から揚げが好きだ。

映画とサウナ。

ダークナイト ライジング 【感想】

2012-07-28 00:48:26 | 映画
この日を3年間待っていた。

「ダークナイト ライジング」を観終わって感じたのは、
その充足感よりも、「もう一回観たい」という欲求だった。

 別格。
 バットマンの最終章は至高だった。
 
「絶対に面白いはず!」「つまらなかったらどうしよう・・・」といった、
期待値の高い映画につい抱いてしまう、余計な思考は、
上映開始直後のベインの圧巻の登場シーンでブっ飛ばされ、
自覚のないまま、本作「ダークナイト ライジング」の虜になった。

 正義とは何か。悪とは何か。

 希望とは何か。絶望とは何か。

 ヒーローとは何か。

前作「バットマンビギンズ」「ダークナイト」でも一貫して描かれてきたメッセージ。
本作「ダークナイト ライジング」においては
3部作の完結編として一つの答えが出ており、それが見事にキマっていた。

前作の「ダークナイト」と比べても、何ら遜色はなく、
スリリングなストーリーテリング、複雑になってもなお深い人物描写、
他の追随を許さない破壊的アクションは、前作をむしろ凌駕していると思う。

前作に登場した(大好きな)高速の戦車「バットポット」に加えて、本作で新たに登場した、
軽快でスピーディーなホバリングと、攻撃力抜群な飛行マシーン「ザ・バット」が
カッコ良すぎて最高である。

前作でのヒース・レジャー演じるジョーカーを通して描かれた、
純度の高い「狂気」と「悪」が、物語の世界観をより深めていたと思うが、
本作でのトム・ハーディー演じる悪役ベインも、モノ凄い存在感。
完結編という大舞台においても、不足なしだ。

そんなベインがバットマン、ひいてはゴッサムシティにもたらしたものは、
「絶望」と「恐怖」。

それが本作「ライジング」を覆う世界観の源泉となっていることは間違いないが、
同時に、物語のクライマックスに向けて、バットマン(だけじゃないけど)の
「ライジング」へのモチベーションにつながるあたりが、何とも堪らない。

そのベインを演じたトム・ハーディ。
ステロイドよろしくな異常なマッチョぶりと、
着用しているマスクのせいで顔が半分見えない中、
眼光一つで感情を表現する巧さに唸った。ホント素晴らしい。

他キャスティングも全くズレがなく、作品世界に密着している。
当初、「ダークナイト」と「インセプション」を足したようなキャスティングに、
「勝手知ったる俳優だから、ノーランが単純にやりやすいのだろう」と思っていたが、大違い。
皆それぞれにキャスティングした理由がわかるほどの、ハマリ具合。
特に印象的だったのが、ジョセフ・ゴードン=レヴィットの存在感。これは結構意外だった。
ゴッサムシティの希望の象徴のような刑事役を、味わいたっぷりに演じて魅せた。
あと、個人的にはキリアン・マーフィ演じるスケアクロウが出ていたのも嬉しかった。

映画で流れる音楽はいずれも重低音甚だしく、強めのボディーブローのようで
聞いているだけで腹筋が鍛えられそうだ。

何かとCG描写に頼る昨今の映画製作において、現物撮影を優先するノーランのこだわりは、
その質感にリアリティをもたせ、観る側に迫ってくる。

「迫力」という言葉では不十分なほど、
映し出されるシーンの数々は桁違いにスケールが大きく、
カメラワーク、空間の作り方、光の作り方など、
ノーランの演出手腕はもはや神がかっている。

こんな映画、向こう10年は作れないだろうな。。。

「己を超えるものは己のみ」って言葉がありそうだが、、

本作で描かれるバットマンの姿であると同時に
「ダークナイト」という傑作の後に、
本作という新たな伝説を生み出したノーランそのものにも重なる。

「もう一回観たい」は、本作があらゆる意味で巨大なため
十分に咀嚼して味わえた自信がなく、リピートして観ることで、
本作をさらに好きになる確証みたいなものがあったから。

オスカー作品賞候補が3年前から10作品に増えたのは、
まだ5作品枠だった前年に「ダークナイト」が候補に選ばれなかったことに起因してる。

本作で次のオスカー、待望の作品賞とってくれないかな~

【96点】





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「ダークナイト ライジング」の公開が明日に迫る。

2012-07-26 22:46:44 | 日記
「ダークナイト ライジング」の公開がいよいよ明日に迫った。

明日の先行公開を前にして、あぁ興奮してきた。。。。

最高の映画は、最高の視聴環境で観なければならないので、
2Dながら、ユナイテッドシネマ浦和のIMAXでチケットを予約した。

上映スケジュールが組まれた1週間前に予約したのだが、
既に半分くらい席が埋まっていた。

自分同様にダークナイトの新作に熱狂しているファンがいることが嬉しい。

本作のキャッチ・コピーは
『伝説が壮絶に終わる』だ。

クリストファー・ノーランが手がけたバットマンは、
これまで、B級アクション映画であったバットマンシリーズを、
気迫と重厚感に満ちたアクション映画に生まれ変わらせた。

1作目の「バットマンビギンズ」で大きく飛翔し、
2作目の「ダークナイト」では、多くの映画人、
映画ファンに影響を与え、その映画は語り継がれる伝説となった。

自分も「ダークナイト」を映画館ではじめて観た時、
3時間という上映時間、体がうち震え続けたのをよく覚えている。

その最終章となる3作目の「ダークナイト ライジング」で、
今日、自分の仕事で企画した内容がプロモーションに活用されることになった。
普段、映画業界と何の接点もない仕事にあるにも関わらず、
自分が大好きな映画を広めるための一助になれたということ、
これ以上の喜びがあるだろうか。
10年分のツキを使い果たした感じだ。
そして、映画への想いと期待がいっそう募る。

明日の上映開始は20時30分。
残業は許されない。。。










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メリダとおそろしの森 【感想】

2012-07-25 01:21:45 | 映画
一昨日の日曜日、ピクサーの新作「メリダとおそろしの森」を観た。

字幕版で観たかったのだが、近くの上映館ではどこもやっておらず、
泣く泣く吹き替え版で観ることにした。

本作は中世のスコットランドを舞台に、
主人公メリダが魔法にかけられた母(王妃)を救うために奮闘する話だ。

つまらなかった。。。
Rotten等の前評判はまずまずだったので、大きな肩すかし。

ピクサーって、こんなもんじゃないだろ?って感じだ。

前回、酷評された「カーズ2」よりも個人的には面白くなくて、
過去のピクサー長編映画の中でみても一番面白くない。

まず、肝心な主人公メリダが好きになれなかった。
今をときめくAKB女子が吹き替えしたことが、その要因の大半を占めるのだが、
メリダの言動がいちいち身勝手に映ってしまうのだ。
担当したAKB女子は割と声が張る人だと思うが、
その声色とヘナヘナした特有の話し方がキャラの個性にノッておらず、
目を閉じて聞いても、やっぱりAKBなのだ。
「ほこ×たて」での彼女のトンチンカンなコメントが頭をよぎる。。。

いい加減、話題先行型の声優キャスティングはやめてほしい。
長い目で観れば、プロに任せた方が絶対に良いと思うのだけれど。

本作はメリダ自身の「自分の運命は自分で切り開く」というのがテーマっぽいのだが、
メリダのその成長過程においては大したドラマはなく、
「まあ、そうなるわな」の連続で結局終わってしまった。

ピクサーの強さは何といっても脚本力ではなかっただろうか。
近年だと「カールじいさん~」でのカールじいさんが家財道具を捨てるシーンだったり、
「トイストーリー3」でウッディが最後に選んだ道であったり、
観る者を黙らせるほどのエモーショナルな展開は本作では見られず。

また、毎回楽しみにしているピクサーならではの、
観る側のイマジネーションを刺激するような描写や演出も本作においては乏しい。
スコットランドの幻想的な風景やメリダの質感たっぷりの長髪赤毛など、
パーツ、パーツのクオリティはとても高いと思うのだけれど、
CG技術の進歩は目覚ましいね~で終わってしまう。

物語の舞台も森とお城を行ったり来たりで、「おそろしの森」という表現から連想された、
「森の中で大冒険!」みたいなものはなく、同じ風景が続くため、退屈。

メリダ以外の男たちは全員馬鹿なのだが、そこにチャームはなく、
さんざん騒いで散らかしているだけなので、楽しくない。
これまた、ピクサーならではのユーモアセンスが、本作では感じられない。

日曜日の早朝の上映回ということも手伝って、何度も睡魔に襲われ、意識が飛ぶ。

終盤のクライマックスにあったダイナミックな描写で
ようやくピクサーの底力は見られたものの、全体を通してクオリティが低い。

しかしながら、本編開始前に上映された短編「トイストーリー(「3」の続編)」と
「月と少年」が素晴らしかった。「月と少年」はピクサー製作ではないが、
その秀逸ぶりに「やっぱピクサー映画いいわ~」と実感したのも束の間の本編のつまらなさ。
その落差は激しく、残念。

来年公開の「モンスターズインク」の続編で、ピクサー早く復活してほしい。

【55点】


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おおかみこどもの雨と雪 【感想】

2012-07-21 23:49:33 | 映画
2012年の(私的)邦画No1候補、現る。

「おおかみこどもの雨と雪」は、
アニメの枠を超えた、無二の傑作。

本作に出会えた喜びと嬉しさ。
心の奥底にしみ渡る圧倒的なパワーにより、ドライアイ知らず。
本作を世に出した細田守監督に大きな拍手を贈りたい。

本作は、狼男を愛した1人の女子大生(はな)が、
その狼男との間に授かった2人の「おおかみこども」を育てる13年間を追った物語。

以前に、中学校時代に気になっていた女子に10年ぶりくらいに偶然会ったことがある。
当然ながら外見は大人びていたのだが、何か全てを達観したような余裕とオーラがあって、
いっそう自分との成長の距離を感じた。ただし、すべての女子に共通するものでなくて、
同様の感覚を覚える女子に共通していたものは、彼女たちが「母」になったということだった。

「この子たちが大きくなるまで見守ろう」
主人公のはなと狼男が家族となり、新しい命を授かったときに誓った言葉。

生まれた子どもが狼人間であることを2人は承知済みだ。
それは普段の(人間の)親子関係とは異質な宿命を受け入れた瞬間であり、
その後も母となったはなは2人のおおかみこどもの「雪」と「雨」を、
ありったけの愛を込めて育てていく。全力で子どもたちを守っていく。
その姿に、愛おしい子どもたちの姿と相まって、何度も何度も胸が熱くなる。

本作の凄いところは、「母と子」という極めて普遍的な物語を
どストレート(バカ正直)に描くために、「おおかみこども」というファンタジーを用いたこと。
それは、母と子が共に成長する過程で描かれる様々な人間模様と
その背景にある心理をより鮮やかに際立たせ、観る側に大いなる共感を呼ぶ。

前作までの「時をかける少女」「サマーウォーズ」でも魅せた、
キャラクターの感情を丁寧にすくいとり、余すことなく繊細に映し出す演出手腕は、
本作でさらに磨きがかかっていて、感涙ものの素敵なシーンが続く。
その都度、「この映画ホント好きー!」と感じてしまうのだ。

本作の演出のみならず、原作と脚本まで手がけた細田守はホントにすごい人。
宮崎駿の後継として続く、日本を代表する映画監督だ。

細田守が素晴らしい監督である理由はもう1つあって、
それはキャスティングを絶対にハズさないこと。
「時をかける少女」の仲里依紗や石田卓也しかり、
「サマーウォーズ」の神木隆之介や富司純子しかり。。。

本作においても、はなの宮崎あおい、狼男の大沢たかお、近所の爺さんの菅原文太を始め、
おおかみこどもの「雪」の少女期、幼年期をそれぞれ演じた黒木華、大野百華(あぁ可愛い)
「雨」の少年期、幼年期をそれぞれ演じた西井幸人、加部亜門(あぁ可愛い)、
「雪」の成長期においてキーマンとなる「草平」演じた平岡拓馬などなど、
個人的に、ドラマや映画を普段観ていて、声が印象的で通る人だな~を感じていた人が
結構キャスティングされていたりで、しかも、みなドンピシャのハマリ具合。
昨今のジブリ映画やディズニーアニメ吹き替えのキャスティングとは次元が違う。

前作の「サマーウォーズ」から、引き続き担当している他制作陣にも拍手。
共同脚本の奥寺佐渡子、キャラデザインの貞本義行、
作画監督の山下高明、美術監督の大野広司、CGディレクター堀部亮等、
それぞれに好きなポイントが挙げられるくらい、みな素晴らしいパフォーマンスをしていて、
本作の高い完成度に結実している。

あと、本作で特筆すべきは音楽。
物語を包む柔らかな空気感との高いシンクロ率や、
人物たちの情景をより鮮明に映し出す映画音楽としての役割が最大限に発揮されている。
高木正勝という自分と同級生な人が担当しているらしい。
エンディング曲の「おかあさんの唄」もパーフェクト。

家族を持つこと、子どもを持つこと、人を愛すること、
それらに対して強い勇気を与えてくれる応援歌のような映画。

人が生きていくことは、人に生かされ、自然に生かされていくこと。
様々なメッセージが込められつつも、観る側を素直に感動させる力あり。

前作の「サマーウォーズ」の成功を受け、
東宝は本作の配給にすごい力を入れているらしく、
結構なスクリーン数で上映されている。
作品の質とは関係のないところで
そういった事態がよくあるため、いつも冷ややかに見ることが多いが、
本作のような間違いのない良作であれば、その価値は大いにありだと思う。

素晴らしい映画。
これだから映画は止められない。

【92点】










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アメイジング・スパイダーマン 【感想】

2012-07-21 15:03:06 | 映画
「アメイジング・スパイダーマン」を観た。

久々のIMAX3Dで観た。
2200円は高いと思うが、IMAXはやっぱ良い、最高。

前作までの「スパイダーマン」シリーズを手がけてきた
サム・ライミの降板を受けて、制作陣やキャストが一新した本作。
監督に抜擢されたのは、マーク・ウェブだ。

彼の前作「(500)日のサマー」の大ファンであっただけに、
全くジャンルの異なる映画を手がけるその冒険ぶりに
期待=2に対して不安=8で観たのだが、心配は無用だった。
彼の起用は大正解だったと思う。

本作はこれまでのシリーズの続編ではなく、シリーズの出発点に立ち戻る再始動であるため、
話の展開に新鮮味はないものの、若き高校生の青春ドラマという新たな要素が加わった。
その描かれ方が実に瑞々しく、かといって甘過ぎない口当たりで、
「(500)日のサマー」を見た時と同じような充足感を得ることができた。

新生スパイダーマン(ピーター)役をアンドリュー・ガーフィールドに据えたことも大きい。
アメコミ映画であっても、しっかり演技のできる彼のような人がキャスティングされると、
そのドラマに一本筋が通り、格が上がる。

のっけから、アンドリュー・ガーフィールドが普通にカッコよい。
これまでの低身長で短足なトビー・マグワイアとは対照的であり、
普段のイケてないピーターと、スパイダーマンになった時のギャップは
アンドリューになった時点でほぼないといえる。
ここは好き嫌いが分かれるところか。
個人的には、マスクをかぶらない場面(ピーター)でのアクションシーンも多く、
彼のスケール(体型)がアクションに一層の迫力と説得力を持たせるため、
全然アリだと思ったし、カッコよい男子を見ることには大賛成である。
アンドリューの手足は長いので、壁を這うシーンとか普通にクモっぽくて吹いたし。

そしてヒロインのエマ・ストーンとの共演も良い。
まばゆい光を放つキラキラな2人の表情を見ていると、
何とも清々しくて、見ているこっちはニンマリ。それだけでも楽しい。
本作をきっかけにプライベートでも付き合うようになったという2人はお似合いカップルである。

3Dならではのアクションシーンは思ったよりも少なかったけど、
クライマックスでの見せ場は、やはり3D鑑賞ならではの醍醐味。

ツッコミどころも多々あれど、それを補って余りある、
監督、キャストの個性が綺麗に収まった秀作。

3週目だったからか、それとも3週目にも関わらずなのか、わからないが、
劇場内はガラ好きだった。。。勿体ない。
「海猿」なんかよりも絶対こっちのほうが面白いでしょ?
同時期に強敵となるライバル映画もない中で、これは興行的に誤算だろうか。

アメリカ本国でも公開3週目で、まだ製作費を回収できていない模様。
興行成績振るわないかもしれないけど、続編はやってほしいな~

【75点】

スパイダーマン上映前の予告編でもやっていたが、
今年私的注目No.1の「ダークナイト・ライジング」の公開がいよいよ1週間後に迫った。
関係者試写会で先週観た会社の同僚は、公開後IMAXでリピートするという。
とにかく「別格」らしい。。。。ムラムラしてきた。早く観たいー!!!!
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海外ドラマ「スパルタカス」。

2012-07-20 22:40:24 | 海外ドラマ
自身の2012年上半期にハマったものを記録として残しておく。

海外ドラマ「スパルタカス」。
好き過ぎて、メイキングを観たいがために、先月BD-BOXまで購入してしまった。



「女子力アップ~」「女の子サイコー」みたいな女子の自己満を前提としたコンテンツが
やたらと幅を利かす昨今、男子による男子のためのドラマがここにあった。
アンチ>セックスアンドザシティ!!である。

全13話からなる古代ローマ時代の剣闘士たちを中心に描かれる、人間の欲望渦巻くドラマだ。

アメリカ本国で放送されたのは2年前の2010年だが、
今年の5月にDVDリリースされたのをきっかけに初めて知り、レンタル視聴で全話観た。
海外ドラマなんて民放で放送しているものをたまに観る程度で、
さほど興味はなかったが、18禁という文句に惹かれて観ることにした。

序盤の話は特段面白くなく、18禁納得な「エロ」と「バイオレンス」の饗宴が続き、
ある意味そのキワモノ見たさだけで観ていたが 第5話以降から急激に面白くなる。
その面白さ加減は回を追うごとに加速し、最終話でその盛り上がりは最高潮に達した。
最終話の邦題は「復讐」とヌルいが、原題は「Kill Them All」(皆殺し)である。笑

最終話に入る前の剣闘士たちのやりとり。
「どうすれば、この牢獄(剣闘士養成所)から脱出できるか?」の問いに対して
「皆殺しするしかあるまい」のスパルタカスの一言。
その男気あふれるセリフに「キャー素敵♪」である。

以下、「スパルタカス」を好きになったポイントをまとめてみる。

【その1】脚本力
 
 脚本が抜群に面白い。
 アメリカの海外ドラマは全般的に脚本のクオリティは高いと思われるが、
 本作の脚本は色は完全に自分好みであった。
 男たちのプライド、信念、愛欲、性欲、権力欲といった割とヘビーな感情を、
 キャラの個性に合わせて矛盾なく魅せる匙加減が絶妙である。
 中盤以降の展開は、スリリングかつ実にドラマティックで文字通り目が離せない。
 そして主役の「スパルタカス」のカッコよさよ。
 欲望まみれの輩の中で、比類なき強さとブレない信念を併せ持つ姿に惚れる。

【その2】エロとバイオレンスの描写

 男女の接合部分はさすがに出ないが、ポルノ映画と見紛うばかりのエロい描写が多い。
 オッパイ丸出し。チ●コ丸出し。セックス丸出しである。
 そして、バイオレンス描写にも遠慮がない。
 人間同士の殺し合いにおいて、銃みたいなスマートな飛び道具は存在せず、
 武器は鋭利な刃物か鈍器なので、流血量も必然的に多めになり、殺傷シーンもエグくなる。
 だけども、それらの描写が視聴者に刺激を与えるためだけの演出とは思えず、自然に見入った。
 紀元前という時代にあって、現代社会における人権や道徳心なんてものは希薄で、
 人間はより動物的で野蛮な生き物だったに違いない。だから、本作で描かれているような
 道端で突然オッぱじまったり、奴隷たちのご主人様に対するあらゆるご奉仕っぷりだったり、
 闘技場で見ず知らずの人間を容赦なくナブリ殺し、その姿を観て観客たちが発狂する姿も
 しごく自然な風景だったと思い、結構スンナリ観れた。
 また、本作で特筆すべき点は筋肉ムキムキで、汗でテカテカに光る剣闘士たちの肉体だ。
 水が十分になかった時代、風呂はひたすらサウナ。
 その姿に体臭を感じながらも不思議と不快さはないため、
 男色な男子だけでなく、マッチョ好きな女子にもウケるとみた。

【その3】キャスティング
 
 本作は伝説のドラマといえる。
 それは、主役スパルタカスを好演したアンディ・ホイットフィールドが、
 続編のクランクイン後、病に伏せ、40歳の若さで亡くなり、以降その勇姿を観ることがないからだ。
 アンディ・ホイットフィールドを自分は本作で初めて観たが、当初、映画「300」でお馴染みの
 ジェラルド・バトラーと顔がよく似ていて、焼き回し的なイメージがあったが、
 彼の肉体と眼差しはジェラルド・バトラーよりも研ぎ澄まされていて、その表情には野性味がある。
 回を追うごとに神格化される「スパルタカス」とシンクロして彼の持つカリスマ性も増幅していった。
 彼が演じる「スパルタカス」の続編が観たかったので 彼の死は本当に残念である。
 また、印象的だったのは剣闘士(奴隷)たちの主人バティアトゥスを演じたジョン・ハナの存在。
 この人、どっかで観たことあるな~って検索したら、ハムナプトラシリーズで、
 主役のブレンダン・フレイザーにずっと付いて回っているお調子ものっぽい役を演じた人だった。
 本作での役柄はそのイメージとは180度違う、どこまでも強欲で卑劣な男だ。
 その小柄な体型にも関わらず、スパルタカスに退けをとらないスケールの大きい堂々たる演技に、
 ハリウッド俳優の層の厚さを感じた。

今月よりスターチャンネルで続編のシーズン2が放送される。
観たい~、けど、契約してないから、やっぱDVD待ちになるかな。
アンディ・ホイットフィールドじゃない「スパルタカス」は大丈夫だろうか。。。





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苦役列車 【感想】

2012-07-14 23:53:59 | 映画
今年、個人的に邦画の中では一番期待していた映画、
「苦役列車」を観た。

公開初日にMOVIXさいたまのレイトショーで観たが、客席の入りは30%くらい。
山下映画としては前作の「マイ・バック・ページ」に引き続き、興行的には厳しそうだ。

本作は2010年、芥川賞を受賞した同名小説の映画化。

1980年代の東京を舞台に、幼少時代、父親の性犯罪によって家庭が崩壊、離散し、
中卒以降、日雇い仕事で食いつなぐ生活を続ける19歳の青年「貫多」の話だ。

「ボインどうですか~?ボイン覗きどうですか~?」

まだ映像の出ない真っ暗なスクリーンに響く冒頭のセリフに、
山下ワールド健在だな~と、ニヤついてしまう。

その呼び込みをしていた覗き部屋から颯爽(?)と出てきたのは、
お目当ての一人、主人公の「貫多」演じる森山未來。
一発ヌいてきたであろうシチュエーションながら、
スッキリした感も、周りも気にする恥ずかしさもなく、
普段使いなその表情から、風俗通いが日常的な習慣である男の姿が見てとれた。

場面変わって、日雇い先での昼休憩中、
貫多が日雇い先で買ったと思われる、白飯多めの弁当に対して、
吸い込むようにご飯を口にいっぱいに入れ、メシをガッつきながら話す姿が印象的。

日雇い先で出会い、友達となる高良健吾演じる「正二」に対して
口をついて出るのは、「風俗行こう」か「飲みに行こう」である。

そこに描かれるのは性欲と食欲にまみれ、
恥じらいも自己否定もない青年の日々。。。

2000円を追加で払えば、オプションでついてくる覗き部屋の特別サービスや、
飲んだら「オェー」と吐いて、鼻水垂らして、ヨダレ垂らして、悪態をついて。。。
グチャグチャがひたすら続くその描写は、観る側に対して遠慮がまるでない。
はっきり言って気持ちが悪いが、それは時に可笑しく、生々しくもある。
ある意味、人間の生命力にあふれた姿であり、そこに感じる圧倒的なエネルギーこそ、
自分が山下映画に望んでいたものだった。

本作の見どころは、何といっても、
山下監督と森山未来のケミストリーであり、
これは期待以上のもので個人的には大満足であった。

山下監督のキャスティングに応えるべく、発せられた森山未来の役者魂よ。
前作の「モテキ」に続くダメ男役と言われているが、その役柄は全く異質だった。
モテキの幸世にあった清潔感や軽やかさは、本作の貫多においては皆無。
そこにあるのは社会の底辺を這えずり回る泥臭さと、粘着性である。
「この愛すべきロクでなし」という宣伝文句だが、
このキャラを愛せる人が果たしているのか、甚だ疑問。それほど森山未来演じる貫多は見苦しい。
そのパフォーマンスは圧巻で、彼の存在が本作の放つすべてのエネルギーの発信源になっている。
彼が役者という仕事を信じ、真摯に役に対峙する姿勢が感じられ、シビれた。

懸念していたAKBの前田敦子は、やはり本作においてはツヤ消しといわざるを得ない。
演技自体は思いのほか卒なくこなしているな~と思ったが、本作で充満する匂い(臭さ)に対して、
彼女の「そこそこ可愛くて」「そこそこ演技が出来る」レベルでは迫力不足だ。
個人的には今後も興味ないが、作品の色が変われば女優としてもハマるのではないかと思った。

その反面、意外な好演は、オフィス北野所属芸人のマキタスポーツだ。
ミスチルの桜井のモノマネが面白く、個人的に注目していた芸人のまさかの出演だったが、
しょーもない男の可笑しさと哀愁を描くのが巧い、山下演出との相性は抜群だった。
彼をキャスティングした理由がわかる、カラオケスナックでのシーンはお気に入りだ。

物語の中盤で、貫多が正二の恋人に対してセクハラを通りこした侮辱的な言葉を浴びせるシーン、
自分の後方の客席にいたお洒落風なお姉さんが席を立った。そのタイミングが、女性が耳にすると
不快に感じるであろうセリフのピークだったので、おそらく気分を害したものと思われる。

そのあたりは男子の自分はさほど気にはならなかったが、
最後まで垂れ流し感があり、物語の終着点もはっきりしなかったのがちょっと残念。

原作を読んでいないので、よくわからないが、
その描かれ方も原作を忠実に再現したものだったのだろうか。

しかし、本作「苦役列車」も作品の色は違えど、
前作の山下映画「マイ・バック・ページ」に引き続き、
「この映画は誰が撮ったか?」がすぐにわかるほどの強い作家性を感じることができた。

現在の日本映画の中では、こういった作家性を持つ監督は数える程度しかいないし、
山下監督の作家性は自分はツボだな~と本作でも再認識したので、
今後も応援していきたいと思う。

【70点】



















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少年は残酷な弓を射る 【感想】

2012-07-09 00:46:23 | 映画
1週間前の7月1日の映画の日、注目の新作「少年は残酷な弓を射る」を観た。

上映館が日比谷のシャンテシネのみということで、
日曜日だったがわざわざ有楽町まで出向き観る。

日曜日の夜の回だったので空いているかな~と思ったが、
1000円の日、そして公開2日目ということもあって、大入り満員だった。
自分同様、安く映画を観たい映画ファンって多いんだな~と思う。

で、本作。
昨年、カンヌで絶賛されたり、英国アカデミー賞でも複数ノミネートされていたりと
かなり前評判が良かったため、期待値も相当高かった。

でも、結果はイマイチだった。

本作はティルダ・スウィントンとジョン・C・ライリー演じる夫婦の間にできた、
息子が悪魔(モンスターという表現が適当?)でトンデモな事件が起きるという話。

物語はその「事件」が終わったと思われる現在から
ティルダ・スウィントン演じる母親の視点から過去を回想する形で語られていく。

序盤、住居や車を真っ赤なペンキで塗られる悪質ないたずらにあったり、
母親が街中を歩いていたら「地獄に落ちろ」と突然オバチャンに顔面をグーで殴られたり、と
理由なしに語られる理不尽なシーンが続く。
そして母親はその苦境に対して、無抵抗に黙って耐え抜く。
「なぜこんな目に合うのか」「なぜ抵抗しないのか」
「(回想シーンでは家族がいたのに)そもそも現在はなぜ1人なのか」
さまざまな憶測が頭をよぎり、背筋がゾクゾクするような感覚に襲われた。

本作の監督はリン・ラムジーというイギリス人女性監督らしい。
この人の過去作を観たことないので初見の印象だけど、
物語の導入部分に血を彷彿とさせるトマトまみれのシーンを持ってきたり、
楽しいはずのハロウィンの風景を母親の悪夢の象徴として魅せたりと、
作品の世界を表現するために、随分と切れ味鋭い演出をするな~と舌を巻いた。

だけど、息子の誕生のシーンから、徐々にハマらなくなってきた。

「おぎゃー」しか言わない赤ん坊の時から、
母親であるティルダ・スウィントンに、徹底的に刃向かい、徹底的に苦しめる。。。

事件が起こる、息子の少年期まで終始一貫、
目に見えてわかる「悪」の化身として描かれる息子の姿に、
個人的には勿体なさを感じた。

全体を包む「得たいの知れぬ」恐怖や歪みが本作の面白さだろうに、
その底が知れてしまう悪(息子)の姿に、作品の勢いがトーンダウンした印象。
「そのままなんだ~」と物語が進むにつれて残念なつぶやきが多くなる。

本作で製作も兼ねた主役のティルダ・スウィントンは圧巻の演技。
恐怖が肥大化し、張りつめた画面と、彼女の存在感との相性の良さよ。
絶望とともに大いなる十字架を背負う母親の姿を全身全霊で体現。
前回のオスカーはミシェルよりも彼女がノミネートされるべきだったな~。

ハリウッド1、ブリーフが似合う(と思っている)ジョン・C・ライリーとの
夜の営みのシーンは結構リアルで、エグかった。大いに結構。

問題の息子役のエズラ・ミラーは、超美形少年で、
ただならぬカリスマオーラありだが、やっぱ、その役柄の描き方で勿体なし。
今後の活躍に期待。

レディオヘッドが担当した音楽は、日本の雅楽を取り入れたりと面白かったが、
チャレンジングな意欲さだけが際立ち、個人的にはちょっとミスマッチだった。

【60点】




















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ワン・デイ 【感想】 

2012-07-06 00:22:44 | 映画
この前の日曜日は映画の日だったので、朝と晩の2回、映画を観に行った。
一本目はアン・ハサウェイの新作映画「ワン・デイ」を観た。

前回観た「ジェーン・エア」に引き続き、なかなかの良作。
アタリな映画だった。

邦題のサブタイトルにはご丁寧に「23年のラブストーリー」と付いている。
映画関係の仕事をしている同僚から聞いたことだが、
洋画の配給会社はタイトルから、ある程度、あらすじが想起できるように
サブタイトルを付けているらしい。
確かに原題の「ワン・デイ」だけだとどんな映画か検討が付かないが、
このサブタイトルでは内容が見え過ぎていて非常にダサい。逆に観る気が失せるように思う。
原題、もしくはセンスのある邦題でズバッと決めるのは難しいのかな。
昨年の「人生はビギナーズ」みたいな。。。

で、本作の話は紛れもない男女のラブロマンスだ。
とある男女の愛の変遷を大学の卒業時から23年間という長期に渡って追っかけたもの。
本作のユニークなところは、2人の関係が恋仲で始まったわけではなく、
一線を越えることのない、友人関係で出発し、継続し続ける点だ。

「男女の友情はありえるのか~」

何かと合コンとかで取り上げられるテーマだが、
本作において、その答えの一つが描かれている。

その答えも本作の捉え方次第なので、
本作を2度見しても面白いだろうなと思った。

そして、本作を見て真面目に考えてしまったのが、人生のあり方について。。。

主人公の2人のキャラ設定や、辿っていく人生は実に対照的だ。
アン・ハサウェイ演じるエマはイケてないメガネ女子(学生時)に対して、
ジム・スタージェス演じるデクスターはモテモテのアイドル的オーラを放つプレイボーイ男子。
大学卒業後、2人はそれぞれの夢に向かってバラバラの人生を送っていくわけだが、
強い信頼関係で結ばれた2人の関係は途切れることなく、互いの人生に影響を与え続ける。

2人の辿る23年という時間は、(当然だけど)酸いも甘いも、多くの経験に満ち溢れている。

生きるってどういうことか、夢を追い続け、自己実現することなのか。。。
愛に生きることってやっぱ幸せなことなのか。。。
その負荷量は人をどれだけ愛することができるかで決めるのだろうか。。。

とかとか、単細胞な自分はいろいろと想いを巡らせてしまった。

それは主演の2人の素敵っぷりからも大いに影響を受けている。

今年、私的注目している「ダークナイト」や「レ・ミゼラブル」にも出演するアン・ハサウェイ。
女子学生役にはちょっと年を取り過ぎた感があるが、
年をとるたびに輝きを増していく姿に説得力ありだ。結構な女優オーラを感じる。

アクロス・ザ・ユニバース以来、久々に見たジム・スタージェスもなかなかの好演。
大学時代のイケメンキャラから、低俗番組司会者での害虫ぶり、その後の栄枯盛衰などなど、
波乱万丈の先に行きついた23年後の穏やかな姿まで、その自然体な演技にとても好印象た。

2人が迎える想定外の展開には、観る人によって好き嫌いが分かれそうだ。
だけど、それこそが人生の素なのだろうと、自分には肯定的に受け止められ、
他映画とは一線を隠すものに思えた。

結末は完全に大人向け。
監督が「17歳の肖像」の同監督と聞いて納得。
ラストに、2人のラブストーリーの起点となる隠れエピソードを描くあたりが何ともニクい。
それがハッピーなのか、切なさなのかよくわからないけど
上質な映画を見た時に感じる余韻に浸った。

Rottenでめちゃくちゃ酷評されていた本作、
タイトルのワンデイの持つ意味合いがさほど機能していなかったり、
ひっかかる点も多少あれど、自分は好きだな~

【78点】


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