pippiのおもちゃ箱

舞台大好き、落語大好き、映画大好き、小説大好き、猫大好き!なpippiのつれづれ日記です。

十二人の怒れる男/千秋楽@シアターコクーン1階N列センター

2009-12-06 18:42:51 | 観劇/コンサート

作/レジナルド・ローズ  訳/額田やえ子
演出/蜷川幸雄
出演/中井貴一 筒井道隆 辻 萬長 田中要次 斎藤洋介
    石井愃一 大石継太 柳 憂怜 岡田 正 新川將人
    大門伍朗 品川 徹  西岡徳馬


すごかったです。たまたま手に入れたチケットでしたが、おそらく私の中では今年度№1の舞台だと思います。心が震えました。


この作品は、ずーーっと昔にテレビでヘンリー・フオンダの白黒映画をみました。子どもなりに(私のこと)すごい映画だと感じ、手に汗を握った覚えがあります。学生時代に「尊属殺人」について学んだ時も、この映画が頭をよぎりました。


そのイメージを裏切らない、素晴らしい舞台でした。

父を刺し殺したとして逮捕された少年をめぐる12人の陪審員たちの緊迫したやりとりが、大きなテーブルと椅子だけのセットで繰り広げられます。ステージはボクシングのリングのようにベンチシートで四方を囲まれ、奥の一角には洗面所。そこに大きな鏡。


提出された証拠と証言は、少年に不利なものばかりで、陪審員の殆どは有罪を確信しています。その中で中井さん演じる8号陪審員だけが、証拠に「合理的な疑い」を持ち、有罪に確信が持てないことを主張します。


その揺るぎのなさに、さっさと有罪にして帰宅したがっていたり、スラム育ちの少年に偏見を持ったり、目に見えた事実だけを信じたりしている他の陪審員たちは苛立ちますが、ひとつひとつの事実を検証し、白熱した討論を重ねてていく中で、ひとり、またひとりと8号の意見に耳を傾けていくようになります。そして導き出される意外な事実。証人の思い込みや虚栄が真実をねじまげていたかもしれないことに少しずつ気づく陪審員たち。


それでも、振り上げた拳は下ろせないとか、ひっこみがつかないとか、いろんな思惑が彼らを捉えます。それでも真実から目をそむけてはいけないと、根気良く説得する姿は本当に胸を打ちます。


70代の品川 徹さんは老人の立場から。筒井君はスラム育ちの立場から。というように、その立場の人間しか気づかないような事実の数々。それを丁寧に紡いでいく中井さんの8号。そして、真実に気づきはじめた人々が彼を応援し、その輪がじわじわと広がっていきます。最後まで「有罪」を主張していた西岡徳馬さんが感情を昂ぶらせた後に、静かに涙を流し「・・・無罪だ」とつぶやいた時には、客席からも嗚咽がもれていました。8号中井さんも涙。


有罪となれば死刑となる少年。その審判を誤ってはいけないという使命感。徹底的に討論して結論を導くという姿勢。「この桜吹雪(とか印籠とか)が目にはいらんか!」とかいう日本人気質とは違うかも。。と感じつつ、差別や偏見で真実を見る目を曇らせてはいけないと、深く深く思ったのでした。


蜷川さんて、よくたけし軍団の人を使いますが、柳 憂怜さん、普通に良かったです。筒井くんはどう見てもスラム育ちには見えなかったかも。。。


最近はベテラン男優陣の頑張っている舞台が多くて、とっても得した気分です。最後は何度ものカーテンコールの後、蜷川さんも舞台にあがり、パーン!と銀色テープが飛び散り、千秋楽を飾っていました。

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