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ドアの向こう

日々のメモ書き 

雨の言葉

2007-04-23 | 別所沼だより
 

  森は土の匂いと、 澄みきった緑の匂いがして 素直になれる場所だ。 沼の午後は肌寒い。 きのう、 半袖で102歳の義母を迎えたのが嘘のようである。
 冷気を胸いっぱいに吸い込んだ。 

      花すぎて花の冷えある昨日けふ       上村占魚 
       丹(ニ)の欄にさへづる鳥も惜春譜      杉田久女

 

  花の雪はほとんど消えて、 おびただしい蘂が埋めている。 メタセコイアの新緑を黒子のようにみまもる幹と、 赤い毛氈のコントラストがいい感じで油絵にしたいと思う。    

  水面は謐かだが、 ときおり漣が立つ。 若草がそよいで、大樹の芽がいっせいに暮れがたの曲を奏でるころ、 噴水も青白い息をしている。
 空が翳る… 飛沫は霧になって風にのった。 粉糠の雨の降るごとく、やがてジャケットを湿らせた。 


       わたしがすこし冷えてゐるのは
       糠雨のなかにたつたひとりで
       歩きまはつてゐたせゐだ
       わたしの掌テは 額ヒタイは 湿つたまま
       いつかしらわたしは暗くなり
       ここにかうして凭れてゐると
       あかりのつくのが待たれます
       
            -略- 

       知らなかつたし望みもしなかつた
       一日のことをわたしに教へながら
       静かさのことを 暑い昼間のことを
       雨のかすかなつぶやきは かうして
       不意にいろいろとかはります
       わたしはそれを聞きながら
       いつかいつものやうに眠ります
   
               (「雨の言葉」抜粋  立原道造)

 あれから 翡翠カワセミ に逢わない。 椋鳥が群れるそばで、 大きな眉のつぐみが、 しきりと向きを変えながら警戒している。  

        -☆-

   巷に雨の降るごとく 
   わが心にも涙ふる。
   かくも心ににじみ入る 
   このかなしみは何やらん?    
         (巷に雨の…  ポール・ヴェルレーヌ) 堀口大學 訳  


  そろそろ帰ろう…    
     噴水の霧は 麻の上着をちょっぴり重くした


 

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