から揚げが好きだ。

映画とサウナ。

ベター・コール・ソウル シーズン5 【感想!!】

2020-04-25 09:08:49 | 海外ドラマ


シビれた。シビれにシビれた。久々に正座してテレビに見入ってしまった。
ベター・コール・ソウルのシーズン5、えげつない面白さ。その完成度、脚本、演出の切れ味に酔いしれ、そのテーマの深淵に圧倒された。文句なしのシーズン最高傑作であり、本家「ブレイキング・バッド」のスピンオフとしての域を完全に脱した。いよいよソウルの世界と、マイクの世界が完全に交わり、1つの世界へと広がる。あらゆる意味で決定的なシーズンでもあり、「ブレイキング・バッド」ファンであれば必見と断言できる。

計10話。配信はNetflixだが、本国での放送はAMC。なので全話配信ではなくて、毎週1話ずつの配信。2話目まで先に見てしまったが、3話目以降は最終の10話が配信されたタイミングまで我慢、そして今週イッキ見した。もう止まんなかった(笑)。8話目と9話目については、あまりにも美しい出来栄えだったのでリピートで視聴。



前シーズンのラストで、「ジミー」から「ソウル」へ変貌を遂げた。スマートで抜け目なく、常勝の自信に満ち溢れる。これまでのジミーに感じられた迷いが全くない。「ブレイキング・バッド」で魅了した「ソウル・グッドマン」が完全に仕上がった。ド派手なスーツもキマっていて、その軽快な動きが楽しい。



ソウルのパートナーであり、彼を支え続けたキムとの関係も順調。キムは弁護士キャリアの絶頂期を迎えていて、前シーズンに続き、大手弁護士事務所で地元の有力銀行をクライアントに持つ。すべては彼女の才能と努力で築いたもの。他方で、自身の能力を「人助け」に使うことにも生きがいが見出し、空いた時間は無料弁護に費やす。仕事モードのカールしたポニーテールも可愛いし、オフのときの髪を下ろした姿も可愛い。ジミーを一途に愛し、誰にでも思いやりをもち、そして勇敢で強い。彼女への愛が深まるシーズンであり、それ自体が次のシーズンに向けたフリになっているみたいで複雑な心境でもある。こんなに素敵な女性がソウルの傍にいたのに、なんで「ブレイキング・バッド」では彼女の存在が消えていたのかと。。。お願い、彼女を殺さないでください。



ソウルの流儀は、誰も傷つけることなく結果が成功すれば、プロセスは問わない。嘘はバレなければ嘘にならない。シーズン1から描かれてきた、兄チャックとの確執の背景にあったジミーの人間性が、ソウルとして再誕したことでより肥大し洗練されたものへと進化する。その手並みは鮮やかな一方で、欺かれた人間の信用を奪うリスクをはらみ、本シーズンでは、最も信頼しているキムを巻き込む事態へと発展する。「後ろから刺したのは、私を守るためだとでも言うの?」。キムはいつでも正しく、だからこそ、ソウルの個性が際立つ。



ソウルは「チョコミント」のアイスを食べられなくなった。落としたアイスに大量の蟻が群がり、そして消える。ソウルに忍び寄る、裏の世界の闇が彼の欲望を嗅ぎ付け、飲み込もうとする前兆。こうした暗喩の使い方が本作では随所に差し込まれる。大胆で緻密なカメラワーク、影と光を操る照明効果は、キャラクターたちの心情をつぶさに拾う。映像作品としての芸術性もさることながら、徹底したキャラクターへの洞察が本作の真骨頂といえる。



キャラクターを舐めていないのだ。サブキャラを含めて馬鹿がいない。誰でも人間を見通す力を持っている。こっちが考える向こう側にキャラクターの心理、思考を配置する。気づかされ、驚き、必然の内に着地する感覚。セリフの応酬のなかに、人物間のスリリングなマウントの取り合いが見えたり、その言動の背景にあるキャラクターの感情を読み解く想像力を刺激する。このドラマのベースにあるのが、ソウルとキムの愛情であることも非常に大きい。



とりわけ、8話目の「運び屋」と9話目の「悪い選択がもたらす道」が秀逸だ。この2つのエピソードは、ブレイキングバッドを含めたエピソードを含めても10本の指に入るのではないか。700万ドルという法外な保釈金(払えるんかい!ww)を前に、ソウルがソウルたらしめる金欲がうずく。
「Justice Matters Most」から「Just Make Money」への誘い。。。。



あの「10万」でドアの前で立ち止まるシーン、ブレイキングバッドで、ウォルターがソウルを呼び止めたシーンを彷彿とさせる。ソウルは「カルテルの友人」になることに恐怖よりも興味をおぼえるが、ほんの少し足をつけた世界の、底なしの凶悪性を身をもって知ることになる。初めて見るソウルの表情が印象的だ。これまで、両輪で描かれていたソウルの世界とマイクの世界が繋がった瞬間でもあった。恐怖という新たなスパイス、そして、生死を分かつ戦いの中で発生するダイナミズムがこのドラマの引力を増幅させる。



ソウルの身におきた一連の事件。運命を共にしたマイクが決定的な言葉をソウルに返す。

 『人は皆、選択をする。その選択が道を決める。
  どんな小さな選択でも道が決まる。
  道を降りたと思っても結局は元の道に戻る。
  俺たちの道は荒野の出来事に続いていた。
  そして今のこの場所へと繋がっていた。
  それはどうすることもできない』


信じた道が、必ずしも正しい道ではない。ブレイキングバッドでウォルターが辿った道のりでもあり、本作のソウルがこれから辿る道のりでもある。



次のシーズンがファイナルになるということ。その台風の目となるのはおそらく「ラロ」である。本作で初登場となった「ナチョ」と同じく、「ラロ」のキャラクター造形も実に素晴らしい。悪党は悪党でも「ガス」とは異質の悪党であり、物事の正否をかぎ分ける鋭い嗅覚と、冷酷さの合間に見える人間性のバランスが見事で、これまでのどのキャラクターにもない魅力がある。長身でスタイルがいいため、シャツインのGパン姿のシルエットがカッコいい。次のシーズンに続くラストシーンでは完全にラロに感情移入してしまった。



ほかに、ブレイキングバッドでウォルターの義兄であったハンクが登場するなど、懐かしい場面があったりしたけど、それが添え物に映るほど、このドラマで新しく描かれた物語に夢中になった。これだけのドラマを作ってしまったら、次のファイナルシーズンは期待しかない。決して「ハウス・オブ・カード」の二の舞にならぬことを祈って。

【95点】



<↓去年に11月に訪れたソウルの事務所(まさかの大雪)>



DEUCE シーズン3 【感想】

2020-04-19 11:46:05 | 海外ドラマ


本作は青春ドラマだったんだな。映画「ブギーナイツ」と並ぶ傑作へと昇華。
最終話「夢のあと」は、自身の海外ドラマ史上でも屈指の神回。感涙のフィナーレ。本作に関わった製作陣、キャスト陣に心からの拍手を贈りたい。HBOはやっぱ凄いよ。

かつて存在したニューヨークの歓楽街「DEUCE」で、ポルノ、性風俗で生きる人々を描いた群像劇。最終シーズンと知らずに見始めたシーズン3。計8話を見終わったので感想を残す。

映画館は休業、必然的に自宅での動画視聴が増える。ネトフリ、アマプラ、スターチャンネルで海外ドラマをいろいろ見ているが、その中でも海外ドラマ「DEUCE」のシーズン3が頭ひとつ抜けて素晴らしかった。 シーズン1、2も確かに面白かったのだが、人物描写の粗さや、展開の停滞感にストレスを感じる場面もあり、そこまで夢中になれなかった。なので、このシーズン3もあまり期待してなかったのだが、見始めたら止まらなくなった。

オープニングが一新された。1980年代の記録映像を細切れにしてアップテンポな曲に乗せて猛スピードでつなぎ合わせる。刺激的でグロテスクで、時代の熱量がこの数分に濃縮する。あまりにも秀逸でカッコよくて、毎回、早送りすることなく見入ってしまった。オープニングに入るまでの冒頭寸劇も本編を象徴、あるいは伏線を孕んでおり(「ブレイキング・バット」が確立した手法)、その仕上がりは明らかに見違えている。のっけから、傑作の匂いがプンプンする。

計8話のなかで終わりまでを描くべく、展開のスピードも早い。その起伏の多さもさることながら、1話と1話の間に続いていた余韻を引きづらないのが印象的だ。それぞれの悲哀が「あった」前提で新たなエピソードが展開する。余計な描写を入れるよりも、観る人の想像力で語るほうが効果的。この余白の活かし方が見事だ。

1970年代初期、ポルノの創世を描いたシーズン1。1970年後期、ポルノの成長を描いたシーズン2。そして、今回のシーズン3では、時代を7年前進させて1985年を描く。1985年はエイズがニューヨークを襲った時期だ。本作でも多くのキャラクターの命を奪う。DEUCEの再開発の時期と重なり、奇しくもその感染拡大が再開発(浄化)の追い風となる。ニューヨークが大きく変わった時期であり、まさに「DEUCE」の終焉だった。

シーズン2からの大きな変化は、「ポン引き」たちの姿が消えたこと。かつての売春婦たちはポルノ業界で仕事をしている。なかでも前シーズンで華々しい活躍を見せていたのは童顔女子のローリーだ。ドラマ内で描かれていないシーズン2からの7年の間、女優人生の絶頂から、転落する段階に入ってきている模様。有名ベテラン女優として確固たる地位を築きながら、かつての若さはなくなっている。ポルノ女優たちの生き様、その成り立ちから末路までの人生を、このローリーというキャラクターで集約する。これまで以上に彼女の存在感が強まるシーズンだった。なので、第7話で描かれた事件はことさら衝撃的だ。同時に、彼女のとった行動、決断をすぐに理解できた。

このドラマの実質的主人公である、ヴィンセントとアイリーン。ヴィンセントは多角経営が相変わらず順調、仕事は安定期に入っている。私生活ではアビーとの「束縛しない」生活が継続する。この7年の間で最も変わらないキャラといえそうだ。道端で春を売っていた時代は今や昔、アイリーンはすっかりポルノ監督として定着している。男の抜きネタとして作るポルノ映画と、自身の創作性を満足させるためのポルノ映画。日本のピンク映画にも通じるところがあり、エロの中に芸術性を内包した作品も少なくないという。ピンク映画の出身の監督が、映画界で活躍してきたという事実もある。

アイリーンは信念の人だ。まずは創作すること、資金集めのために自身が脱ぐこともいとわない。新しいパートナー(コリー・ストール!)から出資の申し出を受けるが、一切を断る。ポルノ監督であることの誇りを失わない。創作に行き詰まり、苦悩し、立ち行かない製作工程のなか、彼女の才能がいよいよ開花していく。演じるマギー・ギレンホールが素晴らしい。脚本の真意を理解できない演者への説明の場面(かなり重要)、自身の人生を反芻しながら涙ながらに力説するシーンが圧巻だった。

ヴィンセントとアビーの恋愛感情を超えた関係。ヴィンセントがフランキーをかばい続けた兄弟愛の背景。ポルノ女優としての生き方に苦悩するローリー。アイリーンと彼女の才能を見出したハービーとの友情。ヴィンセントの落とし前を支持したマフィアの親分ルディーの男気。ポールとパートナーとの純愛。変わることで警部補に成りあがったクリス。メリッサと故郷の父との親子愛。ヅラかぶりのボビーとすっかり大人になったジョーイの懲りない親子。印象に残るエピソードが多い。

みんなしっかり年をとった。変わる者と変わらない者。時代が変わり、世界が変わる中で、その流れに順応できたものだけが生き残る。わずか3年に渡るシーズンの間で、15年の歳月を見事に再現した、視覚効果、美術、衣装やメイクも凄い。扱うテーマは刺激的なのだけど、常に愛と敬意を感じるのは、その多くを女性監督がメガホンをとっているからかもしれない。あと、このシーズンでも感じたことだが、ジャームス・フランコの監督としての手腕は疑いようがない。

本作をさらに特別なものにしているのは、最後の最後に描かれるエピローグである。時代を2019年に移し、今やその面影を残さないまでも、確かに存在した「夢のあと」を辿る。人種も、性別も、職業も、境遇も全く異なる、あらゆる人間たちを「仲間」として受け入れた「DEUCE」での日々は、彼らにとっては青春だったのではと思いを馳せる。かつての仲間たちとの「再会」が胸を締め付けた。

アメリカでもそれほど話題になっていないようだし、視聴者数も多くなさそうだ。もっと評価されてよいと思う傑作ドラマだった。

【85点】






在宅勤務が始まった件。

2020-04-08 00:17:27 | 日記
コロナで世界が一変した。いろいろ愚痴を吐いてみる。
これまで当たり前のように享受していた映画鑑賞ライフも、シネコンの週末の休業により見送りが続いている。2月上旬くらいまで、普通に友人と飲みいっていたが、今や夜間の外出自粛で、全く叶わなくなった。そしていよいよ仕事にも影響をきたし、1月に入社したばかりの会社で、明日からの一斉在宅勤務が決まった。他の会社に勤めている友人らに聞くと、かなりの遅めの対応らしいが、まさかこんな日が来るなんて。。。。5月6日までの在宅勤務らしく、今日、発表された「緊急事態宣言」の前から、社内で周知されていたことだ。周りの同僚からは「会社に行かなくていい!」そんな歓迎ムードも感じられるが(ホント)、自分はタイミング悪く、ゴリゴリに忙しいタイミングと重なってしまい、自宅での作業に大いに不安を抱えている。会社でも使用しているノートPCを自宅に持ち帰って作業するが、その他のディスプレイモニター、マウスを動かす下地(オフィスのデスクの下地)、キーボード、プリンター、イスなどの機材は使用できなくなり、大幅に作業効率が悪くなる。先週の土日に自宅での作業を行ったが、通常時のスピードの7割くらいのパフォーマンスだった。かといって、このためだけにモニターを買ったりするのは馬鹿らしいし。
クライアントとの打ち合わせも多い仕事ゆえ、メールベースだけでのやりとりでは事故る可能性がある。4月末納品の大きめの案件があるが、この状況でクライアントと調整しながら、遂行できるイメージがない。まあー何とかするしかないのだろうけど。。。社内のメンバーとの連携は、ハングアウトmeetなるもので実施、そのあたりのインフラは問題ないけれど、他部署に依頼する仕事において、ちょうど今日のこと、「緊急事態でキャパがいっぱいだから対応できません」みたいに突き返され、腹が立った。「キャパの問題ではなく、仕事がしづらいからやりたくないだけだろ・・」と、コロナを言い訳にサボる人たち増えていると思えた。
約1か月か。。。。但し、通勤がなくなるのは確かに嬉しい。

キングダム シーズン2 【感想】

2020-04-05 09:50:28 | 海外ドラマ


あぁ、日本と韓国のエンタメはいつからここまで差が開いてしまったか。危機として感じるのは、韓国が進化しているというよりも、日本が取り残されているだけかもしれないということ。同じNetflix作品でも、大々的なプロモーションをしかけた日本のドラマ「フォロワーズ」は、時代遅れ、かつ、視聴者をナメ切った醜態をさらし、本作「キングダム」は計6話というボリュームのなかでいかに視聴者を夢中にさせるか、考え抜かれた作品になっている。いや、恐れ入った。そのスリル、そのスケール、その熱量は「ゲーム・オブ・スローンズ」を彷彿とさせるほど。
いまいち、不完全燃焼だった前作シーズン1は、前菜に過ぎなかったと思い知らされる。1話目の冒頭シーンがフルスロットル。猛スピードで迫る来るゾンビの軍勢を、劣勢の男たちが命からがらに迎え撃つ。激しいアクションの最中、ゾンビを打ち倒す高揚感と、恐怖感がせめぎ合う。1話以降もスピードが落ちない。展開も早い。次シーズンへと持ち込む算段はなく、出し惜しみなく、登場キャラたちに変化を与える。宮殿ミステリーの色がさらに強まり、その中で「ゾンビ」という飛び道具が有意義に活かされる。新たなゾンビの使い方だ。俯瞰すると、後出し感の強いゾンビ設定でツッコミどころも多いが、ゾンビものの性ともいえ、落胆させるには至らない。キャラクターがしっかり魅力的に描かれているのもポイントで、主演のチュ・ジフンがカッコイイ。韓国映画のオハコである友情がしっかりオチに使われている。後日譚は少し長かったかも。とりあえず、シーズン3へ続くようなので安堵した。
【80点】

ナイチンゲール 【感想】

2020-04-01 01:47:28 | 映画


痛みと怒りが全身を駆け巡る。あの瞬間にヒロインの怨念が自身の感情と同化する。
美しい島、タスマニアにも存在した暗黒の時代。開拓ではなく侵略によってもたらされたイギリスの植民地時代は、法治ではなく暴力で成された罪なる歴史だ。本作で描かれるような悲劇は当時そこらじゅうであったのではないか。そんなことに思いを馳せながらも、この映画の味わいは歴史ドラマにあらず。図らずして隷従の身になった1人のアイルランド人女性と、1人のアボリジニー青年。2人の運命が交錯し、壮絶な追走劇が展開する。
「憎しみからは何も生まれない」なんて言葉はしょせんは綺麗ゴト。残忍の極み、その所業で全てを失ったヒロインの激情は想像に余りある。法が機能しなければ、暴力は暴力で返すのみ。ところが本作の場合、その役割を肉体的に弱い女性に充てる。単純な復讐劇にはならない。どんな結末をたどるのか。ライブ感とも違う臨場感はとても得難いものだった。
監督は本作でも肉体と精神の両輪を丹念に描く。追い込んだと思えば、実は追い込まれている心理。肉体と精神は必ずしもシンクロしない。この人間を描くアプローチが素晴らしい。重厚なドラマに同居する凄惨なバイオレンス描写に「女性監督」という枕詞が馬鹿らしくなる。ひたすら抑圧することでしか他者と交われない将校と、理解し尊重が芽生え、確かな絆を築いていくヒロインたちの対比が効いてくる。2人の旅路に果てにある浜辺の朝焼けが、絶望の闇に刺す一筋の希望に映り胸に迫った。
【80点】