フランス人とデモ(1):群衆シンボル

 フランスでは若者雇用策「初回雇用契約」(CPE)抗議の学生デモがエスカレートしております。先月28日には「300万人デモ」となったそうで、これほど盛り上がりを見せたデモは久しぶりです。でもたしかにフランスは今の日本よりずっとデモ、ストーーそれもマジのデモ、ストーーが多いように思います。

 さて政府側、学生側の主張の是非はともかく、こういうのを見て日本の人が何を思うかということをわたしは考えてしまいます。

 大きく分けて:
 「日本人は抗議すべきところを抗議しない。日本人はこういうところがダメだ。フランス人を見習うべきである(あるいは「フランス人を見習うべきところがある」)」派と、
 「フランス人は権利主張ばかり言う。自分の言い分を通すためには公共の迷惑ということも考えない。わがままである(=我慢ということを知る謙虚なニッポン人は偉い)」「フランスは結局『革命』の本家の国である。こういうのにかぶれてしまうと日本の平和・安定を危うくするからなるべく敬遠すべきである」派とがいるんだと思います。たぶん後者の方が多数派かなと思います。

 ちなみに「革命」というのは例のエリアス・カネッティ『群衆と権力』でもフランス人の「群衆シンボル」ということになってますね。だからロシアでの革命の成功はフランス人の国民意識をおおいに傷つけた、と言うんです。
 カネッティは面白いこと考えました。「群衆シンボル」というのは、人が同国人の集団をつくるとき自分を何みたいに感じるか、ということなんですが、それによるとイギリス人は「船長」だと感じるし、オランダ人は「堤防」だし、ドイツ人は「行進する森」なんですね。

 日本人は何でしょうね。
 あるいはむしろ日本人は集団の構成員である方が本来的なあり方で、個というのはある意味で「なにものでもない」のかもしれません。「会社人間」というのはその典型例でしょうか。
 でも日本人の集団として「もっと見事なもの」は何かと考えてみました。するとわたしは甲子園球場の阪神タイガース応援団とか人気ロックグループ・ファンの観衆を思い浮かべてしまいますね。 (^_^;)  ・・・どちらも偏愛の対象と経済的利害を異にしているところがポイントかなと思います。阪神球団やアイドルグループを愛することで自分が儲かってしまったら、ふつう日本人は落ち着かないと思います。だから例の「村上ファンド」の村上さんが阪神ファンに阪神の株を持たせようとしたのは、本質的なところに無理のある発想だったと思いますよ。
 
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