から揚げが好きだ。

映画とサウナ。

バーニング・オーシャン 【感想】

2018-01-31 09:00:00 | 映画


DVDレンタルにて。去年、劇場公開を見逃した1本。
2010年にメキシコ湾で起きた原油流出事故を描く。本作をもって、先に見ていた「パトリオット・デイ」と、2014年の「ローン・サバイバー」と合わせてピーター・バーグによる鎮魂歌3部作を見終わった。3作品とも素晴らしかった。
舞台となるのは陸上から離れた海上の原油掘削施設だ。それは巨大な建造物であるだ、実態は水上に浮いている船だというから驚きだ。人の手が届かぬ海底から地球の資源を汲み上げる様子は想像を絶するスケールで、同時にそれを可能にしてしまう技術力の高さに圧倒される。しかしながら、ちっぽけな人間が地球の胎動をコントロールすることなんてできるはずはなく、大きなリスクが伴うのは必至で、十分な準備と確実な判断が必要となる。ところが、この事故は紛れもない人災であり、起きるべくして起きた悲劇。恐ろしいのは「何か違う」とイレギュラーケースに気づきながらも、不確実な情報によって正しい判断ができなくなる心理の危うさだ。「セメントテスト」など専門用語が飛び交うセリフが続くが、事態の状況や因果関係が不思議と把握できる脚本になっている。事故発生に至るまで、静かな前兆が不気味に忍び寄り、静寂を一気に打ち破る爆発の描写が凄まじく言葉を失う。風圧によって人間が軽々と吹き飛ばされ、周りの鉄骨が鋭利な刃物となって、人体の肉を裂き、骨を砕く。痛覚を刺激するライブ感は「ローン・サバイバー」に共通する。複雑な施設の構造から、ステージごとに変化していく崩壊のプロセスがしっかり設計されているようで、事実考証を入念に行ったことがわかる。生死の岐路に立たされた登場キャラたちの決死の脱出劇にくぎ付けになる。人間関係のドラマパートを含め多くのフィクションが含まれていると思うが、映像によって体験が可能となる映画表現において、これだけのレベルで再現されれば得られる教訓は当然大きい。繰り返してはならない史実を知ることの、映画の1つの役割を改めて感じる。
【70点】
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ベイウォッチ 【感想】

2018-01-31 08:00:00 | 映画


DVDレンタルにて。DVDスルーになってしまった映画だが、まあ納得。
海の安全を守るライフセーバーの一団(ベイウォッチ)が、麻薬の密売を一掃するために奮闘する姿を描く。海難事故の救出を目的とするライフセーバーが、犯罪組織に潜入するなどの警察行為に及ぶ。おそらくオリジナルの作風を踏襲したからだろうが、まだまだ緩かった1990年代のフィクション設定を、現代にそのまま持ってくることには違和感を覚える。お馬鹿映画として割り切るのもアリだが、おふざけが過ぎて失笑を喰らう場面が多い。アレクサンドラ・ダダリオが自分でおっぱいを揺らすなど、そのままやらせちゃダメでしょ。セクシーな肉体はセクシーに見せるべきだ。コメディに終始するものの、笑いを取りにいった場面がことごとくスベって、脚本のダサさが目立つ。筋肉&グラマラスバディのお祭りとして、美男美女たちの肉体を愛でるも、物語としての面白みがないのは残念だ。まさにラジー賞らしい映画(まだ候補段階だが)。特典映像のキャストのインタビューから、ドウェイン・ジョンソンの通ったあとにはセクシーな香りが残るらしい。あの筋肉美と香しい体臭があれば最強だ。どんな香水を使っているのか気になった。
【55点】
コメント (1)
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ハートストーン 【感想】

2018-01-30 08:00:00 | 映画


新作DVDレンタルにて。
アイスランドの漁村を舞台に2人の少年の性の目覚めを描く。
行き場のない田舎町の陰鬱として空気と、北欧の澄んだ陽光が印象的な風景。主人公の少年の年齢は明かされていないが、12,13歳といったところか。絵に描いたような悪ガキで、近くの港で釣り上げた魚を「醜い」の理由で足でぐちゃぐちゃにして喜んでいると思えば、廃棄されている自動車を見つけるなり鉄棒で思いっきり破壊して楽しむ。待ちぼうけを喰らう時間は、ひたすら地面に唾を吐きためる。話す言葉も生意気なことばかりで、まるで可愛げがない。不良というより、常識や思いやりといった感覚が欠如している無知の状態といえ、成長過程の生々しさを感じる。思春期にはまだ早い段階とみえ、肉体的に大人になることへの憧れだけが先行する。異性との性行為についても、自信の性的欲求よりも「経験」を済ますことの達成感を目指しているようだ。心(あるいは欲求)と体が、同期していない子どもがいるなか、もう1つ、自身の「性」の在り方について目覚める少年が登場する。閉鎖的な田舎町にあって、ことさら偏見の目に晒される同性愛という概念だ。「気持ち悪い」という想いと、それでも抗えない自身の感情がせめぎ合う。自身の中で折り合いがつかず、苦悩し、絶望にまで至る痛みが、ストレートな自分にも伝わるほど。2つの性の目覚めを、キャラクターの体温すら感じさせる距離で密着した監督の演出手腕が素晴らしい。多様性の理解を深める映画でもあった。
【65点】
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パディントン2 【感想!】

2018-01-27 08:00:00 | 映画


2018年1発目のホームラン映画。前作に続いての傑作。
人間の言葉をしゃべる熊との共生というファンタジーから見えるのは、人を信じることの尊さだ。陽気な映像に潜んだ、真心たっぷりのメッセージに何度も涙腺がゆるむ。礼儀正しく、正直に、親切に、そして一生懸命に生きるパディントンを愛さずにはいられない。彼に関わる人たちがことごとくハッピーになるのも素直に受け入れられてしまう。悪者を作らず、あくまでファミリー映画としてのスタイルを崩さないのが素晴らしい。脚本も実に良く練られていて、とりわけクライマックスにおける笑いとスリルを内包した伏線回収が圧巻だ。遊び心満載の映像は精巧かつ、とにかく楽しい。ヒュー・グラントのコメディパフォーマンスも最高。楽しくて感動して胸がいっぱいになった。

前作ですっかりブラウン家の一員となったパディントンが、育ての親であるルーシーおばさんに贈る誕生日プレゼントを巡り、奮闘する姿を描く。
翌週に小学生の甥っ子と見に行く約束だったが、どうしても字幕版で見たかったので先に見ることした。結果、リピート鑑賞も大歓迎な映画だった。

前作からの変化はパディントンとブラウン家の家族関係は勿論のこと、町に暮らす人たちとの間にもナチュラルな友情が芽生えていることだ。前作で見えたメッセージは「寛容さ」であり、異なる文化や価値観をもった人たちを受け入れ、互いに共生することの豊かさを描いていた。本作ではパディントンと町の人々との間に「当たり前」の関係性が出来上がっている状態でスタートしていて、パディントン自身が町の人たちの絆を結ぶキューピット的な役割も担っている。現実離れした理想形ともいえるが、本作はこうでないとダメだ。



今回の物語のきっかけとなるのは、ルーシーおばさんに贈る誕生日プレゼントだ。前作でパディントンをペルーから送り出した育ての親であり、彼女がイギリスへ訪れる夢をパディントンに託した形でもあった。本作ではルーシーおばさんとパディントンが初めて出会った回想シーンが描かれる。それは命がけの大変なエピソードなのだが、あくまでシリアスな空気を避ける本作にあって、どこか「のほほん」とした絵本の世界観を優先する。但し、見ているこっちは早々に涙腺が緩んでしまう。2人の絆がいかに大きなものであるかを印象付ける。そして、パディントンにとってルーシーおばさんはかけがえのない大切な人であり、ルーシーおばさんへ感謝の気持ちを伝えたいという想いが痛いほど伝わるのだ。

誕生日プレゼントに選んだのは、イギリスの名所を巡る飛び出す絵本である。絵本を贈って、ルーシーおばさんにイギリス旅行の気分を味わってもらうことが狙いで、心のこもったナイスチョイスといえる。パディントンが飛び出す絵本を初めて目の当たりにする場面、絵本の中でルーシーおばさんと一緒にイギリス旅行を空想するシーンが何ともドリーミーで引き込まれる。美しくて可愛くて、パディントンの喜びが心地良い高揚と共に伝染する。パンフ情報によると、監督が特にこだわったシーンで、パート1の成功があって実現できたとのことだ。こういうことに膨らんだ製作費を費やすべきであり、正しいパート2の作り方だ。

その絵本を巡ってパディントンは様々な騒動を起こす。絵本は高価な売り物であり、熊とはいえ、アルバイトをしてお金を稼がねばならない。真面目で一生懸命働くがどうしても間が抜けているため、何かと失敗が続く。前作に続き、そこで発生するコメディアクションが相変わらず可笑しい。モフモフな熊なため、いくらでも「萌え」に走れるはずなのに、その視点に媚びることはなく、予測できない発想の動きでユーモアを作り出す。本作では前作以上にパディントンのアクションが激しいものになっていて、編集やカメラワークの美技も手伝って大いに楽しませてくれる。また、彼のドジによって生まれた思わぬ副産物が後半に効いてきたりする。

今回もパディントンのコスチュームは赤い帽子に紺のダッフルコートだ。少しくすんだレトロな風合いが素敵で抜群に似合っている。本作では、新たに囚人服コスチュームが追加される。パディントンが誤認逮捕によって、まさかの刑務所入りを経験するのだ。「刑務所に入るほどの犯罪かい!」というツッコミはどこ吹く風であり、そのファンタジーな展開に大いにノる。囚人服もパディントンが着てしまえば可愛いパジャマに早変わりだ。その一方で、刑務所で待ち受けるのはこれまで経験したことのない孤独と冷え切った人間関係、そして、まずいメシ。この悲惨な状況を打開するのはパディントン自身であり、必殺の「マーマレード」パワーが炸裂する(笑)。



パディントンが刑務所を幸福な空間に変える。ブレンダン・グリーソン演じる刑務所のボスの感情を動かしたことがきっかけで、先入観を持たないピュアな性格と、誰にでも敬意をもって接する紳士さのなせる業だ。その考え方の根底にあるのは、人を信じる精神と感じた。どんな人にでも良心があって、それを信じる価値があるということ。劇中何度も出てくる「親切は自分に戻ってくる」(見返りという意味ではない)とはよく言ったもので、他人を信じ大切にすることが自分の人生を豊かにしてくれるというメッセージと受け取れる。パディントンがいれば、世の中から戦争がなくなるのに、というのは思い過ぎだろうか。

刑務所生活のあとに訪れるのが、クライマックスの汽車の追いかけっこだ。これがまたとんでもなく秀逸。前半に描かれていた些細な小ネタや、これまで積み上げてきたパディントンの経験が、めまぐるしいアクションのなかで一気に伏線となって回収されていく。そのあまりの鮮やかさに思わず発奮してしまった。それをドヤ顔で魅せるのではなく、しっかりユーモアを効かせているのがイイ。ヘンリーお父さんのチャクラの覚醒に爆笑。コメディセンスが冴えている。驚きや笑いだけでなく、パディントンの収監中も無実を晴らすために奔走していたブラウン家の面々との、強い絆がエモーショナルに描かれる。もう涙なくしては見られないほどに感情を揺さぶられてしまった。

前作に続き、ベン・ウィショーの低音気味で温みのある声がパディントンにぴったりだ。彼のアフレコシーンをパッケージの特典映像に入れてほしい。また、CGで作られたパディントンの脇役として周りを固める役者陣たちの献身的な演技も光る。前作の序盤、ひとりぼっちで駅に佇んでいたパディントンを一番気にかけていたブラウン家のメアリーお母さんは、本作でも我が子のような愛情をパディントンに注いでいる。好奇心旺盛でチャーミングな一面もあるメアリーを、前作に続きサリー・ホーキンスが好演している。また、本作で新たに登場するヒュー・グラントのパフォーマンスが絶品だった。もともとラブコメで一斉を風靡した人だが、かつての輝きを取り戻すかのような絶好調ぶり。落ち目の役者という、ややブラックユーモアの効いたキャラクターを存分に楽しんで演じているようだ。ヒュー・グラントは本作の演技により、しっかり英国アカデミー賞の助演男優賞にノミネートされた。もちろん、本作は作品賞にもノミネートされている。前作に続いてメガホンをとったポール・キングはすごい才能をもった人だ。



もはや「パディントン」は自分の中で、愛と平和のアイコンとしてが確立された。ファミリー映画とは子ども向けではなく、小さい子どもから大人まで楽しめる映画だということを再認識させる映画でもあった。ロッテントマトで史上最高スコアを更新したというのも納得の完成度。にも関わらず、アメリカでは興行的に失敗しているようで、英国コンプレックスでもあるのだろうか。日本でも自分が見た映画館では公開初日なのに空席が目立っていて残念に思えた。大半が吹き替え版で見ているのかもだけど。

パディントンがラストに発した、シンプルで想いのこもったセリフに再び涙腺が緩む。その後のエンドロールでは、ゴージャスで楽しいヒューグラントの「ワンマンショー」が流れて、最後の最後まで楽しませてくれる。ひたすら楽観的で、陽気。この映画の多幸感はかなり得難い。

【85点】
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ファーゴ シーズン3 【感想】

2018-01-26 08:00:00 | 海外ドラマ


昨年末にイッキ見をした海外ドラマ「ファーゴ」のシーズン3の感想を残す。

全10話だったが、BDレコーダーの故障により第1話と第4話が消えてしまうという悲劇に見舞われる。スターチャンネルオンデマンドで見逃し配信をやっているが、全話を配信してくれるわけではなく最終話が放送された頃には第4話以前は消されていた。なので、その回のあらすじについてはネット上のネタバレ情報で補完した。

双子の兄弟が主人公。駐車場経営で成功する兄(エミット・スタッシー)と、前科人の更正を手伝う保護司の弟(レイ・スタッシー)。この兄弟の確執と、彼らに襲い掛かる犯罪集団との騒動を描く。双子兄弟をユアン・マクレガーが1人2役で演じる。

シーズン3はシーズン1の5年後にあたる2005年の設定で、シリーズで御馴染みのミネソタ州が舞台だ。またもや季節は凍てつく冬。シーズン1,2で登場してきたソルヴァーソン一家(シーズン1のモリーとシーズン2のルー)など共通キャラの登場はなく、完全にリセットした物語が展開する(ごく一部を除いて)。

途中見ていないエピソードがあるので、歯切れよく賛否を判断することはできないけれど、それを差し引いても、このシーズンは見劣りする。シーズン1に続き、シーズン2も傑作レベルで面白かったため、昨年の目玉作品として期待していたのだが、残念だった。これまでのシーズンと比べると、シーズン3は物語が一方通行だ。予想もつかない展開という点では引き付けられる要素はたくさんあるが、それだけではシリーズのファンは満足できない。他の海外ドラマと相対的に見れば十分に面白いけれど。

ドラマ「ファーゴ」の醍醐味は、どこにでもいる一般ピープルが、小さな欲をかいたことや、思わぬ事故に巻き込まれたことによって、予想だにしない天国/地獄に落ちていくスリルにある。本作ではスタッシー兄弟がその役回りだ。そして彼らを取り巻く形で登場するのが、個性的で魅力的なキャラクターたちであり、各キャラクター同士が複雑に絡み合い、ブラックユーモアを湛えたスリラーが描かれる。シーズン3については、どれもボリューム不足だ。

デキの良い兄とデキの悪い弟。毛髪フサフサの兄と、頭皮が目立つハゲ気味の弟。顔の作りは瓜二つの双子であるが、何かと対照的な2人だ。兄のエミットと比べると日陰の存在である弟のレイが、結婚という幸せを手に入れるタイミングで兄弟喧嘩が勃発。レイの結婚相手は保護観察対象である前科人という反則技w。兄弟喧嘩を機に、エミットへの憎しみを抱いたレイの些細な計画が、思わぬ事故に発展する。この流れはまさに「ファーゴ」だ。



時を同じくして、エミットが経営する会社に疫病神が巣食うことになる。目的は会社の乗っ取りだ。それは3人の犯罪グループで、いずれもクセが強い。3人の中でボスである男は歯並びが気になるのか常に歯の隙間を道具でイジっている。その仕草がイチイチ気持ち悪い。その男の手下であり「仕事人」として動く残りの2人は、屈強なロシア人と体の小さいアジア人のコンビだ。違和感たっぷりな組み合わせと、彼らが手を下す残酷な暗殺描写がエグい。ドラマ版の「ファーゴ」に足された、映画「ノーカントリー」の「シガー」のような絶対的暴力の系譜であり、本シーズンでもスリラーの源泉になる。



3人の犯罪グループの魔の手はやがて弟レイの方にも及ぶことになるが、主人公であるスタッシー兄弟にとって「脅威」として居座り続けるのがつまらない。しかも、ひたすら暴力によるもの。これまでのシーズンであれば、この犯罪グループと対立する第三のキャラクターが出てくるのだが本シーズンには登場せず、力関係の構図に変化が現れない。厳密にいうと、終盤でようやく流れが変わるのだが、スタッシー兄弟とは直接関わりのない所で事件が発生する。せっかく1人2役を演じるユアン・マクレガーが面白いのに、そのキャラクターをスリルの真ん中に持ってこない。一連の事件を通して、平凡であった主人公らの個性が大きく変わるダイナミズムもない。この点も、シーズン1、2との違いだ。

本ドラマのエンジンがかかるのは8話目から。シーズン1で登場した最強のヒットマン「マルヴォ」。マルヴォに病室で殺されなかった、聾唖の怪力男「レンチ」が現れるのだ。その登場シーンに思わずテンションが上がる。全く偶然のタイミングで、3人の犯罪グループに復讐しようとするレイの婚約者に協力することになる。これまでやりたい放題の3人組だったが、新たに結成されたこの男女コンビが一泡吹かせる流れとなり、ようやくドラマが面白くなる。ここにスタッシー兄弟が絡めばもっと面白かったけど。



スタッシー兄弟と並び、主要キャラクターとして登場するのが事件の真相を追う女性警官だ。自動ドアのセンサーなどに反応しない特異体質(?)という捻った個性をもたせているが、シーズン1のモリーやシーズン2のルーといった、これまで登場してきた警官役と比べると明らかに魅力不足だ。キャラクターの作り込み不足は彼女だけでなく、今回の悪役となる3人グループのボスもそうだ。何かと比喩を使った能書きから会話を始めるが、その内容があまりにも意味不明で、終盤になると「またそのパターンか」とウンザリしてくる。

「ファーゴ」らしい内容で楽しめた部分も多いが、やはりこれまでのシーズンと比べると物足りない出来栄えだ。最後のオチもやや拍子抜け。もっと面白くできたはずだ。

次のシーズン4の予定はなく、このシーズン3で終了というニュースも流れているが、ファンとしては是非シーズン4も製作してもらって、再びあの興奮を味わわせてほしいと思う。

【65点】

ファーゴ シーズン2 【感想】
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第90回アカデミー賞 ノミネーションが発表された件(嬉しいサプライズあり!)

2018-01-23 23:18:19 | 映画


つい先ほど、第90回アカデミー賞のノミネーションが発表された。Youtubeの公式チャンネルより生配信にて、その模様を固唾を呑んで見ていたが、いやいや結構なサプライズがあった。大好きなポール・トーマス・アンダーソン(PTA)が久々のカムバック!!

【作品賞】
スリー・ビルボード
シェイプ・オブ・ウォーター
君の名前で僕を呼んで
ダンケルク
レディ・バード
ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男
ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書
ゲット・アウト
ファントム・スレッド <驚!!>

ここに来てPTAの「ファントム・スレッド」が9作品目に滑り込んだ!これ、予想できた人ってどのくらいいるんだろ。。。

【監督賞】
ギレルモ・デル・トロ(シェイプ・オブ・ウォーター)
クリストファー・ノーラン(ダンケルク)
グレタ・ガーウィグ(レディ・バード)
ジョーダン・ピール(ゲット・アウト)
ポール・トーマス・アンダーソン(ファントム・スレッド) <驚!!>

監督賞にもポール・トーマス・アンダーソンがイン!!!それに入れ替わる形で外されたのは、作品賞最有力と思われた「スリー・ビルボード」のマーティン・マクドナーだ。これは結構な波乱。また、新人監督であるグレタ・ガーウィグとジョーダン・ピールの予想は的中。時代は多様性だ。

【主演男優賞】
ゲイリー・オールドマン(ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男)
ティモシー・シャラメ(君の名前で僕を呼んで)
ダニエル・デイ=ルイス(ファントム・スレッド)
ダニエル・カルーヤ(ゲット・アウト)
デンゼル・ワシントン(Roman J. Israel, Esq)

残念なのはこの部門。「The Disaster Artist」のジェームズ・フランコが外されてしまったことだ。これで日本公開がまた遅くなってしまう。。。ガラパゴスジャパン。

【主演女優賞】
フランシス・マクドーマンド(スリー・ビルボード)
シアーシャ・ローナン(レディ・バード)
サリー・ホーキンス(シェイプ・オブ・ウォーター)
マーゴット・ロビー(I, Tonya)
メリル・ストリープ(ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書)

この部門は特にサプライズなし。やっぱメリル・ストリープは強い。

【助演男優賞】
サム・ロックウェル(スリー・ビルボード)
ウィレム・デフォー(The Florida Project)
リチャード・ジェンキンス(シェイプ・オブ・ウォーター)
クリストファー・プラマー(All the Money in the World)
ウディ・ハレルソン(スリー・ビルボード)

「もしかして」のとおり、ウディ・ハレルソンがサム・ロックウェルに続き、ダブルノミネートを果たした。クリストファー・プラマーは、ケビン・スペイシーの急遽代役にも関わらず凄い。

【助演女優賞】
アリソン・ジャニー(I, Tonya)
ローリー・メトカーフ(レディ・バード)
オクタヴィア・スペンサー(シェイプ・オブ・ウォーター)
レスリー・マンヴィル(ファントム・スレッド)
メアリー・J・ブライジ(マッドバウンド 哀しき友情) <驚!!>

サプライズあり。NETFLIX作品である「マッドバウンド~」のメアリー・J・ブライジがイン!!!ようやくアカデミー賞もNETFLIXへの門戸を開いたか。おそらく、2年前の「ビースト・オブ・ノー・ネーション」でイドリス・エルバを候補入りさせなかったことへの反省が効いたのかも。NETFLIXファンとしては嬉しいけど、個人的には彼女が出演している「マッドバウンド~」がさほどハマらなかったので微妙なところ。



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第90回アカデミー賞 ノミネーション直前予想

2018-01-22 23:39:43 | 映画
昨日、アカデミー賞に最も影響力のあるSAG(全米俳優組合賞)が発表され、受賞予想はほぼ確定の状況となった。そうなると、ノミネーション予想で盛り上がるしかない。ノミネーション発表が明日に迫ったので予想をしてみる。なお、各部門の一番上が受賞予想。

【作品賞】
スリー・ビルボード
シェイプ・オブ・ウォーター
君の名前で僕を呼んで
ダンケルク
Lady Bird
ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男
ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書
ゲット・アウト

1カ月前の予想と変わらず。サプライズな作品がノミネートされてほしい。

【監督賞】
ギレルモ・デル・トロ(シェイプ・オブ・ウォーター)
マーティン・マクドナー(スリー・ビルボード)
クリストファー・ノーラン(ダンケルク)
グレタ・ガーウィグ(Lady Bird)
ジョーダン・ピール(ゲット・アウト)

多様性を推す情勢にあって、新人監督ながら、女性監督のグレタ・ガーウィグと、有色人監督であるジョーダン・ピールが入ると予想。

【主演男優賞】
ゲイリー・オールドマン(ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男)
ティモシー・シャラメ(君の名前で僕を呼んで)
ダニエル・デイ=ルイス(ファントム・スレッド)
ジェームズ・フランコ(The Disaster Artist)
ダニエル・カルーヤ(ゲット・アウト)

主演男優賞の候補入りは上の5人で確定。P・T・A映画は総スカンを喰らうことも多いのでサプライズがあるとしたらダニエル・デイ=ルイスではなく、トム・ハンクス(ペンタゴン~)になるかもしれない。

【主演女優賞】
フランシス・マクドーマンド(スリー・ビルボード)
シアーシャ・ローナン(Lady Bird)
サリー・ホーキンス(シェイプ・オブ・ウォーター)
マーゴット・ロビー(I, Tonya)
メリル・ストリープ(ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書)

1カ月前の予想と変わらず。サプライズはなさそう。

【助演男優賞】
サム・ロックウェル(スリー・ビルボード)
ウィレム・デフォー(The Florida Project)
リチャード・ジェンキンス(シェイプ・オブ・ウォーター)
アーミー・ハマー(君の名前で僕を呼んで)
マーク・ライランス(ダンケルク)

サプライズがあるとしたら、マーク・ライランスではなく、サム・ロックウェルとのダブルノミネートとなる、ウッディ・ハレルソンが候補入りするかも。

【助演女優賞】
アリソン・ジャニー(I, Tonya)
ローリー・メトカーフ(Lady Bird)
クリスティン・スコット=トーマス(ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男)
オクタヴィア・スペンサー(シェイプ・オブ・ウォーター)
レスリー・マンヴィル(ファントム・スレッド)

1カ月前の予想と変わらず。主要部門が作品に偏る傾向があるので、レスリー・マンヴィルを予想するが、5人目はホリー・ハンター(ビッグ・シック~)になるかも。う~ん、わからない。

昨年までノミネーション発表を、生中継でWOWOWで放送してくれていたが、今年は放送しないようだ。日本時間では明日の22時半くらいにウェブ動画で発表される。雪の心配もあるが、明日は早めに帰らねば。
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皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ 【感想】

2018-01-17 08:00:00 | 映画


DVDレンタルにて。
ノーマークの映画だったが、すっかり熱中してしまった。ヒーロー像を新たな切り口で描いた快作。アニメちっくな展開と、どこか洗練されてないB級映画臭さがツボに入る。2013年の「クロニクル」を見たときの感覚に近い。
ある日、川に沈む謎の廃棄物にまみれたことで強靭な肉体と怪力を身につけた男を描く。アメコミヒーロー全盛の昨今の映画界において、異端ともいえるヒーロー映画だ。本作で超人的な力を得る主人公は、犯罪にも手を染める反社会的な人間だ。外見はどこにでもいそうな中年のおっさん風情。自身の力に気づいた主人公はさっそくATMを強盗して自身の欲望を満たす。孤独な一人暮らしでカップ入りのヨーグルト(?)を偏食し、エロDVD鑑賞にふける自堕落な生活を送る。そんな男に変化をもたらすのは「鋼鉄ジーグ」のアニメの世界で生きる、純粋無垢な女子との出会いだ。「鋼鉄ジーグってなんだ!?」といった感じだが、自分が生まれる前にテレビ放送されていた日本のアニメらしい。そのアニメが輸出され、本作の舞台であるイタリアの地で根付いていることに驚く。ジャパニメーションは日本人が想像するよりも世界レベルのコンテンツなのだ。本作からは「鋼鉄ジーグ」への強い敬意が感じられ、他人に無関心なダメ男が正義に目覚め、現代の「鋼鉄ジーグ」になるまでの過程がドラマチックに描かれる。リアリティをできるだけ損なわない作りになっていて、SNSによる拡散の効用なども物語の展開に活かされている。カタルシスたっぷりの脚本からは、アニメあるいは漫画が好きな人によって描かれたものと感じられる。胸アツなクライマックスと、「力をどう使うか」というヒロイズムの根源みたいなメッセージにしびれた。
【75点】
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第75回ゴールデングローブ賞の授賞式の感想

2018-01-16 23:45:33 | 日記


先々週に開催された第75回ゴールデングローブ賞。一週間遅れでその字幕版をAXNで見た。受賞結果にサプライズがなかったこともそうだが、一連の「セクハラ問題」に全体が引っ張られ過ぎていて面白くなかった。大変な事件ではあるけれど、このムードがアカデミー賞にも影響したら嫌だな。主要部門の受賞結果は以下のとおり。

<映画 ドラマ部門>
【作品賞】スリー・ビルボード
【主演男優賞】ゲイリー・オールドマン(ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男)
【主演女優賞】フランシス・マクドーマンド(スリー・ビルボード)

<映画 ミュージカル・コメディ部門>
【作品賞】Lady Bird
【主演男優賞】ジェームズ・フランコ(The Disaster Artist)
【主演女優賞】シアーシャ・ローナン(Lady Bird)

<映画 共通部門>
【監督賞】ギレルモ・デル・トロ(シェイプ・オブ・ウォーター)
【助演男優賞】サム・ロックウェル(スリー・ビルボード)
【助演女優賞】アリソン・ジャニー(I, Tonya)

<TVドラマ部門>
【作品賞】「ハンドメイズ・テイル」
【主演男優賞】スターリング・K・ブラウン「THIS IS US 36歳、これから」
【主演女優賞】エリザベス・モス「ハンドメイズ・テイル」

ギレルモ・デル・トロのスピーチ目当てで、スカパー経由でAXNに加入したものの、そのスピーチがあまりにもパッとしていなくて残念だった。本番であるアカデミー賞まで温存していると思いたい。彼はアメリカでも映画を撮っている人だが、まだまだハリウッド俳優陣とは関係性が薄いようで、デル・トロが登壇するタイミングでもあまり歓声が上がらなかった。
ゴールデン・グローブ賞の華であるセシル・B・デミル賞は、今回、初の黒人女性であるオプラ・ウィンフリーが受賞した。激しく心を揺さぶるスピーチだったが、あまりにも完璧すぎて、後ろに作家がついているのだろうと要らぬことを考えた。日本人として彼女のこれまでの功績をよく知らない。彼女の紹介VTRを見た感じだとトークショーの司会で有名になり、慈善事業家としても活躍しているようだ。また、誰だったか忘れてしまったが、プレゼンターとして登場した女性が、セクハラ問題に引っ掛けて女性が対等に評価されていない実情の1つとして、今回の監督賞に女性が1人も候補入りしていないことに言及していた。「確かに」と納得する反面、選考に水を差すようなコメントにも思えた。
そんななか、今回のベストスピーチは「I, Tonya」のアリソン・ジャニー。余裕かつ堂々とした立ち振る舞いで本当にカッコ良かった。自然体かつ自分の言葉で、感謝と作品に対する思いを述べていた。俄然「I, Tonya」への関心も高まる。「I, Tonya」のテーブル席にはトーニャ本人もいて驚いた。一方、一番リアクションが良かったのは「Lady Bird」を監督したグレタ・ガーウィグ。自身が演出したシアーシャ・ローナンの主演女優賞の受賞を我がコトのように喜び、作品賞の受賞では普通の女の子のように、はしゃいでいて可愛かった。アカデミー賞では監督賞にノミネートされてほしい。

テレビ部門については、昨年のエミー賞と同じような顔ぶれの結果。「THIS IS US~」のスターリング・K・ブラウンはとても納得。「アメリカン・クライム・ストーリー」でも苦悩する検察官を熱演していた。作品賞を受賞した「ハンドメイズ・テイル」は圧倒的な強さで今年の賞レースを総ナメにしている。ようやく日本のhuluでも2月の末からリリースが決まった。ネットフリックスを見習って、出し惜しみなく全話一挙配信にしてほしい。
ほか、リミテッドTVドラマ部門では、ニコール・キッドマン(ビッグリトルライズ)や、ユアン・マクレガー(ファーゴ)など、映画俳優の面々が主要部門を独占していたのも印象的だった。ミーハーなゴールデングローブ賞ならではの結果であると共に、近年の潮流である、映画界とTV界のシームレス化を象徴するシーンだった。
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2018年注目映画10選

2018-01-14 08:00:00 | 気になる映画


豊作だった2017年の洋画。2018年も強力なラインナップが控える。
注目しているタイトルを10個まとめてみた。現時点(2018年1月13日時点)で日本公開が決まっているものに限定。上から期待度順。

1. アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー(4月27日)
MCUの1つの到達点になるか。ドリームチームなアベンジャーズに対するは、ラスボスのサノスだ。ガーディアンズとの合流も大変気になる。世界の興行収入を塗り替える事件になりそう。

2. シェイプ・オブ・ウォーター(3月1日)
敬愛するギレルモ・デル・トロが初オスカーを獲得すると思われる1本(おそらく監督賞として)。怪獣映画ながらベネチア国際映画祭で最高賞を得る快挙を果たす。

3. インクレディブル・ファミリー(8月)
数あるピクサーアニメのなかでも、自身の3本の指に入る傑作映画の続編がいよいよ登場。監督は前作に続き、ブラッド・バード。「トゥモローランド」の失敗を挽回してほしい。

4. レディ・プレイヤー1(4月20日)
映像化困難といわれたSFを、名匠スピルバーグがどのように料理するか。予告編にワクワクする。久しく3D鑑賞を控えているが、さすがに本作で解禁するか。主演は若手注目株のタイ・シェリダン。

5. レディ・バード(6月)
昨年、公開後1ヶ月近くロッテントマトで100%フレッシュをマークしていた映画。監督・脚本家としてデビューしたのは女優のグレタ・ガーウィグだ。主演のシアーシャ・ローナンのパフォーマンスにも期待。

6. RAW 少女のめざめ(2月2日)
アメリカのYouTuberの人が昨年のベスト映画の上位に上げていた映画。内容は人肉ホラーのようだが、それを超えるテーマが見えてくるとのこと。フランス人の女性監督の映画である点も興味深い。

7. ジュラシック・ワールド 炎の王国(7月13日)
傑作を生み出し続けるJ・A・バヨナがついに超大作映画の監督に抜擢された。エンターテイナーとしての手腕が試されるが、きっと面白い映画にしてくれるはず。

8. リメンバー・ミー(3月16日)
今年のアカデミー賞における長編アニメ部門で受賞が確実視されるピクサー映画。「死後の世界」というピクサーらしいオリジナリティー溢れる物語設定だ。

9. ブラックパンサー(3月1日)
2年前、「クリード」で体内の水分を搾り取ったライアン・クーグラー。今年もディズニーは若き才能を見逃さず、「インフィニティーウォー」に繋がる最重要作の監督に抜擢した。

10. ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生(11月)
ハリポタよりもファンになった前作。前作で別れてしまったキャストが再び集まるらしい。嬉しい反面、別れのラストが美しかったため複雑な気も。出し惜しみのない魔法ファンタジーに期待。

ほかに今年のアカデミー賞を賑わせるであろう「スリー・ビルボード」「君の名前で僕を呼んで」「アイ、トーニャ」「ファントム・スレッド」あたりも非常に楽しみだ。例によって、まだ日本公開が決まっていない映画もたくさんあって、ジェームズ・フランコの監督&主演作である「The Disaster Artist」や「The Florida Project」「Wind River」は早く公開が決まってほしい。
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キングスマン: ゴールデン・サークル 【感想】

2018-01-13 08:00:00 | 映画


2018年1本目の劇場映画。

とても面白かったが、何かと「Too much」な続編でもあった。パワーアップはサイズを大盛りにすることにあらず。「毒っ気」や「お遊び」は前作のボリュームに抑えてほしかった。カンボジアの「地雷」はネタに使ってほしくないし、カメオ出演のあの人はさすがに出過ぎだ。一方、アメリカ機関との連携や、ついに実現されたエグジーとハリーの共闘など、本作で追加された要素で大いに楽しませる。アンチシリアスな世界観と、荒唐無稽ハイテンションアクションはキレ味抜群で文句なしにアガる。

2年前に公開された「キングスマン」の続編。「ドラッグを合法化しろ」という新たな敵が現れ、キングスマンが再び世界を救うための戦いに身を投じていく様を描く。

007シリーズやMIシリーズなど歴代のスパイ映画を一気に抜き、自身のベストスパイ映画に躍り出た前作。続編である本作を見終わったあと、自宅でブルーレイを見返したが、やっぱり傑作だった。本当によく出来ているなーと惚れ直す。「最近のスパイ映画はシリアス過ぎる」というセリフに頷いてしまう。その続編ともなれば期待が高まるものの、先に公開された欧米での評価は芳しくなく気がかりだった。公開初日だったこともあるが、劇場は満席状態で驚いた。2年前の前作とは大違いな盛況ぶりで、この2年間で前作のファンになった人も増えたようだ。

映画ポスターにある「秒でアガる」のキャッチコピーに偽りなし。いきなり始まる車内での激しい接近戦や、ロンドンの町を猛スピードで走る抜けるカーアクションにボルテージが急上昇する。アクションが激しいだけでなく、そこかしこにスパイ映画ならではの仕掛けや本作らしいユーモアが挟まれる。前作で落第した同期生による襲撃というのも自然だ。本作を待ち望んでいたファンの期待に応えるかのような見事な滑り出し。

その後、主人公のエグジーが会うのは前作で「お尻合い」に過ぎなかったはずの女子だ。知らぬうちに2人の関係は純愛に発展していたみたいだが、前作の関係がお下劣過ぎたゆえ、どうにも違和感はぬぐえなかった。エグジーと彼女の交流を通して、エグジーの成長した姿がみられる。テーブルマナーのクダリでハリーを回想し、胸が熱くなる。エグジーにとってハリーは恩師であり恩人であったことを思い返す。そんな彼が前作の途中で殺されたのは大きな衝撃だった。しかし、予告編でのネタバレ通り、ハリーは本作で復活する。

前作の大きな成功要因は、ハリー演じるコリン・ファースのキャスティングだろう。この手のアクション映画とは無縁の人で、知的な顔立ちに長い手足、美しくスーツを着こなし、そのビジュアルから想像も付かないほど激しいアクションを繰り出す。どんな動きになってもスタイリッシュなバランスを保ち、彼が演じるハリーというキャラクターにすっかり魅了された。ハリーのいない「キングスマン」は考えられないため、本作での復活はご都合主義というツッコミよりも、喜びのほうが圧倒的に勝る。前作ほどハリーの活躍は本作では見られないが、それでもいい。

英国らしさ全開の「キングスマン」と同様に、今回新たに登場する、アメリカらしさ全開の「ステイツマン」の設定が面白い。外国人がアメリカの象徴的なイメージとして思い浮かべるカウボーイを、そのまま諜報員のスタイルにしている。このベタさが本作らしくて良い。カウボーイの投げ縄による攻撃も、新たなアクションパターンを見せてくれる。前作の「人口減らすために殺し合い」と比べると、悪役のモチベーションの設定は甘いが、舞台となるアメリカの癌である「ドラッグ」を持ってきたのは納得感がある。

前作から15分ほど長い上映時間だ。アクションを中心にスピード感のある作りに見えるが、それなりに長さを感じてしまう。前作のヒットにより増やされた製作予算を、前作でやったことの上塗りに投下している。そして「ここが面白いギリギリのライン」という前作のレベルを節度なく超えてしまっているのがいただけない。2人の友の死、女性の体内に仕掛ける下ネタ、不謹慎なカンボジアの地雷、人肉ミンチの多用など「そこじゃないんだよ」と何度も首を傾げる。一番気になったのはカメオ出演(?)で登場する大物歌手があまりにも多く顔を出し過ぎていること。気持ちいいアクションの流れを淀ませ、コメディ色が一気に強くなる。ザ・英国的存在であるため登場させるのはわかるが、キングスマンの活躍にあそこまで介入するのは邪魔だった。

本作のヒールは、ジュリアン・ムーアが演じる。一見まともだけれど、実は頭のネジが1本飛んでいるサイコキラーを余裕たっぷりに演じる。「マイティソー」のケイト・ブランシェットもそうだったように、演技が巧い人は何をやってもハマるんだなと感じる。キングスマンが彼女を打ち倒すクライマックスは、前作と比べるとやや見劣るがそれでも大いに楽しい。本作でもアイデアたっぷりのスパイアイテムを駆使して、ド派手な殴りこみをかける。師弟のハリーとエグジーが力を合わせて戦う様子に胸が熱くなる。途中、犬型ロボットとの対決やカメオ出演者の活躍でテンションが一時的に下がるものの、その後のメインデッシュバトルで再燃。ハイセンスなBGMも手伝い、痛快なアクション劇を堪能する。

前作が良くでき過ぎていたこともあり、欠点が目立つ続編だった。もちろん監督のマシュー・ボーンはそれらを欠点として捉えておらず、前作で魅力と感じたポイントが自分とズレていただけと考えた。今回、アメリカ機関を登場させたのは面白い展開だった。もし続編が作られ、日本にも同じような諜報機関があるとすれば、サムライや忍者になるのだろうか。それも一興だ。

【65点】
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2017年映画 勝手に個人賞

2018-01-12 08:00:00 | 勝手に映画ランキング
2017年に観た映画のうち、個人賞を勝手に決めてみる。

監督賞:デイミアン・チャゼル 「ラ・ラ・ランド」

「メッセージ」「ブレードランナー2047」のドゥニ・ヴィヌーヴと迷いに迷ったが、「ラ・ラ・ランド」については監督のビジョンが一番強く感じられ、その情熱と労力が唯一無二の完成度に結実していた。チャゼルによる完全オリジナル作品という点も大きい。

主演男優賞:ヴィゴ・モーテンセン 「はじまりへの旅」

「マンチェスター・バイ・ザ・シー」のケイシー・アフレックや、「グッド・タイム」のロバート・パティンソンなど、一番選出が難しい部門。そのなかで一番ハートを震わせたのは、7人家族の父親を演じたヴィゴ・モーテンセンの父性だった。

主演女優賞:ガル・ガドット 「ワンダー・ウーマン」

「ワンダー・ウーマン」は映画史における事件であり、そのヒロインを演じたガル・ガドットの功績が大半を占める。演技云々ではなく、ビジュアルを含めた彼女の個性の賜物であり、まさに運命的なキャスティングだった。

助演男優賞:ダニエル・ラドクリフ 「スイス・アーミー・マン」

「ハリポタ」以降、その呪縛(?)解放から、様々な変質キャラを演じてきたラドクリフにとって、いよいよ行き切った「死体」役。そのユニークなチャレンジで映画を大いに盛り上げてくれた。肉体的にも相当ハードだったはずで、その役者魂にもあっぱれ。

助演女優賞:ミシェル・ウィリアムズ 「マンチェスター・バイ・ザ・シー」

主演のケイシー・アフレックは文句なしに素晴らしいが、その元妻を演じたミシェル・ウィリアムズの名演も忘れ難い。心に深い傷を追い、時間によって救われた部分とそれでも癒えぬ複雑な感情を表現。2人が偶然に出くわす涙のシーンが心に刻まれる。

新人男優賞:フィン・ウルフハード 「IT/イット」

海外ドラマ「ストレンジャー・シングス」との合わせ技。ドラマでは友情と正義感に熱い主人公を演じたが、本作の映画ではビン底メガネのおしゃべり「リッキー」をコミカルかつチャーミングに演じてみせた。

新人女優賞:パウラ・ベーア 「婚約者の友人」

オゾンが再び新たな才能を発掘。嘘と愛に翻弄され、自身で運命を切り開く女性を繊細かつ力強く演じた。モノクロの映像が、彼女の透明感を映し出す。ドイツ人女優ながら、ハリウッドに進出してほしい逸材。

ベスト子役賞:マッケナ・グレイス 「ギフテッド」

2017年は子役の活躍が目立った年でもあった。なかでもド級の存在感をみせたのは彼女であり、多くの観客が彼女の虜になったはず。他にも「ナイス・ガイズ」のアンガーリー・ライスや、「ローガン」のダフネ・キーンも素晴らしかった。

マン・オブ・ザ・イヤー:ライアン・ゴズリング

2017年は第二次ゴズリングイヤーだった。自身の2017年ベスト映画トップ10のなかに彼の出演作が3本も入り、彼なしでは語れない映画年だった。夢を追う等身大青年から、ヘタレなお父さん探偵、魂を追い求める孤独な人造人間まで、演じたキャラクターの振れ幅も大きく、もれなく魅力的なキャラクターとして記憶に残る。自分は本当にゴズリングが好きだなーと再認識する。

日本映画については、ベストなチョイスがなかったので簡単にまとめる。

監督賞:大友啓史「3月のライオン」
主演男優賞:菅田将暉「帝一の國」「あゝ、荒野」
主演女優賞:蒼井優「彼女がその名を知らない鳥たち」
助演男優賞:オダギリジョー「南瓜とマヨネーズ」
助演女優賞:該当者なし
新人男優賞:竹内涼真「帝一の國」
新人女優賞:石橋静河「夜空はいつでも最高密度の青色だ」

2017年ベスト映画トップ10
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2017年ワースト映画トップ10

2018-01-11 23:00:00 | 勝手に映画ランキング
ベストに続き、2017年のワースト映画をまとめてみる(完全に個人的な好みの問題)。一部を除いて劇場未公開映画は除外。洋画と邦画の混合。6位以降は「悪い」というより「期待ハズレ」だった映画。

1位 メアリと魔法の花
ジブリの偽物映画。格好だけつけて、感情移入できないキャラ描写は相変わらず。無駄に粗いアニメーションに絶句。

2位 グレートウォール
中国資本によって飲み込まれるハリウッドの悲劇を目撃する。名優マット・デイモンの黒歴史が誕生してしまった。

3位 パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊
新鋭監督の才能がハリウッドによって封じられる不幸な事例。カッコよかったジョニー・デップはもう戻ってこない。

4位 トランスフォーマー/最後の騎士王
お馬鹿すぎる脚本と盛りすぎるスペクタルCG。もはや狙っているとしか思えないが、満腹すぎて気持ち悪くなる。

5位 ワイルド・スピード ICE BREAK
シリーズの美学をないがしろにする車への愛なき映画。これまで積み上げてきた人物関係をリセットしてしまうのはダメ。

6位 ザ・マミー 呪われた砂漠の王女
予告編以上の情報が見当たらない映画。退屈。ダークーヒーローにトム・クルーズが全くハマっていなくて辛い。。

7位 ブライト(NETFLIX)
種族の違いを人種の違いに置き換えてしまう安直さ。リアル×ファンタジーを描くことの難しさを再認識させる。

8位 アシュラ
権力と暴力をイコールの関係にしてひたすら暴力描写に走る。過剰にキレまくって結局、暴力がモノを言う。ゲンナリ。

9位 あゝ 荒野
人間ドラマと社会問題を散漫に並べた前編。説明不足により主人公2人の対決に熱が入らない後編。あれだけの時間が必要だったのか。。。

10位 アトミック・ブロンド
反撃必至なリアルな格闘アクションは迫力よりも疲弊を強いる。語り口が下手なため、ラストのカタルシスが逃げた。
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2017年ベスト海外ドラマ トップ10

2018-01-08 12:27:22 | 海外ドラマ
映画に続いて、2017年に見た海外ドラマのベストランキングを決めてみる。

1位 ゲーム・オブ・スローンズ 第七章

壮大な旅がヤマ場を迎える。幾多の支流が大きな本流へとまとまったシーズン。第七章で最高シーズンを更新。全9話ながら、各話がもれなく高密度で1本の映画レベル。悲劇のスターク家がようやく再会を果たし、各エピソードの主役たちが同じ画面内で夢の共演を果たす。重厚な人間ドラマに胸を締め付けられ、大迫力のアクションにワクワクと興奮が止まらなかった。すっかり成長したドラゴンは大暴れ。最終となる次の第八章ではとんでもないことになりそう。

2位 ベター・コール・ソウル シーズン3

伝説の「ガス」がいよいよ登場。主人公ソウル(ジミー)のドラマとしても十分面白かったが、「ブレイキングバッド」のスリルが加わったことでさらに面白くなってしまった。観る者の予想を凌駕する脚本と演出はさすが。ヴィンス・ギリガンブランドの確かな品質と完成度。

3位 THIS IS US 36歳、これから シーズン1

現在NHKで放送中の海外ドラマで18話中、12話の途中段階であるが、毎話、泣かされている状況。2つの時代で「今」を生きる5人の大人たちが描かれる。肌の色が1人違う3つ子の兄弟と、幼少期の彼らを大きな愛で育てた2人の夫婦。笑いと感動に包まれる日々が胸を打つ。文字通り「世界一」のお父さんが最高に素敵。主人公演じる高橋一生の声優起用だけが減点。

4位 ナルコス シーズン3

エスコバルというカリスマが去ったシーズン2。もはや打ち止めと思いきや、とんでもなかった。中毒性でいえば今年のベスト。コロンビアでの第二次麻薬戦争は、新たな覇権争いに突入。大国アメリカをも巻き込んだダイナミックな展開に釘付けになる。当時の北中米情勢を知る歴史ドラマとしても見ごたえり。DEAだけでなく、カルテル側の警備部長を主要キャラにおいた脚本も秀逸だ。

5位 シャーロック シーズン4

欧米で酷評された理由もわかったが、個人的にはめちゃくちゃ楽しめた。これまでの推理サスペンスに、アクションとシリアスな人間ドラマが加わる。強い友情で結ばれていたホームズとワトソンの間に最大の危機が訪れ、「人間」ホームズのルーツ・心理に迫る。演技派であるカンバーバッチが見事な熱演で応える。映像による演出もさらに進化。観る物の予想を置き去りにする仕掛けも相変わらず楽しい。

6位 ブラック・ミラー シーズン4

傑作オムニバスドラマとして、本シーズンでも大充実の仕上がり。「よくこんな面白い脚本を描くなー」と何度も感心してしまう。近未来における科学技術の発展は利便性の享受に留まらず、いつの時代も変わらぬ人間の業を露にする。全6話、それぞれ個性的で面白いが、奇想天外な物語をブラックユーモアで綴った第1話「宇宙船カリスター号」と、物語の背景と色彩を排除し、スリラーに徹した第5話「メタルヘッド」がとりわけ素晴らしかった。

7位 アメリカン・クライム・ストーリー/O・J・シンプソン事件

裁判のあり方を問うテーマ性だけでも、映画「三度目の殺人」よりも多面的で深い。事件を通して浮上するのは「人種差別」というアメリカの病巣。ドラマの枠でこれだけ重厚な実話モノを描けてしまうアメリカのエンタメ界の強さ。

8位 ストレンジャー・シングス 未知の世界 シーズン2

前シーズン超える面白さ。手加減なしのファンタジースリラーを、子どもたちの冒険劇にぶつける。子どもたちの好奇心と勇気が事件解決へ繋がっていく脚本が相変わらずブレない。本シーズンでは子どもたちの友情の輪が広がり、恋愛模様も色濃く描かれ、青春ドラマとして味わいが一層増した。ゴーストバスターズの仮装など、80年代のカルチャーを抑えているのも嬉しい。主人公演じるフィン・ウルフハードは映画「イット」でも大活躍。

9位 オレンジ・イズ・ニュー・ブラック シーズン5

舞台となる刑務所の構図を破壊したことにより、マンネリから見事に脱却。人種間の壁を越えて、各コミュニティがシャッフルされたことも新鮮。個性的なキャラクターたちが、それぞれの魅力を取り戻してくれたことも大きい。本ドラマ最強のヒールである「ピスカテラ」に秘められた過去が明らかになり、多様性を打ち出す本作らしいエピソードで印象に残った。

10位 ファーゴ シーズン3

神がかり的に面白かったシーズン1とシーズン2から大幅なパワーダウンが否めないが、「ボタンの掛け違い」による地獄直行のドラマの持ち味は健在。シーズン1からの伏線が後半から登場し興奮してしまった。ユアン・マクレガーが個性の異なる2人(双子)の主人公を妙演。「T2」の公開時、スキンヘッドだった理由は本作への出演のためだったのだ。是非シーズン4を作ってもらって挽回してほしい!!

「ゲーム・オブ・スローンズ」についてはダントツの1位で、「アベンジャーズ」の実現に大興奮した。次はいよいよ最終章、リリースは来年2019年になるとのことだが楽しみにして待ちます。
10タイトル中、7つがネットフリックスで見たドラマだ。オリジナルの映画を含め、ネットフリックスには2017年も大変お世話になった。ほかに新シリーズとしてリリースされた「クィーン・オブ・ザ・サウス」や「マインド・ハンター」もかなり面白かった。2017年も面白い海外ドラマに恵まれた一方で、シリーズ史上、一番面白くなかったのは「ハウス・オブ・カード(シーズン5)」と「ジ・アメリカンズ(シーズン5)」だった。また、新シリーズとして期待していた「レギオン」も全くハマれなかった。「ハウス・オブ・カード」についてはドラマの色がだいぶ変わってしまったので、続きのシーズンについても期待は持てない。ケビン・スペイシーのセクハラ問題があったので、それどころじゃないかもだけど。
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2017年ベスト映画トップ10 【邦画編】

2018-01-05 08:30:00 | 勝手に映画ランキング
洋画に続き、2017年の邦画のベストランキングを決めてみる。豊作だった前年から一転、面白いと思える映画が少なかったため、6位以降は多少無理やり引っ張ってきた感あり。
ブログに感想を載せてない映画だけ、一言感想を追記。

1位 彼女がその名を知らない鳥たち


2位 3月のライオン【前後編】


3位 牝猫たち

1位に続いて白石監督作。ポルノ映画はリアリティではなく男が描いたファンタジーであることをわきまえつつ、現代性、ドラマ、エロス、ユーモアをしっかりとストーリーの中に内包する。ロマンポルノの芸術性の一端を知った気になる。とろサーモンの村田、ドラマ版の「火花」に続き、演技が本当に巧い。

4位 勝手にふるえてろ


5位 夜空はいつでも最高密度の青色だ

東京は「生きる」の1000万人の集合体。よくみる新宿と渋谷の風景をバックに、孤独な男女による高純度ロマンスが展開。いつくるかわからない死をみつめ「朝起きたらおはようと言おう」。人が無性に恋しくなる映画。

6位 帝一の國

今の旬を生きる若手俳優たちが一同に集合。潔いほどの馬鹿馬鹿しさが実に痛快。コミカルでエネルギッシュな学園内権力闘争から、リアルな政治像が透ける。ふんどし一丁、綺麗なお尻が乱舞する太鼓シーンなど、随所に男色の匂いがするのも良い。「あゝ、荒野」よりも本作での菅田将暉の演技を支持。

7位 南瓜とマヨネーズ


8位 ジョジョの奇妙な冒険 


9位 GODZILLA 怪獣惑星


10位 夜は短し歩けよ乙女

濃密で不思議な一夜。サイケで癖が強い世界観は、観る者の想像力を軽く超える独創性。その映像の渦で脳みそを撹拌する。描かれるのはあくまで男女のラブロマンスであり、気持ちのよいラストに着地してくれる。


年末に間に合わせる形で「あゝ、荒野」や「ビジランテ」などの日本映画を立て続けに見たがどれも期待ハズレだった。他にも「これは良かった!」と手放しで楽しめた日本映画は本当に少なかった。1位の「彼女がその名の知らない鳥たち」と2位の「3月のライオン」はトップ10のなかでも頭1つ抜け出ているほど良かった。奇しくも将棋界のトピックスで賑わった2017年だったが、原作の魅力を十分に活かし、将棋という宇宙を見事に映像化した「3月のライオン」はもっと評価されてしかるべきだ。原作にはない解釈で締めくくった脚本も素晴らしかった。同じく漫画原作の実写映画である「ジョジョの奇妙な冒険」は逆に原作を知らないから新鮮で楽しめた。人伝えに聞く説明だけではわかりづらい原作の設定を、実写の力を借りて理解できたのが嬉しい。ようやく「ジョジョ」を知った。予告編では安っぽく見えたCGも、ファンタジーに振り切った映画のなかではさほど違和感はなかった。続編ができたらまた観てしまうと思う。アニメ映画の「GODZILLA 怪獣惑星」は、その結末に否定派が多いみたいだが、自分は自然と受け入れられた。その結末以上にプロセス段階である緻密なSF設定とダイナミックなアクション描写に見入ってしまった。
2017年に見逃した日本映画は「彼女の人生は間違いじゃない」と「幼な子われらに生まれ」。
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