコ研究者の広報部長の話。
次作で初のオスカーノミニーにもなった「ジュノ」では
予期せぬ妊娠をしてしまった16歳の少女の話。
3作目となった「マイレージ、マイライフ」では
1年のうち300日以上を解雇宣告人として全米各地を飛び回り、マイルを貯め続ける男の話。

4作目となる今回の主人公はヤングアダルトという小説ジャンルのゴーストライターという設定。
大人になりきれない(ヤング≒アダルト)アラフォー女子という、2つの意味が掛かっている。

本作の主人公の暴走ぶりは甚だしいので、はたから見れば単なる迷惑女なのだが、
悲哀の情が湧く、愛すべきキャラクターになっているのが印象的。

主演を演じたのはシャーリーズ・セロン。
「彼女が本作のオファーを断ったら、この映画は撮らなかった」という
ライトマンの期待に見事応えた好演だ。

コーラをガブ飲みしてゲップをしまくるような、
珍しいシャーリーズ・セロンを本作で見ることができる。

また、「ジュノ」で当時、オスカー脚本賞をとったディアブロ・コーディが
再び本作の脚本を描いた。

「初めてあなたにフェラをした時に、この音楽が流れていたの、覚えてる~」

みたいな、下ネタ、毒ッケ満載のセリフ回しが本作でも炸裂するが、
一貫してキャラに対する温い視点がその根底にあるため、
単なるお下劣映画ではなく、楽しくも、
実は深い人間ドラマになっている。

様々な対比を散りばめて、映画のテーマを浮き彫りにする、
ライトマンの演出も見事。

ラスト、主人公の女子が見出したゴールが
個人的には物足りず、もう少し描いてほしかったが
上映時間が足らないくらい楽しめた映画だった。

【65点】


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2011年下半期 DVD(旧作)映画 私的ベスト5

2012-02-26 01:40:25 | 勝手に映画ランキング
日付変わって、アカデミー賞を明日に控え、
2011年に観た映画の振り返りをしようと、
TSUTAYAログで自分がレンタルしたDVDを確認してみた。

で、2012年の2月末という今更ながら、
2011年レンタルしたDVDの中で好きになった映画をランキングしてみる。

ホントは2011年で見たDVDすべてを対象にしたかったのだが
過去半年以内しかストックされておらず、
上半期のタイトルを確認できないため「下半期」とした。

対象は2011年以前に公開された映画、
準新作、旧作DVDのタイトルで
自分が見た61タイトル(邦画・洋画問わず)


 1.『扉をたたく人』 
   (監督トム・マッカーシー 主演リチャード・ジェンキンス)
 
 2.『愛する人』 
   (監督ロドリゴ・ガルシア 主演ナオミ・ワッツ)

 3.『あの日、欲望の大地で』 
   (監督ギジェルモ・アリアガ 主演シャーリーズ・セロン)
 
 4.『ラスト3デイズ すべて彼女のために』 
   (監督フレッド・カヴァイエ 主演ヴァンサン・ランドン)

 5.(該当なし)


1位の「扉をたたく人」と2位の「愛する人」は甲乙付け難しな素晴らしい映画。

ブログ感想に残していなかった3位と4位の2作品の以下寸評。

「あの日、欲望の大地で」(80点)
 愛し、愛されることをやめない人間の性を描いた傑作。
 イニャリトゥ映画で馴染みの脚本家、アリアガの初監督作で、
 人間の本性を丸裸にした彼らしい世界観がとても好きだ。
 主演のシャーリーズ・セロンは勿論のこと、彼女の若き日を演じた
 ジェニファー・ローレンスがひたすら素晴らしい。

「ラスト3デイズ すべて彼女のために」(75点)
 フランス映画には珍しい、スリリングな本格サスペンス映画。
 愛する妻を守るため、国語教師のナリフリ構わぬ突進ぶりが痛快。
 トリリンガルのダイアン・クルーガーはフランス語も堪能。
 やっぱ綺麗で惚れ直した。。。

 
ちなみに2011年DVDで見たワースト映画は

『シルビアのいる街で』(30点)
 これほどまでに観る側の想像力に委ねる映画も稀。
 想像力の足らない浅はかな自分にとっては甚だ退屈な映画。
 「これで商用映画が成り立つんだったら、
  自分でも映画撮れるわ」と普通に思ってしまった。 














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ものすごくうるさくて、ありえないほど近い 【感想】

2012-02-25 16:24:31 | 映画
「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」を観た。

なかなか覚えにくタイトルだ。。。

明後日に迫った第84回アカデミー賞。
先月発表されたノミネーションの会場で驚きの声が挙がったのが本作だ。
アカデミー賞の前哨戦ではほとんどスルーされていたので「意外」だったからだ。

本作は9.11で父を亡くした少年が、父の遺した鍵の秘密を探るべく、
その手掛かりとなるニューヨーク中の「ブラックさん」を訪ね回る話だ。

9.11でのアメリカの喪失と、アメリカの国民性ともいえる人々の強い絆が、
感受性の強い少年の眼を通して鮮やかに描かれている傑作といえそうだ。

主役の少年オスカーを演じたトーマス・ホーンがめちゃくちゃ可愛い。

華奢な体格と、端正で柔和な顔立ちは、
女の子っぽい男の子というより、ボーイッシュな女の子だ。
自らを鼓舞するために持ち歩くタンバリンを鳴らしながら
ニューヨーク中を懸命に駆け回る姿が愛おしく、
終始シカメッ面で生意気ぶっこいているにもかかわらず、
力の限りハグしたい衝動に駆られる。(趣味ではない)

彼はアメリカのクイズ番組で優勝した経験のある天才キッズらしい。
演じたオスカーも自らを冷静に客観視できるほどの天才ぶりで、天才が天才を演じた格好だ。

言うまでもなく演技初挑戦とは思えぬほど、彼の演技は自然で素晴らしいのだが、
今回の映画出演に味をしめることなく、「よい思い出が出来た」とあっさり、
普段の一般人に戻ったほうが、彼らしくてよいんじゃないかと思った。

あと、彼の母親役のサンドラ・ブロックには、完全に泣かされた。
後半の彼女の活躍ぶりは個人的には強引な印象があって、あまり好きではないが、
一人の妻として、母として、純粋に家族を想う気持ちがストーレートに伝わる好演だった。
プライベートでも人格者として俳優仲間からも尊敬されている彼女、
ますます女優としても磨きがかかっている模様。

他にも本作で助演賞にノミネートされているマックス・フォン・シドーを初めとして、
ヴィオラ・デイヴィス、ジェフリー・ライト、ジョン・グッドマンなどの馴染みの実力派俳優たちも、
オスカーが紡ぐ物語に花を添える。

本作で監督した映画すべてが
アカデミー賞にノミネートされるという快挙を成したダルドリー。

アカデミー賞会員に強烈なコネがあったのでは?と勝手な疑惑を持っていたが
なかなか手堅い感想作だった。

【65点】


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メランコリア 【感想】

2012-02-20 20:58:10 | 映画
おととい、ラース・フォン・トリアの新作「メランコリア」を観た。

MOVIXさいたまで観たのだが、
客層がすごい。オール男子で皆一人。
自分含め皆、30代以上のオッサンたちの集まりである。

主演のキルスティン・ダンストは、日本ではブスカワではなく、
単なるブスとして認識されてるっぽいので、女子ウケは全くなさそうだし、
ラース・フォン・トリアの映画自体、観る人を選ぶからか。。。。

本作は、キルスティン・ダンスト演じる女子の結婚式から、
(架空)惑星「メランコリア」が地球に衝突するまでを描いた話だ。

惑星が地球に衝突する映画といっても
ラース・フォン・トリアがハリウッド的なディザスタームービーを撮るわけはない。

とある一家が終焉を迎えるまでの姿を追った内容。
終焉を「迎え入れる」という表現のほうが合っているかもしれない。

その映し出される世界に「あなただったら、どうする?」なんて余地はない。
ただ観客はその始終を傍観し、目撃するだけだ。

テレビCMで盛んに唄われている文句の
オープニングとラストのシーンは大袈裟ではなく、とても素晴らしい。

トリスタンとイゾルゲの荘厳な音楽に乗せ、世界の終末の直前をきりとったオープニングは
筆舌に尽くし難いほど幻想的で美しく、息を飲む。
ラストは、2Dでありながらその終焉の瞬間を「体感」する。

これは大スクリーンと大音響で観られる映画館の醍醐味そのもの。
またBDのきめ細かい映像で、TV視聴も悪くなさそう。

ラース・フォン・トリア節は本作でも健在である。
唯一無二の作家性、ドSで変人の彼にしか作れない内容。

序盤から始まる幸せな結婚式。
ごく普通にハッピーな雰囲気で終わるのかと思いきや、
わずかな綻びから、次第に人間関係はいびつに歪み始め、
最終的には粉々に崩れる。。。
かすり傷に塩を擦り込み、大怪我に発展する感じに似てる。

毎回、キャラクター(演じる俳優含む)をいじめ抜くトリアであるが、
本作での標的は主役のキルスティン・ダンストだ。

これまでの明るいキャラを封印して、
自らの幸せを自らでぶち壊す鬱病、奇行キャラを繊細に演じてる。
その様は見ていてめちゃくちゃ痛々しい。

彼女の見事な脱ぎっぷりも本作の見どころ。
夜、川辺に寝そべり、メランコリアの光に照らされるヌードシーンが何ともよい。
相変わらずの見事な巨乳なのだが、その姿は官能的で実に綺麗だ。
物語を語る上でもメランコリアと彼女の関係性を象徴づけるシーンであったかのよう。

物語の語り口がしつこく、やたら冗長だったりと、
これもラース・フォン・トリアらしいテイストだが、
それを補って余りある、映像美を初めとした極めて映画的なアプローチに賛成だ。

トリアー映画のなかでは「奇跡の海」と並ぶくらい、
個人的には好きな映画だ。

【80点】

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2012年度 注目映画私的10選 【邦画】

2012-02-19 00:27:10 | 勝手に映画ランキング
洋画に続いて、邦画の2012年度私的注目映画をメモしておく。

 1.苦役列車(7月14日) 監督 山下敦弘 主演 森山未來

 2.ミロクローゼ(春公開) 監督 石橋義正 主演 山田孝之  

 3.希望の国(秋公開) 監督 園子温 主演 夏八木勲 

 4.莫逆家族(秋公開) 監督 熊切和嘉 主演 徳井義実

 5.I’M FLASH!(9月公開) 監督 豊田利晃 主演 藤原竜也

 6.のぼうの城(秋公開) 監督 犬童一心×樋口真嗣 主演 野村萬斎
 
 7.夢売るふたり(秋公開) 監督 西川美和 主演 松たか子

 8.わが母の記(4月28日) 監督 原田眞人 主演 役所広司

 9.テルマエ・ロマエ(4月29日) 監督 武内英樹 主演 阿部寛

 10.なし

ほぼ好きな監督の新作ということだけで選んだ。

今年は昨年以上に邦画を観よう!と決意したが、
やはり観たい映画となると限定される。
10位まで埋まらなかった。

1位の「苦役列車」は
恥部を含めた人間臭さを描くのが抜群に巧い山下監督と
原作「苦役列車」の相性は抜群だと思う。
主演は森山君、共演は高良君ということもあり、めちゃくちゃ楽しみだ。

3位の「希望の国」は一位予定だったのだが、
苦手な神楽坂恵がまた出るということで。。。
監督と結婚したからこれからも出るのかー。うぅぅ。。

6位の「のぼうの城」は、大ファンの野村先生が主演というだけ。

7位の「夢売るふたり」は、西川監督、前作のディアドクターが
個人的に消化不良だったので、その流れがちょい心配。

9位「テルマエ・ロマエ」は原作の大ファン。

全部、シネコンでも上映されることは強く望む~けど無理かー。
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灼熱の魂 【感想】

2012-02-18 01:47:38 | 映画
以前にこんな偶然があった。
10年前、自分がまだ学生だった頃、 旅行先で泊まったバルセロナの宿で、
自分の上のベッド(2段ベッド)にいたアメリカ人青年と、
社会人となった5年後に、地元埼玉のコンビニで再会したというものだ。
これを必然として捉えれば「運命」というヤツなのだろうけど、
その後、彼とは一回のメールをしただけで終わったので、
単なる「偶然」として考えた。

今日観た「灼熱の魂」を反芻する中で、そんな記憶を思い返した。

「灼熱の魂」。

これまで「衝撃を受けたー」などと言ってきた、
映画とは全く別次元の映画。

映画を見終わって、しばらく立ち上がれないという本気の衝撃を初めて体感した。
しばらくして日比谷の街中に出ても、体の感覚が麻痺したまま。
酸欠な状態でふらふらになって歩く。
(自分が物事に影響されやすい性格だからかもしれないけど。。。)

本作はカナダに住む双子の姉弟が、
亡くなった母親の遺言に従って、母の故郷である某中東国に向かい、
まだ見ぬ彼らの「父」と「兄」を探し出し、亡き母から託された
各1通の手紙を渡すという話だ。

その道中、亡き母の知られざる半生と、
彼ら自身の出生にまつわる真実が明らかになっていく。。。

なので本作は紛れもないミステリー。

過去と現在が交錯し、散らばった謎が中盤以降、次々とつながっていき、
それらがすべて一つの真実に結実していく。

このテのミステリー映画は他にも多々あるのだけれど、
本作は並のミステリー映画とは似て非なる、突出した映画だ。

それは人類の汚点ともいえる忌まわしい史実に基づいた、
想像を絶するほどエモーショナルで、ダイナミックな人間ドラマだということ。

どんな神も望んでいない、異教徒同士の血で血を洗う抗争。

愛情も一握りで潰してみせる、憎しみと復讐の連鎖。

女性であることの性。。。。

そして偶然がもたらす大いなる残酷。

映画はそれらの情景を観る側に何の躊躇もなく、突きつける。

物語の結末(真実)は、切ないや悲しいを通り越して破壊的だ。

正直、今現在でもショックのあまり、
物語の終着点である、肝心の母の秘められた想いが、
十分に咀嚼仕切れていない。

本作は昨年のアカデミー賞で外国語映画賞にノミネートされていたが、
昨日観た「未来を生きる君たちへ」が同賞を受賞した。
この結果に対しては当時、本作が受賞すべきだったという声が結構挙がったらしい。

個人的には再度観てみたい「未来を~」の方が好きなのだが、

「2011年を代表する一本を挙げろー」と言われたら、
本作「灼熱の魂」を迷わず挙げると思う。

身体が震えるほどの映画の力を、
本作でまざまざと見せられたからだ。

【採点不能】


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2012年度 注目映画私的10選 【洋画】

2012-02-17 21:48:34 | 勝手に映画ランキング
2012年度(2012年3月~)で日本公開が決定している映画の中で、
注目している映画を自身の備忘録として残しておく。

まず、洋画。(期待度順)

 1.ダークナイト・ライジング(7月28日) 監督クリストファー・ノーラン 
 
 2.ドライヴ(3月31日) 主演ライアン・ゴズリング 
 
 3.プロメテウス(8月) 監督リドリー・スコット 主演マイケル・ファスベンダー
 
 4.裏切りのサーカス(4月21日) 監督トーマス・アルフレッドソン
 
 5.ホビット(12月14日) 監督ピーター・ジャクソン
 
 6.シェイム(3月10日) 監督スティーヴ・マックイーン 主演マイケル・ファスベンダー
 
 7.トロールハンター(3月24日) 監督アンドレ・ウーヴレダル
 
 8.別離(春公開) 監督アスガー・ファルハディ
  
 9.アーティスト(4月7日) 監督ミシェル・アザナヴィシウス
 
 10.アメイジング・スパイダーマン(6月30日) 監督マーク・ウェブ

他にも
「ヘルプ」「ファミリー・ツリー」「少年は残酷な弓を射る」、
「ミッドナイトインパリ」「アベンジャーズ」「テイク・シェルター」なども
ありつつも悩んで選んでみた。

半分以上が全米では昨年公開済みだ。残念。
日本公開が決定されていない映画でも注目している映画が沢山ある。
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未来を生きる君たちへ 【感想】

2012-02-17 01:41:48 | 映画
今、ユナイテッドシネマ浦和でシネマ・セレクションというキャンペーンをやっている。
2011年の名作を再上映するというもので、英国王のスピーチやら、ブラックスワンやら、
まあ間違いないラインナップ。入場料金は理想の500円(会員価格)。素晴らしい!!

で、その中にたまたま、夏に見逃してしまった映画があったので、
会社の帰りにうまい具合に観ることができた。

「未来を生きる君たちへ」というデンマーク・スウェーデン映画。
昨年のアカデミー賞で外国語映画賞を取った映画で気になっていた。

「未来を生きる君たちへ」はもちろん邦題タイトルなのだが、
言葉で発するとクサすぎてセンスが悪いなと思った。

内容もほぼ知らず、さほど期待はしていなかったけど、

キタ━━━(゜∀゜)━━━っ

これぞ自分の好きなドラマ。
そして強い普遍性をもった映画。語り継いでほしいと思った映画。
まさに「名作」という言葉の似合うと思った。

本作は2つの家族の物語。

アフリカの紛争地域の難民キャンプに、単身赴任で務めるスウェーデン医師のアントン。
アントンの過去の浮気が原因でデンマークで別居中の妻のマリアン。
アントンとマリアンの子どもであり、学校でいじめを受けている少年エリアスとその弟。

もう一つの家族は、母の病死により、デンマークに越してきた少年クリスチャンと
その父のクラウス。

本作で描かれるのは「復讐」と「赦し」の話。

憎しみは憎しみを呼び、復讐は復讐を生む、
といった負の連鎖は、この現代社会で誰しもわかっているはず。
だけど、今なお世界では自分らが知らないところで戦争が続いている。
なぜだろう。。。

その理由が本作で描かれるものだ。

アフリカのキャンプで医師として働くアントンのもとに、
お腹を割かれた妊婦たちが連日運び込まれる。ゲリラ部族の虐殺によるもの。
懸命に住民たちの命を救おうとするアントン、
その一方で暴力という豪雨は否応なしに降りしきる。

一方、デンマークでは、転校先でいじめられていたエリアスを
クリスチャンが助け、いじめっ子に対して血を見るほどの報復をする。
助けられたエリアスはクリスチャンと親友になるとともに、
「復讐」(暴力)の正当性を感じ、魅了されてしまう。

序盤から「善」と「悪」の概念が揺らぎ始める。。。

デンマークに戻り、エリアスら家族と再会するアントン。
街中でアントンが理不尽な暴力に見舞われたことがきっかけに、
事態はとんでもない方向へ進んでいく。。。。

暴力に振るった相手に対して恐怖を覚えるエリアス。
暴力は怖くないと子どもたちをなだめ、事態を収めようとするアントン。
暴力を振るった奴は、自分が愚かであることを自覚していない、
なので自覚させないとダメだとエリアスに言い放つクリスチャン。

仕事中、お茶の飲みすぎで激しい尿意を催していたが、
この展開あたりから、その緊張感のあまり、尿意が奇跡的に吹き飛んだ。

冷静に見たら、突拍子もない話なのだが、
それぞれの人物像の輪郭が鮮やかなキャラ設定、
アントン演じたミカエル・パーシュブラント、
子役のエリアス、クリスチャン2人を含めたキャスト陣の熱演と、
ドキュメンタリーを観ているような臨場感に圧倒され、鳥肌が立った。
退屈な映画かもと思っていたので、この求心力は想像以上だった。

物語はデンマークとアフリカでのシーンを交互に映し出す。
物語の世界は違っても、暴力や憎しみから派生するその構図は何ら変わらないことに気づく。
恐怖が生まれ、憎しみに変わり、復讐へ。
アントンをはじめ、本作で描かれるキャラは理性的でありたいと願いながらも、
その連鎖に抗うことができない。

しかし、本作の監督スサンネ・ビアが本当に描きたかったことは「希望」だった。

「復讐」から派生し望まぬ顛末を迎えた登場人物たちを
「赦し」をもって抱きしめた結末に感動。
エンドロールで空想スタンディングオベーションする。

負の連鎖は、おそらく終わらないだろうけど、
よりよい未来を作るために努力をすることはできるはずだ。

「未来を生きる君たちへ」か。

この映画に出会えてよかった。

【95点】











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人生はビギナーズ 【感想】

2012-02-15 00:31:34 | 映画
今日は14日。TOHOシネマが1000円で観られる日だ。

で、前からずっと楽しみにしていた「人生はビギナーズ」を観ることに。

最近は単館系映画もシネコンでやることも多くなったが、
本作は都内でも2ヶ所でしか観られない。

ブルーバレンタイン以来、久々に日比谷のシャンテで観た。
シャンテの4階スクリーンは初めてだったが、
スクリーンはそこそこ大きいのに、客席が窮屈過ぎて、かなりシンドかった。
しかも超満員だったので、後方から観ると人がギッシリ詰まっていて異様な光景。

一見シャレオツ風な単館系映画って、
テンション高く鑑賞に挑む人がよくいる。
今日がマサにそれだった。。。
序盤からイチイチ、リアクションがウザイ。普通に観て欲しい。

で、本作。

妻の死をきっかけに、息子に「自分はゲイだ」と告白した父親と
その息子の話だ。

タイトルの「人生はビギナーズ」という言葉が本作にピッタリ。
これほどのセンスの良い邦題タイトルは稀だ。

『人はいつでも初心者になれる』といった、
ポジティブで暖かいメッセージが込められている映画だった。

本作で各賞を総ナメにしている父親役のクリストファー・プラマー。
「老人のゲイ」という、キャラの奇抜さがその賞の対象になったのではなかった。
ゲイという、本来の自分で生きる「ビギナー」となり、
余命を精一杯、愛に生きる姿に胸を打たれた。

ユアン・マクレガー演じる息子も、その父親の生き様と死に様を通して、
自分自身を見つめなおし、かけがえのないパートナーと出会ったことで、
新たな人生のビギナーとなる。

昨年のゴーストライターしかり、良作への出演が続くユアン・マクレガー。
個人的には注目していたクリストファー・プラマーよりも、実は彼の存在の方が印象に残った。
トレインスポッティング時代のエッジっで売っていた若手俳優はもはや演技派の域。
本作でのユアンも、作品世界、空気感をよく投影していて素晴らしかった。

子ども時代のエキセントリックで優しいお母さんとのエピソードも素敵。

彼の相談相手のワンちゃんはめちゃくちゃ可愛く、そして圧巻の演技を魅せる。
ユアンとワンちゃんの会話が最高に楽しい。

あと、先週観たドラゴン・タトゥーの女に引き続き、
医療ドラマERのルカ役で馴染みのゴラン・ヴィシュニックも出ていて嬉しかった。

全編、優しさと肯定で充満する本作。

その心地よさに、前半たびたび意識が飛んでしまった。。。

映画としては快作に間違いないけど、
個人の好みはちょっと別だったかも。

【60点】






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英国アカデミー賞発表。

2012-02-14 01:53:09 | 映画
再来週に迫る米アカデミー賞。

ひと足先に英国アカデミー賞の受賞結果がが昨日発表された。
結果は以下の通り。

◆作品賞

 ★アーティスト(ミシェル・アザナヴィシウス監督)
  ファミリー・ツリー(アレクサンダー・ペイン監督)
  ドライヴ(ニコラス・ウィンディング・レフン監督)
  ヘルプ 心がつなぐストーリー(テイト・テイラー監督)
  裏切りのサーカス(トーマス・アルフレッドソン監督)

◆英国作品賞

  マリリン 7日間の恋(サイモン・カーティス監督)
  アイルトン・セナ 音速の彼方へ(アシフ・カパディア監督)
  SHAME シェイム(スティーヴ・マックイーン監督)
 ★裏切りのサーカス(トーマス・アルフレッドソン監督)
  少年は残酷な弓を射る(リン・ラムジー監督)

◆主演男優賞

  ジョージ・クルーニー(ファミリー・ツリー)
 ★ジャン・デュジャルダン(アーティスト)
  マイケル・ファスベンダー(SHAME シェイム)
  ゲイリー・オールドマン(裏切りのサーカス)
  ブラッド・ピット(マネーボール)

◆主演女優賞

  ベレニス・ベジョ(アーティスト)
  ヴィオラ・デイヴィス(ヘルプ 心がつなぐストーリー)
 ★メリル・ストリープ(マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙)
  ティルダ・スウィントン(少年は残酷な弓を射る)
  ミシェル・ウィリアムス(マリリン 7日間の恋)

◆助演男優賞
  
  ケネス・ブラナー(マリリン 7日間の恋)
  ジム・ブロードベント(マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙)
  ジョナ・ヒル(マネーボール)
  フィリップ・シーモア・ホフマン(スーパー・チューズデー 正義を売った日)
 ★クリストファー・プラマー(人生はビギナーズ)

◆助演女優賞

  ジェシカ・チャステイン(ヘルプ 心がつなぐストーリー)
  ジュディ・デンチ(マリリン 7日間の恋)
  メリッサ・マッカーシー(Bridesmaids)
  キャリー・マリガン(ドライヴ)
 ★オクタヴィア・スペンサー(ヘルプ 心がつなぐストーリー)

アメリカ映画俳優組合賞と同様、毎年、米アカデミー賞の結果と重なることの多い本賞。

ここ3、4年は作品賞を外していなかったと思う。

英国映画ビイキな結果になりやすい本賞であるが、
「アーティスト」が主要部門含めて圧巻の7冠の快挙だ。

オスカー賞レースも「アーティスト」旋風が巻き起こるのはほぼ間違いなさそう。

少なくとも作品賞と主演男優賞はかなり堅いだろう。
ハリウッドの兄貴ジョージ・クルーニーはこれで完全アウトか。

助演の2名もほぼこれで当確。

一番予想が難しいのは主演女優賞のメリルとヴィオラの一騎打ち。
さてどうなるか。





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キツツキと雨 【感想】

2012-02-13 01:10:28 | 映画
注目映画の公開が続く。

沖田修一の待望の新作「キツツキと雨」を観た。
同監督の前作「南極料理人」がドツボであったため、
期待して楽しみにしていた本作。
いや~面白かった。

本作は岐阜の山村を舞台に、役所広司演じる無骨で職人肌の木こりと、
ゾンビ映画を撮るためにその山村に訪れた、小栗旬演じる
極端に気弱で決断力にかける新人監督の交流を描いた話だ。

前作「南極料理人」同様、大いに笑ってホロッとさせて。。。と、
自分の好きなタイプのハートフルコメディだった。

同監督のユーモアセンスが本作でも発揮されている。
奇をてらったセリフはひとつもなく(石井裕也も見習ってほしい)
大いなる共感を背景に、よくいそうな人と人のコミュ二ーケーションの
隙間にできる独特な間(マ)にフォーカスして、笑いに変えるセンスの良さ。
所ジョージがやってるダーツの旅で、よく出る「第●村人」と、
番組ディレクターが織り成す笑えてしまうコミュニケーションに似ている。

そんな沖田修一のセンスある演出と、それに応え、
本作でも最高のパフォーマンスを魅せた役所広司のケミストリーにより、
ニンマリと爆笑の連続の映画になった。

思い出し笑いをしてしまうようなシーンが多いが、
中でも、木こりがゾンビ映画に端役で出たことが仲間内にバレて、
最終的にはなぜか誇らしい気持ちになってしまうシーンが最高だ。
「ありそうだな~」という共感と、その際の木こり役の役所広司の表情に
大いに吹き出してしまった。

毎回思うのだが、役所広司という役者さんは日本映画界の宝だ。
出る作品ごとに色を変えてくるカメレオン俳優、という言葉だけでは安すぎる。
演技という役割を通して人の心を動かし、
出演する映画を最大限魅力的なものにする功労者である。

本作で演じたキャラにおいて
実直なだけに、知ってしまった映画作りという世界に魅了され、
周りの村人を巻き込み、傾倒してしまう姿。
どうしようもない新人監督に対して、時に叱咤激励し、
不器用ながら優しく彼の背中を押す姿。
最高におかしくて、暖かくて、「好演」という言葉に尽きる。

沖田映画の常連、本作では助監督役の演じた古舘寛治も良い味だしてた。
主演の小栗旬は上手いのだが、本作キャラは彼じゃなくてもよかったかも。。

あと、沖田修一映画のスタイル(?)でもある「食」が本作でも健在。
今回は「味のり」と「あんみつ」がポイントだ。
「食」のシーンに関しては一定のコダワリを持っている(と思われる)が、
そのスタイルはこれからも持ち続けてほしい。

物語がよく出来ているので原作がある映画かと思ったら、
監督沖田修一のオリジナル脚本らしい。
自分で本を描く監督は珍しく貴重だし、
それが面白いので、なおさらすごい。

エンディング曲の星野源の唄も、作品に合っていてベリーナイス。

今日観たのは日曜日のレイトショーだったからか、
公開2日目にも関わらず、広い観客席に人が自分含め10名程度だった。
「南極料理人」同様、本作もヒットして、
同監督の次回作の製作に弾みをつけてもらいたいものだ。

【75点】


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ドラゴン タトゥーの女 【感想】

2012-02-12 00:34:09 | 映画
映画を観る楽しさ、醍醐味みたいなものは多々あれど、
キャスト、製作スタッフ含めて、今後注目すべき、
お気に入りの才能を見つけた時の感動は、何ものにも代え難い。

それが俳優だったりすると、一目惚れに近いものがある。
昨年でいえばジェシー・アイゼンバーグだったり、
一昨年でいえばキャリー・マリガンだったり、と。

で、今年(2011年)のイチオシ注目株が決まった。
今日観た「ドラゴン タトゥーの女」でヒロイン、
リスベットを演じたルーニー・マーラだ。

先月放送された今年(昨年)のゴールデングローブ賞授賞式で
数いる有名女優陣の中で、一際目立って綺麗だった彼女。
あれからかなり気になっていたが、本作を観て、完全に惚れた。

本作は世界的ベストセラー(らしい)、3部作になるサスペンス小説「ミレニアム」の映画化。
既にスウェーデンでシリーズは映画化されていて、日本でも公開、DVD化されている。
自分もシリーズ3作を見ていて、どれもかなりの秀作。

本作をそのオリジナルの「リメイク」と位置付けるのは、抵抗がある。
本作は完全なオリジナルだったからだ。

スウェーデン版、ハリウッド版としたい。

で、先のスウェーデン版が面白かったので、
どうしても本作と比較して観てしまうのだが、
結論からいえば、本作、ハリウッド版の方が個人的に好きだ。

まず、オープニング映像がめちゃくちゃカッコイイ。
ヘビメタチックな聞き覚えのある有名な曲(曲名がわからないー)の爆音BGMにのせて
シリーズに一貫されるダークな世界観、暴力、軽蔑、欲望といった本作のエッセンスを
人物、動物、様々な造形を使った漆黒のウネリで表現。
「これは絶対面白い」と確信する。

原作小説を読んでいないので、下手なことはいえないが
スウェーデン版は、文章で描かれた世界を忠実に映像で再現したもののように思う。
時に余計な説明は入れずに、読書同様、観客側にも想像力をもって見せるような感じ。
それに比べて、本作はフィンチャーらしいスタイリッシュな映像で、必要な情報を抑えつつ、
難解になりがちなサスペンスを、直感で観客側に見せるようなストーリーテリングぶり。

想像力をもって映画を楽しむ人には、スウェーデン版が響くと思うが、
想像力のない自分には、直感で、よりエンターテイメント色が濃い本作が好きだ。
筋書きがわかっていても2時間40分という上映時間があっちゅう間だった。

そして、このミレニアムシリーズの魅力は何といっても、
ヒロインの天才ハッカー、リスベットのキャラクターである。

スウェーデン版でリスベットを演じたのはノオミ・ラパス。ホントよかった。
骨と筋肉だけという体型に仕上げ、極めて男性的で影のあるリスベットだった。
実際、本作で注目された彼女は、もうすぐ日本でも公開される、
ガイ・リッチーの「シャーロック・ホームズ2」や、今年の大期待作である、
リドリー・スコットの新作「プロメテウス」のヒロインに抜擢されている。

なので、スウェーデン版のノオミ・ラパスが良かっただけに、
本作のルーニー・マーラに対して、当初そのキャスティングを聞いた時には
不足感を懸念していたが、見事一蹴してくれた。

ルーニー・マーラ演じるリスベットは、ざっくりいうと、
か弱さや脆さを残す乙女なリスベットだ。

痩せこけ、タトゥーとピアス、革ジャンを身にまとうハードコアな外見は変わらないが、
脱いだ時の身体のしなやかさ、瑞々しい質感、その柔肌具合は、とても女性的。
その女性的な姿は、キャラクターにも連動していて、本作で描かれる新たなリスペット像といえる。
ダニエル・クレイグ演じるミカエルに対する感情の持ち方もストレートで
どこか刹那的だったスウェーデン版のリスベットとは、かなり異なる。

「もっと触っててよ」とミカエルに対して愛を乞う、
リスベットのセリフに萌えた。

暗い闇を背負い、彼女が体に「ドラゴンタトゥー」を入れなければならなかった切なさを、
本作でのルーニー・マーラの姿から十二分に感じ取ることができた。

ミカエルに対して、リスベッドが特別な感情を抱くようになるきっかけが、
本作については「もう少しほしいな~」と思ったが、
そこは紳士かつ包容力のあるダニエル・クレイグというキャラが存在するだけで、
相殺されるものかもしれない。

物語のラストは、ルーニー・マーラ演じるリスベットならではのシーン。
ルーニー・マーラの表情が素晴らしかった。抱きしめたい衝動に駆られる。

本作で堂々の主演女優オスカーノミネーションとなったルーニー・マーラ。
再来週に迫った授賞式で、彼女を見るのがホント楽しみだ。

スウェーデン版同様、本作も続編を是非是非、作ってほしいが、
過酷なハメになるルーニー・マーラをこれ以上見たくないという思いもあって複雑だ。

ハリウッドでも彼女の今後は期待されていて、テレンス・マリック監督の元、
私の大好きなライアン・ゴズリングとの共演作(原題「Lawless」)に要注目。
2人のラブシーンを想像するだけで鼻血が出るわ。。。
(ちなみに同作は他にクリスチャン・ベール、ナタリー・ポートマン、
 ケイト・ブランシェットらが共演、凄まじい豪華色!!!)

【75点】





















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