世間ずれ
文化庁が言葉の本来の意味を解説しているページに「ことば食堂」があります。
今日はその中から、9月4日に公開された第10話「世間ずれ」をご紹介します。
「彼は世間ずれしているから,この仕事には合わないだろう。」 などと使われる「世間ずれ」。
文化庁が行った「国語に関する世論調査」では、世代によってこの言葉が違う意味で用いられている傾向があることが分かったそうです。
それによると、「世間ずれ」について尋ねた調査結果は次のようになっています。
(ア) 世の中の考えから外れている・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・32.4%
(イ) 世間を渡ってきてずる賢くなっている・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・51.4%
本来の意味である(イ)の「世間を渡ってきてずる賢くなっている」と答えた人が過半数でしたが、30代以下の世代では「世の中の考えから外れている」という意味で使っている人の方が多いという結果でした。
全体では、本来の使い方である(イ)「世間を渡ってずる賢くなっている」と回答した人の割合が5割強、本来の使い方ではない(ア)「世の中の考えから外れている」と回答した人の割合が3割強で、本来の意味を選んだ人の割合の方が上回りましたが、年代別では、10代は60%、20代は53%以上の人が本来の意味でない(ア)を選んでいます。
40代を境にして逆転し、60歳以上では(ア)が18%、本来の意味である(イ)と回答した人は66.3%となっています。
このように「世の中の考えから外れている」という意味での用法が広がっているのは、「ずれ」を「擦れる」の「ずれ」ではなく物事が食い違う、外れるという意味の「ずれ」として受け取ってしまうからのようです。
また、「世間離れ」などの言葉から影響を受けていることも考えられ、加えて、冒頭の「彼は世間ずれしているからこの仕事には合わないだろう。」というような文では、発信者(送り手)と受信者(受け手)のそれぞれが別の意味で捉えていても、文脈による違和感がないため、話がスムーズに進んでしまうところがある、と解説しています。
「世間擦れ(ずれ)」を広辞苑で調べてみると、『世間にあって苦労し、悪賢くなっていること。』と説明しています。
「ずれ」の漢字は「擦れ」であり、「世間からずれている」という意味ではありません。
注意したいですね。