別所沼だより

詩人で建築家 立原道造の夢・ヒアシンスハウスと別所沼の四季。
     

ひろがる世界

2006-09-12 | こころ模様
 万葉の歌を読んで 思いをはせる。
 別の詩を読んで、そこから広がるものがあればしめたもの… こう仰った。

君が行き日ケ長くなりぬ山尋ね迎へか行かむ待ちにか待たむ  巻2・85

  にはじまる 磐姫皇后イワノヒメノオホキサキ、仁徳天皇を思シノひて作りませる御歌四首

 磐姫皇后は、万葉集の作者のなかでもっとも年代的に古い人である。そこで古事記が紹介された。8月「古典に読む恋の心理学」(清川 妙著 清流出版)のなかで女鳥王を、また「隼別王子の叛乱」田辺聖子著など読んでいたのでお話はとてもよく理解できた。 響くものがあれば勉強はますます楽しい。
 たっぷり二時間、お疲れも見せず、よどみなく講義は続いた。  

 さいごに 「智惠子抄も万葉集とおなじですね」と結ばれた。
まさに読んだばかりであったから、頭がカーッツと熱くなった。 自分の記憶と符合する楽しさに、どきどきする。 たとえようもなく嬉しいことであった。

 少女の頃より ひとり燈火のもとに文をひろげて、みぬ世の人を… 友として、古典に親しんで来られた。蓄えられた深い知識を、毎回、このように惜しみなく見せて頂けるとはなんと幸せなことか。 宝のような時間を大切にしたい。 きょうも、きらきらした時間をありがとうございました。

             -☆- 

  秋さらば見つつ偲へと妹が植ゑしやどのなでしこ咲きにけるかも 
                       大伴家持  巻3・464

   高村光太郎  智惠子抄 「梅酒」より抜粋 

    死んだ智惠子が造っておいた瓶の梅酒は
    十年の重みにどんより澱んで光りを葆み、
    いま琥珀の杯に凝って玉のやうだ。
    ひとりで早春の夜ふけの寒いとき、  
    これをあがってくださいと、
    おのれの死後に遺していつた人を思ふ。
    おのれのあたまの壊れる不安に脅かされ、
    もうぢき駄目になると思ふ悲に
    智惠子は身のまはりの始末をした。
   
      -中略-
  
    厨に見つけたこの梅酒の芳りある甘さを
    わたしはしづかにしづかに味はふ。
コメント
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