から揚げが好きだ。

映画とサウナ。

沈黙 -サイレンス- 【感想】

2017-01-28 09:00:00 | 映画


「沈黙」とは神様の沈黙だ。いくら神様に祈っても神様は何もしてくれない。「信仰ってそういうもの」と片づけていたが、よくよく考えれば、とても不思議な風習と感じる。信仰というモノの正体に迫った原作の映画化だ。遠藤周作による日本を舞台にした時代ドラマを、あのスコセッシが映画化するということで公開を楽しみにしていたが、やっぱり凄い映画だった。

江戸時代初期、キリスト教を日本で棄教した神父を探すため、日本に訪れた若き宣教師の試練を描く。

原作の「沈黙」は自分が高校生だった頃、学校の課題図書で読んだことがあった。おおよそのあらすじを覚えている程度で映画を見たが、原作を読んだときの衝撃が蘇ってきた。

当時の日本ではキリシタンへの弾圧が激しかった。当然ながら、彼らの信仰の発生源であるキリスト教の宣教師たちも異国人でありながら非人道的な扱いを受ける。冒頭から描かれる宣教師たちへの拷問シーンが痛ましい。裸で磔にされたのち、沸騰する温泉をゆっくり肉体に注いでいく。白い皮膚が火傷によって赤くただれていく。目的は「罰」ではなく「キリスト教の根絶」にある。拷問を受けた当人たちよりも、それを目撃する民衆への見せしめだ。民衆の手から信仰を奪うためには、まずは彼らの師である宣教師から信仰を奪うことが有効とされ、最も長く苦痛を味あわせる方法がとられている。

興味深かったのはキリスト教の弾圧を強行する長崎奉行の思惑だ。無知であるがゆえではなく、彼らなりの論理がある。日本という「沼地」ではキリスト教は根付くことはなく、仏教という既存の宗教とも共存し得ないと判断。そして、神話を崇め、実態のない神にすがる「妄想」宗教は大きな脅威になり得ると。。。その行いは決して許されるものではないが、かつてキリスト教が日本で排斥された事実に強い必然性を感じた。

日本に訪れた若き宣教師が出会うのは、貧しい農村地帯でキリスト教を深く信仰する人々だ。日本人が昔から持つ、実直さといった気質は、見返りを求めないキリスト教とかなり相性が良かったように思う。食うこともままならぬ貧しい環境のなかで、奉行からの厳しい年貢の取り立てに搾取される日々。救いを求めた先がキリスト教であり、死ねば「天国(パライソ)」に行けるという死生観は貧しい農民たちにとって心の拠り所になったと想像する。

宣教師たちはキリスト教を捨てない。日本のキリシタンたちもキリスト教を捨てない。奉行がとった弾圧の第2形態は「見殺し」。宣教師たちに、己の宗教のために人々が殺される様を見せつける。キリスト教を捨てれば、人々は救われると言う。主人公の宣教師は目の前の命を救うべきか、信仰を捨てるかの葛藤に見舞われる。祈るだけでは救われない命。。。なぜ神は黙っているのか。。。大いなる無力感と共に、タブーを超えて神への疑念が誠実に描かれていく。

原作と同じで本作にも答え(正解)は出てこない。信仰の存在を肯定するならば、主人公が下した決断は正かったと言い切れない。描かれるのは、生身の人間が信仰と権力によって翻弄された歴史だ。されど、これらの構図は姿や形を変えて今の現代にも息づく普遍性を帯びていると感じさせる。スコセッシが映画化を切望したのも納得のテーマといえる。スコセッシがどのようなブレーンと手を組んだのかはわからないが、外国人監督にありがちな日本の勘違い描写は全くなく、それでいて「西洋から見た日本」という異質感が巧く表現されている。

巨匠スコセッシの元に集まった演者たちは、最上級のパフォーマンスでそのキャスティングに応える。主人公演じたアンドリュー・ガーフィールドや、激ヤセで臨んだアダム・ドライバーなど、アメリカの本国俳優の熱演も素晴らしいのだが、日本人俳優たちのパフォーマンスも全く引けをとらない。なかでも「モキチ」を演じた塚本晋也と、長崎奉行を演じたイッセー尾形が印象深い。塚本晋也は「野火」に通じる、痛ましいほどのリアルを、苛酷な肉体描写で体現する。壮絶な水攻めシーンが脳裏に焼きつく。胸が張り裂ける思いだった。監督としても役者としても一流な稀有な映画人だ。そして、独特の嫌らしいテンポで狡猾で知的に宣教師たちを追い詰めるイッセー尾形の名演が、本作のテーマの心臓部をつく。

窪塚洋介演じる「キチジロー」は人間の弱さそのものであり、裏切り者「ユダ」といえる。「こんな俺でも神様は救ってくれますか?」の言葉がグサリと刺さる。信仰の正体を捉えることはやはり難しいようだ。現代のカトリック教会の人たちが本作を見てどう解釈するのだろう。そして、信仰に対してどんな答えを出してくれるのだろうか。

スコセッシの情熱が結実した力作。2時間40分という長さも冗長に感じられなかった。
但し、見る側の心身を削る映画でもあるため、リピート鑑賞に踏み切るには少し抵抗がある。

【65点】
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第89回アカデミー賞、ノミネート発表。。。

2017-01-24 23:43:36 | 映画
ついさっき、第89回アカデミー賞のノミネーションが発表された。
22時からのWOWOWの生放送でその模様を見守った。
大きなサプライズはなかったが、その発表内容よりも気になったのが、今回より初導入された動画での発表形態。もう大ブーイングだ(怒)。なんという味気無さ。白塗りのバックに候補者の名前がテキストで表示されるだけ(しかも全部、同じ字体)。好きでも嫌いでもない微妙な映画俳優たちのインタビュー映像に多くを割かれ、肝心の主役である候補者たちの顔が出ないという扱いの酷さ。映画ファンをなんだと思っているんだろう。受賞の本番よりもある意味、このノミネート発表のほうが面白くて、ドキドキするのに。毎年恒例の会場での発表してほしかった。今回の試みは大失敗といえる。

んで、一応、候補作が発表されたのでまとめてみる。▲が予想ハズレ。

【作品賞】
ラ・ラ・ランド
ムーンライト
マンチェスター・バイ・ザ・シー
メッセージ
Hacksaw Ridge
LION/ライオン 25年目のただいま
Fences
Hidden Figures
最後の追跡(▲)


「最後の追跡」はNetflix映画ということでオスカー会員から嫌われると思ったけど、「ビーストオブノーネーション」の反省が効いたのか、今年はバッチリ候補入りを果たした。とても好きな映画なので嬉しかった。

【監督賞】
デミアン・チャゼル(ラ・ラ・ランド)
バリー・ジェンキンス(ムーンライト)
ケネス・ロナーガン(マンチェスター・バイ・ザ・シー)
メル・ギブソン(Hacksaw Ridge)
ドゥニ・ヴィルヌーヴ(メッセージ)(▲)


作品賞に続き、こちらも嬉しい誤算。オスカー会員に嫌われていると思っていたドゥニ・ヴィルヌーヴがようやくノミネートを果たした(祝)。

【主演男優賞】
ケイシー・アフレック(マンチェスター・バイ・ザ・シー)
アンドリュー・ガーフィールド(Hacksaw Ridge)
ライアン・ゴズリング(ラ・ラ・ランド)
デンゼル・ワシントン(Fences)
ヴィゴ・モーテンセン(はじまりへの旅)


ここは全部予想通り。「Hacksaw Ridge」の日本公開が早く決まってほしい。

【主演女優賞】
エマ・ストーン(ラ・ラ・ランド)
ナタリー・ポートマン(ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命)
イザベル・ユペール(Elle)
ルース・ネッガ(ラビング 愛という名前のふたり)(▲)
メリル・ストリープ(マダム・フローレンス! 夢見るふたり)


エイミー・アダムスは固いと思っていたけど、彼女ではなくルース・ネッガか~。彼女の候補入りにより主要演技部門に、もれなくアフリカ系の俳優が入ることになった。

【助演男優賞】
マハーシャラ・アリ(ムーンライト)
ルーカス・ヘッジズ(マンチェスター・バイ・ザ・シー)
デヴ・パテル(LION/ライオン25年目のただいま)
ジェフ・ブリッジス(最後の追跡)
マイケル・シャノン(Nocturnal Animals)(▲)


ここでマイケル・シャノンが来たか!!この候補入りはヨめなかった。「Nocturnal Animals」も日本公開が決まってほしい。

【助演女優賞】
ヴィオラ・デイヴィス(Fences)
ナオミ・ハリス(ムーンライト)
ミシェル・ウィリアムス(マンチェスター・バイ・ザ・シー)
ニコール・キッドマン(LION/ライオン25年目のただいま)
オクタヴィア・スペンサー(Hidden Figures)


予想通りの結果。やっぱ、この部門でもアフリカ系の俳優が多く入ったな。

最多ノミネートは「ラ・ラ・ランド」で13部門(14個)。これも予想通りだったが、今日の町山氏の解説を聞くと、やっぱり受賞の行方もほとんど同作が獲得するのだろう。配給のギャガも気合が入っているらしく、番組の途中でデミアン・チャゼルの監督インタビューをわざわざ入れていた。まーとにかく来月の公開が楽しみであります。

あと、これも思ったとおりだが、前回の「多様性」問題からの反動からか、有色人種(特にアフリカ系)への配慮が少々、行き過ぎた感が否めない。ここまでアフリカ系俳優のノミネートが多いのは逆に不自然な気もする。みんな素晴らしいのは間違いないと思うが。

「君の名は」がアジアでの勢いそのままに、アカデミー賞に影響を及ぼさなくて安堵した。
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【直前】第89回アカデミー賞、ノミネーション予想。

2017-01-23 23:00:00 | 映画
いよいよ、第89回アカデミー賞のノミネート発表が明日に迫った。
今年もWOWOWでは無料放送にて生中継をしてくれるらしい(感謝!)。明日の22時からの放送なので、何としてもそれまでに帰宅せねば。。。

最終の直前予想をしてみる。上から順に確率高い順。

【作品賞】
ラ・ラ・ランド
ムーンライト
マンチェスター・バイ・ザ・シー
メッセージ
Hacksaw Ridge
LION/ライオン 25年目のただいま
Fences
Hidden Figures

今年も8作品と予想。昨年度の「多様性」の反省からアフリカ系など、有色人種に配慮した顔振れになると予想。その流れで「Hidden Figures」が作品賞のみならず、その他の部門でも絡んでくると予想。「最後の追跡」はNetflix映画ということで他部門含めシャットアウトされると思われる。当初より候補入り確実と踏んでいたスコセッシの「沈黙サイレンス」はスルーされると思われる。先週末に鑑賞済みでオスカーにノミネートされて然るべき映画と思われるが、日本色が強い映画のため会員の関心は得られないと思われた。

【監督賞】
デミアン・チャゼル(ラ・ラ・ランド)
バリー・ジェンキンス(ムーンライト)
ケネス・ロナーガン(マンチェスター・バイ・ザ・シー)
メル・ギブソン(Hacksaw Ridge)
デンゼル・ワシントン(Fences)

上位3人は確実として、残りの2枠。順当に考えれば「メッセージ」のドゥニ・ヴィルヌーヴが入るのだが、「灼熱の魂」から今日に至るまでの経緯を見る限り、彼はオスカー会員から好かれていないと予想。「ハドソン川の奇跡」が作品賞に入るのであれば、イーストウッドの候補入りもあり得るが、日本の映画評論家ほど、オスカー会員には愛されてない。

【主演男優賞】
ケイシー・アフレック(マンチェスター・バイ・ザ・シー)
アンドリュー・ガーフィールド(Hacksaw Ridge)
ライアン・ゴズリング(ラ・ラ・ランド)
デンゼル・ワシントン(Fences)
ヴィゴ・モーテンセン(はじまりへの旅)

上位4人は確定。残り1枠にヴィゴ・モーテンセンを入れる。GG賞のみならず、SAG賞にノミネートされたことからも候補入りの可能性高し。

【主演女優賞】
エマ・ストーン(ラ・ラ・ランド)
ナタリー・ポートマン(ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命)
イザベル・ユペール(Elle)
エイミー・アダムス(メッセージ)
メリル・ストリープ(マダム・フローレンス! 夢見るふたり)

前回から予想を変えず、この5人で確定と予想。

【助演男優賞】
マハーシャラ・アリ(ムーンライト)
ルーカス・ヘッジズ(マンチェスター・バイ・ザ・シー)
ヒュー・グラント(マダム・フローレンス! 夢見るふたり)
デヴ・パテル(LION/ライオン25年目のただいま)
ジェフ・ブリッジス(最後の追跡)

「最後の追跡」は完全シャットアウトされると予想したが、「助演男優賞」ではジェフ・ブリッジスの他に枠を埋める、目ぼしい候補者がいない。GG賞をとった「ノクターナル~」のアーロン・ジョンソンはオスカー候補入りはないと思われる。

【助演女優賞】
ヴィオラ・デイヴィス(Fences)
ナオミ・ハリス(ムーンライト)
ミシェル・ウィリアムス(マンチェスター・バイ・ザ・シー)
ニコール・キッドマン(LION/ライオン25年目のただいま)
オクタヴィア・スペンサー(Hidden Figures)

上位4人は確定。残り1枠に「Hidden Figures」のオクタヴィア・スペンサーを入れた。過去の受賞者の再ノミネートは、初ノミネートよりも確率が高いと思われる。
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ネオン・デーモン 【感想】

2017-01-21 09:00:00 | 映画


今年1本目の劇場鑑賞。
敬愛するレフン監督の新作。完成度はさておいても、レフン映画に期待するレベルは悠々とクリア。美しいものに鮮血をまぶしちゃんだよな~。レフンの美学というよりも悪趣味に近い作家性も、彼のファンには堪らない味付けだ。清純派女優エル・ファニングがレフンの餌食に(笑)。

モデルを目指して田舎からロサンゼルスに越してきた少女が、弱肉強食なモデル業界で揉まれに揉まれるという話。

レフン映画のファンになった起点は2012年の「ドライヴ」だ。以来、彼の過去作や新作を追いかけているが、他作品を見る度に、ドラマ性の強かった「ドライヴ」は数あるレフン映画の中でもレアケースだったと感じる。話の進行の合間に、白昼夢のような絵を挟み込こみ、幻惑的な光と音を操り、シンメトリーなフレーミングによってスタイリッシュな映像世界を形づくる。その世界には決まって過剰な暴力描写が添えられる。男臭い映画が多いなか、初のヒロイン映画となった本作であったが、どこを切っても、そんなレフン節が効いている映画だった。

本作で描かれるモデル業界は、都市伝説も含め、素人がイメージする世界そのものだ。幾人かのモデルは整形をして外見を整え、モデルはメイクのお姉さんと仲良しになり、モデル事務所の面接では興味のない人材は雑に扱われ、大御所のカメラマンはモデルを造形物として確認し、モデルを起用するデザイナーのオッサンはモデルに見返りを求める。。。等々、登場するそれぞれのキャラクターも「いかにも」といった造形で可笑しい。現代のモデル業界の実態とはかけ離れた描き方かもしれなが、その誇張によってレフンの描く世界が活況したのは間違いなさそうだ。

描かれるのは、モデル業界の激しい競争が生み出す女性の嫉妬と狂気。外見こそが才能であり、外見こそがすべてという絶対的な尺度は、勝者と敗者を明確に分けることができる。外見は生まれ持った才能であり、その差を埋めることは極めて難しい。敗者は潔く己の負けを受け入れることは難しく、女性ならではの粘着性が「負」の方向へと体勢を向けていく。本作の主人公であるジェシーは16歳であり、類まれなる美貌と個性をもっているがゆえに、とんとん拍子で出世街道を進んでいく。彼女の出現によって敗者となった女子は諦めることなく、攻撃の矛先をジェシーに向ける。

女性同士の愛欲の姿もやはり描かれる。そして、果たされぬ欲望は常軌を逸した展開になだれ込む。ヨダレをじゅるじゅるに垂らして挑んだジェナ・マローンの怪演に絶句する。モデルたちのジェシーに対する仕打ちと顛末も、ホラー映画ばりのグロテスクな様相だ。そうした展開には、前後の脈略はほとんどなく、レフンの瞬発的な感性の賜物と感じられた。単に「キワモノ映画」として捉えることも容易であり、レフンの自己陶酔の世界を見せられるともいえるが、自分は本作の濃密な世界にすっかり魅了されてしまった。やっぱり好きなんだ。

思えば、冒頭の鮮烈なショットはレフンの意思表明だったかもしれない。観客に媚びることなく、ハイテンションで我が道を突き進む。レフンの健在ぶりが嬉しかった。これまで清いイメージしかなかったエル・ファイニングに「デーモン」を纏わせたことは彼女のキャリアにもプラスになったはず(たぶん)。程よく肥えたキアヌのクズっぷりも非常に良い。北米では興収、評価ともに失敗したようだが、これからもしばらくハリウッドで映画を撮り続けてほしいと思う。

【65点】
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2017年注目映画10選 【邦画編】

2017-01-21 09:00:00 | 映画


洋画に続き、2017年の注目映画を邦画(日本映画)から選んでみる。今年の邦画は「話題」作は多いものの、「期待」作があまりにも少ないため、選ぶではなく、見つけ出すのに苦労した。話題の漫画原作の実写化はどれも大コケが濃厚なタイトルばかり。。。
現時点(2017年1月15日時点)で今年中に公開が決まっているものに限定。上から期待度順。

1. アウトレイジ 最終章 (2017年時期未定)
大好きなシリーズの最終章。善人なきヤクザ者同士のドスの張り合いが病みつきになる。まだ作品内容の詳細は明かされていないが、物語の舞台は海外になるとの情報あり。前回の西田敏行のような、面白いキャスティングに期待する。

2. 是枝作品タイトル未定 (2017年時期未定)
まだ、タイトルも決まっていない是枝映画は、法廷サスペンスになるとのこと。しかも是枝監督の完全オリジナル。福山雅治と再タッグについてはやや懸念だが、役所広司との初タッグが大いに楽しみ。

3. 3月のライオン (2017年3月18日、4月22日公開)
大友啓史監督が手掛ける、久々のヒューマンドラマ。注目するのは脚本を務める渡部亮平。2013年日本映画の私的ベストである「かしこい狗は、吠えずに笑う」を脚本・監督した新鋭だ。以降、TVドラマの脚本ばかり担当しているが、この人が手掛けた脚本にはハズレがない。

4. 打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか? (2017年8月18日公開)
岩井俊二原作×大根仁脚本のアニメ映画。大根監督は自身が手掛けるTVドラマでもエピソードとして登場させている原作の映画化であり、特別な思い入れがあると想像する。監督は全くの守備範囲外であるが「魔法少女まどか☆マギカ」の新房昭之という人らしい。

5. 関ヶ原 (2017年8月26日公開)
毎回楽しみにしている原田眞人の脚本・監督による新作は、司馬遼太郎原作の時代劇。岡田准一主演というのが、興味を削がれてしまう点だが、「原田組」の役所広司が出てくれるから、重厚な仕上がりになってくれそう。

6. 奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール (2017年9月公開)
年に1回という素晴らしいペースで映画を量産してくれる大根仁監督の新作。もちろん脚本も大根仁。原作漫画の映画化らしいが、奥田民生になりたいボーイってどんなだろう。。。主演は妻夫木聡。

7. 美しい星 (2017年5月公開)
三島由紀夫原作×吉田大八監督の新作は、大胆な脚色を施したSF劇になるとのこと。予告編を見ても不思議な映画になりそう。主演はリリー・フランキー。

8. 光 (2017年時期未定)
奇しくも同名の映画タイトルあり。河瀬直美監督映画と大森立嗣監督映画だが、自分が楽しみにしているのは後者の大森立嗣監督映画。「まほろ駅前~」と同じ三浦しをん原作の映画であり、きっと面白くなると予想。

9. 夜は短し歩けよ乙女 (2017年4月7日公開)
良く利用している映画レビューアプリ「Filmarks」で、「注目映画」として急浮上していたアニメ映画。キャラクターデザインを中村佑介が担当しているというのが気になる。

10. 夜空はいつでも最高密度の青色だ (2017年5月13日公開)
石井裕也監督の新作。個人的に当たり外れが激しい監督。池松壮亮が主演するということで注目。
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2017年注目映画20選 【洋画編】

2017-01-12 09:00:00 | 映画
不作だった2016年の洋画。しかし、2017年はとんでもなく豪華なラインナップ。
注目しているタイトルをまとめてみた。10個に収まらなかったため、20個まで選んでみる。
現時点(2017年1月9日時点)で日本公開が決まっているものに限定。上から期待度順。



1. ラ・ラ・ランド(2017年2月24日)
GG賞を最多受賞しオスカーに向けて猛進中。「セッション」で映画ファンを虜にした新鋭デミアン・チャゼルが描くミュージカル映画。「陽」のライアン・ゴズリングが楽しみ。2月の公開が待ち遠しい。

2. スターウォーズ エピソード8(2017年12月15日)
注目するのは監督のライアン・ジョンソン。神ドラ「ブレイキングバッド」の神回を監督した実力者。映画「ルーパー」も面白かったけど。全世界からの期待感に押し潰されず、前作の高い壁を越えられるか。

3. ダンケルク(2017年9月)
待望のクリストファー・ノーランの新作は、初の実話モノとなる戦争映画。徹底したリアリティ主義の鬼才がどんな映画に仕立ててくれるのか。予告編を見てもそのスケールのデカさに驚かれされる。

4. ナイスガイズ(2017年2月18日)
ラッセル・クロウとライアン・ゴズリングが夢の共演を果たしたバディムービー。北米の批評家たちの称賛をさらった軽快なコメディ。予告編から傑作の予感。監督は「キスキス,バンバン」のシェーン・ブラック。

5. お嬢さん(2017年3月3日)
今年は韓国映画のアタリ年かも。パク・チャヌクの新作が欧米の映画ファンを熱くさせている。アジア代表としてオスカーの外国語映画賞に輝くか。R18指定。エロくて不気味な予告編に萌え。

6. メッセージ(2017年5月)
SF初挑戦となるドゥニ・ビルヌーブが、本作でも成功を収める。北米では、本作を昨年のベスト1ムービーに上げている人多し。異星人とのコミュニケーションを描いた映画のようだが、そこまで支持を得ている理由が気になる。

7. ムーンライト(2017年公開日未定)
目下、各映画賞レースで「ラ・ラ・ランド」とデッドヒートを繰り広げる。アフリカ系男子の成長記録的な映画だが、傑出した人間ドラマに仕上がっているとのこと。マハーシャラ・アリに注目。

8. ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー リミックス(2016年5月12日公開)
2014年の私的ベスト映画の続編。期待値が高いだけに、続編のジンクスでコケてしまう怖さもある。何も考えずにガーディアンズ~のメンバーとの再会を楽しみにしたい。

9. モンスターコール(2017年6月)
大ファンであるJ・A・バヨナの新作。少年と木の怪物の交流を描くダークファンタジーで、年末に公開された北米ではその期待の高さに違わぬ高評価を獲得。原作小説の原作者が映画の脚本も手掛けている点も期待大。

10. 新感染 ファイナル・エクスプレス(2017年8月)
邦題のダサさに呆れ返るが、映画自体はシリアスでガチなゾンビスリラーとのこと。韓国映画が本気を出したら、日本の「アイアムアヒーロー」どころじゃないかも。主演は男が惚れる俳優、コン・ユだ。

11. Kubo and the Two Strings(時期未定)
今年も多くのアニメ映画が公開されると思うが、一番期待しているのは本作。日本公開を首を長くして待っていたが、ギャガが配給権を買ってくれたとのこと。早いとこ、劇場公開してほしい。

12. 沈黙・サイレンス(2017年1月21日)
あのスコセッシが日本の原作小説を映画化する日がくるとは。。。年末に北米で公開されるや否や「傑作」の呼び声高し。日本人俳優のキャスティングがユニーク。気付けば、もう来週の公開予定だ。

13. マンチェスター・バイ・ザ・シー(2017年5月)
オスカー賞レースの3番手として追いかける珠玉の人間ドラマ。GG賞では予想通り、主演のケイシー・アフレックがドラマ部門で受賞。オスカーでもその受賞が濃厚だ。もうベンアフの弟俳優とは言わせない。

14. ワンダー・ウーマン(2017年夏)
DC映画に失望した2016年だが、それでも本作には期待してしまう。アメコミ映画としてはおそらく初となる女性監督を起用。DCユニバースの変革の意気込みを感じる。「バットマンVS~」でもワンダー・ウーマンだけカッコ良かったもん。

15. ブレードランナー 2049 (2017年11月)
SF映画の金字塔の続編が、目下、絶好調を継続するドゥニ・ビルヌーブによって映画化される。主演はライアン・ゴズリング。今年はライアン・ゴズリングの年になりそう。ロビン・ライト、ジャレッド・レトが共演というのも堪らない。

16. 美女と野獣(2017年4月21日)
ディズニーが満を持しての実写化。もう公開前から大ヒットを約束されたようなものだが、気になるのは出来栄え。監督はビル・コンドンなので当たり外れがありそう。野獣役がダン・スティーブンスなので素顔の彼が見たい。

17. ドクター・ストレンジ(2017年1月27日)
カンバーバッチがアメコミヒーローになるとは。絶好調のマーベル映画は、本作でもRottenで90%オーバーのフレッシュを獲得。堂々のユニバースの仲間入りを果たす。久々に3Dで見たい映画。

18. エイリアン:コヴェナント(2017年9月)
SF映画の名手として「オデッセイ」でその存在感を示したリドリースコット。散々酷評された前作の「プロメテウス」も、全然自分は嫌いじゃなかった。本作ではがっつりエイリアンが出てきそうなので楽しみ。

19. キングコング 髑髏島の巨人(2017年3月25日)
小規模映画を撮っていた監督が大作映画で大化けするパターンの匂い。キングコングがとにかくデカい。アトラクションムービーとして普通に楽しめそう。

20. スパイダーマン:ホームカミング(2017年8月)
三代目スパイダーマンは、トム・ホランド。「インポッシブル」以降、彼のファンになった自分はとても感慨深い。但し、映画自体はシリーズを三代も続けるほど意義があるのか、いささか心配。

他にも期待作として「モアナ」「レゴバットマンザ・ムービー」「猿の惑星:大戦記」「ゴースト・イン・ザ・シェル」等が上げられる。まだ公開が決まっていないものとしては、「ノクターナル・アニマルズ」などがある。いやはや目白押しだ。「トレインスポッティング2」や「キングスマン2」、「ソー:ラグナロク」は、日本での公開は来年以降になりそう。
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2016年のキネマ旬報ベストテンが発表された件。

2017-01-11 22:00:00 | 映画

昨日、毎年恒例のキネマ旬報ベストテンと各個人賞が発表された。
日本映画は嬉しい結果。外国映画はお約束の結果(苦笑)。

【日本映画】
1位 この世界の片隅に
2位 シン・ゴジラ
3位 淵に立つ
4位 ディストラクション・ベイビーズ
5位 永い言い訳
6位 リップヴァンウィンクルの花嫁
7位 湯を沸かすほどの熱い愛
8位 クリーピー 偽りの隣人
9位 オーバー・フェンス
10位 怒り

1位の「この世界の片隅に」の結果にアガった。これで関心をもってくれる人が増えてくれると良いのだけれど。以降の順位はキネ旬らしい選出。個人的にワースト映画にいれた「湯を沸かすほどの熱い愛」「クリーピー偽りの隣人」は、やっぱ批評家ウケするよね。3位の「淵に立つ」は鑑賞スルーしていたけど、DVDが出たら見てみようかな。

【個人賞】
監督賞   片渕須直(この世界の片隅に)
脚本賞   庵野秀明(シン・ゴジラ)
主演女優賞 宮沢りえ(湯を沸かすほどの熱い愛)
主演男優賞 柳楽優弥(ディストラクション・ベイビーズ)
助演女優賞 杉咲花(湯を沸かすほどの熱い愛)
助演男優賞 竹原ピストル(永い言い訳)
新人女優賞 小松菜奈(ディストラクション・ベイビーズ)
新人男優賞 村上虹郎(ディストラクション・ベイビーズ)

作品部門に続き、監督賞の結果(片渕監督)が本当に嬉しい。脚本賞の庵野秀明も大納得だ。あとの個人賞は良くも悪くも予想通りの選出。対象タイトルが偏っているのが普通につまらない。「湯を沸かすほどの熱い愛」の宮沢りえと杉咲花は、素晴らしく演技が巧いのだけれど、描かれるキャラクターが(映画自体も)迷走しているため本当に残念だった。「永い言い訳」の竹原ピストルも良かったけど、一瞬怖くてハマりきらなかった。

【外国映画】
1位 ハドソン川の奇跡
2位 キャロル
3位 ブリッジ・オブ・スパイ
4位 トランボ ハリウッドに最も嫌われた男
5位 山河ノスタルジア
6位 サウルの息子
7位 スポットライト 世紀のスクープ
8位 イレブン・ミニッツ
9位 ブルックリン
10位 ルーム

外国映画監督賞 クリント・イーストウッド

日本の「映画評論家」と言われるオジさんたちは、イーストウッド大先生が亡くなったら集団心中でもするのだろうか。毎年の「お約束」となっているイーストウッド映画の1位。昨年は「マッドマックス~」という空前絶後の映画が出現したために2位に甘んじものの、今年は再び1位に帰り咲き(笑)。昨年発表された「評論家100 人が選ぶ期待の外国映画監督」でも1位に選ばれており(おいおい、もう80過ぎているのに期待度1位って。。)、「イーストウッド教」への異常な狂信ぶりが再確認された。「ハドソン川の奇跡」は確かに良い映画だったけど、1位はさすがにない。まー言及するだけナンセンスか。
その他の2位以降のラインナップも、キネ旬らしいブレない選出。映画評論家たちのツボであるジャ・ジャンクー映画(山河ノスタルジア)もしっかり入っている。ブレイキングバッド信者としては「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」を見なかったことは昨年の後悔だ。

今年の洋画は面白い映画が少なかった分、この後に発表される「読者選出ベストテン」とは大きな違いが出そうな予感。こっちの結果も気になるところだ。昨年の読者選出の1位は「セッション」だったし。
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第74回ゴールデン・グローブ賞受賞結果。

2017-01-09 15:28:29 | 映画


本日、第74回ゴールデン・グローブ賞の受賞式が開催された。
今年は生放送で見ておらず、結果だけ確認。まさかのサプライズあり。

<ドラマ部門>

◆作品賞 ムーンライト

◆主演男優賞 ケイシー・アフレック(Manchester by the Sea)

◆主演女優賞 イザベル・ユペール(Elle)(サプライズ!)

<ミュージカル/コメディ部門>

◆作品賞 ラ・ラ・ランド

◆主演男優賞 ライアン・ゴズリング(ラ・ラ・ランド)

◆主演女優賞 エマ・ストーン(ラ・ラ・ランド)

<共通部門>

◆監督賞 デミアン・チャゼル(ラ・ラ・ランド)

◆助演男優賞 アーロン・ジョンソン(Nocturnal Animals)(超サプライズ!)

◆助演女優賞 ヴィオラ・デイヴィス(Fences)

◆アニメーション映画賞 ズートピア

◆外国語映画賞 Elle

最多受賞は「ラ・ラ・ランド」。まあ予想通り。
主演女優賞のイザベル・ユペールはフランス映画(「Elle」)での受賞という快挙。「Elle」の監督はあのポール・バーホーベンだ。日本公開がまだ決まっていないが、一層興味が湧いてきた。
そして、何と言っても助演女優賞のアーロン・ジョンソンのサプライズ受賞だろう。この部門は「ムーンライト」のマハーシャラ・アリの一人勝ちと思われたが、何があったのだろう。映画(「Nocturnal Animals」)自体は、アーロン・ジョンソンよりも マイケル・シャノンが候補に挙がると予想されていたのに、候補のみならず受賞までしてしまった。投票する外国人記者の人たちはキックアスやアベンジャーズでアーロン・ジョンソンのファンが多いのかな。「Nocturnal Animals」も早く日本公開が決まってほしい。

テレビドラマ部門では「ザ・クラウン」が「ゲームオブスローンズ」の受賞を阻止したのが面白かった。Netflixでスルーしたけど、見てみようかな。

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第74回ゴールデングローブ賞 直前予想。

2017-01-09 01:58:30 | 映画
日付変わって、本日、第74回ゴールデングローブ賞の授賞式が開催される。昨年は生放送で見ていたが、今年は見られないので授賞式の模様は事後確認となりそう。
勝手に直前の受賞予想をしてみる。★が受賞予想。今回は監督賞以外は鉄板と想定される。テレビ(海ドラ)部門は今年のノミネート作品に興味がないためスルー。

<ドラマ部門>

◆作品賞
 ★ムーンライト
  Manchester by the Sea
  Hacksaw Ridge
  最後の追跡
  Lion

◆主演男優賞
 ★ケイシー・アフレック(Manchester by the Sea)
  アンドリュー・ガーフィールド(Hacksaw Ridge)
  デンゼル・ワシントン(Fences)
  ジョエル・エドガートン(Loving)
  ヴィゴ・モーテンセン(はじまりへの旅)

◆主演女優賞
 ★ナタリー・ポートマン(ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命)
  イザベル・ユペール(Elle)
  エイミー・アダムス(メッセージ)
  ルース・ネッガ(Loving)
  ジェシカ・チャステイン(Miss Sloane)

<ミュージカル/コメディ部門>

◆作品賞
 ★ラ・ラ・ランド
  マダム・フローレンス! 夢見るふたり
  シング・ストリート 未来へのうた
  20th Century Women
  デッドプール

◆主演男優賞
 ★ライアン・ゴズリング(ラ・ラ・ランド)
  ヒュー・グラント(マダム・フローレンス! 夢見るふたり)
  コリン・ファレル(ロブスター)
  ジョナ・ヒル(War Dogs)
  ライアン・レイノルズ(デッドプール)

◆主演女優賞
 ★エマ・ストーン(ラ・ラ・ランド)
  メリル・ストリープ(マダム・フローレンス! 夢見るふたり)
  アネット・ベニング(20th Century Woman)
  ヘイリー・スタインフェルド(The Edge of Seventeen)
  リリー・コリンズ(Rules Don't Apply)

<共通部門>

◆監督賞
 ★デミアン・チャゼル(ラ・ラ・ランド)
  バリー・ジェンキンス(ムーンライト)
  ケネス・ロナーガン(Manchester by the Sea)
  メル・ギブソン(Hacksaw Ridge)
  トム・フォード(Nocturnal Animals)

◆助演男優賞
 ★マハーシャラ・アリ(ムーンライト)
  ジェフ・ブリッジス(最後の追跡)
  サイモン・ヘルバーグ(マダム・フローレンス! 夢見るふたり)
  アーロン・ジョンソン(Nocturnal Animals)
  デヴ・パテル(Lion)

◆助演女優賞
 ★ヴィオラ・デイヴィス(Fences)
  ナオミ・ハリス(ムーンライト)
  ミシェル・ウィリアムス(Manchester by the Sea)
  ニコール・キッドマン(Lion)
  オクタヴィア・スペンサー(Hidden Figures)

監督賞はデミアン・チャゼルか、バリー・ジェンキンスの一騎打ちだが、前哨戦ではほぼ互角の状態。外国人記者が選ぶGGとしては「ラ・ラ・ランド」に支持が集まるとみた。
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2016年の映画状況を振り返って

2017-01-07 11:00:00 | 映画
もう年が明けたが、個人的に思った2016年の映画のトピックスを記録としてまとめたみた。

①「君の名は」の歴史的ヒット
昨年の映画界における最大のトピックス。200億「近く」はいくと思ったが、さすがに超えるとは思わなかった。その数字も凄いが、これまで絶対的王者であった(興収面で)、宮崎ジブリを超えたことが歴史的な事件といえる。近くのシネコンでは年明けからIMAX上映が始まるらしいし、まだまだリピーターを呼べると踏んでいるようだ。とはいえ、今から40億を乗せて、250億円の「アナ雪」には届くことは難しいだろう。劇場の閑散期にあたる9月~11月まで、2016年は過去最高収入を記録したようだ。一重に「君の名は」の効果によるもの。同じ東宝作品である「シン・ゴジラ」も80億を超えており、興行会社は東宝に足を向けて寝られないのでは? 同作は、中国をはじめとするアジア圏でもかなりのヒットになっている模様で、評判もかなり良い。北米での映画ファンのなかでも本作を「今年のアニメ映画のベスト!」と支持する人も多いようだ。個人的には過大評価と思うけど。

②日本映画の豊作

好きな映画は人それぞれで、例年通り、当たり外れも確かにあった。それでも2016年の日本映画は、例年と比べて面白い映画が多かったのは事実といえる。当ブログで「非常に面白かった!」の私的点数70点オーバーの日本映画が、このブログを始めてから過去最多の7タイトルとなった。その筆頭にあったのが「この世界の片隅に」であり、日本映画として10年に1本あるかないかの歴史的傑作だった。年明けの新聞広告で「この世界の片隅に」の拡大公開が告知されていたので、とても嬉しい。

③洋画の不作

日本映画の豊作の一方で、洋画が実に不作だった。日本映画と比べて、ではなく、例年の洋画レベルと比べて、個人的に響いた映画が少なかった。このブログで映画の記録を取り初めてから私的90点オーバーの作品数が2本で過去最少。完全に好みの問題だと思うが「キャプテンアメリカ~」「デッドプール」など、Rottenなどで大絶賛だったタイトルも「普通に面白いけど物足りない」な具合で、総じると期待ハズレな映画が多かった。ドラマ系映画はアカデミー賞関連作品を中心に面白い映画が多かったけど、それでも突き抜けた映画がなかった。一作年は豊作だっただけに、その落差をことさら強く感じる。

④DC映画の完全敗北

「マーベル」VS「DC」。アメコミ映画の2大巨頭の勝敗は、今年でさらに決定的なものになった。いつまで経ってもウィンウィンにはならない。マーベルの完全勝利と、DCの完全敗北だ。ユニバースの色を前面に出した「キャプテンアメリカ~」は、評価、興収ともに案の定、見事に大成功。一方、こちらもユニバースの始まりを掲げた「バットマンvsスーパーマン」は興収でヒットしたものの、映画ファンたちから今後の期待をもたせるほどの評価は得られなかった。悪役を主役に据えるというDC映画ならではの美味しい設定を揃えた「スーサイド・スクワッド」は、その仕上がりに大ブーイング。今年はDC映画にとって起死回生の年となるはずだったが、もう何をやってもハズレそうだ。

⑤劇場の番組編成の偏り
これは自分の周りだけで偶然かもしれないが、シネコンで上映するタイトルの多様性が失われているような気がする。例年であれば、公開してくれたであろう映画が、近くのシネコンですっかり扱わなくなった。特に下半期以降、一部のタイトルの独占状態が目立った。「君の名は」のヒットが影響していると思われる。シネコン側が「間違いなく客が入るタイトルに絞って上映すれば失敗しない♪」みたいな味をしめたようだ。事業者としては当然の判断であるが、おかげでこっちは、遠くの都内のシネコンまで出向き(といっても帰り道だが)、割引なし料金を支払わなければならない。普段1000円~1200円でしか映画を見ない自分にとっては、よっぽど確信のある映画じゃないと1800円は払いたくない。昨年は年末の「ドント・ブリーズ」と「ヒトラーの忘れもの」のみ1800円で鑑賞。両作とも面白かったが、娯楽料金として今でも1800円は高過ぎると思う。

昨年も週に1回ペースで映画館に足を運んだが、今年は学生らしき若者層が多かった印象を受けた。そのほとんどが「君の名は」だったが、直近で見た「ドント・ブリーズ」もホラー映画の割に、若い人たちが多かった(これは新宿という場所のせいかな)。映画界にとっては明るいトピックスといえそう。

また、観に行く映画の前評判をチェックするのにRottentomatoなどの海外レビューサイトの他に、昨年から映画レビューを専門にやってる海外のユーチューバーの動画を見て参考にすることが多くなった。英語で何を言っているのかよくわからないが、英語をわからない海外視聴者にもわかるように、スコアなど、採点してくれるのが有難い。

今年は昨年と打って変わって、再び、洋画の大豊作になりそうな予感。ヨダレもののラインナップ。
今年も良い映画と出会えますように。。。
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2016年映画 勝手に個人賞 【邦画編】

2017-01-07 10:00:00 | 勝手に映画ランキング
監督賞  : 片渕須直 「この世界の片隅に」


主演男優賞: 綾野剛 「日本で一番悪い奴ら」


主演女優賞: のん 「この世界の片隅に」


助演男優賞: 池松壮亮 「永い言い訳」「海よりもまだ深く」


助演女優賞: 宮崎あおい 「怒り」


新人男優賞: 狩野見恭平 「闇金ウシジマくん ザ・ファイナル 」


新人女優賞: (該当者なし)
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2016年映画 勝手に個人賞 【洋画編】

2017-01-07 09:00:00 | 勝手に映画ランキング
監督賞  : アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ 「レヴェナント: 蘇えりし者」


主演男優賞: レオナルド・ディカプリオ 「レヴェナント: 蘇えりし者」


主演女優賞: シアーシャ・ローナン 「ブルックリン」


助演男優賞: ジョエル・エドガートン 「ザ・ギフト」


助演女優賞: アリシア・ヴィキャンデル 「エクス・マキナ」


新人男優賞: マーク・マッケンナ 「シング・ストリート」


新人女優賞: ピリ・グロワーヌ 「神様メール」
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2016年ワースト映画トップ5 【洋画/邦画】

2017-01-07 08:00:00 | 勝手に映画ランキング
<洋画編>

1位 アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅
 ひたすら薄いストーリー。アリスの1人騒動に付き合わされ、見ていて疲れた。

2位 ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー
 2016年のトップオブ・期待ハズレ。キャラクターをきちんと描いて欲しかった。

3位 インデペンデンス・デイ:リサージェンス
 前作のパワーはどこへやら。魅力が皆無という奇跡的なSFアクション。 

4位 スーサイド・スクワッド
 DCユニバースの逆襲!のはずが、大コケ。。。。この痛手は大きいぞ。
 
5位 ターザン:REBORN
 CGの悪い使い方。主演の肉体を活かさないアクションにフラストレーション。
 
<邦画編>

1位 湯を沸かすほどの熱い愛
 涙と感動の押し売り。久々に劇場から逃げ出したい衝動に駆られた。自分はホント無理。

2位 HK 変態仮面 アブノーマル・クライシス
 前作の正攻法無視して、とんだ勘違い。スベリ倒しの笑いで暴走。寒い。

3位 ウシジマくん Part3
 嘘っぽく安っぽいテレビドラマ。いや、テレビドラマ版よりも面白くないかも。。。。   
 
4位 TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ
 クドカンの趣味に付いていけず。小手先ギャグの連打が2時間続く地獄。

5位 クリーピー 偽りの隣人
 スリラーの域に自ら入っていく登場キャラに苦笑。ツッコミ所が多くて集中できず。 


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2016年ベスト映画トップ10 【邦画編】

2017-01-06 09:00:00 | 勝手に映画ランキング
1位 この世界の片隅に

歴史的傑作が2016年に誕生。日本映画としては過去10年の中で私的ベスト。2Dのアニメなのに3次元の実在感は、アニメを超えたアニメといえる。戦時下の過酷な状況のなかでも、笑いに溢れた輝ける日常が存在した事実は、平和な現代の生活と地続きであることを実感させる。この映画の普遍性はこれからも語り継がれていくに違いない。すずさん、ありがとう。あなたの物語を忘れることはないでしょう。

2位 聲の形

人と繋がることの難しさ。想いやることの尊さ。見えない声のすれ違いが、時に痛ましく時に愛おしい。いじめの残酷性を始発点として「贖罪」を自らに課し、世界と縁を切った主人公の青年。その青年の成長ドラマとして描いた製作陣の英断に拍手。これ以上ない原作漫画の映画化。音楽、編集、フレーミングも素晴らしくアニメの進化系を目撃し感動。クライマックスで涙腺決壊。

3位 アイアムアヒーロー

日本映画史に残る事件だ。万歳。ゾンビ映画として、いや、アクション映画として世界に堂々と打って出ていけるほどの見事な完成度。観客に媚びることのないゴア表現をベースに、非力男子の成長&覚醒ドラマがしっかり描かれる。最近の原作漫画よりも断然面白い。まさかこんな日本映画が作られる日が来るとは。日本映画よ、あとに続け。

4位 永い言い訳

人間の弱さ、愚かさ、哀しさ。綺麗ゴトでは収まらない人間の生態をありのままに描く、西川美和の作家性は健在。当たり前に近くにいた家族の、突然の喪失から忘却までの道のりをユーモアを交えて誠実に切り取っていく。1年という撮影期間はそのまま時間の流れとして映画に肉付けられた。西川監督と、考える俳優である本木雅弘との化学反応も抜群だった。

5位 日本で一番悪い奴ら

どこまでも堕ちていく男の痛快転落劇。ゲスでエロくて暴力的な描写は、昭和の体臭を味方につけ、その破壊力を増していく。常識や倫理がマヒした世界に充満するユーモアが堪らない。その体現者となった綾野剛のパフォーマンスがもう絶品。最高過ぎて惚れ惚れしてしまった。欲望を暴走させるような、こーいう日本映画がもっとあっていいはず。ホント好きだわ。

6位 シン・ゴジラ

「これ、ゴジラ映画?」という違和感はソッコー消え、未曽有の「ゴジラ災害」の対応に追われる政府組織の一挙手一投足を追い続ける、まさかのポリティカルムービーに釘付け。「虚構」×「現実」という離れ業を見事にやってのけた庵野秀明の完全勝利。多くの自然災害に見舞われきた日本の未来への希望と昇華させた脚本に感動。アニメキャラに寄せた石原さとみへの演出が惜しい。

7位 海よりもまだ深く

甲斐性なしのダメ男の生き様に寄り沿う家族の情景を描いた珠玉のホームドラマ。子どもの頃の思い出が染みついた団地を舞台に、訪れる嵐の一夜を通して描かれる人生の機微。なりたかった自分となれなかった自分、理想と現実、過去と現在が交錯する。その感情は共感を超えて「自分ゴト」として浸透。是枝監督が描く家族の物語にハズレなし。温みを感じる人生の応援歌。

8位 殿、利息でござる

良い意味でパッケージ詐欺(笑)。笑いもしっかり取るが、中身の本質は骨太な人情ドラマ。歴史に埋もれた名もなき庶民たちの願いは想像絶する苦難を乗り越える。その歴史秘話に胸が熱くなった。「慎みの掟」に日本人が持つ良心の原形を見たよう。現代の風景に移したラストカットが深い余韻を残す。

9位 君の名は

いろいろと欠点の多い映画だ。日本中が感動の雰囲気に惑わされて過大評価しているとすら思う。が、それでも本作の挑戦は評価されて然るべきだろう。時空を超えた運命の赤い糸を、スレ違い物語という古典的なプロットを起点とし、ディザスターの要素を盛り込み壮大なスケールで描く。とんでもない傑作になり得た映画だった。

10位 ヒメアノ~ル

常軌を逸した悪の化身は、実は平穏な日常の中に潜んでいる。青春ラブコメからサイコスリラーへ。中盤でのド肝を抜くスイッチングに鳥肌が立つ。日常の快楽と凶行の快楽を交互に見せるシーンが秀逸。危うい表裏性が恐怖と共に浮かび上がる。原作を知る身としては「森田」の描きこみに不足を感じたが、演じる森田剛の天才的な怪演には恐れ入った。

次点:「怒り」
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2016年ベスト映画トップ10 【洋画編】

2017-01-05 09:00:00 | 勝手に映画ランキング
1位 レヴェナント: 蘇えりし者

復讐に囚われた魂が荒野に放たれ、その肉体は野生と同化し生命の火を燃やし続ける。雄大に広がる自然の光景はどこまでも厳しく美しい。それは幻想的で自然界と信仰の密着性を強く感じるさせる。劇場から凍てつく世界に放り出される錯覚、圧倒的な埋没感は映画体験に相応しい。イニャリトゥが昨年の「バードマン」に続き、2年連続の場外ホームランを飛ばす。偉業。

2位 オデッセイ

元気120%のハイパーポジティブサバイバルは、地球から遠く離れた火星で繰り広げられる。たった1人取り残された男に、絶望する暇などナシ。人知の結晶である科学を武器に、絶望を希望に変え、運命に切り拓いていく男の痛快さたるや! 宇宙空間で起きる奇跡の所業も、必然性すら感じてしまうほどの力強さ。主人公が最高に魅力的で、演じるマッ ド・デイモンのチャームが炸裂する。

3位 神様メール

ジャコ・ヴァン・ドルマルはやっぱ天才だ(笑)。奇想天外。大胆不敵。予測不能。抱腹絶倒。神様をいじりにいじったファンタジーコメディは唯一無二のオリジナリティ。キュートな主人公とメルヘンな外形からは想像もできない、ブラックで皮肉なメッセージが飛び交う。盛られた毒っ気と混沌の楽観性が病みつきになる。あぁ楽しくてハッピー。

4位 ジャングル・ブック

CGによって自然の息吹さえも感じさせる時代がやってくるとは。リアルでない造りモノの世界で野生の鼓動が高らかに響き渡る。本作も映像革命の1つ。人間の少年モーグリと個性豊かな動物たちとの絆がエモーショナルに描き出される。その先に見えるのは人間と自然の境界と共存することの意味。大作映画に戻ってきたジョン・ファブローの鮮やかな一打。

5位 ブルックリン

小さなサナギが蝶として羽ばたいていく瞬間を目撃するかのよう。1人の少女が大人の女性へとしなやかに成長を遂げる過程だ。その美しさにただただ魅了される。遠く離れた故郷への想い、恋愛に揺れ動く心の機微を繊細に描き出す。2016年のベスト・オブ・ラブストーリー。主演のシアーシャ・ローナンに最初から最後まで心中を射抜かれた。

6位 ザ・ギフト

こっちは2016年のベスト・オブ・スリラー。怖がらせることだけがスリラーにあらず。種明かしも本作の答えではない。想像する生き物である人間は疑念を持ち恐怖へ転じさせるのが容易。人が持つ偏見を盲点としてとらえ、観る者を試す脚本が挑戦的で秀逸。監督・脚本を務めたジョエル・エドガートンの人間を見る目の鋭利さに驚かされ、俳優ならではの役者の表現力に賭けた演出に唸る。

7位 ズートピア

ディズニーアニメならではの老若男女を無条件に楽しませる愉快な世界に、「多様性」「偏見」といったシリアスなテーマが散りばめられる。そのメッセージを説教として聞かせるのではなく、笑いとスリルの原動力にしているのが素晴らしい。死角なき脚本はさすがの一言。主演の2人、ジュディとニックのバディムービーとしても最高。

8位 ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅

本家のハリポタよりも俄然タイプな新シリーズ誕生に拍手。出し惜しみない魔法合戦に興奮とワクワクが止まらない。主人公と魔法動物たちの絆が効いているのがもろにツボ。人間界と魔法使いの軋轢という新たなプロットが興味深く、しかし、それを超えた友情物語にホロリ。ラストショットも素敵だ。

9位 最後の追跡

今年の未公開映画のベスト。テキサスの田舎町で起こる小さな強盗劇を軸に、頑丈で味わい深い人間ドラマが交錯。強盗 犯の兄弟とそれを追いかける老齢の保安官。彼らの姿を通して浮上するのは、アメリカの失われた栄光と現代資本主義の暗部。主演のクリス・パインがキャリアベストのパフォーマンス。日本でリリースしてくれたNetflixに感謝。

10位 キャプテン・アメリカ/シビル・ウォー

キャップとアイアンマンが戦うほどの対立構図に、今でも必然性を感じず、お祭り騒ぎのための設定と感じてしまうが、それでも極上のアクションに仕上げてしまうのが、ディズニー配下となったマーベル映画の強さだ。アントマン、スパイダーマンまで加わったヒーロー同士の大喧嘩は、楽しくて笑えて今年最高のアクションシーン。

次点:「サウルの息子」「ヘイトフル・エイト」「スポットライト 世紀のスクープ」「シング・ストリート」「ロスト・バケーション」「ドント・ブリーズ」「ヒトラーの忘れもの」

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