5月より在宅勤務が実質廃止され、通常出社に戻る。
勤務先はIT系。そこそこ大きい会社と思うが、根はベンチャーかつ体育会系であり「みんなで顔を合わせて仕事しよう!」「在宅でサボるのはやめよう!」というノリである。
はっきりいって面倒だ。
そんななか鑑賞した本作はまさにタイムリーであり、勤務先が求める「あるべき仕事の姿」と思えた。今の自分にはいささか耳が痛いテーマ。。。
変化を受け入れたものだけが勝者になる、のビジネス版のサクセスストーリー。
かつてスポーツメーカー業界の3番手にいたナイキが、現在、業界の圧倒的トップに君臨する礎を築いた「エアジョーダン」の誕生秘話を描く。
結論は誰しもわかっている史実の映画化だ。そのプロセスもおそらく調べればある程度わかるだろう。それでも、痛快なエンタメとして昇華させるハリウッド映画の強さを再認識する。
人気のスポーツ選手とスポンサー契約をして、商品の広告塔、あるいはメーカーのブランドそのものになってもらうという、よくあるマーケティング手法。まずは誰と契約するか。通例ではリスク分散を考慮して複数名と契約するが、本作の主人公である担当者が選んだのは、NBAデビュー前のマイケル・ジョーダンの一点賭け。ジョーダンの活躍は高校時代より広く知れ渡っており、競合メーカーとの争奪は熾烈していた。真正面からぶつかれば、予算が潤沢にある他メーカーにはかなわない。何よりもジョーダン自身がナイキを嫌っていたという大きなハンデがあった。ある程度脚色している部分も多そうだが、逆境からの成功という流れはまさに映画的で面白い。
そこで主人公がとった戦法はルールを破ることだ。ルールを破ることで得られるメリットと代償。メリットが代償を上回るかどうかも大きな賭け。その賭けに至るまでのプロセスを、職場の同僚やジョーダンの両親との関わりを交えてドラマチックに描き出していく。監督はベン・アフレック。人間を描くことの的を外さない流石の演出力。この物語の中心人物であったはずのジョーダン本人の姿を完全に消した選択も大英断といえる。気心の知れた盟友、マット・デイモンとのタッグでやりやすかったに違いない。マット・デイモンの終盤の独演シーンが胸に響く。ベン・アフレック自身が演じた社長の個性も、決してスマートなキャラではなく、逆に彼の懐の深さを感じさせた。
1つの目標に向かってチームのメンバーと策を巡らし、準備を進め、その成功の勝利を分かち合う。。。コロナ渦で久しく忘れていた仕事の情熱みたいなものが湧き上がってくる。実際の勝因は、終盤で描かれるメーカーとの新しい契約形態によるものだろう。それは業界の常識を覆すものであり、これもまた大きなリスクを伴う。リスクなくして挑戦の対価は支払われないのかもしれない。そして新しいルールを作ったものが、その世界の覇者になる。今の現代ビジネスにも通じる格言が散りばめられている。
【70点】