から揚げが好きだ。

映画とサウナ。

劇場版「鬼滅の刃」 無限列車編 【感想】

2020-10-31 22:19:29 | 映画


ニワカが見た「鬼滅の刃」の映画。
公開2週目となる先週の土曜日に見に行ったので感想を残す。

主人公をはじめとする鬼殺隊の面々が、「夢」を操る鬼と戦う話。原作漫画を追っている20代の同僚に聞けば、原作で描かれている内容だが、アニメ化までには至らなかったエピソードらしい。スラムダンクでいう山王戦をアニメ化したようなものだろうか。「コナン」のように、オリジナルの脚本で映画化されるものと思っていたから意外だった。人気絶頂のうちに原作は終わったばかり、ロスが抜けないファンをターゲットに劇場版を用意する、ビジネスモデルとして実に正しい。

「鬼滅の刃」はネトフリのアニメで7話までしか見ていないニワカ中のニワカである。アニメが配信された直後から見ているが、途中で脱落した少数派だ。なので、当初見る予定はなかったものの、1週目で見たフォロワーの人たちの絶賛ぶりが凄かったことと、8時の早い時間にやっていたので見ることにした。なお、その早朝にも席はパンパンに埋まっていた。端の席で良かった。

とても面白かった。幼児までがハマっているアニメとして侮っていたが、なかなか刺激的な内容で攻めてくる。何といってもバトルアクションが秀逸。ケレン味をしっかり利かせ、ダイナミックにフレームを使う。音響も素晴らしい。日本のアニメはアクションが強いのに、実写になると弱くなるのはなぜだろうといつも思ってしまう。R12指定も見て納得。結構、生理的に気持ち悪かったり、血みどろになるシーンも多く、小さい女の子にも受け入れられるのが不思議だ。

セリフによる説明過多(感情の吐露)はアニメ版で感じたまま。「そこまで言わないほうがいいのに」というシーンがちらほらで、その都度、高まった感情をクールダウンさせてくれる。禰󠄀豆子の、鬼にならずに便利な立ち位置に留まっているのもやはり気になる。漫画のギャグ(?)シーンをそのままスクリーンで見せられると寒くなる確率も高い。などなど、テレビアニメ版でハマらなかった理由は劇場版にもあてはまった。

しかし、それを補って余りあるのは、本作の実質的主人公である「煉獄」の生き様だろうか。列車内での登場シーン、目がバッキバキでやばいクスリでもやっているんじゃないかとニヤニヤしながら、「この人がみんなを騒がせているキャラクターか」とその動きに注目する。そして見終わった頃には自分もすっかり魅了されてしまった。

炭治郎たちの「師」ではなく、頼れる「先輩」として登場。先輩を羨望し、後輩を想う、この相思相愛の関係性が現代的で面白い。「柱」という初めて聞いたワードも、「鬼滅~」の世界に縦の広がりがあること、強さの階級があることを認識させ、ジャンプ黄金世代を知る人間をワクワクさせる。「練り上げられた闘気」をまとい、ぶっちぎりに強い煉獄が未曾有に危機に瀕し、己の信念が試される。

「強き者は、弱き者を助けるさだめがある」、彼が命を賭けて戦う理由はシンプルだ。そして、それはとても難しいことでもある。このメッセージが効いた。彼が全うする信念の背景にある、母親との思い出にまんまとウルウル来てしまう。とても明確で力強い正義の形。これは子供への道徳的教材として見せるに相応しい作品だ。壮絶なクライマックスは血沸き肉躍るとともに、感情のボルテージも最高潮に達する。胸アツになっているところ、炭治郎の「逃げるなー俺たちは~」みたいな説明が余分で惜しい。

ニワカの自分も、本作で「鬼滅の刃」の魅力の一端を知ったわけだが、俯瞰してみると「ジャンプ」らしい漫画だなーと思った。友情・努力・勝利が詰まっている。ドラゴンボール、ジョジョ、幽遊白書、男塾、といった歴代漫画の系譜も感じてしまう。中二精神が抜けない自分は、「柱」を見終わってすぐにググり「誰が強いんだ」と調べてしまった。。。

本作の大ヒットは公開前から予想されていたこと。外的要因と内的要因が見事に合致した本作のような映画の成功は後にも先にも出てこないだろう。おそらく、今後も興行収入は伸び続け、歴代記録を塗り替えるのも時間の問題。日本の映画興行会社は、本作の成功で大きなキラーコンテンツを得たことになるが、洋画を中心とした大作が息を吹き返したあと、今回のような番組編成で、他の作品の公開規模を絞るのはご遠慮いただきたい。

【70点】



















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82年生まれ、キム・ジヨン 【感想】

2020-10-25 08:55:13 | 映画


誰にでも起こりうる特別でない話を、ここまで胸に響くドラマに昇華させてしまう韓国映画の強さ。本作をフェミニズム映画と定義することに自分は反対で、男性側も大いに共感できる。家族を持つという人生について想いを巡らす。主人公が生まれた日、自分や兄妹を育てた両親の姿に重ね、映画館で泣きはらしてしまった。

結婚と出産を機に仕事のキャリアを諦め、専業主婦として育児に追われる主人公。彼女の夫は、妻を愛し、子どもを愛し、家事や育児にも積極的、勿論仕事もしっかりこなし、まさに理想的な夫といえ、何も欠点が見当たらない幸せな家族。姑との多少のいざこざはあれど、周り親戚との関係も極めて良好で、主人公の家族をいつでもサポートしてくれる。だけど、主人公の心は壊れていく。

子育てと家事の両立は大変な仕事だ。新米母の「あるある」を本作は詳細に描きこんでいく。その忙しさは見れば、ノイローゼに陥ることも不思議ではない。だけど、本作の主人公の場合、揺るぎない子どもへの愛情が、精神的、肉体的疲弊を上回っているように見え、彼女の問題の直接的な原因ではないと思える。

「気づいたら出口が見えなくなっていた」。社会の価値観やシステムが、無自覚のうちに主人公を閉じ込めていた。家族の中にある彼女の価値と、社会の中にある彼女の価値。彼女にとっての生きがいは社会での自己実現にもあったはず。とりわけ競争性の強い韓国社会においては、女性であることのハンデが大きく、キャリアを継続することは困難だ。家庭と仕事を両立させること、その実現は、会社側の制度や家庭の理解云々のレベルの話ではなく、想像以上に根深く、実は複雑な問題であることを本作は提示する。姑の無理解とも思える発言も、あながち間違ってはいないのだ。

結局のところ、どうすれがよいのかわからない。だけど、正解はないのが正解と思えた。正解は1つではない。本作の主人公にとって大切だったのは、自身の問題にしっかり向き合い、夫婦間でどうすべきか話し合い、自らの意思で決断したことにあった。それが、社会復帰という選択でなくてもだ。

本作のテーマをより浮きだたせるために、一番の近親者である夫の描き方がとても重要になってくるが、「優しい夫」として描いた判断は的確だった。妻を思いやり、寄り添い、妻の幸せを自身の幸せに置き換えることのできる人だ。そんな夫も知らぬうちに妻を追い込んでいた事実に愕然とする。演じるは、男が惚れる男、コン・ユである。抜群の長身スタイルはいつまでも変わらず、彼の人間性と本作の役柄が高い確率でシンクロしているように思えてリアルに映った。男性側が感じる「壁」も逃さず描かれていて、いろんな生き方が許容されつつある時代の潮流にあって、性別の垣根を越えて、大きな道しるべになる映画だった。

【80点】
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フェアウェル 【感想】

2020-10-24 13:54:51 | 映画


ようやくの日本公開に拍手。アメリカと中国、2国間のカルチャーギャップを、家族愛に絡めた秀作ドラマ。アメリカで暮らす移民の人たちには2つの故郷がある。血縁関係のある親戚一同が住むのは生まれた側の故郷、本作の主人公の場合は中国だった。日本とも少し違うけれども、久しぶりに親戚が集まったときの雰囲気とかは、同じアジア人と思え親近感がある。そして、その中心には優しいおばあちゃんがいるところもだ。
本作は、祖母の余命が短いと知らされた、主人公をはじめとする親戚一同が集まるという話。いわゆる「優しい嘘」というやつで、本人を悲しませないために、余命宣告の事実を隠し通す。これが本人にとって本当に良いことなのかは微妙なところで、個人的には同意しかねるが、本作の旨味はそこにあらず。大切に描かれる家族、親戚との時間に格別な心地よさがあって、最後に1人、道路の真ん中に立って、帰路につく一行を見送るおばあちゃんの姿に、自身の思い出が重なってウルウルきてしまった。ただし、最後の「実際はこうでした」の一幕は余計だったかな。
主人公演じたオークワフィナはいつものコメディエンヌぶりの抑え、繊細かつ真摯に役柄を演じていて素晴らしかった。
【65点】
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窮鼠はチーズの夢を見る【感想】

2020-10-23 01:12:00 | 映画


所詮、BL好き女子を狙った映画と斜に構えていたが、見事に正面から打ち砕かれた。

異性愛と同性愛。2つの世界の境界で揺れ動く「流され侍」。描かれるのは愛の不条理だ。これは効いたわ。。。。
超えてはならない一線と、理性ではわかっているし、体もそれに応えない。だけど、心は動かされていく。色男ゆえに、周りからの好意を無条件に受け入れる主人公と、その男を学生時代から想い続け、求愛し、ストレートに肉体ごと欲する男。演じる、大倉忠義と成田凌、美男子同士のキャスティングには明確な意味があったことを思い知る。行定監督の適格な演出、そして、オイルをしっかり垂らした濡れ場に、本物を描こうとする覚悟を感じた。それは日本映画屈指のラブシーンといえ、スクリーンから放たれた熱気がいつまでも残像する。
「全てが例外になってしまう」ことは恋することの本能。頭と体と心の三位が一致しないことの苦悶。本作の特異なケースを通して、いつの世も変わらない恋愛の正体が鮮やかに出現した。
【75点】

PS.仕事が繁忙期に入り、感想アップが著しく滞る。。。
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ミッドナイトスワン 【感想】

2020-10-03 08:41:42 | 映画


バレエってこんなに美しいパフォーマンスなんだな、と初めて感じた。同時に、本物のバレエを魅せることがこの映画には不可欠だったんだなと感じた。主人公が守りたかったものが輝き羽ばたく光景に心を強く揺さぶられる。
トランスジェンダーと、育児放棄された女子の疑似親子愛を描く。芽生える母性と、美しいものへの主人公の羨望。
本作でのトランスジェンダーの描き方は切実なもので、社会の不寛容さを浮き彫りにする。彼女たちが実社会で生きる術、過酷な治療、周りから注がれる好奇の目、居場所なき孤独。「今、流行ってるでしょ、LGBTって」という多様性を言葉だけで捉えているセリフが鋭い。ただ、トランスジェンダーであることの悲哀ばかりに焦点を置くことより、本来の自分で生きることの喜びみたいなものも描いたほうが、よりドラマが際立ったと思う。
ストーリーの流れは最後までほぼ想定内だが、途中で差し込まれる非現実的な展開に、本作を現代の寓話として受け取った。一方で、それにしても過剰と感じる描写もあり、作り手の想いが先行して「感動してほしい」という顔が見えてしまった。主人公の凪沙と一果、一果と親友になるりんの関係性、距離に縮め方はとても良かっただけに惜しい。
主人公演じた草なぎ剛は憑依系の俳優なんだな。初登場の一発目のショットから、よく知っている彼の気配は全くなく、そこにいたのは凪沙という女性だった。役柄を演じるというより、凪沙という人格が彼の肉体を借りているようだった。その姿に圧倒された。一果を演じた服部樹咲は鮮烈なデビュー、バレエシーンを含め、彼女の演技に終始引き込まれる。また、りんを演じた上野鈴華も素晴らしかった。
【65点】
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劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン 【感想】

2020-10-01 07:00:00 | 映画


おそらく記憶にない出来事。入ったシネコンのなかで一番の大箱のスクリーンに、ほぼ満席の状態で埋まった客席、エンドロール中、席を立つ人が誰もいなかった。感動の余韻に浸る空気が充満していた。

自分は「聲の形」と「リズと青い鳥」くらいしかみていない、京都アニメーションのにわかだ。他のアニメ映画は少女感丸出しの印象があって、なかなか触手が伸びない。が、本作については、SNS上でフォローしている映画ファンの絶賛ぶりにつられて見に行った。1日前に見たばかりの「TENET テネット」とはまるで客層が違う。若い男子が多い。

テレビで放送されていたアニメの劇場版らしい。。。というくらい、何の事前情報を持たずにみたが、こうした初心者にもわかるような脚本になっていて有難い。ただ、テレビアニメを知っていたほうが楽しめることは間違いなさそうだ。

かつて、一切の感情を持たずに兵士として育てられてきた少女が、手紙の代筆業という仕事につき、様々な人たちの「愛」の伝達人になるという話らしい。

中世のヨーロッパを彷彿とさせる世界観。戦後の世界が描かれていてファンタジーのようでリアル感もあり。そして、キャラクターがもれなく美男美女として描かれている。主人公は売れっ子の代筆家ということだが、このあたりはシリーズを追っていないと入ってこない。主人公の自己紹介シーン「ヴァイオレット、(少し溜めてからの)エヴァーガーデンです」と、観客にも向けた真正面の表情をみて、隙なく可愛く描かれている状態に少し引いてしまった。多くの観客はこの画を見て「萌える」のだろうかと。。。。

ちょうどネトフリで、湯浅監督の初期作「ケモノヅメ」を劇場に入る直前までタブレットで見ていたばかり。「ケモノヅメ」は、エロスとバイオレンスの噴火アニメ。キャラデザインは小学生が書いたように粗い。色彩も単色使いでグラデ―ションも少ない。主人公は戦闘中に決まって下痢をして、手足は血しぶきを浴びて切られ、恋人との接吻はもれなくベロベロのディープキスをかます。過剰なファンタジーの中に人間の本能がそのままに描き出される。

その対極にあるのが本作。何もかもが美しく汚物は排除される。初心者にとっても重要な背景情報となる、主人公の過去にあった戦争の記憶。どんなに汚れても、どんなにケガしても美しい形を崩さない。そもそも、あんなに可愛い少女が生き死にの戦場にいる画が馴染まない。「偽物」として自分は認識してしまった。ここで半ば気持ちが離れている。。。。

あらすじはざっくり、代筆家として活躍する主人公の周りで起きたこと、そして、彼女を育ててくれた(?)恩人との愛の行方。容姿のデザインと同様、悲しいことを悲しく描いて、尊いことを尊く描くスタイルは一貫している。「そのまま」を美しいと感じるか、「そのまま」を当たり前として興冷めするか、自分は後者だった。特に終盤のクライマックス、過剰にドラマチックに畳みかける愛のシーンにはついていけなかった。おそらく主人公と少佐の関係性は、この映画の中だけの情報では補えないのだろう。周りの人たちは号泣してるし、、、、居づらい。

とはいえ、京都アニメーションのレベルの高さを再実感するには十分だった。脚本や演出は別として、これだけ徹底的に描き込まれた美しいアニメーションを大スクリーンで見られることはシンプルに眼福である。また、キャラクターに魂を宿す声優陣のパフォーマンスにも感動した。本作は間違いなく劇場で見るべき映画だ。

「大切な人へ想いを言葉で伝えよう」という普遍的なメッセージをしっかり届くのだけれど、「一部のアニメファンのもの」というポスターで見たままのイメージは払拭されず、「食わず嫌い」を克服するには至らなかった。

【65点】
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