現役の頃、私が勤めていた会社では毎年秋に社員の親睦旅行がありました。
ホテルに着いたその夜は宴会が恒例行事です。
宴会では、先ず新入社員や若手社員が歌を歌ったり、ピンクレディの真似をしたりして露祓いを行い、続いて中堅社員が盛り上げ、その後、役職者が自分の「おはこ」を披露します。
役職者の十八番は流石で、素人離れした人もおれば、それが苦手な人もいました。
宴会では無礼講を宣言していますが、うっかりそれを信じて上司に喰ってかかると、後々まで影響します。
それでも、日頃のストレスを晴らすかのように、先輩・同僚間でどんちゃん騒ぎをしたものです。
懐かしい思い出ですが、さて今日は、「おはこ」の謂れについて調べました。
「十八番(おはこ)」とは、最も得意とするもの、得意の芸を言いますが、元々は「箱に入れて大切に保存する」ことに由来する言葉です。
歌舞伎の市川家7代目・市川団十郎が江戸時代の天保3年(1832年)3月に長男の海老蔵に8代目団十郎を襲名させ、自身は海老蔵を名乗ると発表した際、関係者に配った刷り物の中に、市川家得意の題目が十八種記載されていたそうです。
その題目は、
「外郎売(ういろううり)」「嫐(うわなり)」「勧進帳(かんじんちょう)」「不破(ふわ)」「鳴神(なるかみ)」「暫(しばらく)」「不動(ふどう)」「象引(ぞうびき)」「助六(すけろく)」「押戻(おしもどし)」「矢の根(やのね)」「関羽(かんう)」「景清(かげきよ)」「七つ面(ななつめん)」「毛抜(けぬき)」「解脱(げだつ)」「蛇柳(じゃやなぎ)」「鎌髭(かまひげ)」の十八種で、これを「歌舞伎十八番」と言い、この台本を大切に「お箱」に入れて秘蔵しているのだそうです。
十八番を「おはこ」というようになったのは、この「歌舞伎十八番」の台本を箱に入れて大切に保管していたことからのようですが、他にも、箱の中身を真作と認定する鑑定家の署名を「箱書き」と言い、認定された芸の意味から「おはこ」になったとする説があるようです。