退屈日記

とりあえず日々のつれづれを。

「『野に遺賢あり』を思わせる作品と弱っている作家あるいは『ミスリーディングの妙』」について

2019-09-07 02:06:54 | Weblog
晴れ。日差しが熱い。

仕事帰りの夜空に肌色の大きな半月。

線香花火の玉に似て。
家に辿り着く前に黒雲にかき消される妙。

太田眞也「スズメ百態面白帳」を見て読む。

「ファーブル昆虫記」を思わせる観察に徹した素朴な文章が素敵。
むしろ「自分語り」がない分もっと徹底しているかも。

何気ない一節の中に「相当な知識」があり。
「野に遺賢あり」といった趣き。

こういう作品に出会うと「シビレ」ますな。
著者のような存在であれたらと思うことしきり。

ある種の「理想の極北」だと思われるので
そうしたことに興味のある向きは是非。

中日新聞の諏訪哲史のエッセイを読んだせいもあって余計にそう感じたのかも。

「種村季弘の弟子筋」である彼はどうやら「弱っている」模様。
今まではそこそこ面白く読んでいたのに今回はまるで「愚痴」のよう。

「好きにやってるんだから贅沢は言いなさんな」と言いたいところ。
本書でも読んで元気になって頂きたいもの。

まあ「病気のせい」もあるやもしれず。
「師匠」のように「超然」としていられないのが玉にキズか。

パスカル・ロジェ「トールマン」(’12)を観る。

炭坑が閉山して寂れた町の子どもたちが次々に姿を消し。
「トールマン」という謎の男が子どもたちをさらっているのだという噂が立つのだが。

「普通のホラー作品」かと思いきや案外「社会派」だったり。
「消える子どもたち」をそのように描くのかと思った次第。

「聖者」と「狂人」が入れ替わるというシナリオは見事。
主人公に「子どもがいない」のがポイント。

「世界に絶望した者」の行動は「正しい」のかどうか。
結論は本作を観た上で下していただきたい。

個人的にはクリスティーンが首を吊るのが謎。
「死刑もしくはリンチ」が怖かったのだという解釈は出来るけれど。

いわゆる「ミスリーディング」をうまく使っているのがミソ。
とりあえず「考えさせられるオチ」をお楽しみに。
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