から揚げが好きだ。

映画とサウナ。

サウルの息子 【感想】

2016-01-31 09:00:00 | 映画


言葉を失う。
絶望の生々しさに触れ、形容する言葉が見つからない。安易に「衝撃」という言葉を用いることすら躊躇われる。物語はフィクションだが、人が人を無造作に殺戮する凶行はほんの70年前に確かに実在した。狂気の果てにあるのは地獄。その世界を体験し、観終わってしばらく茫然とした。劇場を出た足取りが重い。

ハンガリー映画の「サウルの息子」を観た。
カンヌをはじめ、昨年の賞レースを席巻し、来月のアカデミー賞外国語映画賞も受賞確実といわれる話題作だ。「さぞ面白いのだろう」と軽いノリで鑑賞にのぞんだが、とんでもなかった。オープニングのほんの数分で絶望の鈍器で全身を打ちのめされた。人が生を乞いながらも、慈悲なき閉塞の中で死へ突き進む。。。その断末魔を目撃してしまった。

本作で初めて聞いた「ゾンダーコマンド」という言葉。第二次世界大戦下、ユダヤ人強制収容所ホロコーストでナチスに代わり、同胞のユダヤ人を死に追いやる、ユダヤ人収容者の特殊部隊の名称だ。彼らはユダヤ人の収容者の中から選抜されるが、死を免れるわけではない。しばらくその任務に従事したのち、他の同胞と同じく殺される運命にある。ナチスの目的はユダヤ人をこの世から消すことであり、そのためにホロコーストがあった。列車から多くのユダヤ人が集約的に運び込まれ、「まずシャワーを浴びて」と安心させたのち、ガス室に送り込む。扉を締め切って、苦痛と恐怖の嗚咽が聴覚を突き刺したのち、扉を開ければ死体の山ができている。床一面に広がるのは体液と血液。死体を搬出し、まだ呼吸のある者の息の根を止め、次のユダヤ人のために大急ぎで床の清掃にかかる。ガス室の稼働がいっぱいになれば、火の穴に強制的にユダヤ人たちを放り込む。そして最後に残った灰は、殺戮の証拠を残さぬために川にばらまかれる。想像を絶する地獄の世界がかつてヨーロッパに実在した。

本作の主人公「サウル」はゾンダーコマンドの1人だ。撮影カメラはラストの一部を除く全編に渡り、サウルの肉体に密着する。ホロコーストの地獄絵も、サウルの身の回りで起きる事件も、彼の半径20センチくらいの隙間から見える光景だけだ。そのわずかに見える光景すらも、ソフトフォーカスを多用し視界を霞ませている。観る者の想像力によって見えない光景を映し出す狙いだろう。カメラは俯瞰で全景を捕らえることを避け、サウルの視点を崩すことを嫌う。そのアプローチに慣れずに窮屈だった序盤から、時間を追うごとに、サウルの視点が自身の視点に変わっていることに気付く。客観ではなく主観によって観客は物語に参加する。そして劇場にいながらにして、ホロコーストの真っ只中にいることを体感させられる。

サウルはまったく表情を変えない。彼自身も遅かれ早かれナチスによって殺されることを自覚している。ナチスの命令に従い、黙々と同胞の命を奪う作業に徹している。感情を殺しているのか、感情を失っているのか、いずれにせよ絶望の世界で生きながら死んでいる人間の、リアルな反応なのだと思えた。そんなサウルに変化の時が訪れる。ガス室で殺された死体の中に自分の息子を見つけるのだ。そして、その死体が解剖室送りなることを拒み、ユダヤの方法で埋葬するために懸命する。原題のタイトルにもなっている「息子」であるが、おそらく彼が持ち出した死体は、彼の息子ではないと思われる。しかし、その事実関係は本作においてはあまり重要ではない。本作から見えてくるのは親子愛といった性質のものではなく、人間の在り方や人間の尊厳というテーマに踏み込んだものだからだ。

もはや息をしていない肉体だ。自らの生を一日でも永らえることで精一杯な収容者たちにとって、そんな死体に構っている余裕などない。死体を隠し、その死体を弔うためだけに収容者の中からラビ(聖職者)を探すために奔走する。それはナチスの命令に背く行為であり、彼の行動は周りの収容者たちを危険に晒す。サウルの行動は本来然るべきものだが、その状況下においては完全なエゴに見える。それでも、彼は取り憑かれたように息子の埋葬を諦めようとしない。サウルがそこまで埋葬に固執する理由を明確に捕えるのは難しい。人間性を維持するための行為というだけでは説明がつかず、ユダヤの信仰が深く関わっているものと考える。無信仰でありユダヤ教の概念すら知らない自分にとっては、本作を普遍的な物語として租借することができなかった。

いま、ドイツ首相のメルケルさんが頑張っている。シリアの難民問題だ。ドイツが戦後から現在に至るまで人道主義を貫いているのは、本作で描かれたような歴史の汚点を理解しているからだ。その一方で、アメリカでは「イスラム教信者の排斥」を声高に公言している人もいる。人種排斥の価値観が錯綜する現代にあって、世界の多くの人が見なければならない映画だと思う。10年以上前に自分も訪れたことのある本作の舞台だが、当時本作を観ていたら、その場で感じた空気も違っていたはずだ。

物語のラストに大きな変化が訪れる。監督のネメシュ・ラースローは悲惨なリアリティを伝えるためだけに、本作を特異な方法で描いたわけではないことがわかる。それは寓話的であり、死者たちの魂が天国へ導かれたことを意味しているようだった。

【75点】
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ザ・ウォーク 【感想】

2016-01-30 08:00:00 | 映画


2001年9月11日。当時学生だった自分は西表島のYHで住み込みでボランティアをしていた。朝、宿泊客の人たちがテレビにくぎ付けになっているのを見つけた。テレビで繰り返し流れていたのは、アメリカにある超高層ビルに飛行機が突っ込む映像だ。まるでアクション映画のワンシーンのようで、その事実は信じ難いものだった。本作の主人公であるフィリップ・プティは当時どんな思いでワールド・トレード・センターが崩れ去るのを見ていたのだろう。

今も健在であるフランスの大道芸人「フィリップ・プティ」は、1974年、ワールド・トレード・センター(WTC)のツインタワーの間を、命綱なしで1本のワイヤーの上を歩き、見事渡り切ることに成功した。その場所は地上から400メートル以上の高さにある天空。映画は、プティが綱渡りの虜となった少年期のエピソードから始まり、WTCの綱渡りに挑むまでの計画・準備の過程から、綱渡り達成後のアメリカの反応までを丹念に描いていく。

最近、「衝撃映像ナンチャラ」という番組でよく目にするのは、無許可で高層ビルの天辺にのぼり、その動画をSNSに上げてハシャいでいる若者たちの姿だ。そんな現代のユーチューバーたちと本作のプティが一線を画すのは、高層で行われる綱渡りという行為自体を「アート」として疑ってやまない点だ。注目を浴びることはその芸術活動の副産物に過ぎず、自らのパフォーマンスで完成した芸術作品を偶発的なタイミングで民衆の前に晒すことが彼の目的である。ビルの許可なしでゲリラ的に実行することが彼の挑戦の大きなポイントになっているが、「クーデター」というワードについては少し説明不足だったか。無許可で行うことの動機としてその言葉が連呼されるも、何に対するクーデターだったのか、よくわからない。このあたりは「マン・オン・ワイヤー」を見て補完するべきだったのかも。

プティの人物造形は確かにユニークで興味深いものだ。命がけの挑戦に挑むプティの感情の起伏も丁寧に描かれている。しかし、自分が本作に期待したのは一点で、それは映画体験をもって地上400メートル以上の綱渡りをどう体感させてくれるかだった。ここぞとばかりにIMAX3Dで鑑賞した。結果、高度恐怖症気味の自分をもってしても体感には至らず。2300円のチケット代がことさら高く感じられた。逆に2Dで見たほうが良かったのかな!?

想像力の問題が大きい。

昨年公開され、トム・クルーズが体を張ったアクションを披露した「ローグ・ネイション」。アクションスタントがあまりにも破天荒過ぎて、「このシーン、本当にトムがやったんですよ」の説明がないと、普通にCGで作られたアクションシーンとして片づけてしまう。そんな「ローグ・ネイション」の観客へのアプローチに対して自分は感動することができず、むしろCGで再現できるアクションをわざわざ実物でやることに価値を見出せなかった。CGと実物の垣根がわからないくらい映像技術が進歩しているのは周知の事実。その点で、マッドマックスは、あり得ないアクションシーンを繰り出しながらも、くっきりと実物の質感を感じられた稀有な映画であったと思う。

本作への印象も、この価値観の延長にある。
舞台となるWTCは9.11のテロによって崩壊し、現在は存在しない建物だ。なので、本作では全長400メートル以上の高低を完全なフルCGで再現している。プティが霧で覆われた天空のワイヤーに足をかけた瞬間、肝を冷やし、手に汗が滲んだ。そして霧が晴れ、眼下に霞む地上が全貌を現す。ここでビビリのスイッチがいよいよ入るかと思ったが、「これCGなんだ」という意識がブレーキをかけた。その後、プティは天空のワイヤー上で多くのサービスショットを見せるも、演じるジョゼフ・ゴードン=レヴィットは「きっと安全な状況でポージングをとっているだけなのだ」と勝手な先入観が邪魔してくれる。CGの進歩は人間の想像力を奪ったのか、あるいは、そもそもそうした理屈すらも吹っ飛ばすほどの映像力が本作にはなかったのか。。。映画のあらすじとは関係のないところで想いを巡らす。もちろん、映像の再現性というレベルにおいては文句なしに素晴らしい。

面白かったのはプティの挑戦によって得られたもう1つの産物だ。プティがWTCに目をつけたのは、WTCがまだ建設中だった頃であり、綱渡りの実行はWTCがオープンする直前でなされた。プティの挑戦によってWTCの存在が世界中に知れ渡ることとなり、劇中のセリフのとおり、プティがWTCに命を与えた格好となった。彼の挑戦はあくまで違法で処罰の対象となるべきところだが、アメリカの司法が彼に下した処罰や、WTCのオーナー会社が彼に与えた恩赦がとてもオシャレで、アメリカも彼の挑戦を讃えた結末になっている。その後、WTCはアメリカ経済の中核をなすビジネスビルとなり、アメリカの栄光の象徴として君臨したのだ。それが9.11によって崩れた。ラストのカットから、本作が失われたアメリカ、失われた栄光へのレクイエムのようにも感じ取られた。

【65点】
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白鯨との闘い 【感想】

2016-01-29 08:00:00 | 映画


昔は燃料となる油は陸ではなく海にあった。
ロン・ハワードの新作「白鯨との闘い」は、かつて命がけで海での「産油」に挑んできた名もなき男たちを描く。予告編の内容からパニック映画をイメージしていたが、歴史ドラマとしての印象が強く残った。「捕鯨」という行為を通して、鯨、ひいては海という自然に対する畏怖の念がしっかり描かれている。アメリカでの評判はイマイチだったので期待していなかったが、普通に見応えのある映画だった。

ときは1800年代初頭。「電気」はもとより「石油」という概念すらなかった時代で、夜の街に火を灯すのは動物脂である鯨油だった。現在の原油市場と同様に、鯨油の取引が盛んに行われており、港街に住む裕福な人間たちは捕鯨船に投資することで利益を得ていた。階級社会が根付いていた時代にあって、捕鯨船に乗り込む船長は家柄などのコネで決められることも多かったようだ。クリス・ヘムズワース演じる主人公の船乗りは、そんな時代の被害者といえる。これまで捕鯨という仕事で多くの功績を上げ、船のオーナーである名家の人間たちに十分な利益を与え「次は船長にしてやる!」という約束を取りつけていたものの、「やっぱ家柄だよ」の一言であっさり約束を破棄される。身籠の妻を持ち、それでも職にありつかなければならない彼は一級航海士としての立場に甘んじ、「家柄」で選ばれた見ず知らずの新米船長のサポートに徹することになる。有能で部下からの人望も厚い主人公と、傲慢で海を知らない船長との「対立」という構図が浮上する。

その後の展開で予感は的中するのだが、船上で繰り広げられる人間同士のいざこざは次第に霞んで見えてくる。広大な海の上では人間なんてちっぽけなもの。木の寄せ集めで作った小舟を人力で必死に漕ぎ、母船のスケールさえも裕に上回る巨大なクジラを槍とロープだけで仕留めるのだ。まったくもって無謀。そして命をかけたギャンブル。昔はこうした捕鯨風景が当たり前だったのだな~と想いを馳せる。巨大なクジラを恐怖とみなさず、獲物として追いかける男たちの逞しさに圧倒される。だが、そんな男たちの生き様が「過信」あるいは「驕り」として決定づけられることになる。タイトルにある「白鯨」の登場だ。

白鯨がとにかくデカい。そして攻撃的。人間たちの標的にされる鯨たちにとっては「守護者」であり、人間たちにとっては「悪魔」。人間たちを追いまわすほどの凶暴性は、おそらく鯨の生態に合わないフィクションだろう。しかし、人間たちの非力さを知らしめる象徴としては効果的な描き方だ。巨大な鯨のボディーアタックによって船は木っ端微塵になる。人間たちの命を奪うのは鯨による直接的な殺傷ではなく、砕け散った船の木片だ。あぁ、人間はなんと小さくて脆い生き物なのだろう。。。そんな人間たちは他の生き物たちの命を奪うことで文明を発展させてきた。その歴史は自然の摂理を大きく歪めてきたものであったと実感する。船長が発した「人間たちが望むように地球を支配せよ」なんて誰が言ったのか。

自然と人間の関係性。

だが、本作の主眼は別のところにあった。予想だにしなかったサバイバルが登場人物たちを待ち受け、本作が伝えようとするテーマはそこにあるようだ。そのテーマが残念ながら少々肩すかし。本作は、白鯨との戦いから生還した男の回想談として語られる。男が堅くなに秘密にしてきた真実を明かすミステリーにもなっていて、物語をけん引する役割も担っているのだが、その答えがあまり面白くない。面白くないというのは不適切だが、隠され続けてきた真実が、普通に共感できてしまう範囲のことだった。当時の捕鯨という仕事から、現代から離れた価値観を見出していただけに、肝心なところで拍子抜けしてしまい残念だった。

本作を楽しみにしていた理由は、豪華なキャスティングだった。主演のクリス・ヘムズワースは主役の器として堂々たるもの。お目当てのキリアン・マーフィーやベン・ウィショーも役柄を好演。そして「インポッシブル」以来、その動向に注目しているトム・ホランド、やっぱり彼は映画に愛されているなーとしみじみ。命がけのサバイバルを描くために、キャストたちが減量によるガチな役作りをしているのにも目を見張った。視覚効果と編集テクを巧みに操り、海上で起きる戦いの終始を迫力たっぷりに描き出すロン・ハワードの演出手腕もさすがだ。

白鯨と主人公が最後に対峙したシーンが味わい深い。力でねじ伏せることしか知らなかった人間が、恐怖ではなく理解によって自然と疎通できた瞬間だったように思う。

【65点】
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2016年注目映画10選。

2016-01-24 15:53:47 | 気になる映画
今年、個人的に注目している洋画タイトルを10個ピックアップしてみた。
上から、期待している順。()は日本公開予定日。

1. レヴェナント:蘇えりし者(4月22日)


2. ウォークラフト(公開時期未定)


3. スポットライト 世紀のスクープ(4月)


4. X-MEN:アポカリプス(8月)


5. スーサイド・スクワッド(公開時期未定)


6. デッドプール(公開時期未定)


7. ルーム(4月8日)


8. ボーダーライン(4月9日)


9. 高慢と偏見とゾンビ(公開時期未定)


10. バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生(3月25日)


マーベル映画ファンとしては、「キャプテン・アメリカ シビル・ウォー」を入れて然るべきなのだが、キャプテンとアイアンマンの「身内喧嘩」を予告編で「どうだ!意外だろ?!」と見せられても全くテンションが上がりません。劇場には足を運びますけど。

昨年は往年の大ヒットシリーズの続編のオンパレードだった。かなり強引な言い方をすると王道的なエンタメ作が多かったが、今年は変形型でなかなか異色作が多い。

まず2番目に上げた「ウォークラフト」。先日亡くなったデヴィッド・ボウイの息子であり、これまでの作品で抜きん出た才能を発揮してきたダンカン・ジョーンズが、オンラインゲームの実写映画化に挑む作品。人間、ドワーフ、エルフたちが戦う世界をCGのキャラクターを多用して映像化している模様。コケそうな匂いも多分にするが、ダンカン・ジョーンズがどう料理してくれるのか非常に気になっている。

そして、「スーサイド・スクワッド」と「デッドプール」。「スーサイド・スクワッド」はDCコミックのヴィランたちが大集合する映画で、予告編の仕上がりが素晴らしく傑作の香りが匂う。主演のハーレー・クイン演じるマーゴット・ロビーの仕上がりにも注目。「デッドプール」の予告編では早くもレッドバンド版が登場し、そのバイオレンス描写や中国での公開禁止が話題になっている。両作とも真っ当なヒーロー映画になっているとは思えず、楽しみである。

「高慢と偏見とゾンビ」は、2005年にキーラ・ナイトレイ主演で映画化もされた「プライドと偏見」(原作「高慢と偏見」)に、ゾンビを掛け合わせてしまった、まさかのホラーアクションムービー。予告編のテンションも極めて高く、ドラマ「ダウントンアビー」や映画「シンデレラ」のリリー・ジェームズが、クラシカルな衣装そのままにゾンビを倒しまくるという内容。

「バットマン vs スーパーマン」はある意味、邪道の極みか。スーパーヒーロー同士を戦わせるために何の意味があるのか、予告編を観る限り不明である。両社のパワーバランスを保つためにバットマンがアイアンマンみたいなロボットスーツを着ているのが嫌な予感。期待よりも不安が大きい。

自分の好きな監督・俳優の新作にも注目で、来月開催されるアカデミー賞を賑わすであろう、イニャリトゥ監督&ディカプリオが夢のタッグを組んだ「レヴェナント:蘇えりし者」、トム・マッカーシー監督の「スポットライト 世紀のスクープ」、ブリー・ラーソンが主演女優のオスカーを獲得するであろう「ルーム」、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の新作「ボーダーライン」。公開ラッシュを迎える4月が待ち通しい。

夏以降の話題作の公開は、これからといったところか。
日本公開が決まっていない新作としては、リンクレーターの「Everybody Wants Some(原題)」、ポール・グリーングラスの「Bourne Sequel」(ボーンシリーズの続編)、スコセッシの「Silence(原題)」、ジェフ・ニコルズ「Midnight Special(原題)」あたりが楽しみだ。

今年も良い映画に出会えますように。
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パディントン 【感想】

2016-01-19 08:00:00 | 映画


日本での公開を首を長くして待っていた「パディントン」。
もうこの映画を愛さずにはいられない(笑)。頭の先から尾っぽまで、餡子がギッシリ詰まった鯛焼き映画。「萌え」に依存しない脚本が素晴らしい。ベン・ウィショーの暖い声がパディントンにぴったりだ。観終わった後の多幸感に思わず拍手(脳内で)。

ペルーから家探しのためにロンドンにやってきた子熊と、彼を自宅に居候させたブラウン一家の交流を描く。

有名絵本の実写による映画化だ。登場する熊のビジュアルは、架空のキャラとして可愛くアレンジされたものではなく、実際のリアルな熊の造形に近い。愛情深く、人間と同じ感情をもち、知能と学習能力に長けた「変種」の熊として描かれる。しかし、映画はあくまでファンタジーだ。雑食であるはずの熊がマーマレードだけで食いつないだり、熊が人間社会の人混みの中にいても誰も騒ぎ立てることはしない。絵本を実写化したのではなく、実写によって絵本の世界を表現しているようだ。

リアルな世界とファンタジーな世界の組み合わせ。一見違和感のあるハイブリットな世界に入り込むのは容易だった。その理由は2つある。登場キャラがもれなく魅力的であったことと、徹底的な映像の作り込みに引き込まれたからだ。

子熊はペルーの奥地で老齢の叔父と叔母の3人で平穏に暮らしていた。人間と縁深かった叔父と叔母から、人間の言葉と人間社会について、そしてマーマレードの美味しさを教えてもらっている。ある日、大地震が起きて住まいが潰されてしまう。生き残った叔母から今後の進路について提案される。かつて交流のあった人間の探検家が住むロンドンを訪ねてはみてはどうかと。子熊は貨物船に隠れて乗りこみ、何とかロンドンに辿り着く。ロンドンの都会のド真ん中で、教えてもらったロンドン流の挨拶やマナーを使って人間との接触を試るも、一向に誰も相手にしてくれない。「ロンドンの人たちは親切」と聞いていたのだけれど。。。見ず知らずの環境で疎外感に襲われる感覚は、誰しも身に覚えのあることではないか。この時点で子熊を1人の人格として見つめている。

駅のホームでひとり途方に暮れるなか、4人家族で連れ立っていた一家の夫人に声をかけられる。「泊まる場所はあるの?」。夫人は自分の帽子と同じ真っ赤な色のコートを着ていた。その瞬間、冷えた心にポッと火が灯る。一家のお父さんは「ほっておけ」というが、奥さんのブラウン夫人は見過ごせなかった。そして、熊語(笑)ではなく、人間の言葉で伝わる名前を子熊につける。その名が「パディントン」だ。その後、一家の厚意によってパディントンは居候することになるが、故郷にいた頃より「台風ぼうや」と言われていた持ち前のトラブルメーカーぶりを存分に発揮する。そのトラブルのスケールがなかなか凄い。

パディントンはいたって真面目だ。そして純粋。悪気はないのに自分の望まぬところで、招かれざる騒動を引き起こしてしまう。それが本作のユーモアの源泉であるが、可愛さやギャップ狙いなどのありがちな観客への媚びに頼らず、お構いなしのコメディに振り切っているのが良い。実際に素直に笑えるのは半分くらいで、残りの半分はイタかったり気持ち悪かったりと、感情の行き場に困るシーンも多い。それらをひっくるめてパディントンの魅力と感じる。彼のトラブルを受け止めるブラウン一家の面々も個性的で面白い。一家のお父さんはなぜかリスク分析家(笑)だったり、長男の男の子はプチ発明家だったり、同居するお婆ちゃんは掃除に情熱的だったりと、パディントンとの化学反応を見越してキャラクター設定をしているのがわかる。

そして、本作の最高のスパイスになっているのが、パディントンを追いかけまわす「剥製担当部長」(って名前w)のミリセントの存在だ。異常なまでに動物を剥製にすることに執着している。彼女の毒っ気とシュールなチャームがこれまた異質なユーモアとなって響く。響くどころじゃなかった、爆笑だった。。。演じる二コール・キッドマンもノリノリだ。楽しんでサイコパスを演じているようだ。

そんなミリセントとパディントン、そしてブラウン一家が対峙するラストの大団円も最高だ。ブラウン一家がそれぞれの特技を駆使してパディントン救出に挑み、パディントンはトム・クルーズのMIBばりのアクションを披露する。どこまでも抜け目のない遊び心にニヤニヤが止まらない。そしてハラハラドキドキのクライマックス。あるシーンで自分含め、会場から悲鳴が上がった(笑)。これまで気になっていた伏線が見事に結実し、その後はまさかのオチが待ち受ける。こちらの想像を凌駕する展開と隙のない演出。絶好調時のピクサーアニメにも通じる完成度ですっかり興奮してしまった。

全編を通じて目を見張るのは徹底した映像の作りこみだ。絵本の世界を実写で再現するために、画面の隅々までディテールが施されている。衣装、美術、小道具がもれなくツボに入る。赤、黄、緑などの原色を多用したレトロでポップなデザインが堪らない。クラシカルでありながら先進的なロンドンの街並みにもすっかり馴染んでしまう。観客を驚かせ楽しませる映像作りに終始しており、「そこのショットで行き止まり」と思わせながら、もう一歩踏み込んだような映像も盛り沢山。それらが単なるお飾りに終わらず、物語の流れを暗喩するツールになっていることも見逃せない。

そして、観る者を大いに楽しませながらも、浮上するメッセージは鮮明で嫌味がない。異なる価値観をもった他者との共存や、帰るべき居場所の在り処だったり、本作を見て感じ取られるテーマは大きい。パディントンを世話したはずのブラウン一家がパディントンによってその絆を強固にするのが感動的だ。
鑑賞後、たまたま自宅で見たシリア難民の最新ニュースを見て身につまされた。この映画と世界で起きる国際問題を繋げるのは、かなり強引な解釈であるけれど、それだけ普遍的なテーマを描いていると思うのだ。

小さい子供も安心して見られるというファミリー映画の一定基準をクリアしながらも、大人も存分に楽しめる余地を残した素晴らしい映画。動物キャラを主人公に据えた映画としては「ベイブ」以来の傑作といえる。脚本・監督のポール・キングはTV界で活躍している人で映画の実績はまだないようだけれど、相当デキる映像作家のようだ。

叔父と叔母からもらった赤い帽子に、一家のお父さんのお下がりである紺のダッフルコートは抜群のコーディネートだ。 パディントンがマーマレードの香りを嗅ぐときの、気持ち良さ気な顔を観ると、小さな幸せがこっちにも伝染する。

【80点】
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ブリッジ・オブ・スパイ 【感想】

2016-01-16 08:16:55 | 映画


2016年一発目の映画「ブリッジ・オブ・スパイ」を観る。
別の世界を歩んできた2人の男の信念が交わり、奇妙な友情が育まれる。静かな感動が胸に迫る佳作。スピルバーグが描く人間ドラマはやっぱり好きだ。

米ソ冷戦の真っ只中、米国で捕えられたソ連スパイの弁護をすることになったアメリカ人弁護士の活躍を描く。実話の映画化。

物語の始点はスパイの男からだ。音楽も流れず、セリフもなく、ホコリを被った部屋で1人佇む男の一挙手一投足をカメラが淡々と追い続ける。男の名は「アベル」。彼がスパイであることはすぐに察しがつく。が、それは彼の行動からではなく、彼を追いかけまわずFBIたちの動きによってだ。アベルは一見、どこにでもいそうな孤独な老人。アメリカに取り残されたまま、長年、母国ソ連のために身を捧げ、水面下で諜報活動を続けてきたと想像する。その造形は「裏切りのサーカス」などのジョン・ル・カレが描くスパイそのものだ。そして、アベルはアメリカに捕えられる。

舞台は変わる。トム・ハンクス演じるアメリカ人弁護士「ドノバン」が、アベルを裁く裁判で彼の弁護を命じられる。ドノバンは保険専門の弁護士で、縁もゆかりもない裁判だ。彼がかつて刑事事件を扱っていたことや、弁護士として優秀であったことがその理由とされるが、スパイを弁護する裁判は「たてまえ」であり、誰が弁護しても良かったという話。米ソ冷戦の時代にあって「アメリカは司法を重んじる民主主義国家なのだ!」と声高に世界に発信することが裁判の目的だ。とりあえず弁護士をつけて、とりあえず裁判をやって、いずれにせよ死刑にする。そんなシナリオをアメリカは描いていた。

ところが、その目論見が外れる。

多くの移民たちのルーツで形成されるアメリカという国。人種は違えど、それぞれが「アメリカ人」として人権を保証されている。人権は憲法の元にあり、その憲法に忠実であることがドノバンの信念だった。それは敵国のスパイであっても同じこと。アメリカ憲法を信じ、アベルの弁護に尽力することが彼のやり方だ。但し、ソ連に対する脅威が一般市民にまで浸透していた時代。世間から反発を受けるのは必至。ドノバンの家族は母国アメリカにいながらにして「非国民」と言われ危険に晒される。それでもドノバンは自身のスタイルを変えない。そんなドノバンをプロに徹した仕事人間と、クールな描き方で終わらせていないのが良い。スピルバーグらしさともいえるヒューマニズムが本作の要だ。アベルの穏やかな人格、捕えられても国を裏切ろうとしない誠実さにドノバンは自分に近いものを感じる。不公平な裁判によってこの男を死なせてはならないと確信するのだ。

物語は大きく2つのパートに分かれていて、前半はアベルの裁判劇。後半はその裁判の後に起きた、ソ連で捕えられた米国スパイと、アメリカに捕えられたアベルの人質交換劇だ。いずれもドノバンの活躍によるもの。前半でドノバンの人間性とアベルとの絆の形成を描き、後半の事件で、時代を動かしたともいえる彼の偉業の全容を描く。この2つのパートは必然的な流れとして繋がっていて、前半で描かれているドノバンとアベルの間で築かれた関係性が、後半の結末に大きく効いてくる。これが素晴らしく感動的。前半で描かれていたドノバンの弁護士としての手腕が伏線となって、後半パートでしっかり回収されていくのも見事だ。

本作の脚本はコーエン兄弟が手掛けているとのこと。といってもマット・チャーマンという脚本家との共著だが。重厚でサスペンスフルなストーリーは見応えがあるが、「不安か?」「何のためになる」の言葉のキャッチボールなど、いささかユーモアの描き方がわかりづらかったりして、スピルバーグとの相性を手放しで良いとは言えない。また、米国人学生に対するドノバンの動機も、もう少し確証に近いものが欲しかった。いつものスピルバーグ映画ならもっとわかりやすいはずなのだけど。

後半の人質交換劇での綱渡り的な駆け引きはスリリングだ。ハズすことなくエンタメ性を容易に付加できるスピルバーグ演出の確かな仕事ぶりが目立つ。物語の舞台となる冷戦時のアメリカや東西ドイツの緊張感に包まれた空気感も見事に再現されているようでストーリーを引き締めてくれる。ドノバンが目の当たりにする、東西ドイツの「壁」とアメリカの「フェンス」の対比は痛切だ。

ドノバン演じるトム・ハンクスとアベル演じるマーク・ライランスの好演が光る。等身大のヒーローを説得力たっぷりに演じることができるトム・ハンクスは「さすが」といったところだが、本作の最大の収穫はマーク・ライランスのキャスティングだろう。本作で初めて観た馴染みのない俳優で、実際に映画の出演作も少ないようだ。しかし、調べたところ、演劇界ではかなり知られている人のようでトニー賞を3度も受賞している名舞台俳優とのこと。本作は彼の顔面のショットから始まる。生気のない目と捉えどころのない存在感はスパイとしての器量を如実に表しているようだ。そしてその表情からは孤独と哀愁が滲んでいる。一言、「巧い」。来月のオスカー賞レースではスタローンとのタイマン勝負になると予想されるが、演技力という点ではライランスが一枚上手のようだ。(スタローンは「存在感」。)

エンディングの字幕でドノバンのその後の活躍が説明される。ちょっとこれは蛇足だったかも。名もなき弁護士が果たした一回こっきりの「奇跡」と見せたほうが余韻が深かったはずだ。

【70点】
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第88回アカデミー賞ノミネート発表!!!

2016-01-14 23:26:48 | 映画
帰宅が大幅に遅れ、WOWOWでの放送開始にギリギリ間に合う。
つい1時間ほど前に第88回アカデミー賞のノミネートが発表された。

自分が知るアカデミー賞ノミネート史上、最も気持ちがよい内容だった。
主要部門のノミネートをまとめてみる。(★)が予想ハズレ。

【作品賞】
 「レヴェナント:蘇えりし者」
 「マッドマックス 怒りのデス・ロード」(!!!!!)
 「スポットライト 世紀のスクープ」
 「オデッセイ」
 「ルーム」
 「ブリッジ・オブ・スパイ」
 「Brooklyn」(★)
 「マネー・ショート 華麗なる大逆転」(★)
 
キターーーーー!!!「マッドマックス~」がアクション映画にして堂々のノミネート!しかも「レヴェナント~」に次ぐ10部門のノミネート。アカデミー会員も認めざるを得なかったかー。これは大変な快挙。嬉しくて堪らない。
あと、個人的にはシアーシャ・ローナン主演の「Brooklyn」が入ってくれたのが嬉しいサプライズ。

【監督賞】
 アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ(レヴェナント:蘇えりし者)
 トーマス・マッカーシー(スポットライト 世紀のスクープ)
 ジョージ・ミラー(マッドマックス 怒りのデス・ロード)
 アダム・マッケイ(マネー・ショート 華麗なる大逆転)(★)
 レニー・エイブラハムソン(ルーム)(★)

「ルーム」のレニー・エイブラハムソンがサプライズノミネート!
「オデッセイ」のリドリー・スコットはノミネートならず。

【主演男優賞】
 レオナルド・ディカプリオ(レヴェナント:蘇えりし者)
 マイケル・ファスベンダー(スティーブ・ジョブズ)
 マット・デイモン(オデッセイ)
 エディ・レッドメイン(リリーのすべて)
 ブライアン・クランストン(Trumbo)

ブライアン・クランストンのノミネートが嬉しい!!!
初めて予想がすべて当たったー。

【主演女優賞】
 ブリー・ラーソン(Room)
 シアーシャ・ローナン(Brooklyn)
 ケイト・ブランシェット(キャロル)
 ジェニファー・ローレンス(Joy)
 シャーロット・ランプリング(さざなみ)(★)

不確定だった5人目にシャーロット・ランプリングが来たかー。まあ納得。
そしてヨミ通り、現代のメリル・ストリープはジェニファー・ローレンス。

【助演男優賞】
 マーク・ライランス(ブリッジ・オブ・スパイ)
 シルヴェスター・スタローン(クリード チャンプを継ぐ男)
 トム・ハーディ(レヴェナント:蘇えりし者)
 クリスチャン・ベール(マネー・ショート 華麗なる大逆転)
 マーク・ラファロ(スポットライト 世紀のスクープ)(★)

やはり個人賞は作品賞に偏るなーという印象。
スタローンの発表に最大の歓声が上がった。まーでも受賞は難しいだろうなー。

【助演女優賞】
 ルーニー・マーラ(キャロル)
 ケイト・ウィンスレット(スティーブ・ジョブズ)
 アリシア・ヴィキャンデル(リリーのすべて)
 ジェニファー・ジェイソン・リー(ヘイトフル・エイト)
 レイチェル・マクアダムス(スポットライト 世紀のスクープ)(★)

今回の助演女優賞は最大の激戦区。まったく予想ができない。

最多ノミネートは「レヴェナント:蘇えりし者」で12部門。その内容から観る人を選ぶみたいな話を聞いていたけど、蓋を開けてみたら、GG賞の勢いをそのままに最多ノミネートだ。イニャリトゥファンとしては非常に嬉しい。
そして「マッドマックス 怒りのデス・ロード」が主要部門に堂々のノミネート!!!会場でも歓声が上がったし、やっぱり「マッドマックス」ファンは多いのだと実感する。もうノミネートされただけでも感無量です。

過去の予想のなかで最も当たったノミネート内容だったが、あまり大きなサプライズはなかった印象。「Ex Machina」は脚本賞に留まったかー。まあインディーズ映画は枠に入るのは至難の業ということね。その点で「ルーム」が監督賞にもノミネートされたことは素晴らしい。

2月28日の授賞式までの間に残っている最大のイベントは、1月30日に発表されるアメリカ映画俳優組合賞だ。ここで、最大の予想難関である助演女優賞の予想が見えてくるだろう。他の個人賞は非常に予想がしやすい。レオナルド・ディカプリオ、ブリー・ラーソン、マーク・ライランス。。。あとは監督賞の行方だ。イニャリトゥVSミラー。どっちが受賞しても嬉しいけど、今回はミラーでお願いします!!
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2015年ベスト海外ドラマ トップ10

2016-01-14 18:00:00 | 海外ドラマ
遅まきながら、映画に続いて、昨年の海外ドラマの私的ベスト10をまとめてみる。
昨年は例年以上に海外ドラマを観た。NETFLIXのオリジナルドラマやAmazonプライムの特典ドラマを大いに楽しんだ。

1位 ゲーム・オブ・スローンズ 第5章
いろいろ文句もあるけど、どうしても1位。物語のスケールだけでなく、ドラマの深みも一層増した感じ。とにかく規格外。ひたすら圧倒された。宗教の本質をついたエンディングに鳥肌。

2位 ファーゴ シーズン1
「ファーゴ」×「ノーカントリー」。緊張と緩和の応酬。引力と疾走感。とにかく面白くて仕方なかった。主要キャラ4人の化学反応が絶品。

3位 ベター・コール・ソウル シーズン1
本家「BB」のスピンオフドラマであり、全く毛色が違うドラマだったが期待通りの完成度。ソウルの生き様に共感と感動。やはり、ヴィンス・ギリガンはドラマ界の神だ。

4位 TRUE DETECTIVE/二人の刑事
TVドラマの概念を変えた傑作ドラマ。全8話の映画であり、名優マシュー・マコノヒーが本作で新たなキャリアを築いた。

5位 ホームランド シーズン4
1~3で一区切りがついたものの、ここでまさかの最高傑作。後半パートの緊張と迫力。理性を超えた後半の展開に息を呑む。

6位 オレンジ・イズ・ニュー・ブラック シーズン2
NETFLIXの本気度を印象付けた傑作コメディドラマ。下品で愛おしい群像劇。シーズン3よりもシーズン2が好み。

7位 ナルコス シーズン1
伝説の麻薬王「エスコバル」の見事なドラマ化。事実は小説よりも奇なり 。歴史ドラマとしてめちゃくちゃ見応えがあった。

8位 トランス・ペアレント シーズン1
トランスジェンダーの問題はフックに過ぎず。風変わりな家族を通して見る普遍的な家族の肖像。挑戦的な作り。

9位 モーツァルト・イン・ザ・ジャングル シーズン1
そのテがあったか!の軽快で楽しい音楽ドラマ。音楽とセックスの関係(笑)。ガエル・ガルシア・ベルナルがカリスマ指揮者を好演。

10位 MR. ROBOT/ミスター・ロボット シーズン1
ハッキングで世界を変えようというスケールのデカいドラマ。演出やカメラワークにセンスあり。が、いろいろと惜しい!!

【ワーストドラマ】

 ウォーキング・デッド シーズン6

完全な息切れ。そしてマンネリ。新キャラがことごとく魅力でない。困ったときのキャラ殺し。。。と見せかけて「未遂」で引っ張る展開に唖然。高い視聴率を良いことに、脚本家が仕事を怠っていると想像する。いい加減、終結に向かってはいかが?
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第88回アカデミー賞、ノミネーション予想。最終。

2016-01-13 22:00:00 | 映画
いよいよ日本時間の明日22時半より、第88回アカデミー賞のノミネートが発表される。で、最後のノミネート予想をしてみる。受賞予想よりもノミネート予想が面白いけど、今年は例年以上に予想が難しいのが特徴。

【作品賞】
 「スポットライト 世紀のスクープ」
 「キャロル」
 「レヴェナント:蘇えりし者」
 「オデッセイ」
 「Room」
 「スティーブ・ジョブズ」
 「ブリッジ・オブ・スパイ」
 「マッドマックス 怒りのデス・ロード」
 
確定予想にしていた「Brooklyn」がことごとく前哨戦で出てこなかったのでアウトにした。GG賞の結果はあてにならないと思いつつも、脚本賞を受賞した「スティーブ・ジョブズ」は入ってくると予想。「マッドマックス~」、何とか入ってくれーーーーー!

【監督賞】
 アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ(レヴェナント:蘇えりし者)
 リドリー・スコット(オデッセイ)
 トーマス・マッカーシー(スポットライト 世紀のスクープ)
 トッド・ヘインズ(キャロル)
 ジョージ・ミラー(マッドマックス 怒りのデス・ロード)

作品賞に「マッドマックス~」が入らなければ、ジョージ・ミラーのノミネートはないだろう(前哨戦はミラーの圧勝なのだが)。その代わりに「マネーショート」のアダム・マッケイが入るか、「ブリッジ・オブ・スパイ」のスピルバーグが選出される可能性あり。

【主演男優賞】
 レオナルド・ディカプリオ(レヴェナント:蘇えりし者)
 マイケル・ファスベンダー(スティーブ・ジョブズ)
 マット・デイモン(オデッセイ)
 エディ・レッドメイン(リリーのすべて)
 ブライアン・クランストン(Trumbo)

上位4人はノミネート確定予想。ずっと確定予想にしていたマイケル・ケインをアウトにして、ウォルターことブライアン・クランストンをイン。クランストンの受賞はさすがにないだろうけど、トニー賞(演劇界)、エミー賞(TVドラマ界)で頂点を極めた男だ。ノミネートされるだけでも大変な快挙といえる。

【主演女優賞】
 ブリー・ラーソン(Room)
 シアーシャ・ローナン(Brooklyn)
 ケイト・ブランシェット(キャロル)
 ジェニファー・ローレンス(Joy)
 リリー・トムリン(愛しのグランマ)

上位3人はノミネート確定予想。読めないのは4人目以降。ジェニファー・ローレンスは第2のメリル・ストリープとしてとりあえず候補入りまではしそう。難しいのは5人目。ゴールデン・グローブ賞のようにアリシア・ヴィキャンデルとルーニー・マーラは助演ではなく、主演として候補入りする可能性も高い。だとしたら、つまらない。サプライズでシャーロット・ランプリング(「さざなみ」)という線も残る。

【助演男優賞】
 マーク・ライランス(ブリッジ・オブ・スパイ)
 シルヴェスター・スタローン(クリード チャンプを継ぐ男)
 トム・ハーディ(レヴェナント:蘇えりし者)
 ジェイコブ・トレンブレイ(ルーム)
 クリスチャン・ベール(マネー・ショート 華麗なる大逆転)

これまで確定予想に上げていたベニチオ・デル・トロ(ボーダーライン)をアウト。同じ作品に候補者が偏る毎年の傾向を考慮してトム・ハーディをイン。また、子役に寛容な部門の特性を考慮してジェイコブ・トレンブレイをイン。最後は、作品賞絡みで前哨戦でも勢いのあるクリスチャン・ベールを入れた。個人的には、イドリス・エルバ(ビーストオブノーネイション)の候補入りを希望。まー受賞の行方はライランスか、スタローンに絞られるけど。

【助演女優賞】
 ルーニー・マーラ(キャロル)
 ケイト・ウィンスレット(スティーブ・ジョブズ)
 アリシア・ヴィキャンデル(リリーのすべて)
 ジェニファー・ジェイソン・リー(ヘイトフル・エイト)
 ヘレン・ミレン(Trumbo)

確定予想にしていたジュリー・ウォルターズ(Brookly)をアウトにして、「Trumbo」のブライアン・クランストンと合わせてヘレン・ミレンをイン。ルーニー・マーラとアリシア・ヴィキャンデルが主演に候補入りしてしまったら、全く読めなくなるな。。。。

以上

やはり、最大の注目ポイントは前哨戦で強さを見せつけてきた「マッドマックス 怒りのデス・ロード」がアクション映画として異例の候補入りを果たすかどうかだ。「マッドマックス」が入ったら、アカデミー賞の格もワンランク上がると思うんだけど。明日は何としても22時までに帰宅せねば。。。。
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RottenTomatoes 2015年レビュースコアランキング

2016-01-12 22:00:00 | 映画
毎年、いや、毎日、新作映画情報の参考にさせてもらっている映画レビューサイト、ロッテントマト(RottenTomatoes)。知らぬうちに、レビュースコアの年間ランキングが発表されていたので、まとめてみる。今年から、スコアが「Adjusted Score(調整スコア)」という換算になっており、レビュー数に応じた計算がなされている模様。

まず、総合ランキングから。<>がAdjusted Score。

【総合ランキング】

1位 マッドマックス 怒りのデス・ロード <109.012%>
2位 インサイド・ヘッド <108.762%>
3位 スター・ウォーズ/フォースの覚醒 <104.621%>
4位 BROOKLYN(原題) <104.186%>
5位 ひつじのショーン <103.627%>
6位 オデッセイ <103.019%>
7位 スポットライト 世紀のスクープ <103.034%>
8位 イット・フォローズ <103.815% >
9位 ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション <102.199%>
10位 パディントン <102.16%>

2015年、最もアメリカの映画批評家たちの支持を得たのは「マッドマックス」。やはり最強!!!
「ひつじのショーン」はまったくマークしていなかったけど、観たくなってきた。
日本公開が決まっていないのはシアーシャ・ローナン主演の「BROOKLYN」だけ。

続いてジャンル別トップの結果。

【ジャンル別トップ】

アクション映画 : ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション
SF映画 : マッドマックス 怒りのデス・ロード
ドラマ映画 : Brooklyn(原題)
ロマンス映画 : キャロル
コメディ映画 : シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア
コミック映画 : The Diary Of A Teenage Girl(原題)
ファミリー映画 : パディントン
ミュージック映画 : ラブ&マーシー 終わらないメロディー
ホラー映画 : イット・フォローズ
スリラー映画 : ボーダーライン
アニメーション映画 : インサイド・ヘッド
ドキュメンタリー映画 : AMY(原題)
外国語映画 : 禁じられた歌声

ここで、まったくノーマークだった映画を発見。コミック映画部門のトップとなった「The Diary Of A Teenage Girl」という映画。非常に気になる。早く日本リリースが決まってほしい。あと、オーストラリア映画の「シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア」がハリウッドコメディを押しのけ、トップになったというのは大変な快挙。確かに面白い映画だったなーと思い出す。あと、「ラブ&マーシー 終わらないメロディー」は年越しのDVDリリースになるのがわかっていたら映画館に観に行っていたなと後悔。先週より日本公開されたホラー映画部門の「イット・フォローズ」は今週末観に行く予定。楽しみになってきた。
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第73回ゴールデン・グローブ賞の結果。

2016-01-12 21:00:00 | 日記
昨日、第73回ゴールデン・グローブ賞の授賞式が開催された。休日だったので自宅でゆっくり見たかったのだけれど、最悪なことに休日出勤だった。なので、結果しかわからなかったのだが、雑記として主要部門の受賞結果をまとめてみる。

まずは映画。

【映画の部】

<ドラマ部門>
◆作品賞 「レヴェナント:蘇えりし者」
◆主演男優賞 レオナルド・ディカプリオ(レヴェナント:蘇えりし者)
◆主演女優賞 ブリー・ラーソン(Room)

<コメディ/ミュージカル部門>
◆作品賞 オデッセイ
◆主演男優賞 マット・デイモン(オデッセイ)
◆主演女優賞 ジェニファー・ローレンス(Joy)

<共通部門>
◆監督賞 アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ(レヴェナント:蘇えりし者)
◆助演男優賞 シルヴェスター・スタローン(クリード チャンプを継ぐ男)
◆助演女優賞 ケイト・ウィンスレット(スティーブ・ジョブズ)

最大のサプライズは何といっても「レヴェナント:蘇えりし者」の三冠。昨年オスカーに輝きながらも、本賞でイニャリトゥに監督賞を与えなかったことを後悔したのだろうか。ファンとしては嬉しい結果だけど。その一方で、作品賞濃厚とみていた「スポットライト~」は総スカンを喰らった。ケイト・ウィンスレットの助演女優賞も驚き。ダブルノミネートを果たしたアリシア・ヴィキャンデルは無冠でちょっと可愛そう。他の受賞結果は順当といったところだ。

【TVドラマの部】

<ドラマシリーズ>
◆作品賞 「MR. ROBOT/ミスター・ロボット」
◆主演男優賞 ジョン・ハム(MAD MEN マッドメン)
◆女優賞 タラジ・P・ヘンソン(Empire 成功の代償)

<コメディシリーズ>
◆作品賞 「モーツァルト・イン・ザ・ジャングル」
◆主演男優賞 ガエル・ガルシア・ベルナル(モーツァルト・イン・ザ・ジャングル)
◆主演女優賞 レイチェル・ブルーム(Crazy Ex Girlfriend)

<共通部門>
◆助演男優賞 クリスチャン・スレイター(MR. ROBOT/ミスター・ロボット)
◆助演女優賞 モーラ・ティアニー(アフェア 情事の行方)

TVドラマの受賞結果もなかなかのサプライズ。並みいる(?)タイトルを押しのけ、ドラマシリーズで「MR. ROBOT/ミスター・ロボット」、コメディシリーズで「モーツァルト・イン・ザ・ジャングル」が作品賞に輝く。両作ともAmazon製作のドラマだ。どっちも視聴済み。「ミスターロボット」はスケールの大きいドラマなんだけど、ストーリーテリングに引力がないんだよな。編集、演出の部分ではキラリと光るものがあるけど、肝心の脚本がいささか弱い。「ハッキング」というプロットがとても面白いだけに惜しい。個人的にはエミー賞同様「ゲーム・オブ・スローンズ」が受賞して然るべきだったと思う。「モーツァルト・イン・ザ・ジャングル」は自分も好きで確かに面白いんだけど、作品賞に相応しい器かというと疑問。個人的はやっぱり「ベター・コール・ソール」に受賞してほしかった。というか、作品賞にノミネートすらされていないですけど。。。作品賞はさておき、見事なコメディ俳優ぶりを魅せたガエル・ガルシア・ベルナルの受賞は素直に嬉しかった。

週末に録画したやつを観ることにする。
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2015年ワースト映画トップ5

2016-01-11 15:00:00 | 勝手に映画ランキング
2015年映画の総括の最後に、ワースト映画をまとめてみる。日本映画や未公開映画を入れるとキリがなくなるので、洋画の劇場公開作に絞ってトップ5を決めてみた。

1位 ヴィジット

シャマランの勘違い映画。小手先の怖がらせと無駄な煽り。ユーモアをチラつかせるドヤ顔に嫌気が差す。お肌つるつるの白人少年にラップを無理やり唄わせ寒気が襲う。ホラー映画としては凡作。イキった演出に苛立ち。「シャマラン復活!」と勘違いしたハリウッドは、おそらく今後も彼の起用によって失敗を繰り返すと思われ。

2位 ファンタスティック・フォー

まさかの分断。というよりも未完の作品。どうしたジョシュ・トランク!?

3位 ジュピター

CGに踊らされたスペースオペラ。登場人物がもれなく気持ち悪い。

4位 チャーリー・モルデカイ

ジョニー・デップの仮装、もうお腹いっぱいです。笑いの上滑り。

5位 PAN ネバーランド、夢のはじまり

幼稚でケバケバしいファンタジー。まさかの「エアベンダー」。

【ガッカリ賞】 007 スペクター

クレイグ版のボンドの方向転換は失敗に終わる。見ていられなかった。。。
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2015年映画 勝手に個人賞

2016-01-11 14:00:00 | 勝手に映画ランキング
続いて、2015年公開映画の洋画と日本映画に分けて個人賞を勝手に選んでみる。

【洋画編】

監督賞 ジョージ・ミラー(マッドマックス 怒りのデス・ロード)

主演男優賞 ジェイク・ギレンホール(ナイトクローラー)

主演女優賞 マリオン・コティヤール(サンドラの週末)

助演男優賞 J・K・シモンズ(セッション)

助演女優賞 シャーリーズ・セロン(マッドマックス 怒りのデス・ロード)

新人監督賞 デミアン・チャゼル(セッション)

新人男優賞 タロン・エガートン(キングスマン)

新人女優賞 デイジー・リドリー(スター・ウォーズ/フォースの覚醒)

【日本映画編】

監督賞 橋口亮輔(恋人たち)

主演男優賞 大泉洋(駆込み女と駆出し男)

主演女優賞 深津絵里(寄生獣、岸辺の旅)

助演男優賞 本木雅弘(日本のいちばん長い日)

助演女優賞 池脇千鶴(きみはいい子)

新人監督賞 該当者なし

新人男優賞 該当者なし

新人女優賞 広瀬すず(海街diary)


思い入れの度合としてはかなり濃淡があり、「文句なし」という人もいれば、「まー入れないと格好がつかない」という人もいる。

洋画編の主演男女はちょっと突き抜けた人がいなかったという印象。アカデミー賞を受賞したエディ・レッドメインとジュリアン・ムーアは確かに巧かったけれど、それほど好きなパフォーマンスではなく、出演した作品が物足りなかったという点も大きい。一方で、助演の男女は「文句なし」の2人。助演男優賞については、「ビーストオブノーネイション」のイドリス・エルバも素晴らしかったけど、シモンズ演じた鬼教官の残像が鮮烈に残る。セロン演じた「フュリオサ」は映画史の残るアイコンになった。

日本映画については、「文句なし」は2人。「恋人たち」を監督した橋口亮輔と、「日本のいちばん長い日」で昭和天皇を演じた本木雅弘。橋口亮輔監督については、映画製作における演出という監督の役割を改めて考えさせられ、本木雅弘演じた、モノマネではない昭和天皇の造形に強い感銘を受けた。
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2015年ベスト日本映画トップ5

2016-01-11 13:04:29 | 勝手に映画ランキング
2015年に観た日本映画のベストを決めてみる。
洋画に比べて観ている本数が少ないため、トップ5まで。
唯一の心残りとしては塚本晋也監督の「野火」が観られなかったことくらい。ユーロスペースまで観に行けないよ~。

1位 日本のいちばん長い日


2位 バクマン。


3位 恋人たち


4位 きみはいい子


5位 駆込み女と駆出し男



次点
「ビリギャル」
「海街diary」



昨年は、テレビドラマシリーズの映画編が例年以上にヒットせず、いよいよ終幕の気配がした。それは大いに歓迎で、もっとオリジナルの脚本力をもった日本映画が増えてほしいところ。その点で3位の「恋人たち」はその見本となる素晴らしい映画だったと思う。ただ、個人的な面白さという点では、「日本のいちばん長い日」「バクマン。」が自分にとっては上位だった。上位5作品の共通したのは、キャスティングが隅々まで冴えていたこと。それぞれのタイトルごとに印象的なイメージを残すパフォーマンスがあった。個人賞に続く。
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2015年ベスト映画トップ10

2016-01-10 15:00:00 | 勝手に映画ランキング
2015年は映画、特に洋画の大豊作な年だった。年が明けてしまったが、昨年の総括としてベスト映画のトップ10をまとめてみた。
選出対象は今年公開された新作映画の中で、劇場で観た61本とDVDの追っかけで観た124本。

1位 マッドマックス 怒りのデスロード

2015年は「マッドマックス 怒りのデスロード」が公開された年だ。年末の「スター・ウォーズ」の公開によって多くの映画ファンが今年のベストワンの鞍替えをしているようだが、今年のベストワンは本作以外には考えられない。アドレナリンが放出し続ける120分。狂気に溺れる快感に満たされた120分。荒涼の砂漠で盛大に打ち上げられるイマジネーションのスターマイン。これまでの映画の常識、あるいは規格の枠を突破してしまった歴史的傑作。単なるカルト&キワモノ映画として扱われることは心外。常軌を逸したアクションのなかで語られる多くのメタファーと、崇高で美しい人間ドラマは芸術作品として扱われて然るべき。今年の100点超え映画。

2位 バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)

敬愛するイニャリトゥ映画の最高傑作。人生は物語であり、演じるべき舞台でもある。その主演は自分に他ならない。本作の主人公を通して自身のこれからの人生を追体験する。「こうありたい」という願いを妨げるものの多くは時間だ。過去と現在と未来。劣化を余儀なくされる加齢。本作は止まることのない時間の流れをノーカットで表現する。そして、リアルとイマジネーションの世界をシームレスに繋げる離れ業をやってのけ、男の生き様を脳内から見つめさせる。人生は滑稽で愛おしい。だから挑戦し続ける価値がある。最高のキャスティングと見事なアンサンブル劇を堪能。

3位 セッション

ラスト9分間に奇跡が舞い降りる。振り返ってみると音楽映画でもなく、スポ根映画でもなかったように思う。一流のドラマ―として大成することを夢見る青年と、どこまでもサイコパスな鬼教官の壮絶な削り合いが繰り広げられる。全編に渡る圧倒的なパワーと疾走感。2人の摩擦によって放出された熱が上昇気流となって浮上し続け、その到達点に破壊と覚醒の「セッション」が待ち受ける。監督デミアン・チャゼルの編集の神業が唸りを上げる。驚愕のパフォーマンスに衝撃と恍惚で自制が効かず、涙が止まらなかった。

4位 クリード チャンプを継ぐ男

全身に電流が走り、全身の涙が絞り取られた。終わったはずの「ロッキー」シリーズの魂が、世代も人種も違う1人の青年に継承された。誰がその続編に期待しただろうか。本作の製作は勝てる見込みのない挑戦だったはず。しかし、俊英ライアン・クーグラーはシリーズへの愛と、自らの作家力と演出力をもってその無謀な挑戦に鮮やかに勝利してみせた。それも全く新たな物語として誕生させたのだ。同時期に公開された「スター・ウォーズ~」の熱狂の陰にすっかり隠れてしまったが、「スター・ウォーズ~」を凌ぐ傑作であることに違いなし。クーグラーの勝利に喝采を贈る。

5位 ナイトクローラー

善悪の垣根を悠々と飛び越え、暴走し突き進む男のドライビングムービー。人間が持つ防衛本能と好奇心に餌を与える男の野望が疾走する。パパラッチとローカルテレビ局という設定をもって、資本主義によって怪物が生み出され、その怪物を野放しにする現代社会の歪さを鮮烈に描き出す。ジェイク・ギレンホールの怪演が凄まじく、彼が演じた主人公「ルイス」は2015年最強のヴィランだ。

6位 イミテーション・ゲーム

破壊と殺戮の第二次世界大戦。その地獄を終結に向かわせた数学者の男がいた。本作で目の当たりにするのは驚くべき真実。独裁者ヒトラーに打ち勝つための「ゲーム」の攻防はスリリングで目が離せない。しかし、それ以上に記憶に残るのは主人公チューリングの造形だ。同性愛に不寛容だった時代で不遇の人生を送った男の孤独と、少年時代に刻まれた愛の記憶。本作は紛れもないラブストーリー。主演のカンバーバッチの名演も忘れがたい。

7位 インサイド・ヘッド

ピクサー映画が鮮やかなカムバックを果たした。豊潤な想像力と無二のオリジナリティ。アニメーションだから実現しうるダイナミズムを最大限に活かす。カラフルで無邪気な冒険活劇の中に緻密な計算と構成が潜む。これぞピクサーの真骨頂。人は感情によって人生を歩み、思い出によって成長する生き物だ。まさかあんな形で見せられるとは。。。完全に泣かされた。

8位 スター・ウォーズ/フォースの覚醒

2015年、全世界の映画ファンに最も期待され、その期待に見事に応えることに成功したシリーズの新章。映画ファンたちの熱狂ぶりは凄まじく、映画興行は多くの新記録を更新中。世界観に依存してきた従来のシリーズにあまり思い入れがなかった自分にとっては、本作がシリーズの最高傑作。4人の新キャラが実に頼もしく魅力的。そして彼らにしっかりとしたドラマを与えたことが何よりも素晴らしい。フォースの新解釈に大興奮。

9位 キングスマン

10割バッターのマシュー・ボーンが、また新たな傑作を生み出す。彼の手によるスパイ映画はクールで超ハイテンション。英国紳士の象徴であったブリティッシュスーツはまさかの戦闘服で、その戦闘服を美しく着こなすコリン・ファースが、まさかのバイオレンスアクションで咲き乱れる。ボーンの豊かな遊び心と絶品のアクションセンスが炸裂。今年はスパイ映画が多く公開された年であったが、本作が断トツのナンバーワン。

10位 フォックスキャッチャー

失われた栄誉を取り戻そうともがく男。その男の兄で才能の恵まれた人格者の男。かつて「死の商人」といわれたデュポン家の末裔で2人の才能を利用し自身の夢を実現しようとする男。3人の男の間に緊張の糸が張り巡らされる。その糸が絡み合い切れ始め、3人の信頼関係が崩れゆく様を戦慄のスリラーとして、あるいは持たざる者たちの哀愁のドラマとして描き出す。名匠ベネット・ミラーのキャストたちの肉体に賭けた演出が光る。

次点
「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」
「人生スイッチ」
「アメリカン・ドリーマー 理想の代償」


上半期のベスト3がそのまま、年間のベスト3になった。「マッドマックス~」が少し突き抜けているけど、上位3作品についてはどれも通年であれば年間1位にしてもおかしくないほどの大傑作。なお、日本映画を含めても、このベスト10の中には入らないので別立ててランキングを設定することにする。



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