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から揚げが好きだ。

映画とサウナ。

ザ・フラッシュ 【感想】

2023-07-01 08:30:58 | 映画


ついにDCEUの時代の到来か。少なくとも本作はDCEU映画のベスト。
北米の評価、低すぎないか!?

ジャスティスリーグの一員「フラッシュ」の初単独作品。タイミングをハズしたオープニングタイトルから、早々に傑作の気配。序盤から主人公が体感する”光速”の世界を表現した映像に引き込まれる。映画館の大スクリーンでこそ実現できる没入感。”速い”というキャラクターのオリジナリティを突き詰めたアクションの創造性は脱帽するほど。ユーモアとスリルが緩急をつけて波状攻撃で押し寄せる。何度も「すげぇ・・」をこぼしてしまった。本作でも新しいアクション表現の伸びしろを感じさせる。

MCUにおけるスパイダーマンに近い位置づけか。主人公のバットマンがいて、その後始末、あるいは雑用係を担当。若くて未熟。だけどもピュアで正義感が強い。高速移動はエネルギー消費が著しく、燃料を補給しないとダメな体質(笑)。本作では掟破りのマルチバースの2人の「フラッシュ」が共闘する展開。掛け合いがとにかく楽しく、2人の間に友情が築かれていく過程もありそうでなかった。タイムスリップの仕掛けはやや粗い設計だが、圧倒的な情報量をここまで描き切ってくれたら、ぐうの音も出ない。

バトルアクションが熱い。例のごとく、コテコテのCGで描かれるが、2人のフラッシュ、バットマン、スーパーガールのコンビネーションが見事。スーパーガール演じるサッシャ・カジェ、カッコ良くて本作で見納めは勿体なし。DCEUの新リーダーとなる、ジェームズ・ガンがまだ参画していない作品であるが、キレッキレッの音楽の使い方といい、ガンの作風に共通するところも多い。監督は「IT/イット」のアンディ・ムスキエティ。アクションのボルテージの上げ方が巧く、血肉がたぎる興奮を覚える。

本作を一言で表すと「トマト缶」を巡る物語だ。コトの顛末は凄くミニマムで、俯瞰するとここまで大風呂敷を広げる話ではない。主人公バリーの亡き母への想いと、「運命は変えられるか?」の問いに対する本作なりの答えが突き刺さる。ベストな選択はなくて、ベターな選択に折り合いをつけて生き続けるのが人生かも。主人公演じる、エズラ・ミラーの熱演が素晴らしく、何度も感涙してしまったよ。

最後のオチの切れ味も鋭く、大いなる充実感が残る。
エンドゲーム以降、失速気味のMCUに変わり、DCEUの逆襲が始まるか。
とりあえず本作の続編がまた観たい。お見事でした。

【90点】




ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3 【感想】

2023-05-16 00:58:12 | 映画


感無量。ありがとう、ガーディアンズ。
ジャームズ・ガン、あなたに一生ついていきますよ。。。

9年前のセンセーショナルを忘れない。2014年の私的ベストワンとなった本作のパート1は、ヒーロー映画やSF劇に新たな可能性を示した(当時、サントラを聞きまくったな・・・)。続く、家族というテーマを描いたパート2も傑作。監督の過去のスキャンダルに製作が危ぶまれた本作パート3も、膨れ上がった期待値を超える大傑作だった。
ワクワクとスリルと笑いと、エモーショナル。シリーズを通して貫かれた”愛”。
上映中、頬がずっとビショビショ。。。。

感じるのはジャームズ・ガンの覚悟。自身をスターダムに押し上げたシリーズの完結編であり、自身がマーベルと決別する卒業作でもある。自身が生み出したシリーズを愛してくれたファンにどのような作品を届けるか、その大いなる情熱が本作の完成度へと結実している。その実現のためにMCUとの重なりを一切排除したのは大英断。ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーはMCUの映画である前に、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーなのだ。

本作はこのシリーズのチャームの1つである「ロケット」の物語だ。いつもなら、陽気に盛り上がるシリーズのオープニングから一転、本作ではロケットの想像を絶する過去の悲劇を振り返るところから始まる。ガーディアンズのメンバーのなかでも誰よりも仲間を想い、失うことの怖さをよく口にしていた、その理由が本作で明らかになる。

その描写は、これまでのポップなタッチとは異なり、その残酷性をリアルなタッチで描き出していく。それはこれまで人類が動物たちに行ってきた虐待の歴史にも重なり、痛ましく胸が締め付けられる。ガンはもともと動物が好きな人なのだろう(そういうところもホント好き)。虐げられてきた動物たちの声を、ロケットをはじめとする実験台として改造されてきた動物たちを通して現す。もちろん、悲劇だけを描くのではない。「ロケット」という名前に込められた希望、そして培われた愛情の深さを同時に描いてみせる。

ガーディアンズのモチベーションはいつも、大それた「正義」から始まらない。それがいい。本作ではロケットを救うことが目的となる。パート1、2、そして、アベンジャーズの2作を経て、彼らは本当の家族になった。ロケットの命の危機を目前にして何の躊躇いもなく、リスクに飛び込んでいくガーディアンズの姿に早くも涙腺が緩む。

その過程でいつもの宇宙大冒険が展開する。相変わらずの楽しさ。乗り込む宇宙施設が”有機体”という斬新さ。カラフルでポップで、ときにグロテスク。このユニークな世界観もシリーズの色だ。しょーもないところで引っかかるユーモアも健在。スペクタクルの中にある、シュールなB級感。監督の真骨頂であり、シリーズの醍醐味。ニヤニヤが止まらず、愛さずには得られない。

ロケットと繋がる今回のヴィランは、MCUを通じても稀にみる醜悪なキャラクターだ(演じるチュク・イウジ、ガン監督と「ピースメーカー」繋がりなのねw)。不完全なものを否定し、慈悲なく徹底的に抹消する。どこにも共感の余地のないヴィランを据えたことで、シリーズを通してガンが描きたかったテーマがより鮮明に浮上する。不完全であることを肯定し、ありのままの自己を受け入れ前進することの美しさよ。

もちろん、描くのはロケットだけではない。シリーズの完結編として各キャラクターにもれなくドラマと魅せ場が用意される。彼らの成長と変化が展開を打開する原動力になる脚本が素晴らしい。特に本作ではネビュラの存在が印象的。彼女がガーディアンズのメンバーとして家族として愛に目覚めていく様も感涙ポイントだったりする。

それぞれのキャラクター単体が超人的な戦闘力をもっていないのもガーディアンズの特徴といえる。ヒーロー映画にはないその弱みこそが、チームの連携プレーのダイナミズムの素地となる。今回のバトルアクションも型破りでキレッキレッ。音楽の使い方も最高。終盤の一方通路の特攻シーンには陶酔。まだアクションの描き方にこんな伸びしろがあったとは。どんな風に撮影したのか謎。痛快すぎてシビレた。

描くべきことが多く、その分、パート1で感じたような疾走感はないのは正直なところ。しかしながら、これほどの情報を物語に落とし込み、かつ、エモーショナルなドラマに仕上げた脚本には脱帽。エンドクレジットで見慣れない老夫婦の写真をみて、本作の裏テーマは、ガンのパーソナルな人生譚であったことに気づかされる。パーソナルな映画こそ、人を感情を揺さぶることができる。

ガーディアンズに会えるのはこれが最後。喪失感よりも満足感が上回る。また、このシリーズを見返せばガーディアンズに再会できるし。

【90点】

AIR/エア 【感想】

2023-04-11 23:51:22 | 映画


5月より在宅勤務が実質廃止され、通常出社に戻る。
勤務先はIT系。そこそこ大きい会社と思うが、根はベンチャーかつ体育会系であり「みんなで顔を合わせて仕事しよう!」「在宅でサボるのはやめよう!」というノリである。
はっきりいって面倒だ。

そんななか鑑賞した本作はまさにタイムリーであり、勤務先が求める「あるべき仕事の姿」と思えた。今の自分にはいささか耳が痛いテーマ。。。
変化を受け入れたものだけが勝者になる、のビジネス版のサクセスストーリー。

かつてスポーツメーカー業界の3番手にいたナイキが、現在、業界の圧倒的トップに君臨する礎を築いた「エアジョーダン」の誕生秘話を描く。

結論は誰しもわかっている史実の映画化だ。そのプロセスもおそらく調べればある程度わかるだろう。それでも、痛快なエンタメとして昇華させるハリウッド映画の強さを再認識する。

人気のスポーツ選手とスポンサー契約をして、商品の広告塔、あるいはメーカーのブランドそのものになってもらうという、よくあるマーケティング手法。まずは誰と契約するか。通例ではリスク分散を考慮して複数名と契約するが、本作の主人公である担当者が選んだのは、NBAデビュー前のマイケル・ジョーダンの一点賭け。ジョーダンの活躍は高校時代より広く知れ渡っており、競合メーカーとの争奪は熾烈していた。真正面からぶつかれば、予算が潤沢にある他メーカーにはかなわない。何よりもジョーダン自身がナイキを嫌っていたという大きなハンデがあった。ある程度脚色している部分も多そうだが、逆境からの成功という流れはまさに映画的で面白い。

そこで主人公がとった戦法はルールを破ることだ。ルールを破ることで得られるメリットと代償。メリットが代償を上回るかどうかも大きな賭け。その賭けに至るまでのプロセスを、職場の同僚やジョーダンの両親との関わりを交えてドラマチックに描き出していく。監督はベン・アフレック。人間を描くことの的を外さない流石の演出力。この物語の中心人物であったはずのジョーダン本人の姿を完全に消した選択も大英断といえる。気心の知れた盟友、マット・デイモンとのタッグでやりやすかったに違いない。マット・デイモンの終盤の独演シーンが胸に響く。ベン・アフレック自身が演じた社長の個性も、決してスマートなキャラではなく、逆に彼の懐の深さを感じさせた。

1つの目標に向かってチームのメンバーと策を巡らし、準備を進め、その成功の勝利を分かち合う。。。コロナ渦で久しく忘れていた仕事の情熱みたいなものが湧き上がってくる。実際の勝因は、終盤で描かれるメーカーとの新しい契約形態によるものだろう。それは業界の常識を覆すものであり、これもまた大きなリスクを伴う。リスクなくして挑戦の対価は支払われないのかもしれない。そして新しいルールを作ったものが、その世界の覇者になる。今の現代ビジネスにも通じる格言が散りばめられている。

【70点】

第95回アカデミー賞 直前予想

2023-03-13 07:57:48 | 映画
第95回アカデミー賞の当日を迎えた。

だが、2年前に続き、会社を休めず、リアタイでの視聴はできず。。。。

勝手に受賞結果の予想をしてみる。

<受賞予想>
作品賞 エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス
監督賞 ダン・クワン、ダニエル・シャイナート(エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス)
主演男優賞 ブレンダン・フレイザー(ザ・ホエール)
主演女優賞 ミシェル・ヨー(エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス)
助演男優賞 キー・ホイ・クァン(エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス)
助演女優賞 ジェイミー・リー・カーティス(エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス)

まず、今回の前哨戦のムードから、エブエブの一強予想は変わらず。久々に1つの映画に結果が集中すると予想。脚本賞や編集賞も受賞するだろうな。(映画もめちゃんこ面白かった)

演技部門で予想が難しいのは、主演男優賞だろうか。まあでも功労賞的な取り方もアカデミー賞では大いにあるので、ブレンダン・フレイザーと予想。(個人的には注目俳優である、ポール・メスカルの候補入りが嬉しかったこの部門)

今年は受賞結果よりも、「RRR」の歌唱パフォーマンスが最大の見どころ。

さあ、どうなるか。


BLUE GIANT 【感想!!!!!!】

2023-03-12 20:41:23 | 映画


危なかった。
この映画を映画館で観ずにスルーして、人生を損するところだった。

早くも今年のベスト級の傑作。
ジャズという生き物に魅了された若き3人の青春ドラマ、そして至高の音楽映画。

原作は未見。だが、そのほうが本作は10倍楽しめると感じる。なぜ音楽は尊いのか、なぜ音楽を人を感動させるのか。その1つの答えがこの映画にあり。「インスト音楽なんて何が面白いの?」と考えていた昨日の自分を張り倒したい思い。

世界一の演奏家になる夢を追いかけるサックス奏者の主人公(大)、セッションは「踏み台」とする圧倒的な技量をもつピアニストの雪祈、ニワカから始まり己の努力により大いなる成長を遂げるドラマ―の玉田。この3人のキャラ設計が素晴らしい。挫折と成長と友情。多くのファンを持つ原作の力を感じながら、3人が繋がる「ジャズ」という”宇宙”を圧倒的な音楽と映像演出で具現化する。

3人を突き動かすのは情熱、そして音楽を奏でることの歓喜。当たり前だけど、楽器だけでは音はならない。そこに人の力が加わり、命が宿って音楽になる。命を分け与えたようにサックスを吹いたあと「ブハー」とする主人公の姿が象徴的。当然、そこには奏でる人間の個性が備わり、何を表現するか、どう表現するか、その思考は奏でる人物の生き様に直結する。

「内臓をめくりだせ」「ステージで死んでこい」、己をさらけ出し、全力で楽器に魂を注入すること。発せられる音楽が火炎放射となって観客を火あぶりにする。喜怒哀楽やロジックを超えた先にある興奮と陶酔。劇中内でのステージと客席、そして映画のスクリーンの枠を超えて、共有する世界が一体となる感覚。眩い閃光と刹那の輝き。勝手に涙があふれる。プレイヤーと観客のリアクションをつぶさに拾い上げ、凄まじいハイスピードカットで繋げていく。実写ではなくアニメで描くことでしか実現できない圧倒的な映像表現。また1つ、映画の新しい可能性を目撃した。炎は熱いと「赤」ではなく「青」(ブルー)になる。この熱量、1000%届きました。。。

ストーリーのエンジンとなるのは主人公の大である。清々しいほどのスーパーポジティブボーイ。その真っすぐな純粋性(嘘をつけない感じ)は、演じる山田裕貴の個性とシンクロする。3人を演じた、山田を始めとする俳優陣の熱演に拍手。彼らをキャスティングした英断が光る。事前情報がなければ、プロの声優であることを疑わなかったほど、そこにいたのは劇中のキャラクターそのもの。これほど俳優起用で成功するケースは本当に稀なのでは。「ジャズするべ!」。最高。

そしてもう1つの役者陣は、3人のそれぞれの演奏を担当したガチな日本のトッププレイヤーの3人(実質本作の主要キャストは6人)。成長過程で異なるレベル、また、そのときの心情によって変わる音色を、しっかり解釈し見極め、演奏を演じ分けていくプロセスも大いなる挑戦だったことだろう。その挑戦の結果、本物の音楽映画になった。

原作からの改変という後半の展開は、個人的にはなくてもよかったけど、映画という限られた枠のなかで描き切りたかった製作陣の本気度とも受け取れた。

とにかく凄い音楽映画。ジャズの本場であるアメリカでも是非、目撃してほしい逸品。奇しくも同じアニメ映画とジャンルのなかで、スポーツ映画の傑作(「THE FIRST SLAM DUNK」)と、音楽の映画の傑作(本作)が同時に上映されていることが奇跡とすら感じる。

【90点】

映画のパンフを購入。レコード盤の原寸モデル、カッコいいんだけど。

THE FIRST SLAM DUNK 【感想】

2022-12-04 11:57:26 | 映画


ありがとう。本当にありがとう。
なぜスポーツは尊いか、なぜ「スラムダンク」は尊いか。この原作の魅力に取り憑かれたファンにはこれ以上ないプレゼント。もうずっとずっと震えと涙が止まらなかった。

この日を待っていた。ほぼ漫画を見ない私にとっても「スラムダンク」はかけがえのない青春の1ページであり、今でも当時の単行本全巻を大事に保管している。何度、読み返したことだろう。あれから20年以上が経った。映画化の製作発表がされた時、どんな形であれ、スラムダンクに再会できることに歓喜した。そしてついに映画を見た。郷愁だけではない。映画単体として、また漫画原作を持つアニメ映画として、期待値のはるか上を行く超絶傑作。描かれるのは誰もが知っているスラムダンクであり、誰もが知らないスラムダンクの物語。本作が作られた目的は明白。興行的側面は勿論だけど、全ての根底にあるのは、作品を愛してくれたファンへの原作者井上雄彦の愛と信念だ。そして映画化にあたって、監督・脚本を兼任した井上雄彦がとった取捨選択は、1ミリも間違っていないと断言できるほど、完璧だった。

<ここからネタバレあり(というかこの映画にネタバレというものがあるのか?)>

公開初日の夕方。私と同じ年代のおじさん、おばさんで埋めつくされると思いきや、10代20代の若者の姿もチラホラ。そういや、新卒で入ってきた男の子とランチした時、彼も「スラムダンク」の大ファンだと言っていたな。。。

熱狂的なファンを持つ伝説的な漫画のアニメ映画化だ。何をどのようにして映画用の物語にするのか。本作がとった選択は、ポスタービジュアルでも暗示されている通り、主人公を桜木花道から、宮城リョータにスイッチさせることだった。原作の魅力は、桜木花道があくまで中心でありながらも、主要キャラ5人(あるいは小暮を含めた6人)が濃密に描かれている点にある。それぞれのドラマが魅力的であり、それぞれのキャラクターに強く共感する。思い返すと主要キャラのなかで、最も人物背景が薄かったキャラクターだった。そう考えると「宮城リョータ」という選択は自然な判断と思え、彼の視点で描くことで新しいスラムダンクに変わる。

描かれるのは伝説の「山王戦」である。私が映像化してほしかった積年の想いがついについに成仏した。オープニングでそれがわかったとき、興奮で体が震えあがった。「スラムダンク」をスポーツ漫画の最高傑作と知らしめたのは、この「山王戦」にあり、それまでのエピソードで描かれてきた全キャラクターのドラマ、そして、スラムダンクの魅力がこの一戦に集約されている。

それだけの「山王戦」をいかにして動く絵にするのか。本作がとったアプローチはCGアニメで描くことであった。漫画で描かれていたコマ送りのアクションは、静止画と静止画の間を読者の想像力が繋いで、脳内で動画に変換されていた。すべての動きを視覚でみせるアニメーションにおいて、TVアニメ版と同じことはせず、CGアニメという手法を用いたことで実写に近いリアリティをもたらした。正直、最初に見たときはそのリアリティに違和感を感じたものの、音楽のバネを存分に生かしながら、その躍動感、ダイナミズムは漫画で感じたレベル以上のものに引き上げられている。よく見ると、一連の動きをCGアニメで追いながらも、適宜、アクションをショートカットするなど、スピードを失速させない演出がなされている。特にあの「伝説のシーン」、よくぞアニメーションで再現できたものだ。。。大変なチャレンジであり、大変な試行錯誤があったと想像するが、結果、これまでのアニメでは感じたことのない迫力のアクション描写が実現した。

そして「山王戦」自体は、ほぼ原作で描かれたままで再現される。キャラクターのセリフ、展開、描写の決めカットに至るまでだ。映像で見たかったシーンを「来るぞ来るぞ」と待ち望み、目の前で展開することの快感。長い時間を経ても、キャラクターが発するセリフの美しさが一言一句、色あせない奇跡。自身の限界を超えながらも走り抜くことを止めない者たちの輝き。チームワークで生まれる仲間との魂の共鳴。勝利への執念とその向こう側にあるドラマ。スポーツがなぜ人の心を動かすのか、その真髄が凝縮されている。わかっていても感動し、心が打ち震える。2時間という尺で納めること、そして、リョータの視点で描くことにより、捨てられたシーンも確かにあるのだけど、本作はそれでよい。「あのシーンがなかった」と落胆するファンは漫画の世界に戻ればよいだけの話であり、井上雄彦はこの映画を漫画の再現に終わらせることは目指していなかったはず。それが映画という新たなコンテンツで再誕させる意味であり、絶対に正しいと思う。

本作は「スラムダンク」の映画化というより「井上雄彦のスラムダンク」の映画化といったほうが良いか。原作のほかにTVアニメにも親しんでいたけれど、TVアニメは井上雄彦の手から離れたところで製作されたもの。TVアニメの制作会社がキャスティングした声優陣によって形成されたキャラクター像が、私を含め、多くのファンに定着していると思うが、作っている人が違うのだから、違う声優陣がキャスティングされたことは至極当然な流れ。また、あれから20年近く経過していて、当時の声優陣が同じ声帯レベルを維持しているとは思えず、同じキャスティングをしていたとしても再現することは難しかったと思う。現時点で最高のパフォーマンスを発揮できるキャスティングとして、井上雄彦が選んだ声優陣はその期待に見事に応えてくれた。声優陣もきっと原作が好きで、キャラクターに対して強いリスペクトがあったと想像する。

今回は宮城リョータのドラマがメインで描かれるが、その描写シーンに、「スラムダンク」だけでなく、その後「リアル」や「バガボンド」などの製作を経た、井上雄彦の作家力の増大が強く反映されている。単に物語を寝かせたというだけでなく、その当時では到達し得なったレベルに引き上げられていることにも触れておきたい。

本作は、伝説の創造主である井上雄彦だから実現した偉業。また、アニメ監督ではなく、漫画家である井上雄彦だから実現した偉業だ。アニメ映画の新たな金字塔であり、この作品も今後語り継がれる伝説になった。大いなる賛辞と感謝を贈りたい。

もう1回言う、本当にありがとう。

【120点】

PS
自分がまだ新卒1,2年目のときに渋谷にあった中華料理屋で食事中、斜め前に井上雄彦を見た(担々麺を注文してたな)。大ファンだったので、声をかけようか葛藤した結果、声をかけなかった。あの日「ありがとうございます。」という言葉だけでもかけておけば良かったな。。。

すずめの戸締り【感想】

2022-12-03 10:17:12 | 映画


過去2作に通じる「災害があっても人は生きていく」と、希望をテーマにした壮大なファンタジー。個人的に相性があまりよくない新海節は、今回も継続。。。すれ違ったイケメンに一目ぼれした女の子の冒険譚、あるいは、モンスターの気まぐれに翻弄される騒動劇。一応、主人公の過去の記憶と対峙し、物語の必然性は説明されているようだけれども、ぬぐい切れないストーリーテリングの歪さがついて回る。
現代劇でファンタジーをアニメで描くことの難しさ、その宿命だろうか。例えば、靴が脱げてしまった主人公が靴下のまま電車に乗る様子をみて、周りの人間がざわつくあたりとか、描かなければ「不自然」とみられる感覚をできるだけ優先している。正しいといえば正しいのだけど、余計なところに目移りしてしまう。
リアルとファンタジーを両立させること、ならば、グロテスクなものはグロテスクに描けば良いのに。ヒットを期待される監督は「嫌われない」絵に終始する。映画ファンとしては綺麗なものばかり見せられても飽き飽きする。
また、今回は、さらに難易度の高い「ロードムービー」としての色が強く、主人公が出会う人々とのつながりに「湯を沸かすほどの熱い愛 」で覚えた寒気が再来する。観客を泣かせることを、キャラクターが流す涙でしか表現できない。観客の想像力をもっと信じてよいのではないか。
と、いろいろと文句はあるのだけど、アニメーションとしてはド一流。壮大で美しい映像に呑まれることの楽しさは、劇場でみる価値に相応する。
今回も大ヒット、おめでとうございます。
【65点】


ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー 【感想】

2022-11-26 09:54:04 | 映画


久々にMCUらしいスペクタクルなアクション劇。変更を余儀なくされた脚本とは思えないほど、描くべきテーマが明確で、迷いなく映画化されたのが凄い。C・ボーズマンの逝去はとても残念なことだったけれどもに、彼自身にも前作にもそれほど思い入れのない自分には、スクリーンと観客の熱気から伝わる追悼の想いはやや場違いな感じもした(オープニングで鼻をすする音がこだます)。一方、劇中ではティ・チャラ(ボーズマン)の映像を多用することなく、観客の記憶の中にある彼の残像に留める演出は監督クーグラーのなせる技と感心した。

個人的に見どころにしていたのは水中族との戦いである。アフリカ系のワカンダとラテン系のタロカンという対立構図が新鮮。「アクアマン」と被る世界観だが、水中族の衣装、メイクが非常に楽しく、がっつり水圧を感じる海中世界もなかなかユニーク。水なのに爆弾って大胆なフィクションだ。

希少鉱物を巡り、対立していく2つの部族だが、正直、その喧嘩を吹っ掛けたのはワガンダ側であり、その無意味さも含めて描こうとしていたのかもだけど、どうにも気持ちが入らない。「空飛ぶハルク」こと、ネイモアが普通にカッコよくて、ティチャラの後継者であるシュリの成長譚はあまり入ってこなかった。3時間という長尺はやや長く感じ、アクション映画としては存分に楽しめた。

あとから知ったことだけど、MCUのフェーズ4は本作でラストだという。「え?フェーズ4ってあったんだ」というぐらい、まだ「エンドゲーム」からのロスから抜け切れておらず、いまだに本流のスピンオフを見ている感覚が抜けない。この調子で、かつての興奮を味わうことができるのだろうか。

【65点】

RRR【感想!!!!!!】

2022-11-04 22:01:17 | 映画


最高を超える言葉があれば、この映画に捧げたい。映画の原点であり究極系といえる1本。テクニックではなく、今のハリウッドで本作のような映画を作る勇気はないだろう。映画は夢の世界だ。そのフィクションのなかで、どれだけのことを描いて、どれだけ観客を楽しませることができるか。その志向に全フリした、ハイパー超絶娯楽作。「社会的メッセージ」とか、二の次で良いんだよ。あまりにも面白くて楽しくて涙が出た。

3時間という長尺。ほぼすべてがクライマックスという超ハイカロリー(笑)。打楽器を打ち鳴らすスコア、躍動する筋肉、それを猛追するカメラ、多用されるスローモーションのキメキメのショット。「肩車」も大いに上等。荒唐無稽を突き抜け、想像の斜め上を行くアクション演出の連打は圧巻だ。計算しつくされたケレン味はもはやアートの域。これまで「色モノ」として見ていたインド映画に対する常識はもはや遺物で、マーベル映画も真っ青ではないか(ギャグではなく)。「ケガの回復が早い」とか、序盤ツッコんでいた自分が途中から馬鹿らしくなる。映画はコレでよいのだ。

運命あるいは宿命に導かれし2人の男の友情の物語。そして、その2人によるインド解放の物語を壮大に豪快に描く。中盤の山場は「ナートゥ」である。インドの文化を愚弄する西欧人にブチかます、強烈なダンスアクション。静かな映画館に、熱狂が渦巻いているのがわかった。筋肉マッチョな2人が、サスペンダーパンツルックで高速シンクロダンスをキメる。そのダイナミックな描写にエネルギーがスクリーンからほとばしる。イギリスの貴婦人たちもそのエネルギーにほだされ、砂煙を挙げてダンスに加勢する。もう絶叫したいほどの興奮を必至に抑える。あぁ、神様、私に「ナートゥ」を全力全霊で踊り切るだけの、センスと筋肉と体力を今すぐ下さい。

主人公の2人は、インドの独立運動で活躍した歴史上の人物だという。実際にこの2人は出会っているわけではないし、本作で描かれているような屈強な男でもない。インドの独立には多くの血が流れた。過去のイギリスが大英帝国という名で残酷の限りを尽くしてきた過去は事実。インド人の処刑にために「弾丸を使うのは勿体ないから棒で殺せ」という逸話は、インド人の感情に深く刻まれているだろう。その「お返し」といわんばかりに、本作では大英帝国の存在が、どこまでも憎たらしい残虐非道な英国人キャラに踏襲され、痛快な勧善懲悪劇に仕立てられている。エンタメのための歴史改編。「返り血」のショットも痛烈であり、今のイギリス人が本作を見ても素直に楽しんでほしいと思った。

エンドロールのダンスシーンも多幸感にあふれ、「こんなに面白い映画を作ってくれてありがとう!」って喝采したくなる。
ロングラン希望。また元気をもらいに映画館に行きます。

【95点】



MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない 【感想】

2022-10-29 20:19:00 | 映画


久々に劇場で日本映画を見たので、久々に映画の感想をアップ。

傑作。良すぎてビックリした。
劇中、脳内で「スゴい」を連発する。
"タイムループ"は人生を教えてくれる。

広告代理店のその下に入る、孫請けの広告代理店が舞台。過度な仕事を顧客である代理店から強いられ、土日も徹夜でぶっ通し。その翌日の月曜日の朝から地獄の週末までの出来事が、永遠に繰り返されるという話。

ワンフロアの小さいオフィスで7名の社員で繰り広げられる物語は舞台劇を見ているような出だし。タイムループに気づいた社員が、他社員へと状況を理解させていく。そして、何が原因で何をすればこのループから抜け出せるか模索し奮闘する。緻密に整理された伏線を巻きこみながら、予定調和には収まらない怒涛の展開に流れていく。”社畜”の生き様の共感を孕み、可笑しくもスリリングで見事。

とまあ、ここまではタイムループをイジッた、出来の良いコメディの範囲(それもかなりの高レベルだが)。ところがどっこい、このタイムループを通じて描こうとする実像が明らかになるにつれ、感情は大いに揺さぶられる。気づけば頬がビショビショになってた。

本作で描くタイムループ。それが人生そのものとして映ってくる。特に社会人になってからだ。同じ時間に起きて、同じ職場に行き、同じような仕事を繰り返す。仕事が中心となった生活のルーティンから抜け出せないでいる。本作のタイムループのカギを握るのは、マキタスポーツが演じる部長の果たされなかった”夢”だ。その夢の正体である「漫画」の完成と、その物語を通して、人と人の繋がり、人生にとっての幸福の姿、その場所への道筋を照らしていく。予想だにしないストーリーテリングと、ドラマと漫画を交錯させシンクロさせる編集の美技により涙腺を刺激してくる。そして自問する。「良い人生だった」と私は振り返ることができるだろうか。

部長演じたマキタスポーツがひたすらに素晴らしい。醸し出す軽やかなユーモラスと、グッと掴まされる悲哀。彼の名演により本作がもう1つ上のステージにいった感じすらする。なんていい顔するのだろう。

本作に出会えた衝撃は久しく日本映画には感じられなかったもの。「カメラを止めるな」に似た読了感があるけれど、強い作家性と確たる完成度という点で大きく超えてくる。監督の竹林亮という人、恥ずかしながら初めて知ったが、これからもきっと凄い傑作を生み出すのだろう。本当に痺れた。

最後にパンフを購入したかったけど、作成してないとのこと、、、何でだ~

【90点】



NOPE/ノープ 【感想】

2022-09-14 21:00:00 | 映画


もはや見逃せない監督の1人となったジョーダン・ピールの3作目の新作。UFOであってUFOでない正体を追う(追われる)人たちを描く。前2作とまた、テイストの異なる”怪作”であるが、充満する不穏な空気にグイグイと引き込まれていく。ネタバレ厳禁である一方で、あらすじを理解していても十分に楽しめる仕上がり。その点が、同ジャンル作品を好むシャマランとの差だろうか。登場人物らを通して描かれる映画の起源と、面白いものをカメラに収める衝動に、映画への強い偏愛がみてとれる。巧みな演出とダイナミックなカメラワークで、「ジョーズ」とも重なる古典的なスリルのアプローチを大幅にアップデート。まさに圧倒される。見終わって、いろいろツッコミどころに気付いても鑑賞中は劇中世界に埋没していた。聖書や「チンパンジー」の惨劇もしっかり関連性がありそうで、リピート鑑賞では様々な考察も楽しめそうだ。ジョーダン・ピールにハズレなし。
【75点】


ジュラシック・ワールド/新たなる支配者【感想】

2022-08-27 15:10:43 | 映画


久々の映画感想。短くまとめる。

今年の夏映画の本命らしい本命。公開3日目の日曜日の午前中に見たものの、劇場の動員は半分以下。事前の北米での酷評がこのムードを作ったりして。。。前作で完全に野放しになった恐竜たち。カニ漁で「大漁だ!」と喜んだのも束の間、野生化したモササウルスに豪快に横取りされる。「獣害」ならぬ「竜害」か。
クリプラが主演になって以降の「ジュラシック・ワールド」シリーズと、「ジュラシック・パーク」の旧シリーズの決定的な違いは前者が「人間の世界にいる恐竜」を描いているのに対して、後者(オリジナル)は「恐竜の世界にいる人間」を描いていると思う。もっというと、新シリーズは人間の視点で描かれていて、旧シリーズは恐竜の視点が色濃い。そんな違いが本作では際立った。
恐竜に追われる人間の図。本作でもふんだんに描かれる。VFXはより高度になり、迫力は確実に増しているのだけど、どうにもスケールが小さく見えるのは、恐竜たちが人間のスリルの材料でしか使われていないからだ。うまくアクションに落とし込めているものの、恐竜たちの存在が映画の便利ツールに過ぎなくて「結局、主人公たちは何とかなってしまう」という暗黙了解が必要以上に前面に出てくる。新シリーズから新しい価値観として加わる恐竜との絆(?)も、個人的には不要であり、「人間のことなんて知ったこっちゃない」という傍若無人な恐竜たちの姿を楽しみたいのだ。良かったのは新種の恐竜がしっかり描かれていたことくらいか。
ラストの絞め方は、嫌な予感の極めつけ。「共生」という、到底不可能な世界を描いてめでたしめでたし。。。って、おいおい。最終章で製作陣はサジを投げてしまったか。
【60点】

ブラック・フォン 【感想!】(ネタバレなし)

2022-07-02 14:14:28 | 映画


めちゃくちゃ面白い!
ホラー、スリラー、サバイバル、そして少年の成長。
観る前と観た後の印象が180度変わる映画だ。
このうだるような酷暑の煩わしさを吹き飛ばす1本。
恐怖よりも爽快感が勝る。

シリアルキラー VS いじめられっこ少年(with ●●)の戦いを描く。

歴史上、多くの猟奇殺人者が存在する。
その史実を知るたびに思うのは「この犯人、被害者たちに呪い殺されないのかな?」と。
そんなオカルトじみた発想が本作の起点になっていると思われる。

自分なりに本作の副題をつけるならば、
「ギフテッド(与えられし力)」みたいな。

この手の映画は、犯人側の個性で恐怖を醸成することが多く、自分もパッケージやイーサン・ホークが演じることでそのラインを予想していたのだが、かなり違った。犯人は少しSっ気が強いのだけど、シリアルキラーとして真新しい個性を持っているわけではない(でもないか)。本作のオリジナリティはあくまで2人の兄妹だ。

霊感は遺伝する。父子家庭で暮らす兄妹。父親はアル中でときどき暴力を振るう。兄妹の絆は強固で「親友」ともいえる2人の関係性だ。学校でいじめられっ子の兄を妹が勇気をもって守る場面も。今は亡き母親の特別な力を引き継いだのも妹のようだ。そんななか児童連続誘拐事件が発生し、兄が誘拐されてしまう。序盤の展開予想は、妹が中心になって事件を解決していく流れだ。

ところがどっこい、事件が起きて「ブラック・フォン(黒の電話)」が登場する。黒の電話は電話線が切られている。なので外部とのコミュニケーションは不可能。。。。そこで兄の秘められた力が明らかになる。ミステリーの謎解きに近い感覚。弱者として描かれてきた主人公のサバイバル劇が展開する。

1978年の時代設定が絶妙である。情報化社会になる前の時代。容易に犯罪が実行される社会の脆弱性に、全く無能な警察組織(かなりフィクションだけど)。子供同士の喧嘩は今ではあり得ないほど血生臭い。人間同士のコミュニケーションも今よりも濃密で、人と人の結びつきも強かったはず。主人公を学校で助けるメキシコ人少年との友情が最後の最後で効いていく展開も胸アツ。あのシーン、「ベストキッド」じゃん(笑)。クライマックスは予想の斜め上をいくハイボルテージ。興奮して体がブルってしまった。

監督のスコット・デリクソンの生年月日を調べる。予想は的中。1978年の主人公の年齢と監督の当時の年齢がほぼ一致。原作は監督ではないものの、脚本に参画している模様。監督の少年期の記憶、郷愁が本作に込められているようにも感じた。

【75点】








トップガン マーヴェリック 【感想】

2022-06-22 20:00:00 | 映画


一言、トム・クルーズと同じ時代に生まれて幸せだ。

なんちゅう映画よ。実写映画の限界点をまた1つ突破した金字塔。
「本物でないと観客に伝わらない」と、映画の力を信じ、観客を信じる男の情熱。
スクリーンからほとばしる熱量で顔面が溺れた。

黄金のシナリオと未曽有の撮影技術を待たねば本作の実現はなかった。

正直なところ、前作は”アイドル映画”の域を出なかった凡作。
そんな前作すらも輝かせる離れ業もキメてみせる。

何かと時代性や社会性を添加する映画が多いなか、
仲間との絆×ミッションの一点ラインで勝負する。
その潔さと英断に拍手。物語上の全ての展開が正解だ。

ノスタルジーと熱きドラマを積んだアクションは抜群の加速度を得る。
ここ最近不調だったハンスジマーのスコアがドンピシャにハマる。
血沸き肉躍る感覚が止まらない。

空気の摩擦を切り裂き、音速で滑空する飛行シーンの迫力よ。
ミッションクリアと思いきや、”ドッグファイト”のメインディッシュが待ち受ける。

生死のせめぎ合いで試される本能。
その真っ只中に放り投げられる観客。
これを”体験”といわずして何といおうか。

夢を見させてくれてありがとう、トム・クルーズ。

【100点】

犬王 【感想】

2022-06-04 08:00:00 | 映画


大アタリ映画が続く。。。。(短めに感想)

湯浅ワールド全開。無二の作家性と創造性を、知られざる歴史フィールドで爆発させる。呪われて生を受けた異形の能楽師「犬王」と、呪われた剣によって視力をなくした琵琶法師「友魚」が出会い、バンド(?)を組んで室町時代の京を席巻するという話。バディ映画であり、ミュージカル映画であり、歴史ドラマ、これらの3つの要素が鮮やかに融合し、高ボルテージを保ったまま駆け抜けていく。実在したものの、文献として残っていないキャラクターを想像によって膨らませた物語。じゃあ好き放題やっていいか、とはならず、湯浅監督が考える「歴史」がしっかり守られていて、あくまで本作は時代劇。アニメという表現手法でしか実現できない世界を圧巻のスケールとダイナミズムで具現化する。本作で特筆すべき点は製作陣の豪華な座組みだろう。湯浅政明×野木亜紀子×松本大洋×大友良英、この4者の個性と才能が活かされたまま、見事に1つにまとまった作品ともいえる。想像するに初タッグを組んだ、湯浅監督と脚本家野木亜紀子のシナリオ作りは互いの異なる主張を含め、かなり難航しただろう。だけど結果的に2人の個性がなければ、この作品の成功はなかったと思える。特に、クライマックス後の犬王と友魚の行く末である。何かとミュージカルシーンにスポットがあたりがちの本作だが、個人的に刺さったのは終盤で描かれる友魚のアイデンティティの執着である。ここのドラマは生身の人間を描くことに秀でた野木亜紀子の手腕が効いていたのでは?と勝手に妄想する。そこに湯浅監督が描く時代の残酷で血なまぐさい描写がしっかり抑えられていて何倍もの味わいで響く。そして、何といってもキャスティングの旨み。湯浅作品の特徴はキャスティングに失敗しないこと。アヴちゃん、森山未來、津田健次郎、柄本佑、松重豊がいずれもビタハマり、かつ、見事な演技力。アヴちゃんは他で絶賛されているのであえて言及せず(言わずもがな素晴らしいので)。個人的には森山未來の熱演に圧倒された。ハッピーエンドかバッドエンドか、は見る側によって異なる映画。大いに楽しみ大いに感動した。

【80点】