リブート映画の成功作。男女の逆転のプロットがキマっている。シンプルに楽しめる正統派ポップコーンムービーを久々に堪能。ポール・フェイグ映画のなかではユーモアの加減が一番良いと思う。伏兵、クリス・ヘムズワースがコメディ要員としてまさかの活躍をみせる。エンディングを見送って「あぁ面白かった~」と呟く。
オリジナルの第一作から30年以上の時を経て、満を持してのリブート作だ。続編ではなく、オリジナルのストーリーをなぞる形に近い本作は、オッサンたち4人から、おばさんたち4人に主要キャラをスイッチした。アメリカのドメスティック感の強いSNL出身のコメディエンヌを揃えたキャスティングに、観る前から食傷気味だったけど実際に観てみたら全然アリだった。彼女たちの息のあったコンビネーションに納得。ジョークとボケ倒しに笑いが止まらない。撮影現場での楽しい雰囲気が伝わってくるようだ。
メリッサ・マッカーシーのフォルムがどうしても好きだ。直近で観た「スパイ」から少しほっそりした印象だが、それでも体型の「風船」感は変わらない。彼女が劇中で初めて顔を出すシーンが出オチだ。彼女の丸顔とヘンテコなヘルメットが妙に似合っていて吹き出す。彼女の演者としてのパフォーマンス含め、彼女の持ち味はユーモラス&チャーミングであり、ポール・フェイグが彼女を好んでキャスティングする理由がわかる。
登場する4人のキャラの個性付けがオリジナルに負けず劣らずしっかりしているのが良い。ゴーイングマイウェイな理系女子「アビー」、キャリア重視な理系女子「エリン」、パンクな天才理系女子「ホルツマン」、肝っ玉女子の「パティ」。彼女たちの明け透けな掛け合いの摩擦によって次々とユーモアが湧き上がる。日本人にはわかりにくいネタもあるが、そのヒット率はなかなか高い。オリジナルのキャストたちが総登場しているが、その扱いがときに雑なのが逆に笑える。
オリジナル以上に4人のバディ感を強く感じる。とりわけ主要キャラを女性に変えたことが大きい。男性イメージの強い理系キャラを、女子にしたことでその奮闘ぶりが一層際立ち、女子同士ならではの明るさや結束感が良い味付けになっている。個人的にはオリジナルの男性組よりも本作の女性組のほうが好きだ。その4人組に新たに加わるのが「観賞用」として彼女たちの手伝いをするイケメン男子だ。まともに仕事ができない単細胞で、顔と体が良いだけで何の取り柄もない男だ。その存在を俯瞰して見ると、男性ヒーロー映画によく登場するナイスバディなお姉ちゃんたちを思い出す。ありがちなプロットに対する皮肉に見えてきて可笑しくなる。演じるクリス・ヘムズワースがこれまでのイメージを封印してバカに徹する。頭の悪さ全開のウィンクの巧さよ。彼のキャスティングが見事にハマっているのが本作の成功要因でもある。ラストのダンスシーンを含めて、後半から一気にまくって笑いをとった。
もう1つの主役であるゴーストたちは、オリジナルの色をそのまま踏襲する。ホラーではなく、あくまでコメディキャラとしての位置づけをキープする。ファミリー映画として安心安全な作りだ。オリジナルで観たことのあるキャラクターもチラホラ登場。出てくるゴーストは同じ感じでも、30年前からの視覚効果の進化によって表現できることの幅は広がった。クライマックスの「ゴースト祭り」が壮観だ。緑色の火の玉のような無数のゴーストたちが、ニューヨークをところ狭しと行進し、宙を舞う。打ち上げ花火を見ているような眼福感アリ。そして、ゴーストたちを一掃するアクションシーンが痛快だ。特に、怖いもの知らずのホルツマン(素敵♪)による一騎当千なバトルシーンがケレン味たっぷりに描かれ、そのカッコよさに痺れた。彼女たちが武器として扱うレトロ感たっぷりのガジェットデザインも素晴らしい。
オリジナルへの愛と、現代流の味付け、進化を感じさせる正しいリブート作。大満足だった。
【70点】