から揚げが好きだ。

映画とサウナ。

フューリー 【感想】

2014-11-29 16:42:37 | 映画


昔からの疑問がつい最近解消された。戦時中、戦闘機や戦艦が爆撃する映像で、
鉄の塊である弾丸がビーム光線のように発光して弾道を残すことである。
調べたところ、撃ち手がその弾道を確認できるように、
弾丸に曳光物が含まれていることがその理由らしい。
映画「フューリー」の予告編を見て調べずにはいられなかった。

で、ブラピの新作であり、デヴィッド・エアーの新作である「フューリー」を観た。
前評判に違わぬ、凄い力作だった。

第二次世界大戦の末期、ドイツ軍陣地にわずかな戦力で突っ込むアメリカの戦車部隊を描く。
主要キャラは同じ戦車に乗り込む5人の兵士だ。広くない戦車の中で、
大の大人が5人も寝食を共にするということにまず驚いた。戦車の中でオシッコもする。
戦車は銃弾を通さない鉄板に覆われた屈強な砦であるとともに、逃げ場のない巣箱だ。
その戦車ならではの強さと脆さが、観る者のスリルと恐怖に転化していく。
死と隣合わせになる状況を共有する仲間たちの絆が強固になっていくのは必然である。

本作で描かれる戦争での殺し合いは、「やったらやり返す」という憎しみと、
「やらねばやられる」という自己防衛の元に成り立っている。
「望郷」あるいは「愛国心」などという綺麗な大義は排除されている。
状況は、数々の仲間を殺したナチスという存在が目の前にいるというだけであり、
彼らを見つければ「殺す」あるいは「苦痛を与える」 という選択肢しかない。
「生き返らないように弾をぶち込め」。良心が失われた世界が広がる。

そんな中、ローガン・ラーマン演じる新人兵士が、ブラピ演じる隊長の戦車隊に加わる。
相手が誰であれ同じ人間を殺すことを頑なに拒み、
「いっそ自分を殺せ」と嘆願する新人兵士の姿が観客側の視点と重なる。
しかし、戦争は人を変えることが容易だ。度重なる修羅場を経験する中で、
その良心はすっかり曇り、人を殺すことを「最高の仕事」と言える兵士になる。

時代設定が「大戦末期」というのがポイントだ。
アメリカ軍の攻勢にナチス軍が息絶え絶えになっている状況である。
戦力不足により戦闘に加わらない自国民を殺すナチス、
わずかな物資と引き換えにアメリカ兵に体を売るドイツ人女性など、
あまりイメージできなかった事実が突き付けられ、胸が痛んだ。

言わずもがな、戦闘アクションは想像以上の迫力だった。
戦車による重量級の爆撃戦が繰り広げられるが、
人間の肉体をいとも簡単に肉片にしてしまう瞬間が躊躇なく描かれる。
その描写は凄まじく、敵、見方に関係なく平等に描かれる。
この戦いに「英雄」も「正義」も存在しないことに気づく。
娯楽作として「血湧き肉躍るアクション」と面白がることもできるのだろうが、
戦場に横たわる虚しさを前に、そんな余裕は自分には全くなかった。

1つ、どうしもて引っかかったシーンがある。
新人兵士とドイツ人女子の急展開なロマンスだ。あそこはプラトニックに描いてほしい。
兵士として「女を知る」過程は必要だったのかもしれないが、
あの状況では絶対にあり得ないので、ドイツ側の感情がないがしろになる。
逆に、ラストでのドイツ人兵士がとった行動の描き方が誠実であり、
余韻として残っただけに勿体ない。

主要キャラ5人のキャスティングは見事にハマった。
4人の部下たちの命を預かる隊長を演じたブラピの圧倒的な存在感。
「狂った男」と揶揄されながらも、戦争の虚しさを誰よりも感じる男の悲哀が、
逞しい背中から伝わる。新人兵士を演じたローガン・ラーマンは期待通りの熱演だった。
しかし、個人的にラーマンよりも後を引いたのは、想定外のシャイア・ラブーフだった。
何と良い面構えだろう。寡黙な中に覚悟を決めた彼の表情に何度も涙腺が緩む。
WDのシェーンこと、ジョン・バーンサルの下品極まりない言動がリアリティを感じさせた。
あと、スティーヴン・プライスの音楽がめちゃくちゃ良かった。

宣伝文句の「オスカー最有力」はイキり過ぎだが、とても良い映画だった。

【70点】

オオカミは嘘をつく 【感想】

2014-11-29 16:30:16 | 映画


そんなに彼のファンではないのだけれど、
タランティーノが選ぶ昨年のベスト映画10に選ばれていた映画、ということで観に行く。
いやはや、つまらない。。。。それよりも嫌いな映画と言ったほうが適当かも。

女子の惨殺事件を軸に、犯人の疑いをかけられた容疑者と、その被害者家族、
その事件を追う刑事の3者を追った物語だ。

邦題の「オオカミは嘘をつく」が完全にネタばれ。
登場人物が3者にほぼ限られているため、「誰が犯人なのか」その回答予想が容易である。
「ミステリーではなく、サスペンススリラーとして観れば良いのか」と思うが、
その描き方がミステリーっぽくて不可解。

オープニングに引き込まれる。
美しい紅葉のなか、男女の 子どもたちが田舎の空き地で無邪気にかくれんぼしている。
その映像だけ観ていると愛らしい光景なのだが、スローモーションと音楽を巧く活用し、
不穏で不気味な空気を充満させる。その後、隠れていた女子の1人が
綺麗な赤い靴を1つ残して、忽然と姿を消すのだ。
胸騒ぎがするオープニングに、これは「傑作の予感!」と期待に胸を膨らませるが、
みるみるうちにしぼんでいった。退屈さと相まって何度も眠気が襲う。。。

キャラクターの個性を裏付ける行動パターンがルーティンで変わることがなかった。
また、中盤から加勢する爺さん含め、すべての展開が結局、予想の延長線上にしかない。

本作のテーマとして、「プリズナーズ」みないな「罪と復讐の境界線」みたいなものを感じるが、
本作にはその境界線を越えることへの葛藤が皆無で、「疑わしきは罰を」の一点張りである。
何とも共感しづらい。復讐に狂った被害者家族が際限なく、容疑者に拷問を与え続けるのだ。
エスカレートする拷問ショーは実に味気ないもので、「良い人」であり続ける容疑者を前に、
冗長さと嫌悪感だけが募る一方だ。
途中、劇場から退席する女性もいて「やっぱりそうなるよなー」と思ったりする。

展開の底が見え、嫌な予感を感じつつも、どんな結末になるのか多少期待して追っていくが、
「どうだ!」とイキったようなラストカットに軽い憤りすら感じた。
「散々見させておいて、それかよ!」とツッコむ。

イスラエル映画だ。狂った被害者家族の姿から、テロに慄くイスラエル人たちの社会的背景が読み取れる、
みたいなレビューを見たが、その解釈は寛容過ぎであり、無理があるというもの。
単純に面白くない、それで良いと思う。

タランティーノが、このバイオレンス描写だけで称賛しているということであれば、
かなりセンスが悪いと思った。

【40点】

そこのみにて光輝く 【感想】

2014-11-29 16:19:26 | 映画


新作DVDレンタル短評。

そこのみにて光輝く 【65点】
函館を舞台に社会の底辺に住み、出口のない見えない暗闇を漂う男女を描く。匂い立つような貧困とセックスの描写、役者の演技力にかけた演出など、とてもクラシカルな作り。今年のキネ旬の決算で批評家たちから絶賛されそうな映画。そんな中、自分は本作を「既視」と感じてしまった。この時代に作られたワケがよくわからず。絶望の中、一縷の光を見出すことに、作り手の想いがあるならば、終盤のシークエンスだけでは不十分。出演者のパフォーマンスは必見、それを目撃することは映画ファンにとって今年の重要課題かも。


グランド・ブダペスト・ホテル 【65点】
レンタルでようやく観る。唯一無二の映像作家、ウェス・アンダーソンの美学が頂きに達したような映画。画面の隅々まで行き渡った画作りと、クスリ笑いのユーモアでずっと楽しい。超豪華共演者たちもアンダーソン世界の住人になってしまう。これがまた楽しい。「ヒトラーの贋札」のソロビッチ役の人も端役で出ていた。事前情報をまったく持たずに観たが、想定外のアドベンチャー映画で面食らう。これまでのアンダーソン映画に比べるとややストーリーに捻りがないか。また、自宅TVで観ると、意図された画面寸法の移り変わりがいささか目障りだった。


超高速!参勤交代 【65点】
評判通りの面白さ。「走れメロス」ならぬ「走れ貧乏侍」。「参勤交代」という史実を元に、フィクションを追い風に使った痛快時代劇。江戸老中の陰謀により、とりつぶしの危機に瀕した湯長谷藩(現いわき市)。お人よしで人情に厚い藩主と家臣たち、文字通り、知力、体力を駆使して無理難題を突破するその姿に、熱をもって応援してしまう。福島訛りが温かくて心地よい(懐かしいな)。「強そうに見えない奴が強い」、そのカタルシスも加わり、お約束のチャンバラシーンもまた違った味わい。キャストがテレ朝ドラマのオールスターっぽい(笑)。藩主を演じた佐々木蔵之介もさることながら、その右腕となる家老を演じた西村雅彦が絶品、巧いなー。