ハウスのあたりに鳩が群れて、 何か貰ったのでしょう。 枯草の上を啄んでいる。
冬の日が温かい。 12月10日から、 ひとつき以上も降らなくて砂埃が舞いあがる。 鳩もバサバサっと、 飛び交う。
朝一番 窓越しに 親しげな笑みを浮かべるひと。
「前に伺ったことがあるのです」 ニット帽の青年を思い出せない。
「あの時の家ができたので、 きょうご報告します」
そうそう 夏の盛り、 建築家を伴って施工主の若い夫婦と 両親とで訪ねていらした、 しあわせなご一家だ。 探し当てたという風に柱を撫で、 硝子戸を楽しげにひき、 瞳をかがやかせていたのを思い出す。
一階は土間で 大谷石を敷いてね… 素足であるく。 大谷石は蓄熱するので冬でも気にならない。 雨戸はなく、硝子戸に… 電車の中から木造の黒い家が見えたらボクの家です。 通ったらぜひ寄ってください。 ピン… ポン押してみて下さいね。 ガイドにも住み心地のよさが想像できた。 木立に囲まれるモダンで快適な家。
・ 男性。 詩人の家はあこがれ。 晩年はこんな家で暮らしたいと 誰もが思うでしょう。 設計図が見たい。 図面はないの、 欲しいなあ… 外からも内からも 細やかに鑑賞された。 開放感あふれる家の思いが伝わる。
・ リフォーム中。 メジャーにカメラは必需品。 30代前半。パンフレットを勧めると、それより聴くほうが頭に入ると メモまで採って嬉しいこと。
ヒアシンスハウスと呼ぶのは何故? もっとも多い質問です。
あらためて (今までに調べ 判ったこと)
ヒアシンスは安政年間に渡来、 明治時代には風信子(ハヤシンス)と呼ばれる。 ほか「夜香蘭」の表記。 そのうち「風信子」がひろく用いられたが広まらず、大正までに「ヒアシンス」「ヒヤシンス」に落ち着く。 ガイドの亡きOさんは 立原がこだわったのは「風信子」。
モダンな匂いのする、 漢字表記、 語感ではないか。 ギリシャ神話の美少年ヒアシンサスも、 道造のセンスにフィットしたと思われる。
-☆-
「こだわって 造る…?」 とガイド。 即座に 「違います 心が豊かと言って…」
朝一番に会ったというのは、 たぶん従兄弟です。
血筋ばかりかすてきな感性も繋がっている。
・ 同年の6名。 ひとりが去年のヒアシンス夢まつりに参加。 皆さんに紹介したいのでお連れした。 女学生に戻って真剣に聞いてくださった。
遠方の方も、 夢祭りの案内を希望して記帳。
・ お似合いのカップルは1時間以上滞在。 こういう家が造りたい。 コーナー窓の前は海です、 後ろは山で。 庭で遊ぶこどもの姿も 室内からぐるっと見わたせる。 おじいちゃんもおばあちゃんもここに座って。 振り向けば 山の学校にゆく子どもたちのようすも窺えて。 これが理想、 夢が広がります。
きょうも 嬉しき出会いがたくさんあった。
来訪者 26名 ありがとうございました。
正面の木立に囲まれた小さな家 あれが詩人で建築家の
立原道造のヒアシンスハウスです。
ヒアシンスの香りは
風に乗ってゆくには重すぎて
蜂蜜のように甘い雲となり
まるでおだやかな夢のように
甘美に眠気を誘うように
香りに酔った者の頭にしみとおる
ヘルマン・ヘッセ 「花の香り」