から揚げが好きだ。

映画とサウナ。

ロスト・バケーション 【感想】

2016-07-30 09:48:14 | 映画


予想外の面白さ。ワンシチュエーションスリラーの新たな秀作。
小さな岩礁に取り残された女子と、海中からその肉体を喰らおうとする巨大サメ。物語はサバイバルからバトルへ。散りばめられたプロットがことごとく展開の歯車に変化。シンプルな話をよくぞここまで面白い映画にできたもの。スリルとワクワクで90分間を突っ走る。「海」×「ホラー」、まさに夏にうってつけの逸品。主演のブレイク・ライヴリーがめちゃくちゃいい。旦那のライアン・レイノルズ、羨ましいぞ(笑)。

メキシコの名もなきビーチを訪れた女子が、サーフィンをしている最中にサメに襲われ、浜辺からわずか200メートルの場所にある岩礁に取り残されるという話。

まず舞台となるビー チの美しさに目を奪われる。白い浜辺に透明度の高いエメラルドグリーンの海がスクリーンいっぱいに広がる。観光客には全く知られていないような秘境にあり、そのビーチを訪れる人は地元民だけで、ほとんど貸切状態だ。美しさと解放感を兼ね備えた光景は眼福感タップリだ。

主人公にとってその場所は穴場というだけではなく特別な場所であり、病気によって亡くなったばかりの主人公の母が、自分をお腹に宿していたときに訪れていた場所でもあった。主人公の女子は医学生であるが、母の死をきっかけにその道をあきらめたばかりで、亡き母の思い出と対峙し、これからの自分の人生を見つめ直すタイミングでもあった。過去の回想シーンはなく、現在進行形の主人公の視点からでしか描かれないが、主人公の人物像がくっきりと浮かび上がる。

メインの登場人物が主人公1人に集約されるので、丹念に主人公のリアクションを追うことが可能になる。メキシコには友人たちとバケーションで来たようだが、友人の二日酔いによって急遽1人でビーチに訪れることになった。若く美しい女性の1人旅だ。しかも場所は英語ではなくスペイン語圏。いろんなところに危険が散らばっている。訪れたビーチの先客であった2人の若い地元サーファーとのやりとりが生々しくて秀逸。一見、友好的なコミュニケーションが交わされるものの、誰もいないビーチで、強い「男」と弱い「女」の危うい構図がチラつく。主人公のリアルな警戒心の揺らぎを見事に捉える演出が素晴らしい。

主人公は美女である。演じるブレイク・ライヴリーが一児の母とは思えぬほどパーフェクトなプロポーションを惜しげもなく披露する。スレンダーとグラマラスの中間で、異性からも同性からも羨まれるであろうシルエットだ。金髪に小麦色の肌、よく引き締まったお尻。「夏!!」「海!!」全開な彼女の見事なビキニ姿が眩しい。その肉体が透明度激高の海中に滑り込むシーンの美しきこと。そんな彼女の姿を大スクリーンで拝むだけでも映画館で観る価値があるというものだ。

先客の男子2人がサーフィンを終えたのち、彼らの誘いを断り、最後にもう一度だけサーフィンを楽しもうとする。たったひとりになった海上で、周りを見渡すと異様な光景に気づく。大きな鯨の死体が近くに浮いているのだ。しかも何かに食いちぎられた跡が残っている。イヤな予感がする。そして予感は的中。透明なエメラルドグリーンの海が真っ赤に染まっていく。

原題は「Shallows(浅瀬)」だ。巨大なサメに狙われる主人公のサバイバルは浜辺からすぐの場所で起きている。目の前に希望があるにも関わらず、その希望を掴めない絶望感が本作の引力だ。しかも、そのサバイバルのスタートは主人公がサメに襲われ脚部に重傷を負ったところから始まる。何とかしてたどり着いた岩礁は、潮の満ち引きによって姿を消すリスクがある。失われる体力と海上でのタイムリミット。絶望の状況下でいかにして主人公は生還するのか。。。。

そして、生死の土壇場に立たされた主人公のサバイバル能力が覚醒する。これが非常に面白い。脚本がとても良く出来ている。

医学生である主人公、身に付けていたペンダン トとピアス、腕につけたデジタルウォッチ、ビキニの上に着ていたサーフスーツ、近くに浮かぶ鯨の死体、近くに浮かぶ鉄骨のブイ、先客の男たちが撮影に使っていたヘルメットカメラ、そのヘルメットに食い込んでいたサメの刃歯、予想外の「味方」。。。何気なくプロットされていた状況やアイテムが次々と主人公の武器になっていく。誰かに救助されるか、自らの力で浜辺に逃れるか、生還の手段はその2択かと思いきや、主人公は第3の道を選ぶことになる。まさかの展開にくぎ付けになる。そして痛快。クライマックスの迫力に圧倒される。

ユーモアを排除し、シリアスに徹したドラマにしたのも正解だ。主人公に降りかかる不幸は完全にフィクションであるが、彼女が身を寄せる岩礁の居心地の悪さや 、素足で踏みつけるサンゴの凶器っぷりなど、海であるあるな描写をリアリティたっぷりに描いている。傷だらけとなった主人公の痛みが、実感として観る側に伝わってくるのも本作の特徴だ。恐怖と痛みによって距離を置いて本作を観ることができなくなる。そして命懸けのサバイバルのなか、孤独な戦いを強いられる彼女の傍らにいる、飛べなくなったカモメとの友情が物語を味わい深いものにする。ラストも収まりも良かった。

主演のブレイク・ライヴリーの熱演が光る。絶望に瀕した人間の恐怖と孤独が身に沁みて伝わってくる。そのプロポーションもさることながら、180センチ近い長身がとても効いていて、サメの迫力に引けを取らないのがよい。彼女の存在感が本作のすべてといっても良いかもしれない。

サメを一方的な悪者にするスタンスに違和感がないわけではないが、その古典的なアプローチを用いて、全く新しい「サメ映画」が誕生した。B級感まるだしな邦題からは想像できないほど完成度の高いスリラー映画だった。とても満足。

【70点】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

プロ格闘ゲーム観戦にハマっている件。

2016-07-28 08:00:00 | 日記


子どもの頃、ゲーセンに行って格闘ゲームの様子を後ろからよく観ていた。自分がやるよりも巧い人のプレイを観るのが好きだ。

もう3ヶ月近く前になるが、BSスカパーで千原ジュニアがMCをしているバラエティ番組「ダラケ」で、「プロ格闘ゲーマー」ダラケが放送されていた。同番組は地上波では放送できないキワドいテーマを扱うことが多いので、「ゲーム」という平凡なテーマに最初は関心がなかったものの、いざ観てみたら面白くて、子どもの頃の記憶が蘇り格闘ゲーマーの世界にすっかりハマってしまった。最近はほぼ毎日のように寝る前、Youtubeにてプロ格闘ゲーマーの過去の試合のアーカイブや、直近のプロツアーの動画を漁っている。

プロ格闘ゲームもいろいろあるが、自分は最も競技人口が多い「ストリートファイター」を観ている。現在、プレイされているのは今年にリリースしたばかりの「ストリートファイターV」だ。「ストツー(Ⅱ)」で馴染みがあるが、今はシリーズ5作目に突入している。プレイシステムも進化していて、必殺技を繰り出せるゲージによって、一発逆転が可能なダイナミックな試合展開を楽しめるようになっている。

昔からウォッチしているプロテニスの世界と同じように、格闘ゲーマーにも年間のツアーが組まれていて、世界各地で行われる大会ごとにその戦績によってポイントが与えられる。これまたプロテニスと同じように、大会によってグレードがあり、獲得できるポイントや賞金も変わってくる。なので大きい大会になればなるほど参加人数も増える。直近の大会だと、先々週にアメリカのラスベガスで開催された「EVO2016」で参加人数、約5000名という規模で行われた。この大会はどうやらプロ、アマを問わず、腕に覚えがある人たちが一攫千金(?)を目指し、参加していた模様だ。ベスト8までの予選リーグは2ゲーム先取で行われるので、あっという間に終わり、強豪といわれるプレイヤーが予選で敗退することもしばしばだった。ベスト8の決勝リーグは大きなスタジアムで行われ、日本では考えられないような盛り上がりを見せた。

そもそもプロとアマの区別については明確な定義があるわけではないようだが、現在、日本の最高ランカーである「ときど」選手いわく、「ゲームだけで生計をたてている」人がそれに当たるらしい。それでいうと大会の賞金だけでは食べていけないので、他のプロスポーツと同様に、企業とスポンサー契約を結んでいる人が多いみたいだ。そのスポンサー企業の多くは名前を知らない企業で(知っているのは「レッドブル」くらい)、調べてみるとゲーム機器や通信機器メーカー、動画配信事業者などである。

「ストリートファイター」の魅力は、多様なキャラクターが多様なプレイヤーでプレイされることだ。いろんな特性をもったキャラがいて、同一キャラで被ってもプレイヤーによって戦い方が違うので面白い。当然、プレイヤーによっても特性があり、それぞれが「持ちキャラ」を持っている。プレイヤーが先か、キャラクターが先かで分かれるが、ニワカファンである自分は後者に近い。特別に好きなキャラがいるというのではなく、オールラウンドに強い「リュウ」と「ケン」は観ていて面白くないので、それ以外のキャラを扱うプレイヤーを応援している。

「ストリートファイター」の発祥は日本ということで、日本のプロゲーマーは世界的に有名な選手が多い。実際に多くのツアーで上位成績や優勝を収めるのは日本人選手であることが多く、直近の「EVO2016」でもベスト8中、6人が日本人選手だった。それだけみると他のスポーツでいう「柔道」に近いイメージを持つが、完全なアウェイである海外で、日本人選手が人知れず活躍し、外国人の観客たちを熱狂させている姿は観ていて清々しいものだ。また日本人の選手の多くが「オタッキー」な感じが良い。強そうじゃないのに強い、自分はそのギャップに萌える。シュッとした日本人が強くても観ていてカタルシスがないので、扱うキャラが「リュウ」や「ケン」であることも理由だが、プロの第一人者である「梅原」選手や「ときど」選手、「ももち」選手らの活躍にはさほど関心がない。自分が応援するのは、黒髪で小柄でメガネな男子プレイヤーである。

自分は勝手に、プロ格闘ゲーム界の「メガネ三銃士」と名付けている3人に注目している。

まず1人目は、年間の大会の中で最も大きい「カプコンカップ」で昨年梅原選手を決勝で破り、見事優勝した「かずのこ」選手だ。現在の「ストリートファイターV」では「キャミー」を持ちキャラにしている。その知的な外見とは裏腹に、相手の防御を「突き」と「投げ」の2択でこじ開けるかなりの剛腕ぶりの持ち主だ。間合いのヨミの鋭さがあってのことだが、観ていて痛快で気持ちよい。

2人目は世界最強の「ミカ」使いとして名を馳せる「ふ~ど」選手だ。接近戦でしか強さを発揮できないプロレスラータイプのキャラを扱うが、「反応の神」と言われる持ち前のテクで安定感のある勝率を誇る。先の「EVO2016」では堂々の準優勝。おそらく現在の世界最強のプレイヤーである韓国の「インフィルトレーション」選手(テニスでいうジョコビッチ)を追い詰めたゲームに熱狂した。

3人目は「春麗」使いの「GO1」選手である。勝手な偏見であるが、最もオタクらしいルックスのプレイヤーだ。もともと他の格闘ゲームで活躍していた選手で、ここ最近から「ストリートファイター」に本格参戦しているとのこと。彼のプレイスタイルは、「攻撃こそ最大の防御」と言った具合でとにかく攻撃の手を緩めない。攻撃スピードの早い「春麗」との相性は良いようで、先の「EVO2016」では並みいるビックネームをことごとく破り、ベスト8に進出した。

なお、この3人は大会以外ではほとんど接点がないみたいなので、自分の勝手な括りである。
他に好きなプレイヤーとしては、シンガポールの選手で「ファン」使いの「Xian」などがいる。「ファン」みたいな変形キャラが「リュウ」や「ケン」を圧倒するとテンションが上がる。

いろんな大会の動画を観て思うのが、プロ格闘ゲームの世界にも、他のスポーツと同様に「スポーツマンシップ」が根付いている点である。ゲームの世界でもあくまで「格闘」なので、互いを敵視するスタンスかと思っていたが、試合前ではお互いニコっとして握手を交わし、試合中も親指を突き立て「グッド(ナイス)」のポーズで互いの健闘を讃え合っている。前のプレミア大会の決勝で、「インフィルトレーション」選手と「ときど」選手の対戦になったとき、それまでの2大会連続で「インフィルトレーション」選手に負け越していた「ときど」選手が見事、その雪辱を果たしたゲームであったが、その戦いぶりもさることながら、押されていた「インフィルトレーション」選手が「素晴らしい戦いぶりじゃないか!」と言わんばかりにグッドポーズをとっていたのが印象的だった。勿論、プロとして「絶対に勝つ」という負けん気は100%なのだろうけど、相手選手への敬意を忘れない空気がとても良いな~と感じる。

自分だけではなく、プロ格闘ゲームは現在ブームの兆しがあるみたいで、「ダラケ」も前回の放送の反響を受け、今週の木曜日にスピンオフ企画として「ダラケカップ」が放送されるらしい。自分の好きな「かずのこ」選手と「ふ~ど」選手も登場するので楽しみである。

格闘ゲームの市場は完全に男性向けだと思うが、まだまだ規模が大きくなるマーケットだと思われる。そのうち、マツコの知らない世界で取り上げられそうな気がする。その場合、案内人はやっぱ梅原氏になるのだろう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ファインディング・ドリー 【感想】

2016-07-27 09:00:00 | 映画


アニメーションのクオリティに見入ってしまう。サンゴに囲まれたひたすらに美しい海の世界から、人口湾で濁った薄暗い海の世界まで。圧巻の映像美だ。そしてピクサー映画ともなれば、視覚のみならハートも楽しませてくれると期待する。ピクサーらしい想像力溢れる演出とポジティブなメッセージは本作でも健在だ。しかし、歴代の並いる傑作タイトルと比べてしまうといろいろと物足りなさが残る。

本作の主人公は忘れん坊のドリーだ。冒頭から彼女の深刻さが強調される。彼女には生き別れた家族がいて、彼女がニモたちに出会うまで、孤独な人生を歩んできたことが明らかになる。その原因を作ったのが彼女のモノ忘れであったということ。前作ではチャームであったドリーの個性が、明らかな障害として描かれる。また、新たに登場するキャラクタにも一見「生きづらい」ハンデを与える。本作のテーマが浮かび上がってくる。

自身のハンデすらも個性のなかに包含し、その可能性を信じること。他者との関わり合いの社会のなかでは、その個性が実りある人生にきっと導いてくれる。。。。誰もが楽しめるユーモアで盛った楽天的な物語に、そうしたメッセージをしっかり偲ばせる手腕は流石だ。しかし、今回についてはいささか見え透いてしまった印象が強い。そもそも個性についての考察は前作の「ニモ」で済んでしまったことだ。ドリーが何気なく発した「大事なことは偶然起きるもの(そんなセリフ?)」といった、人生の偶発性について掘り下げてくれたほうが面白かったと思う。

それよりも残念だったのが、アクションのやりすぎだ。観る者が発想できない演出を施すことは、「何でもアリ」な世界を描くことではない。海中生物としての制限を超え、困ったときの「タコ」頼みのパターンに全くスリルを感じなかった。白イルカのエコロケーションって、地上の空気中で機能するワケない。ラストのカーアクションでは絶句し大いにシラける。前作は非現実とファンタジーのバランスがもっと良かった。前作からスケールアップさせることを狙い過ぎて、過剰なアクションに走ってしまった。ピクサーらしくないセンスの悪さを感じる。

本作を観て劇場出た人がみんな口に出すであろう「八代亜紀」。日本のマーケットでは抜群の強さを誇るディズニーにとっては、日本へのローカライズは自由自在のようだ。失敗することも多々あるなか、本作についてはことごとく成功している。なかでも芸能人の声優起用が見事にキマっているのが印象的だ。前作から続投の木梨憲武や室井滋を勿論のこと、本作でキーマンとなるタコのハンクを演じた上川隆也が非常に巧い。水族館で一生暮らすことを望む変わり者を自然体で表現し、ドリーとの間に芽生える友情に熱くさせる。白イルカを演じた中村アンも意外に良かった。

「タッチゾーン」の恐るべき(笑)描写の毒っ気や、ドリーのフラッシュバックシーンの編集の妙など、「やっぱ凄いな~」と唸されるシーンもあるが、アクションシーンでは減点要素が多く「普通に面白い」の域は超えなかった。アメリカ本国ではアニメ映画としては歴代ナンバー1のヒットになるとのこと。アメリカもシリーズタイトルでしか、大きなヒットは見込めなくなっているようだ。

本編よりも秀逸なのは、本編前に上映される短編映画「ひな鳥の冒険」だ。映像の美しさは言わずもがな、あんな短時間で主人公の成長をドラマチックに描いてしまうとは。何事も踏み出さないと新しい世界は見えてこないんだよね。

【65点】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

インデペンデンス・デイ:リサージェンス 【感想】

2016-07-23 08:00:00 | 映画


邪悪なエイリアンVS地球人たちのガチンコな戦争を描いた前作。当時劇場で初めて観たときの衝撃が忘れらない。視覚効果技術がまだ未成熟だった20年前の作品だが、目から鱗のアナログ手法を用いて、先進的でド迫力の映像で大いに楽しませてくれた。今観ても普通に面白い。前作と同じローランド・エメリッヒによる続編とのこと。予想通り大作らしい大作に仕上がっているが、その映像の熱量とは裏腹に、不思議なほど高揚感が得られない。

前作で活躍した主要キャラたちのジュニア世代が活躍する時代設定だ。20年前の前作からほぼ同じ時代進行であるが、映画の中ではエイリアンから「戦利品」として勝ち取った無重力技術が日常生活にしっかり根付いている。宇宙開発も目覚ましく進歩しており、月面に防衛設備が存在するあたりは、将来実際にありそうな話で面白い。前作でエイリアンにアタックされた教訓から、地球規模での防衛から、宇宙規模での防衛に広がっている。これはさぞかしスケールのデカい話になりそうだと序盤からワクワクする。

その後、前作で地球人に敗北したエイリアン軍団が圧倒的な勢力をもって再襲来する。以降のストーリーの流れは前作とほとんど変わらない。一旦、エイリアンにコテンパンにやられたあとに地球人がやり返す展開だ。このテの大作映画はネタバレがなくてもハッピーエンド以外はありえない。肝心なのはその結末までのプロセスをどう魅力的に見せるかだ。その点で本作は前作を大きく下回っている。

まず、進化した地球の文明が問題だ。前作はローテクVSハイテクの戦いの中に大きなカタルシスがあったのだが、ボリュームの違いはあれど、同じ土俵でエイリアンたちと戦っている印象が強い。同じ戦闘機を使っているので見せ場となる空中戦では敵と見方の区別がつきにくい。その空中戦でも多用される爆破描写は火炎ではなく緑っぽい光が使われ、まるでシューティングゲームのような軽い質感だ。アクション描写を生み出す視覚効果は迫力よりも、偽物感が際立っている。

また、本作で描かれるのが戦い方ではなく戦術という点もダメだ。地球人の戦術のきっかけを作るのが、地球人と接触することになる別のエイリアンだ。「敵の敵は見方」というプロットは大好きなのだが、その見方となるエイリアンが白い球体って、どうにもシックリこない。その球体型エイリアンを利用した作戦が遂行されるが、そのロジックがよく理解できないまま進んでいくので、とりあえず目の前で起きる状況をウォッチするだけだ。感情が入っていかず盛り上がれない。あと、戦いのさなか、オッサン同士の同性愛を匂わすクダリって必要あったのだろうか。。。。

前作の大きな功績であったスター性のあるキャストの躍動が、本作では感じられないのもパワーダウンの大きな要因だ。言わずと知れたウィル・スミスが前作で一気にスターダムに駆け上がった。彼と比較すると可哀そうだが、主要キャストが明らかに役不足。2人の男子はどちらもパッとせず、大統領の娘役として活躍するヒロインを演じたマイカ・モンローの顔立ちも気になる。「イット・フォローズ」の時には何も感じなかったが、キーラ・ナイトレイとダコタ・ファニングを足して2で割ったような顔立ちだ。ちゃんと演技力がある人なので、その個性のなさが残念というより勿体ない。

中国資本に媚びを売ったキャスティングに冒頭から苦笑いするが、映画業界の流れとしてもはや避けては通れないのだろう。製作費がたくさんかけられているので、それなりの映画体験を得られるものの、ダメなハリウッド大作を久々に観た感じだ。球体エイリアンの意味がよくわからなかったので、パッケージレンタルされたらリピートするかもだけど。

【60点】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ウォークラフト 【感想】

2016-07-14 08:00:00 | 映画


7月1日、会社の代休にて学生時代以来ぶりとなる1日3本の映画ハシゴ鑑賞を敢行。「アリス~」、「ブルックリン」ときて、ラストの「ウォークラフト」。ダンカン・ジョーンズによるSFファンタジー大作ということで、この夏一番楽しみにしていた映画だ。先に公開された北米での大コケ&酷評に心配していたが、そこまで悪くない。自分は十分に楽しめた。男子は理屈抜きにこういう映画が好きなのです。完成度うんぬんより、ハイレベルな映像化にテンションが上がった。

人間、魔法使い、エルフ、ドワーフが暮らす世界に、裏世界の住人であるオークが移民として流れてくるという話だ。同名オンラインゲームの映画化とのこと。

登場するキャラクターや世界観は、「ロード・オブ・ザ・リング」とほとんど同じだ。しかし、決定的に違うのは善と悪の構図が明確に分かれていない点だ。一応倒されるべき悪者は出てくるのだが、異なる種族間ではプロットできない。どちらの種族にも善と悪が存在するからだ。どうやら原作ゲームの世界観がそれらしい。原作ゲームのファンというダンカン・ジョーンズが、本作の映画化に魅かれた理由が何となくわかったが、同時にエンタメ作として作るには難しいテーマであったと思う。そしてその挑戦の結果は、プラマイ、ゼロといった具合。いや、ラストの収まりの悪さを考慮すればマイナスと言っても良いかもしれない。

人間とオークのそれぞれの正義を描くために、どちらも対等な立ち位置として描いている。物語の冒頭からオーク側の視点で描いているのが象徴的だ。フルCGで作られたオークの仕上がりは素晴らしく、人間と同じように個性を感じさせる。予告編を見たときは実写の人間とCGで作られたオークが並ぶ姿に違和感を覚えたが、実際に見てみると全く気にはならず、その細やかな表情やしぐさによって、自然とその存在を受け入れられた。家族愛など人間側の価値観に寄せているのも効いていて、非常に感情移入がしやすい。

オークたちの移住方法は侵略である。その方針を打ち立てているのが、オークのボスであり魔法使いだ。足を踏み入れた土地の原住民たちを捕えて、その命を自身の魔法の肥やしにしている。オーク側の主人公であるデュロタンは、そのやり方に疑問を持ち、種族に危機をもたらすものと反旗を翻し、人間側との協和を望む。現代の難民問題と重ねるには少々無理があるかもしれないが、元の住処を追われ、移民として流れ着いたオークたちの姿には悲壮感があり、単純に厄介者として捉えることはできない。和平を知る人間たちと手を組み、悪いボスキャラを叩きのめす展開を観ているこっちも望むが、コトはそう簡単に進まない。

人間界を魔法で守る「守護者」の存在がいろんな意味でネックになる。物語上、トラブルを起こすのもそうだが、守護者のモチベーションが観ていてよくわからない。圧倒的に戦闘力で上回るオークに対して、守護者が発する魔法は痛快であり、序盤は観ていて楽しかったが、彼の動向が怪しくなる中盤以降から置いてきぼりを喰らい出す。結局、守護者は何をしたかったのだろう、、、と。クライマックスでの守護者と若き魔法使いの戦いが、巨大な人形を介したグダグダ劇になったのも興冷める。あそこは、普通に魔法をバンバン打ち合う絵で見せてくれれば良かったのに。

とはいえ、劇場で楽しむ映画としては一定水準をクリアしたと思う。剣と魔法の世界の美しいディテール、個々のキャラクターのビジュアル面の作り込み、壮大なスケールのアクション絵巻など、このテの世界観が大好きな自分としては無条件に観ていて楽しくなった。人間側のキャラはどれもパッとしないのだが、高潔で誇り高いデュロタンはとてもカッコいい。オークと人間のハーフを演じたポーラ・パットンのコスプレぶりもハマった。

最終的にエンタメ作として振り切れなかった印象も強い。ラストの歯切れの悪さは続編を意識したというより、本作のカラーを貫いたのではないかと考える。個人的にはダメだった。ファンタジー映画は痛快な気持ちでラストを見送りたいものだ。
続編は微妙かな。。。少なくともダンカン・ジョーンズには他の映画を撮ってほしいと思う。

【65点】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ブルックリン 【感想】

2016-07-09 09:00:00 | 映画


変化を成長に繋げられる人は、変化を受け入れた人だ。今から60年近く前の上京物語に強く共感するのは、未知の世界に飛び込んだ不安や興奮を身に覚えのある感覚として持っているからだろう。とりわけ情報量が少なく、今よりも世界が広かった当時においてはさぞかし想像を越える体験だったに違いない。アイルランドからニューヨークへ、新たな生き方を模索する主人公を応援せずにはいられない。そして、しなやかに成長する彼女の姿を見届け感動する。主演のシアーシャ・ローナンが銀幕で輝く。

閉鎖的な故郷のアイルランドから、開放的なニューヨークに出稼ぎで移住したきた女子「エイリッシュ」が成長を遂げていく物語。

エイリッシュは美人として描かれない。こっちから観ると十分に可愛いのだけれど、友達の引き立て役のような扱いで、男性から色目を使われるような存在ではない。「美人は得をする」展開は排除され、自身の力で人生を切り拓いていく女性像として確立される。また、主人公をごく普通の一般人として描くことに、当時、ニューヨークへ移住してきた多くの先人たちへのオマージュが込められているようにも思えた。

といっても、まだ少女であるエイリッシュが自分1人の力だけで、新たな環境に順応していくわけではない。多くの人たちが彼女に手をさしのべる。まず、エイリッシュがアメリカへ初めて渡航する旅客船での、洗練されたお姉さんとの出逢いが印象的だ。右も左もわからず酷い船酔いに襲われる彼女を介抱し、アメリカ入国とアメリカ生活のいろはを颯爽と教える。そのエピソードが実に素敵で、冒頭からイイ映画の臭いをプンプンさせる。そしてのこの冒頭シーンが、終盤の彼女の成長を実感させるシーンにも繋がる。巧いな~。

アメリカ入国後の住まいの世話をする下宿先の女将や、エイリッシュの生活をサポートする神父、彼女が勤務することになったデパートの女教官など、ユーモアを交えながら暖かい交流が描かれる。エイリッシュへの思いやりの背景には、彼らもかつてエイリッシュと同じ境遇にあったと想像する。ホームシックのために泣き伏せてばかりいたエイリッシュは少しずつ、ニューヨークの生活に慣れていくが、彼女の人生を劇的に変える出来事が起きる。本作のそれはシンプルに恋だ。

アイルランドにいた時と同じように孤立していたダンスフロアで、エイリッシュに声をかけてきた青年と恋に落ちる。その青年「ジム」がとても良い。アイルランドのコミュニティから外れたイタリア系移民であり、顔も特段ハンサムというわけではなく、体も小柄だ。彼の取り柄は真面目で働き者なところだ。ジムの猛アプローチと誠実さに、エイリッシュが惹かれていくのも納得だ。「君にお願いがあるんだ」と、「チューしてくれ~!」とでも言うのかと思ったら、「家族に会ってほしい」なんて。この2人の奥ゆかしく清い関係性が不思議なほど魅力的に見えるのは何でだろう。見つめ合う2人の眼差しに幸福感が漲っていて観ているこっちも嬉しくなる。

ジムとの恋愛が彼女の生活を変え、ニューヨークで生きる喜びに変わり、やがて多くの場面で彼女に自信を与えていく。エイリッシュがどんどん垢抜け、洗練されていくのがわかる。順風満帆なニューヨーク生活だったが、ある日突然、彼女に悲劇が訪れ、それをきっかけにニューヨークでの生活と、故郷アイルランドでの生活、2つの天秤にかけられることになる。

ポイントは彼女は戻ったアイルランドにも幸せな人生が待っているということだ。ニューヨークに来る前は、しがない雑貨店の小間使いをされていたが、戻ったあとの故郷ではやりがいのある安定した仕事が待っていた。そして、魅力的な男性との出逢いに恵まれ、残された肉親である母のそばにいることもできる。本作は2人の男性を巡るラブロマンスがベースになっているものの、描かれる最大のテーマは、1人の未熟な女子が成長し、自立した女性となって自らの意志で人生を選んでいく生き様だ。

ストーリーは極めてシンプルながら、生きたキャラクターに密着した脚本と、感情の機微を丁寧に掬い取ったジョン・クローリーの演出が素晴らしい。昨年のロッテントマトの中で最高スコアを叩き出したことも納得の完成度だ。同時代を描いた「キャロル」の上流階級ファッションではなく、当時の市井の人たちのお洒落を取り込んだファッションが鮮やかで可愛く、いちいち目の保養になる。エイリッシュのカラーであるパステルグリーンがナイス!

そして本作の最大の引力は何といっても、エイリッシュを演じたシアーシャ・ローナンだ。いつもよりふっくらとした肉付きで、柔らかな頬がとてもチャーミングだ。感情の細やかな表現も、エイリッシュの成長とともに変わっているのがわかる。スクリーンいっぱいに広がる彼女の美しい顔立ち、その瞬きから息づかいまで、エイリッシュの鼓動が伝わってくるようだ。本作による彼女のオスカーノミネートで驚いたのが、彼女がまだ20歳そこそこの女の子ということ。「つぐない」の出演時がまだ13歳のときのことで、以降、主演、脇役を問わず、いろんな映画で観ていて豊富なキャリアを積んでいる印象だったのだ。まだまだこれからということ。演じたエイリッシュと同じく、シアーシャ・ローナンの女優としての成長を目撃するとともに、彼女のさらなる飛躍を期待してしまう。

【75点】



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅 【感想】

2016-07-08 08:00:00 | 映画


前作に強い思い入れのない自分は、個性豊かなキャラクタとの再会だけでは楽しめない。「不思議な世界」のビジュアルはスクリーンに鮮やかに映えるものの、その中身は前作以上にフラットで粗い作りだ。アリスが1人で起こした騒動に周りが巻き込まれてしまう(苦笑)。悪者がいない仲良しこよしな顛末はスパイスの効いていないカレーみたいな味だ。もはや原作を完全に無視したストーリーは許容できたとしても、原作にも通じる毒っ気が前作から完全に抜けてしまったのが気に入らない。「時間」をテーマに選んだのは悪くなかったと思うが、もう少し何とかならなかったか。。。

前作での結末とおり、貿易会社で船長となったアリスがワンダーランドに戻り、かつての旧友「マッドハッター」のために過去にタイムスリップするという話。

3年という長い航海から戻ったアリスは「時間は泥棒」と、過ぎ去った時間を嫌悪する。ワンダーランドでハッターと再会したアリスは、ハッターに今は亡き家族がいたことを知る。ハッターの苦悩に手をさしのべるべく、過去に戻る方法を知ったアリスはハッターの家族が亡くなった時間に戻り、ハッターの家族を救おうとする。しかし、それはワンダーランド全体の時間を狂わす大きなリスクを孕んでいた。

今回新たに登場するキャラである「タイム」は本作のヒールではない。タイムはすべてに平等に与えられる時間を正確に進むように管理しているだけだ。本作のヒールはアリスだろうか。ハッターとの友情のためだけに、時間を動かす核「クロノスフィア」をタイムの元から盗みだし、周りの迷惑を省みずにひたすら突っ走る。タイムがアリスを猛追し捕らえようする様子は、悪者からアリスが逃げるように見えるが、実は追っかけているほうのタイムが被害者だ。タイムが気の毒に見えてしまう。

時間に対する嫌悪が、彼女の驕りに繋がっているとも考えられる。結果、「時間は変えられないもの」と彼女は自分の過ちに気づく。そこまでは良いが、以降の展開が彼女が犯した失態の後始末で終わっているのがつまらない。3Dや4D上映を意識したアトラクション感の強い描写が目立つが、結局、その「追いかけっこ」アクションを見せたかっただけなのだろうか。アリスが起こした騒動に、観ているこっちも付き合わされた感が強い。途中、アリスがわざわざ一回、現実世界に戻った意味もよくわからない。アリスは前作から成長した姿を見せるべきなのに、発揮されたのは船の運転技術だけという切なさ。

また、せっかく個性豊かなキャラクターがいるにも関わらず、それを活かさないのが勿体ない。前作ではそれぞれの個性が異なる局面で躍動し、アリスの活躍の後押しをしていたが、本作では彼らが一か所にまとまり、声を合わせて「アリス、がんばれ!」と言っているだけのようだ。動きのあるアクションはアリス1人に集約され、本作の最大のチャームと思われるマッドハッターにもほとんどアクションの機会が与えられない。

本作で新たに明らかになるのがハッターに家族がいたことと、赤の女王に知られざる悲しい過去があったことだ。ハッターは孤高だからこそ、あのクセのあるキャラが活きるし、赤の女王は悪い奴だからこそ物語のアクセントになる。2人の子ども時代を演じた子役たちが非常に可愛く、その過去を描くこと自体は良いけれど、その過去がダイレクトに現在へと影響し、2人の個性(見え方)を変えててしまったのが問題だ。「みんな良い人で、みんなでハッピー♪」な結末が、こんなにも収まりが悪いとは。。。。

前作に続き、ミア・ワシコウスカがアリスを演じる。前作がフィットしなかった自分は、ティム・バートンが描く映像世界の玩具にしか見えず一発屋で終わると思っていた。しかし、以降の現在に至るまでの彼女の活躍を、誰がここまで予想できただろう。「キッズ・オールライト」以降の絵に描いたようなキャリアアップに、成長した彼女の存在感が本作で示されるべきだったが、演じたアリスの魅力が乏しいために、前作の彼女と何ら変わらなかった。残念。

【55点】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ゲーム・オブ・スローンズ 第六章 【感想】

2016-07-07 08:00:00 | 海外ドラマ


6月になって仕事が急激に忙しくなったため、毎週ペースで観る予定が、第5話以降、まとめてイッキ見をすることになった。そして先週の月曜で最終回となった第6章を観終わったので感想を残す。

第4章、第5章と比べると、各エピソードの物語の密度が低くなった印象。今回より原作を離れての脚本であったが、それが災いしたか定かではないが、何かとツッコミどころが多かった。エンジンがかかるのが遅く、たいてい7話目くらいから盛り上がってくるのだが、本作は9話目からだった。但し、9話目と10話目がハンパなく面白かった。これまで正義の味方を散々いじめ抜いてきたドSっぷりがようやく解消されて気持ち良し!自分はMじゃないので大満足。やっぱ規格外のドラマ。

<ここからネタバレあり>

本章の先制パンチは、第5章で殺されたジョン・スノウの奇跡の復活だ。メリサンドルの妖術によって息を吹き返すが、その理由が本章の最後まで明らかにならなかった。普通に考えたらかなりの反則技であり「神様に選ばれたから」という言葉だけでは不十分だったが、スターク家の希望が絶えなくて、まあ良かった。最終話で明かされたスノウの出生の秘密と関連があるのかも?

その後、スノウが長女サンサとの再会を果たし感涙。この調子で、妹のアリア、弟のブランとの再会も期待していたが、その道のりはまだ遠く(近付いているかも?)、アリア、ブランにはさらなる苦難が待ち受けている。その設定はよいのだが、本作の失速の原因はこの2人のエピソードと、王都での「雀聖下」のクダリだ。

面白い展開がないのに、想像以上に長く描かれる。アリアの「顔のない~」エピソードは、アリアが町人を暗殺し、アリアが逆に暗殺されようとする確固たる背景は語られないのに(あまり腑に落ちない)、当たり前のように一定の長時間が割かれる。アリアの不死身っぷりもツッコミどころだ。ブラン君はホワイトウォーカーたちに襲われるところまでは良かったが、その後は逃亡するだけで、ブラン君自身が「三つ目鴉」として活躍するシーンがなくて非常に残念。また、ブラン君の体が大きくなったので、身動きがとれない彼はお荷物になっている印象だ。「雀聖下」の横暴ぶりは前作と状況は変わらず、総司祭が理屈を捏ねくり回しているので引力がない。王家と手を結ぶという展開もイマイチ。囚われたタイレル家の2人の心変わりが大きなポイントだが、マージェリーが何か企んでいるように見えて結局何もなかった。。。

前章でお腹いっぱいになったエピソードを、本章でも長いこと描かれたの退屈だったが、それを忘れさせるほどのカタルシスが第9話と第10話で待ち受けていた。もう鳥肌が立つほどに興奮してしまった。これぞ「ゲーム・オブ・スローンズ」。

デナーリスの3頭のドラゴンが満を持して大暴れする。待ってました!!
奴隷の親方衆が圧倒的な武力をもって逆襲しにくるが、ドラゴンによって蹴散らされる。



ジョン・スノウ率るスターク家&野人軍団が、いよいよ鬼畜ラムジー率いるボルトン軍と相まみえる。スノウの完全な失策を、成長したサンサの攻略が補い、泥臭いながらも勝利を収める。その戦闘シーンの迫力が凄まじかった。リコンは予想通り殺された。戦いのクライマックスでジョン・スノウがラムジーをジリジリと追いつめ、その顔面に怒りの鉄拳を何度も喰らわすシーンに大興奮。そして、シメはサンサの恨みが発散された見事な決まり手!!鬼畜ラムジーに、あれ以上相応しい最後はなかっただろう。それにしてもラムジーを演じたイワン・リオン、最高に巧かったな。

そしてそして、王都でのサーセイによる圧巻の一掃劇。スッキリしたー!!!冒頭からひらひたと押し寄せる不気味な語り口が素晴らしく、その陰謀の全容が見えたときのスリルたるや。一掃された後のサーセイの息子(国王)の最後を見届けるシーンのカットが秀逸。さすがの演出力。最終話の完成度は群を抜いている。

毎回、主役級の活躍をみせるティリオンは本章では全く見せ場なしだが、デナーリスとの絆が強固なものになりグッときた。あと、モーモント女公を演じたちびっ子の女の子の、大人たちを喰う堂々の存在感も印象深かった。あと、久々にオッパイ描写が復活。有吉がラジオでオッパイが見たくてこのドラマを見てるって言ってたな。。。

今回の第6章の結末をもって、ようやくそれぞれの王家が天下統一に向けて1つの方向に向かおうとしている。これまで散らばっていた多くの勢力は大きく3つに集約された模様。サーセイ率いるラニスター家、ジョン・スノウ率いるスターク家、デナーリス率いるターガリエン家だ。振り返ると物語が大きく動いた章だった。先日ニュースで第8章で終了するとのこと。あと2章。いよいよ壮大な物語のクライマックスが幕を切ろうとしている。

第7章までまた1年間待たねばならないというのはかなり忍耐だ。とりあえず、本作を製作したHBOの方々、お疲れ様でした。そして世界同時放映で見せてくれたスターチャンネルに感謝。現在ダウントンアビーを見ているのでしばらく解約しません。

【85点】





コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2016年上半期 ベスト映画TOP5と勝手に個人賞。

2016-07-05 09:00:00 | 映画

2016年の折り返しに入った。2016年の上半期で見た映画のなかで、トップ5を勝手に決めてみる。
対象は今年上半期に劇場で観た29本。

1位 レヴェナント: 蘇えりし者
2位 オデッセイ
3位 神様メール
4位 パディントン
5位 アイアムアヒーロー

観終わったあとの満足度で並べた。完成度という点では、「アイアムアヒーロー」は他タイトルと比べると少々見劣りするけれど、日本映画が苦手なジャンルで、その鬼門を見事に突き破った功績を讃えたい。

続いて2016年上半期、勝手に個人賞。

監督賞 ジャコ・ヴァン・ドルマル(神様メール)
主演男優賞 レオナルド・ディカプリオ(レヴェナント: 蘇えりし者)
      綾野剛(日本で一番悪い奴ら)
主演女優賞 ブリー・ラーソン(ルーム)
助演男優賞 ベニチオ・デル・トロ(ボーダーライン)
助演女優賞 アリシア・ヴィキャンデル(エクスマキナ)

監督賞は「レヴェナント~」のイニャリトゥで決まりかなと思ったけど、「神様メール」を観て、ジャコ・ヴァン・ドルマルの唯一無二の感性にノックアウトされた。主演賞は迷わずディカプリオだが、綾野剛の演技もアカデミー賞ものだ。助演は結構悩む。助演男優賞は「ルーム」のジェイコブ君か、「ブリッジ・オブ・スパイ」のマーク・ライランスも捨てがたしだが、久々のデル・トロの会心の一撃が印象に残った。助演女優賞は「ヘイトフル・エイト」でのジェニファー・ジェイソン・リーと迷ったが、「リリーのすべて」を凌駕する「エクスマキナ」でのヴィキャンデルの表現力に魅了された。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第88回アカデミー賞の候補作を観終わった件。

2016-07-05 08:00:00 | 映画
先週、「ブルックリン」を観終わり、第88回の作品賞候補をすべて観たことになるので、今更ながら個人的に満足した順に作品賞候補をランキングしてみた。

1位:マッドマックス 怒りのデス・ロード
2位:レヴェナント 蘇えりし者
3位:オデッセイ
4位:スポットライト 世紀のスクープ
5位:ルーム
6位:ブルックリン
7位:ブリッジ・オブ・スパイ
8位:マネー・ショート 華麗なる大逆転

今年のノミネート作はどの作品も当たりだった。なので、どれもノミネートされて納得といった感じだ。特に、「マッドマックス~」や「オデッセイ」などの娯楽作がちゃんとノミネートされたのが良かった。
来年のアカデミー賞の作品賞候補になりえるタイトルは来月公開の「ジャングルブック」あたりからになるだろうか。アメリカ公開済みの映画でも現状で候補入り確実というタイトルはまだ出ていない。「セッション」で鮮烈なデビューをキメたデミアン・チャゼルの新作(La La Land)の仕上がりが気になるところだ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日本で一番悪い奴ら 【感想】

2016-07-02 16:00:00 | 映画


今年は邦画の豊作年だろうか。「凶悪」に続いて白石和彌がまともやヒットをカッ飛ばした。四半世紀に渡り、悪事に手を染め続けた男の一代記を鮮烈に描く。かぐわしい昭和の香り、嫌いじゃない人間の臭気。可笑しくて、切なくて、「ブギーナイツ」を見た時のような味わい。主演の綾野剛が最高過ぎて惚れる。

警察史上最大のスキャンダルとも言われた北海道県警の黒歴史「稲葉事件」をベースに描いた犯罪ドラマ。この事件を映画化したら面白いだろうなーと思っていたら、白石和彌によって映画化されるとのこと。そして予感は的中した。傑作。

柔道の腕だけで北海道県警に採用された主人公の「諸星」。体育会系で築かれた生真面目さが要領の悪さとなり、昭和の時代、有効とされていたヤクザまがいの剛腕捜査の足手まといになる。そんな彼に手を差し伸べたのが県警のエースの先輩だ。「青年よ、クソ溜めに飛びこむ勇気はあるか?」と、スパイを使って犯罪社会と繋がることが、犯罪捜査の成功に繋がるとアドバイスする。未熟で純粋な諸星にとっては先輩の言葉は神の啓示に等しく、その言葉を信じて即行動に移す。自身の名刺を町中にバラまき顔を売り、腕っ節の強さにモノを言わせ、無理くり犯罪情報を叩き出そうとする。そしてビギナーズラックよろしくな成果を上げ、彼の信念は固まる。正義の前に悪事は正当化されると。

その後、ヤクザ、元ドラッグの運び屋、盗難車バイヤーのパキスタン人の3人のスパイを従え、諸星の悪事は加速していく。やらせ、恐喝、偽装と手段を選ばず、ひたすら「点数」を稼ぎまくる。警察組織から与えられる栄誉に酔いしれると同時に、自身の行動が町の公安を守る警官としての正義と疑わなかった。

フィクションである本作では、諸星の悪事を北海道県警は許容していることになっていて(たぶんホントのところも組織ぐるみの犯罪。)、「困ったときの諸星頼み」といった風で、県警として成果を出したいタイミングで、上司たちは諸星に「調達」をお願いする。そのやりとりが最高に笑える。諸星と3人のスパイが繰り広げる悪事も、倫理が麻痺した世界では当たり前の風景として扱われ、不謹慎なユーモアが次々と放たれる。劇場でこんなに笑ったのは久しぶりだ。

悪徳刑事諸星は不道徳を燃料に走る続け、やることもどんどんスケールアップしていく。が、盛者必衰の定理のとおり、ある事件の失敗を境に墜落していく。上昇するスピードが早ければ転げ落ちるスピードも早い。笑いで済まされていた状況が、恐怖で凍り付いていく。固い絆で結ばれていた諸星とスパイたちの絆が崩れ去っていくのが切ない。気づけば諸星の生き様に釘付けになっている。観客を笑いで沸かせるエンタメ作であるとともに、人生の悲喜を描き尽くした一級品のドラマでもある。

主人公の諸星を演じたのは綾野剛だ。彼の本作でのパフォーマンスは映画史に残る事件だ。キネ旬の主演男優賞は「そこのみにて~」ではなく本作のためにとっておいたほうが良かったのではないか。本作ですっかり彼のファンになってしまった。恥部、弱さ、虚栄、欲望といった人間が持つ汚物をさらけ出し、25年間に渡る特異な男の人生の一瞬一瞬をエネルギッシュに体現する。とりわけ物語の転機を象徴する、諸星が初めてドラッグをキメるシーンが凄まじい。顔面が鬱血し、眼球がおかしな方向を向き、ヨダレが口内から無意識に流れ出す。その絵の衝撃度とともに、行き場をなくした男の悲しみがにじみ出る。彼の変貌ぶりを涙ながらに見つめるYOUNG DAISの受け側の演技も素晴らしい。

前作「凶悪」で注目した白石和彌の演出力も冴えている。特に本作では演技派として知られるようなビックネームはキャスティングせず、デニスの植野のはじめとして、ミニマムな配役に終始するも、それぞれの持ち味をキャラクターの個性に見事に活かしてみせる。関東のヤクザを演じたTKOの木下がガチで怖い(笑)。その他、いろんな意味で緩かった時代の風紀を、エロスを含め遠慮のない描写で表現する。その生々しい描写の数々に、日本映画もまだまだイケると頼もしさを感じる。

実話モノというカテゴリを無視しても、とにかく面白かった。公開初日に観たが、観客席は結構空きがあり、こういう見た目の映画はやっぱり敬遠されてしまうのかと残念に思った。購入した劇場パンフレットは充実の情報量で、諸星のモデルとなった稲葉氏本人のインタビュー記事が興味深かった。

【80点】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする