一昨日は彼岸の中日、そして、明日は7日間の彼岸明けです。
彼岸は日本の雑節の一つで、春分・秋分を中日とし、前後各3日を合わせた7日間を言い、この期間に行う仏事を彼岸会(ひがんえ)と呼んでいます。
俗に、彼岸の中日には先祖に感謝し、残る6日は悟りの境地に達するのに必要な6つの徳目「六波羅蜜」を1日に1つずつ修める日とされています。
なお、雑節、六波羅蜜とは次の通りです。
「雑節」
雑節とは、節分・彼岸・社日(しゃにち)・八十八夜・入梅・半夏生・土用・二百十日・二百二十日を言います。
「六波羅蜜」
六波羅蜜とは、大乗菩薩の六種の実践修行です。
布施・持戒(じかい)・忍辱(にんにく)・精進・禅定・智慧の六種で、これによって涅槃の境界に至ることができるとされています。
「彼岸花は何故彼岸に咲くのか?」
彼岸がくると必ず咲く花に彼岸花があります。
彼岸花は毎年同じように秋の彼岸、すなわち9月20日前後に花を咲かせます。
でも何故彼岸の時期に咲くのでしょうか?
彼岸花は秋に花が咲いた後に葉が出てきて、冬の間は青々としており、晩春には枯れてしまいます。
この生長サイクルは、春先に芽を出して花を咲かせ、夏にかけて生育し、秋の終わりには葉を落として冬に休眠するという、一般の植物とは正反対のパターンとなっています。
彼岸花は球根植物なので、夏の間に地下の球根は秋に花を咲かせる準備をして秋の来るのを待っています。
その準備は8月の中頃には完了し、最低気温(地温)が20℃前後にまで下がってくると、一斉に球根内部から花茎が伸び始め、地上30~50cmまで伸びて開花するのです。
関西では、最低気温が20度前後にまで下がってくるのがちょうど秋の彼岸の頃なので、彼岸花がこの時期に開花するということです。
従って、年によって9月上旬に急に涼しくなれば早く咲いたり、反対に彼岸を過ぎても暑い日が続くと、10月になってから咲くこともあります。
・暦通りに咲いたあぜ道の彼岸花です。
「人里近くに咲く花」
では、彼岸花はなぜ田んぼのあぜ道や人里近くに咲くのでしょうか?
子供の頃「彼岸花には毒があるから触ったらあかんよ」と言われたことがありませんか?
そうなんです。
彼岸花にはアルカロイドが含まれており、そのまま食べると吐き気や嘔吐、腹痛などの中毒症状を起こします。
ところが、あの球根には良質のデンプンが含まれていて、球根をおろし器でおろして、綺麗な水で一昼夜くらい晒すと、毒素がすっかり抜けて、片栗粉のようなデンプンがとれるのだそうです。
昔の人はこのことを知っていたからこそ、田んぼの周辺に好んで植えたと言われています。
凶作の年には米の代わりに彼岸花からとれたデンプンを食べて飢えを凌ぐことができる予備的な作物と考えていたようです。
だから、彼岸花は稲作と同じように、救荒作物として全国に広がっていったと考えられています。
「救荒(きゅうこう)作物」
なお、救荒作物とは広辞苑によれば、凶作の時にも生育して収穫し得る作物のことで、気候不順に強い稗、蕎麦、甘藷、馬鈴薯などがあります。