から揚げが好きだ。

映画とサウナ。

LEGO ムービー 【感想】

2014-03-29 14:19:44 | 映画


映画の大当たりフィーバーが止まらない。。。

急きょ観ることにした「LEGO ムービー」が凄い映画だった。

ただのCGアニメーションだと侮るなかれだ。
この暖かく抱きしめたくなるような余韻は「トイ・ストーリー3」に近い。

アカデミー賞がひと段落して、アメリカの映画興行において、
パッとしない映画の公開が続く中、久しぶりに大ヒット&大絶賛を受けている本作。

Rotttenでは175レビュー中、97%のフレッシュという驚異的な数字を叩き出す。
これは現在、日本で超絶ヒット中の「アナと雪の女王」のそれを大きく上回る。
観てみて、その絶賛ぶりがよくわかった。

物語は、レゴブロッグの世界を舞台に、ごく普通の青年エメットが、
邪悪な「おしごと大王」による世界征服を阻止するために冒険する話だ。

何から何までレゴブロックで表現する。
水、煙、炎など、形をとどめない物体に至るまですべてだ。
スケールがデカいのに、細部に至るまで描写は緻密。
柔軟な発想力に裏打ちされた映像の躍動感に目を奪われる。

ストップモーションで全部撮影していたら、エライことだなー、と思っていたら、
ストップモーション風に見せたCGということで、なぜかホッとする。
っていうか、わざわざストップモーション風に見せているのがイケている。

レゴブロックの無限の可能性、その自由度を感じるとともに、
映像として見せる上で、表現の制限になることも認識している作りだ。
しかし、確信犯的にその制限を残し、ユーモアやメッセージに転じさせているのだ。お見事。

途中からバットマンが主要メンバーに加わるなど、スターウォーズ、ロードオブザリング・・・
他映画へのオマージュもタンマリあって映画ファンには堪らない。

映画「テッド」みたいにローカライズされたセリフの数々も楽しい。

吹き替え版、声優の森川さん、山寺さんらのプロのパフォーマンスに酔う。

普通のアニメーションとしても、かなり完成度の高い映像作品なのだが、
それで終わっていないところが、この映画の凄いところだ。

終盤、まさかの展開になだれこむ。

エメットが冒険する劇中で感じていた違和感が、
すべて伏線だったことに気づかされる。何ということか。

レゴブロッグが人種・年代を問わず世界に愛されている理由は、
人の創造性や想像力を肯定する玩具であるからだ。

そこに正解はなくて、何度もやり直しが効く。

予想だにしなかった本作のメッセージに触れたとき、
勝手に涙が溢れてきた。

この、とんでもない離れ技をやってのけたのは、
本作の監督・脚本を手掛けたフィル・ロードとクリストファー・ミラー。
大傑作「21ジャンプストリート」のコンビだ!!!

全米との公開のタイミングがかぶったせいか、
十分なプロモーションがなされなかったのが可哀そうだ。
日本でのヒットは見込めなさそうだが、埋もれてしまうには勿体ない。

劇場は子ども連れが多かったが、
大人でこそ楽しめる映画だと思う。

【80点】



あなたを抱きしめる日まで 【感想】

2014-03-29 00:28:36 | 映画


映画の大当たりフィーバーが続く。。。

「あなたを抱きしめる日まで」が予想以上に良かった。

アイルランドに住むおばあちゃん(フィロミーナ)が、
ジャーナリストの男(マーティン)と一緒に、
50年前に生き別れた息子を探す旅に出る話。

昨今ありがちな実話モノだが、その話があまりにもドラマチックである。
脚色している部分もあるだろうけど、観る人を惹きつける物語であることに違いない。

保守的な映画だろうなーと思っていたが、かなり攻めている内容で驚く。

物語の発端はフィロミーナが幼少期より育った修道院から始まるのだが、
カトリック教会の、知られざる過去の闇に踏み込んだり、
カトリックにおける禁欲と性欲の矛盾を突いたりしてる。

とてもシリアスなテーマを扱ってるのに、その重さを感じさせない軽妙さがある。

性に目覚め、早くして子どもを身ごもったフィロミーナの回想話が生々しくて良い。
飾らず正直に生きるフィロミーナのDNAは息子にも遺伝しているようだ。
息子の素性を知って、驚くことなく気持ちよく受けとめた彼女の姿が印象的だ。

本作のもうひとつの魅力はフィロミーナとマーティンの関係性である。
大らかで天然、世間知らずのフィロミーナに対して、
インテリなエリートで、野心家のマーティンという構図。
出逢うはすのなかった2人の会話がちぐはぐで、イチイチ可笑しい。

マーティンが他人の息子捜しを手伝う動機は同情心ではない。記事の「ネタ」のためだ。
しかし、その旅の道中で、2人に不思議な絆が育まれていくのが感動的だ。
終盤、突破口を開くマーティンの姿に胸がアツくなった。
そしてフィロミーナが最後に下した決断にもっと胸がアツくなった。

フィロミーナを演じたジュディ・デンチについては言うまでもなし。
昨今、凄味のある役柄が多かったので、本作は新鮮だったが、やはり名女優だ。

印象的だったのはマーティン演じたスティーヴ・クーガン。
元々コメディアンで、ハリウッドのコメディ映画にも多く出演しているイメージが強く、
本作のキャスティングは結構意外だったけど、その起用が成功した模様だ。
ジュディ・デンチとスティーヴ・クーガンの間に流れる空気が何とも心地よい。

本作は、途切れた手がかりから真実を模索する、ミステリーとしても見ごたえあり。

フィロミーナが息子を探す結末は思いのほか、あっさり終了する。
そこからの旅路が本作の重点だ。
「あなたを抱きしめる日まで」というタイトルが心に響く。

【75点】

「YOUは何しに日本へ?」に再びヤラれた件。

2014-03-27 01:02:32 | 日記
「YOUは何しに日本へ?」に再びヤラれる。

やはりこの番組は人間ドラマである。

今回、感じたテーマは「家族を考える」。

まず、3月17日放送でインタビューを受けた、お父さんと一緒にニセコに行く、
オーストラリア人の「コンニチチヤ(こんにちわ)」の女の子。

天真爛漫なリアル天使で、メロメロになってしまう。
きっと両親の育て方の賜物だろう。暖かい家族の情景が目に浮かぶ。
通勤中、このコのシーンを見て癒されるので、PSPに入れた90分番組が消せない。。。

そして、3月24日放送で登場した、自転車で日本を旅する4人家族への密着取材。
下半期シメのスペシャルに相応しい素晴らしい内容だった。もう感涙。

番組ファンとしては「マーティンさん」「ニセコボーイズ」と並ぶ永久保存版の名作。

日本からスタートして、中国⇒オーストラリア⇒南米⇒アラスカまで、
太平洋側の火山を4年かけて自転車で巡るという壮大な旅の出発である。

これまで放送されてきた自転車旅シリーズと一線を画すのが、
その一家が、3歳と1歳の子連れであるということだ。

お父さんのオリバーさんがドイツ人で、奥さんのエレナさんがロシア人。
現在はカムチャッカに在住とのこと。この情報だけで既にノーボーダーだ。





「子どもたちが大きくなったので、ようやく旅ができる」とエレナさん。

え!?まだ、おしゃぶりを咥えてオムツしている赤ちゃんですけど。笑
破天荒な親に付き合わされて、子どもたちは迷惑だな。。。と思ったが、
彼らの旅を追っていくにつれ、そう思った自分の浅はかさに気づいていく。

オリバーさんエレナさん夫妻は、ドリーマーであると共に極めて思慮深い。
4年という旅の期間も3歳の長男が学校に入学するまでの期間である。

そして、印象的だったのが、夫妻は終始気さくで、笑顔を絶やさなかったこと。
常に自然体で前向きな家族だったのだ。



熱海での上り坂道で、荷物の重量に耐えかね自転車を押すエレナさんを
番組スタッフが、堪らず後ろから一緒に押して手伝ってあげると、

「ありがとう。でも自力で行くわ。
 自分でできないことだったら、やらない方がいいのよ」とサラリと言う。

ついには転倒するが、それでも起き上がって前に進む。

「無理」ではなくて、できることはやるし、できないことはやらない。

旅の途中、1人で登山したオリバーさんに番組スタッフが、
「お子さんが大きくなったら一緒に登山したいですね?」と言ったら、
「子供たちが行きたいと言ったら、喜んで一緒に行くよ」と言う。

「やってほしい」じゃなくて、やりたいのなら応援する、である。

子どもたちに対して深い愛情を感じるとともに、いろんな場面から、
小さくても子どもたちの自立性や主体性を尊重しているのがわかる。

それが単に「子育て」ということだけでなくて、
親である自分たちにとっても必要であることのように思えた。

そんな彼らに密着して、取材スタッフも感化されていくのがよくわかる。
取材されるYouと取材スタッフの距離感。その程よい近さがこの番組の魅力だ。

キャンプでのシーン、1歳の赤ちゃんがソーセージにパクつくのを見て、

「あ!(ソーセージ)調理済みだったか、良かったー」と
安堵して呟く取材スタッフの思いやりが気持ち良い。

取材VTRの最後のシーン、番組スタッフとの別れ際に、
夫妻が幼い子どもたちを連れて旅する理由を明かす。

「この旅が小さな子供たちを変えていくのは確かです」

「異なる世界や異なる人々がいる事を知って
 思いやりのある優しい人間になってほしい」

そして、最後に刺さった言葉はこれだ。

「旅をしている間、全てが順調ではありません。
 もし問題が起きたらいつもこう言うんです。
 『お茶でも飲んで落ち着きましょう』って
 完璧じゃなくてもいいんです。それが人生だから。」

この言葉が彼らの素直な生き様として聞かされるのだから、何倍もの強さで響く。
何だか勇気づけられたようにも思えて、思わず胸が熱くなった。

ホントに素敵な家族だった。

家族ができることは、自らの人生が豊かになることか。。。
その一端が見えた気がした。

そして、この素晴らしい物語を見せてくれた番組スタッフに感謝だ。

4月からは90分から60分の放送になるとのこと。やっぱ大変だよな。。。
引き続き、番組を応援してます。

















オール・イズ・ロスト 最後の手紙 【感想】

2014-03-23 03:08:52 | 映画


「オール・イズ・ロスト 最後の手紙」を見る。

レイトショーでついさっき観てきた。
眠いが、この余韻に浸っているうちにどうしても感想を残したい。

公開2週目だが劇場はスカスカ。
観終わって、エンドロールを小さな拍手で見送った。
この映画に感動したからだ。
ホントは盛大にスタンディングオベーションしたい気分だった。

気持ち悪いが、この映画を劇場公開で見逃さなかった自分を褒めたいと思う。

物語は、晩年を迎えた男がヨットでインド洋を航海していたところ、
事故に遭遇し、海上で漂流するという話。

登場人物一人。
劇中のセリフなし。
全編、海上でのロケーション。

海上で起こる事態の状況をカメラが静かに追い、
それに反応する男のリアクションだけで物語を紡いでいく。

沈黙で覆われた100分間なのに、余所見することを許さない緊張感。。。
展開はあくまでスリリングでドラマチックだ。

人間は、息を吸い、モノを食べ、水を飲んで、命を持続させる生物だ。
その全てが絶たれる可能性が地球上で最も高いのが「海上」であるといえそう。

タイトルのとおり「すべてを失う」主人公が、
海の藻屑となって消えるかどうか。。。。

サバイバル劇という言葉だけでは括りたくない、崇高さに満ちたドラマだ。
邦題サブタイトルの「最後の手紙」はミスリード。他者を想う感情の余地はなく、
自己と向き合う中でこそ、映画のテーマが浮かび上がるはずだ。

本作は人間が持つ「生命力」の奇跡を描いた映画だ。

ゼログラビティはフィクションをもって人間の生を謳った。
本作はその対極にあり、リアリティをもって人間の生を謳う。

ゼログラビティを観て「リアリティがない」と文句を垂れた人たちも
本作を観れば黙ることになるだろう。

監督はJ・C・チャンダー。再びやってくれた。
2012年の未公開映画ベストワンの「マージン・コール」の監督。
自分の期待をはるかに上回ってくれた。大拍手ものだ。
前作「マージン~」同様、本作もJ・C・チャンダーの完全オリジナルストーリー。
実話ベースの映画が流行る昨今において、もっと評価されるべきスタイルだ。
前作は多くの登場人物、多くのセリフが飛び交う群像劇だった。
本作は前作とはまったく異なる構成の物語であるが、
観客の視線を釘付けにさせる見事なストーリーテリングは健在。
しかもセリフなしの映画で成立させるのだから脱帽である。

本作がオスカー賞レースで完全無視されたのか全く解せない。

少なくとも、本作でたった1人のキャストであるロバート・レッドフォードの
主演男優候補からの選外はありえない結果だ。

クリスチャン・ベールよりトム・ハンクスが正解だし、
ブルース・ダーンより本作のロバート・レッドフォードが正解だろう。

76歳にして挑戦者として本作に臨んだロバート・レッドフォードに敬服する。
言葉を奪われた時、役者としての真価が問われる。
ロバート・レッドフォードは本作でその答えを出してくれたかのようだ。
記憶に残る「名演」の一言に尽きる。

ロバート・レッドフォード演じたキャラクターに名前がない。
エンドロールでその役名が明らかになるが、それを観て余韻がさらに深まる。

「ゼログラ」同様、映画の可能性をまた1つ押し広げた映画だと思う。
「次代に残すべき名作」と胸を張って言いたい。

【95点】

ローン・サバイバー 【感想】

2014-03-21 23:57:53 | 映画


映画「ローン・サバイバー」を観る。
言葉を失った120分。

戦争映画としては「プライベート・ライアン」以来の衝撃だ。

今日は春分の日。午後からの休日出勤前に朝一で観に行く。
公開初日。客席はオジさんで埋めつくされ、劇場内に加齢臭が漂う。
男臭い映画とはいえ、先週観た「アナと雪の女王」との客層の落差が凄い。
隣のオジさんの呼吸する鼻息がイチイチ荒く、参っていたが、
映画が始まると、その鼻息を忘れるほど没頭してしまった。

本作は2005年、アメリカ軍によるアルカイダ殲滅作戦の中で
実際に起きた悲劇的な事件を映画化している。

タリバン幹部の居所を偵察しに行ったネイビー・シールズの4人が、
ある判断を下したことで、完全に孤立し、タリバン兵200名の袋叩きに合うという話だ。

『壮絶』。
この映画を一言で表現するならば、この言葉を選ぶ。

ありがちなアメリカ愛国主義を唄った映画ではない。
勧善懲悪を娯楽作として魅せた映画でもない。

奈落の底に突き落とされた弱者が這い上がり生き延びようとする姿を、
リアルに、そして鮮烈な筆致で描いていた映画だ。

その弱者というのがネイビー・シールズという特殊な人間たちだ。

オープニングが巧い。
ネイビー・シールズになるための訓練を追った実際のドキュメンタリーが流れる。
手足を縛られた状態で水中に落っことされたり、失神者続出の、
死ぬギリギリのところまで追い込んだ鍛錬が繰り返される。
屈強な訓練生たちが涙し、震える。その姿を見てビビる。
並外れた体力とともに、強靭な精神力が備わる過程を見せつける。
脱落する者は後を絶たず、残るのは0.5%とのこと。
「精鋭部隊」というより「超人部隊」という印象を持った。

また同時に、その過程で培われるのは徹底した仲間意識だ。
これはネイビー・シールズに限った話ではないのだろうけど、
仲間同士の堅い絆が、戦場において大きな力となる。

この前提を観る者に植え付けたことで、
以降のドラマ展開、アクション描写がスンナリに入ってきた。

激しい戦闘シーンに一切のためらいがない。
4人のタイミングに関係なく、銃弾、ランチャーの雨が降り注ぐ。
追い込まれた先には岩肌の絶壁が待ち受け、転がり落ちるしか道がない。
誰が生きて、誰が殺されるなんか、予測不能。
戦場において死は突然訪れるもの。その生々しさを見事に活写している。

4人を演じたキャストの熱演よ。。。。ナイスキャスティング!
マーク・ウォールバーグ、テイラー・キッチュ、
ベン・フォスター、エミール・ハーシュの4人。

いずれも過去作から実証されているように
自らを追い込むパフォーマンスが抜群に巧い演者たちだ。(テイラーは違うか。。。)

ベン・フォスター、エミール・ハーシュは言うまでもなしの巧さ。

マーク・ウォールバーグは、どんどんイイ役者になるな。。。
極限の状態にある人間でしか出せない生命力と狂気を見事に発している。
ラストのクダリとか、グッときて涙ぐんでしまった。。。

監督はピーター・バーグということで驚く。
2012年のワーストワン映画「バトルシップ」では
贅肉たっぷりの醜態を見せる演出だったのに、まるで別人のようだ。
ひたすらシャープな映像描写に終始圧倒されてしまった。

終盤から、アメリカ軍 対 タリバン兵という構図に、
反タリバン派の人たちが加わったのが、現実性を捉えていて良かった。

それにしてもあのアクションは一体どういうふうに撮影したのだろう。。。
メイキングが見てみたい。とりあえず凄い映画だった。

【75点】

アナと雪の女王 【感想】

2014-03-15 20:10:52 | 映画


2014年の第一号ホームランは「アナと雪の女王」。

「至福の時間をありがとう」と言いたい。

笑って、興奮して、感動して、幸せな気持ちになる。
これぞディズニー映画の真骨頂。万歳。

ディズニー映画史は勿論のこと、
ミュージカル映画史にも新たな金字塔を打ち立てた傑作。

本編が上映される前に「ミッキーのミニー救出大作戦」が上映される。
これが実に見事。その発想力にのっけから驚く。本編への期待が高まる。

本編が始まって、まず耳に入ってくるのが大音量の歌曲音楽。
「この映画はミュージカル映画なんだな」と気づく。

登場するキャラクターを見て、CGの滑らかさに驚く。どんどん進化してる。
アニメーションの質感だけではない、細かい「間」を感じる動きにも驚く。
クリストフがアナの肩に手をかけようとするが、ためらってしまうシーンの動きとか凄い。
途方もない製作過程と、練りに練りこんだ演出の賜物だと感じる。

氷と雪の幻想的な光景が広がる。
寒い光景のはずなのに寒さは感じない映画だ。
昨今のディズニー映画で感じる、ダイナミックで躍動感溢れるアクションも健在。
誰も傷つかないとわかっていても、ハラハラする。興奮する。

肝心なストーリーは、新機軸のラブストーリー。
「恋愛」ではなく「愛」の形を描いている。
その描き方に現代性を感じるとともに、強い普遍性を感じる。

本作は紛れもないミュージカル映画だ。
高揚感たっぷりの歌曲ナンバーと、圧巻の歌唱パフォーマンスに酔いしれる。
「Let It Go」は名曲だが「For the First Time in Forever」もかなり好き。
演じる声優はキャラの声当てだけでなく、実際の歌唱もやってる。
上映後パンフを見て知ったが、演じた声優たちは皆ブロードウェイで名を馳せた俳優ばかりだ。

そして!gleeキャストがそこに名を連ねているのが嬉しい!!
エルサはレイチェルのお母さんで、クリストフはレイチェルの元彼のジェシーだっ!!!

アナを演じたクリスティン・ベルの演技がとてもキュート。
アナのキャラクターをより感情移入しやすいものにしている。
アカデミー賞で見たときも綺麗だったな~。

面白い映画には必ずお気に入りのキャラが存在する。
本作では雪ダルマの「オラフ」がそれに該当する。何と愛おしいのだろう。
溶けてしまう自分の運命など知らず、夏に憧れる姿がシュールに映る。
劇中、観客に笑いを提供する役割だけに留まらず、
二人のヒロインの絆の象徴として描かれているのが凄い。
やたらと鼻が大きく、決して男前とはいえないクリストフの顔立ちなど、
ディズニーってキャラの個性の作り方がホントに上手いなーと感心しきり。

置きにいったユーモアも外すことなく、綺麗に笑いに変えてみせる。
失笑知らずの稀な映画だ。

ラストの大団円で胸がいっぱいになる。
エンドロール後のオチを観て、さらに幸せな気分になる。

惜しむらくは3Dで観てみたかったこと。
隣のIMAXで上映中のロボコップよりも、本作をIMAXで上映すべき。

観たのは公開初日の昨日で、会社帰りのレイトショーだった。
男女半々くらいの客層。これは大ヒットの予感。。。

家路に着いたのは0時近くだった。
いつもなら嫌気が差す寒風も、不思議と暖かく感じて心地よかった。

これだから映画はやめらんない。

【90点】



それでも夜は明ける 【感想】

2014-03-15 01:19:12 | 映画


第86回オスカー作品賞の「それでも夜は明ける」を観る。

オスカーを獲る前から名だたる映画賞を総ナメにしていたので、
めちゃくちゃ期待していたが、あまりハマらなかった。
「ゼログラ」贔屓を差し引いても、肩透かし感が否めない。

物語は19世紀の半ば、南北戦争前、奴隷制度廃止前の話だ。
法律で奴隷制が敷かれていた当時のアメリカにおいて、
北部の黒人の中には一部裕福な「自由黒人」がいた。
その「自由黒人」の1人である音楽家のソロモンという男が
ある日拉致されて、南部で奴隷として12年間を過ごしたという話だ。

黒人奴隷の話を扱った過去映画が数多くある中、
本作ではあまり知られていない「自由黒人」にフォーカスした点が個性だと思った。

「そんなことがあったのか」と史実を知ったことは収穫。
しかしながら「自由黒人」が起点であったところで、
白人の黒人への人権虐待を追った話であることに変わりなし。
それ以上の何かを期待するが、それを感じることができない。

特筆すべきはその歴史の様を生々しく描写した点だろうか。
『肉が裂けて血が見えるほど打て』といった「痛み」を感じる描写だけではない。
黒人奴隷が個人の所有物、あるいは資産であるという価値観を前提に
カンバーバッチ演じる主人が奴隷たちに対して思いやりを持った人格者だったり、
黒人男性を妙にかばう主人がいて、そこに同性愛の匂いを感じたり。。。
奴隷制社会という括りの中でも、黒人と白人の関係性はいろんな形があった。

目に焼き付くシーンがいくつかある。
中でも最も衝撃的だったのが、ソロモンが首を吊るか吊らないかのギリギリの高さまで
体を吊るし上げられ、それに懸命に耐える姿を長尺で映したシーンだ。
そのシーンの背景には、我関せずと黙々と普段の仕事を続ける黒人たちがいる。
今では異常に見えるその風景も、当時では自然な風景に見えたのかもしれない。

全体を通して言えることだが、起きた事態の始終を、
瞬きせず、見つめ続けるシーンが多い。それが残虐なシーンであってもだ。
だけども、何か物足りない。「シェイム」を見て以来期待していた、
スティーヴ・マックイーンの演出力はこんなもんじゃなかろうと。。。
脚本の問題かもしれないな。。。

大好物であるショーン・ホビットの撮影しかり、ハンス・ジマーの音楽しかり、
本作では彼らの個性をあまり感じられなかったのも痛い。
エンドロールを見て「なるほど!」ではなく「へー意外」だった。

助演女優オスカーを獲ったルピタ・ニョンゴが鮮烈なのは言うまでもないが、
キャストの中で最も印象的だったのは、悪役のマイケル・ファスベンダーだ。
サディスティックであると同時に、ある種の脆さを感じさせる。そして圧倒的な迫力。
オスカーは強敵のジャレット・レトに譲ったが、近いうちに彼はオスカーを獲るだろう。

プロデューサーとして初オスカーを受賞したブラピも出演していて、
彼がこの映画を作りたかった想いを、演じたキャラで体現しているようにも見えた。

原題タイトルにもなっている「12年」という歳月。
その長さがラストシーンでようやくわかる。

これを巧さと見るか、物足りなさと見るか。
自分は後者だった。

特別な映画として受け止めることができなかった。

あらゆる意味で、今年のオスカー作品賞は「ゼロ・グラビティ」が獲るべきだった。

【65点】

ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅 【感想】

2014-03-14 01:05:01 | 映画


アレクサンダー・ペインの新作「ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅」を観る。

「ふたつの心~」という邦題のサブタイトルが一瞬うるさく感じたが、
映画を観終わって、これ以上でもこれ以下でもない、言い得て妙なコピーだと思った。

ロードムービーの佳作。観たあとの余韻が気持ち良し。
全くの別物だが、ちょっと「レインマン」に似てるなー。

物語は100万ドルの賞金が当たったと思い込んだお爺ちゃんが、
その賞金を受け取るために息子と一緒に何百キロと離れたネブラスカに向かう話だ。

全編モノクロ。

白髪をハゲ散らかし、上背のある体を不器用に揺らし、
広大なアメリカの大地を背景に、ノソノソと歩く姿に言いようのない哀愁が漂う。
アレクサンダー・ペインがモノクロで撮りたかった意味が次第にわかってくる。

人は老いる生き物だ。
老いて年をとった数だけ人生を重ねる。
その人生には、若輩者たちには想像をしえぬ歴史があったりするものだ。

本作の主人公のお爺ちゃんがそうだ。
大酒飲みで、気難しく、息子をはじめ、家族から疎まれる存在。
明らかな父親の妄想に対して「気が済むなら」と仕方なく同行した息子が、
その道中で知られざる父親の過去と、賞金に執着する真意を知る。

「ホッコリ感動」という言葉がしっくりくる。

話の顛末に、アレクサンダー・ペインの暖かい人間性を本作でも感じる。
時に人生の惨さを静観するのだけれど、やっぱ人の人生を肯定的を捉えている。
当たり前だけど、人の人生にドラマあり。と強く感じる。

主人公の妻(お婆ちゃん)を演じたジューン・スキップが可愛かった。
顔がまん丸なのに、言葉がやたら辛辣で楽しい。本作のスパイスとして効いている。

終始モノクロで穏やかな映像に寝不足の自分は何度も睡魔に襲われたが、
DVD化されたら、もう1回見たいと思う。

【70点】

第86回アカデミー賞が残念だった件。

2014-03-12 02:29:24 | 日記
第86回アカデミー賞授賞式から1週間以上経った。
毎年この頃はまだその余韻に浸っているのだが、今年は別。

今年の授賞式は異常につまらなかったからだ。(授賞結果には異議なし)
1年の最重要イベントとして勝手に位置づけているのでダメージが大きい。
あーーー文句を言わないと気が済まない。

で、吐き出す。。。。

司会のエレン・デジェネレスが大きな元凶。前回も面白くなかったけど今年もやっぱり面白くなかった。彼女はナルシストなのか。勝手にはしゃいで、「えっへんどうだ、面白いだろ」と言わんばかり。女版明石家さんまっぽい。全米で人気のある司会者か何か知らないけど、そんなのこっちはどーでもよいですから。映画を祝う祭典なのに映画の内容はそっちのけ。映画スターをいじって笑いを取れるのは彼女のキャリアがなせる技だと思うけど、ただイジり倒して終わっただけ。奇をてらい過ぎてスベってる。ピザのクダリに長尺を使いすぎ。その趣向に斬新さを感じたが、その後のしつこさに閉口した。飲み物がなくてピザを配られた俳優陣も喉が渇くだろうに~。彼女のキャスティングはこれで最後にしてほしい。

授賞式の演出もエレン・デジェネレス同様、映画への愛が感じられなかった。今年の授賞式のテーマは「ヒーロー」だったらしいが、「誰でもヒーローになれるぜ!」といったありふれたメッセージが、つまらない紹介VTRを作った。毎年楽しみにしている映画スターたちによるパフォーマンスは皆無。歌曲パフォーマンスだけで終わる。2013年の映画を振り返るような趣向もなく、オスカーノミニーたちを讃えるような趣向もない。ないないづくしにガッカリ。

以上、文句。以下に、他感想。

・レッドカーペットで一番輝いていたのはルピタ・ニョンゴ。
・レッドカーペットでの一幕、ブラッドリー・クーパーとジョナ・ヒルは仲良し。笑
・ジェニファー・ローレンスとニコラス・ホルトの交際が順調のようで嬉しい。
・ジャレッド・レトはお母さん想い。そのお母さんがやたら綺麗だった。
・授賞スピーチ、授賞した本人もわかってたみたい、スピーチがやや周到。
・そんな中、ルピタ・ニョンゴのスピーチは彼女の人柄が出ていて良かった。
・スパイク・ジョーンズの脚本賞に拍手。おめでとー!

・まさかの豪華スター集合写真に会場がどよめく。
 ポイントは左上で見切れたジャレッド・レトと、右下のベスポジにいるルピタ弟(一般人)。


・「アナと雪の女王」の「Let It Go」を歌った人、gleeのレイチェルのママだった!!
 「Let It Go」を何とか歌い切ったけど。。。。やっぱ難しい曲なんだなー。
・ベストパフォーマンスは「Over The Rainbow」歌ったP!nk。凄い歌唱力。

・ジョン・トラボルタの植毛、仕上がりは上々。
・ポワチエ、毎年オスカーに出まくってる。今年はスピーチも鈍い。
・冴えない授賞式を反映してか、オオトリ作品賞のプレゼンターがウィル・スミス。
・スティーヴ・マックイーン 、作品賞でのスピーチが想定外につまらなかった。

・追悼トリビュート、最後を飾ったフィリップ・シーモア・ホフマンの死を未だ受け入れられず。

・ギャツビー~、美術賞2冠だったが、主役のレオはスコセッシを気遣ってか無反応。
・ゼログラの授賞ラッシュに穏やかに微笑むサンドラが素敵。
・アルフォンソ・キュアロン、サンドラを「映画の魂だった」とスピーチ。これ以上ない賛辞。
・結果はわかってたけど、作品賞はゼログラが取るべきだった。


ホビット 竜に奪われた王国 【感想】

2014-03-09 15:48:39 | 映画


ロードオブザリング(LR)の前日譚「ホビット」の2作目を観る。

やはり、別格のファンタジー。好きなものは好き。
監督ピーター・ジャクソンのサービス精神が満載だ。

個人的には前作(1作目)のほうが好きだが、
それでも、こちらの期待を大きく上回ってくれる。

前作からドワーフ族たちのドラゴン(「スマウグ」)から宮殿を奪還する旅がスタート。
その続きとなる本作では、ドアーフ族と遺恨を残すエルフ族がいよいよ登場。
さらに、中つ国のもう一つの住人「人間」も加わり、ようやくスクリーンの画が華やぎ出す。

そのキャラの登場に合わせ、エルフの里⇒人間の里⇒ドアーフの里と、景色も移ろう。
リアル、フェイク関係なく、いずれも息の飲むほど美しく雄大だ。

オークたちの襲来を中心に旅路の途中に起きる多くのピンチを、
創造力豊かなアクションで切り抜ける。
ハラハラドキドキというより、その魅せ方が楽しい。

良くも悪くもアトラクション的な仕上がり。
前作から同様、LRシリーズにあったようなドラマはほぼ皆無。
強いていうならドアーフ族たちの郷愁くらいか。。。
同じピーター・ジャクソン映画だが、LRとは異なる映画という割り切りが必要だ。

そんな感じもあり、エルフ族の登場があっても、
中盤までは正直あまりノレなかった。
だけど、終盤のスマウグとの戦いで一気にテンションが上がる。

いやー凄いのなんのって。。

まず、スマウグのカリスマ性を感じる強烈な存在感。
「ドラゴンってしゃべれんのかい!」とツッコミも入れたが、
想定外に聡明なキャラで一気に引き込まれた。非常にカッコいい。
スマウグを演じたカンバーバッチの熱演によるところも大きいだろう。
ラストの「ダーーーーイ!!!」の雄叫びにシビレた。

にしても「シャーロック」の名コンビがドワーフの宮殿で再共演するなんて。笑

そして、ドワーフたちとスマウグの戦いが秀逸。
ドラゴンとの力の差を埋められないドワーフたちは、
彼らの勝手知ったる宮殿内にある溶鉱炉を使って反撃する。
ドワーフは「鍛冶」を日々の生業にしているので、そのアイデアが面白い。
火を噴きまくって大暴れするドラゴンのダイナミズムも手伝い、夢中になる。

完全に「次回に続く・・・」の終わり方だったが、
あまりにも充実していたため物足りなさはなかった。

3作目の続編。あの後の展開だと、エライことになるだろう。
来年か。。。今から公開が楽しみだ。

【80点】


第86回アカデミー賞が終了した件。

2014-03-03 14:56:00 | 日記
第86回アカデミー賞がついさっき終わった。

昨年の反動からか、予想通り完全ノーサプライズの受賞結果。
以下その結果。

 作品賞 それでも夜は明ける
 監督賞 アルフォンソ・キュアロン(ゼロ・グラビティ)
 主演男優賞 マシュー・マコノヒー(ダラス・バイヤーズクラブ)
 主演女優賞 ケイト・ブランシェット(ブルージャスミン)
 助演男優賞 ジャレッド・レト(ダラス・バイヤーズクラブ)
 助演女優賞 ルピタ・ニョンゴ(それでも夜は明ける)

 脚本賞 her 世界でひとつの彼女
 脚色賞 それでも夜は明ける
 撮影賞 ゼロ・グラビティ
 編集賞 ゼロ・グラビティ
 美術賞 華麗なるギャツビー
 衣装デザイン賞 華麗なるギャツビー
 メイキャップ&ヘアスタイリング賞 ダラス・バイヤーズクラブ
 視覚効果賞 ゼロ・グラビティ
 録音賞 ゼロ・グラビティ
 音響効果賞 ゼロ・グラビティ
 作曲賞 ゼロ・グラビティ
 主題歌賞 「Let It Go」(アナと雪の女王)
 アニメーション映画賞 アナと雪の女王
 外国語映画賞 追憶のローマ(イタリア)
 ドキュメンタリー映画賞(長編) バックコーラスの歌姫たち

最多受賞は予想通り「ゼロ・グラビティ」だが、編集賞まで獲って7冠だ。
これで映画館の上映期間も少し伸びるだろう。もう1回観に行こー♪

作品賞はやはり「それでも夜は明ける」。
日本での公開を授賞式直後の今週末に決めたギャガの思惑が見事ハマった格好だ。

一方で「アメリカン・ハッスル」は無冠。
可能性があると思われた美術系の賞も「ギャツビー」にもってかれた。

「ダラス・バイヤーズクラブ」の俳優賞ダブル受賞で、
映画館に足を運ぶ人が増えるといいな。

主要部門の結果が鉄板過ぎて、会場の盛り上がりも例年より冷めていたような。笑

結果は予想通りだが、「希望」と「予想」がほぼ一致していたので文句なし。
強いて言うなら「ゼロ・グラビティ」をもってしてもSF映画は作品賞を獲れないことか。

受賞式の構成・パフォーマンスは昨年よりもつまらなかった。
その文句は、別記にする。






第86回アカデミー賞 直前予想。

2014-03-02 23:55:19 | 日記
第86回アカデミー賞授賞式の開演までいよいよ12時間を切った。

自分にとって1年の中で最も重要なイベント。

明日は代休。この日のために仕事を頑張ってきた。
昨年のアカデミー賞はセスの司会で最高だった。
今年の司会はあの女性タレントなんだよな~、あんまり期待できず。

しかし、今年の賞レースは自分が好きな監督、
俳優が栄光に輝く瞬間を目撃できそうで楽しみだ♪

以下、直前予想。今年の予想は例年以上に鉄板。

作品賞 それでも夜は明ける
監督賞 アルフォンソ・キュアロン(ゼロ・グラビティ)
主演男優賞 マシュー・マコノヒー(ダラス・バイヤーズクラブ)
主演女優賞 ケイト・ブランシェット(ブルージャスミン)
助演男優賞 ジャレッド・レト(ダラス・バイヤーズクラブ)
助演女優賞 ルピタ・ニョンゴ(それでも夜は明ける)

脚本賞 her 世界でひとつの彼女
脚色賞 それでも夜は明ける
撮影賞 ゼロ・グラビティ
編集賞 ゼロ・グラビティ
美術賞 アメリカン・ハッスル
衣装デザイン賞 アメリカン・ハッスル
視覚効果賞 ゼロ・グラビティ
録音賞 ゼロ・グラビティ
作曲賞 ゼロ・グラビティ
主題歌賞「Let It Go」(アナと雪の女王)
アニメーション映画賞 アナと雪の女王
外国語映画賞 追憶のローマ(イタリア)
ドキュメンタリー映画賞(長編) アクト・オブ・キリング

最多は技術賞の総取りも手伝って「ゼロ・グラビティ」が5~6冠。
作品賞は「それでも夜は明ける」で堅そうだが「ゼロ・グラビティ」頑張ってほしいわ。
アニメーションは「アナと雪の女王」が圧勝だろう。

あーーー緊張してきた。。。。

ダラス・バイヤーズクラブ 【感想】

2014-03-01 12:15:19 | 映画


死を目前にした男の話だ。

「余命をどう生きるか」、そんな話ではない。

死に抗い、攻めに徹し、
見事、生を勝ち得た男の戦いの記録だ。

楽しみにしていた「ダラス・バイヤーズクラブ」は期待通りの傑作だった。

1980年代、まだエイズという病気が広く認知されていなかった頃だ。
治療方法はまだ確立されていないし、エイズ感染者は「ゲイ」という偏見が横行していた。

本作ではHIVに感染したカーボーイの男が、認可を受けていない治療薬を密輸し、
その治療薬を入手できる会員制のクラブを設立する話だ。実話ベースだという。

あくまでシリアスな話だが、ユーモアと力強さに溢れている。
そこに悲壮感はなく、かえって胸に迫るものがある。

映画の成功の大半は、キャストのパフォーマンスにかかっていると思うが、
その意味で、本作は傑出した映画だと断言できる。

主演のマシュー・マコノヒーが最高。
金に卑しく、無類の女好き。ゲイを軽蔑するカーボーイ役だ。

「リンカーン弁護士」「キラー・スナイパー」「バーニー」「ペーパーボーイ」、
「マジック・マイク」「MUD -マッド」「ウルフ・オブ・ウォールストリート」。
近年、彼が出演し、演じたキャラはどれも絶品。
今年、最も注目しているノーランの新作「インターステラー」では堂々の主演を果たす。
2011年に始まった彼の復活劇と、その後の勢いは留まること知らず、増すばかりだ。
本作での彼のパフォーマンスはその集大成といったところだ。圧巻のパフォーマンス。
健康的なマッチョ体型を封印し、病的なまでに体重を落とした役作りもさることながら、
ギラツキという言葉がしっくりくるバイタリティと、クラブを運営していく中で、
移ろいゆくキャラの心情を味わい深く演じて魅せる。
ロデオの始まりのシーン、興奮する牛の血走った目と、彼の生き様がシンクロするのだ。

そして、ジャレッド・レトが最高。
主人公カーボーイのビジネスパートナーとなる女装家を演じる。
艶かしく色気のある女装家は過去映画でも多くいただろう。
本作で彼が演じるキャラはチャーミングで、とても新鮮に映った。
登場シーンで一気にスクリーンが華やかになり、気持ちを鷲掴みにされる。
女性が持つ繊細さと明るさ。他者を思いやる優しさに溢れ、見ていて夢中になる。
ゲイを軽蔑していた主人公に対して、大きな影響を与えることになるキーパーソンを
鮮烈な存在感と共に好演してみせる。ハイヒールの収まり具合が尋常じゃない。笑
2009年のマイベスト「ミスター・ノーバディ」をはじめ、
彼の活躍に期待していた身としては、本作での彼の開花に拍手だ。

マシュー・マコノヒー、ジャレッド・レトの両名は、現在主要の映画賞を総ナメ中。
明後日、開催されるアカデミー賞予想の中でも確実予想だが、何とも嬉しい。

この2人の演技を見るだけでもリピートしたい映画だ。

【75点】



















大統領の執事の涙 【感想】

2014-03-01 04:19:52 | 映画


「大統領の執事の涙」を観る。

全米での公開時、多くの高評価を受けていたものの、
オスカー候補からはことごとく漏れた映画だ。

30以上、ホワイトハウスの執事として7人の大統領に仕えた「セシル」という男の話だ。
そのセシルの目線からアメリカの歴史の変遷を見つめる。

アメリカには黒人差別という恥ずべき時代があった。
白人が黒人を殺しても罪に問われなかった異常な時代だ。
アメリカ国内の近代史は、黒人差別との戦いの時代といってもよいかもしれない。
その時代のウネリを本作では丁寧に描きこんでいる。

このテの話は過去作でも散々擦られていて、特に新鮮味はないのだけれど、
未来への戒めとして、何度見ても噛み締めてしまう。

また、本作はホワイトハウス内でのドラマよりも、
そこから離れたセシルとその家族のホームドラマ色が強い。これは意外だった。

白人に仕え、白人から生活の糧をもらっているセシルと、
黒人差別解消に向け反政府活動に傾倒するセシルの息子との確執が描かれる。

目の前にある黒人差別に目をつむり、白人に迎合するように見えたセシルも、
執事として大統領たちからの信頼を勝ち得た結果、黒人の地位向上を体現するのだ。
生き方は違えど、セシルも息子と同様に時代に戦っていたことが浮き彫りになる。
なかなかのストーリーテリングだ。

監督はリー・ダニエルズ。彼にしてはやや平凡な映画を作ったという印象もある。
いつものスパイスがもう少し欲しかったな。
ちゃんとした話で濃い内容なのだけれど、個人的な趣味もあってか、
この長い大河ドラマがやや冗長に思えて、何度か睡魔が襲った。

セシル演じたフォレスト・ウィテカーの熱演が光る。
オスカー候補から外れたのは作品のインパクトが薄かったからかも。

彼の妻を演じたオプラ・ウィンフリーの助演ぶりがRotten等で評価されていたけど、
そんなに印象に残らなかった。オスカー候補から外れたのは順当か。

「執事」という馴染みのない仕事を本作で知ることができた。
「部屋の空気になること」、なるほどー。

【65点】





ラッシュ/プライドと友情 【感想】

2014-03-01 02:15:21 | 映画


仕事で死にそうだった2月。平日は終電帰り。休みは3日だけ。しかも大雪。
休日出勤の帰りにようやく映画にありつく。ホント最悪だった。

で、溜まっていた映画の感想を残す。

ロン・ハワードの新作「ラッシュ/プライドと友情」を観る。といっても4週間前。。。

期待が大き過ぎた感じはあるけれど、間違いなく良作。
レースシーンがモノ凄い。それだけでも観る価値ありだ。
この興奮は映画館でないとダメだ。

本作は1970年代、F1でライバル関係にあった実在の人物、
ジェームス・ハントとニキ・ラウダの競い合いを描いた物語。

生き方もレーシングスタイルも異なる2人の個性を
脚色によって対照的に際立たせたようだ。全然アリ。
2人の関係がよりドラマティックに映える。

「人間」対「F1レース」という構図よりも、2人のライバル関係に焦点を絞っている。
ここの描き方に評価が分かれそうだが、個人的にはやや肩透かしを喰らった印象。

死と隣合わせというF1レースに挑む男たちの性をもう少し魅せてほしかった。
凡人にはおよそ図れない価値観がそこにあるのだろうけど、
本作では終始共感できる内容に終わっている。

とはいえ、2人の人物描写は丁寧だし、脚本も外していない完成度。
そして、レースシーンが凄まじく圧倒される。これだけで満足。

技巧派ロン・ハワードの持てる映像テクニックを余すことなく魅せられた感じ。
ハンス・ジマーの音楽と相まって、テンションMAXだ。

F1レースをテレビで観ても、あまりスピード感を感じないのだが、
本作での映像を観て、とんでもないスポーツなんだと実感する。

惜しむらくはラストのレースシーンが意外なほどあっさりだったことか。

「マイティ・ソー」を観た5分後に観たが、同主演のクリス・ヘムズワースに違和感はなかった。
マッチョな「ソー」に対して、本作ではスリムな体型になっていた。
クリス・ヘムズワースは出る映画に恵まれているなーとつくづく思う。

ダニエル・ブリュールもハマっていた。
久しぶりに「グッバイ、レーニン!」を観たくなった。。。。

【65点】