<スタッフ>
台本・作詞:メリヒー・ユーン/カーラ・ボルドウィン
作曲:ウィリアム・パトリック・ハリソン
翻訳:小川絵梨子
訳詞:土器屋利行
音楽監督:深沢桂子/村井一帆
演出:藤田俊太郎
芸術監督:小川絵梨子
<キャスト>
飯野めぐみ、シルビア・グラブ、鈴木瑛美子、原田真絢、森 加織、山本咲希
あらすじ
“Who is Tokyo Rose?”
アイバ・トグリ(戸栗郁子)は 1916年にアメリカで生まれアメリカで育った日系二世。日本語の教育を受けることなく1920~30年代のアメリカで青春を過ごした。
叔母の見舞いのために25歳で来日し、すぐに帰国するはずが、時代は第二次世界大戦へと突入。アメリカへの帰国も不可能となってしまう。そこでアイバは、母語の英語を生かし、タイピストと短波放送傍受の仕事に就く。
戦争によって起こる分断や、離散、別れ。多くの人々を襲った不幸がアイバ自身とその家族の身にも降りかかる。
やがてラジオ・トウキョウ放送「ゼロ・アワー」の女性アナウンサーとして原稿を読むことになったアイバ。彼女たちをアメリカ兵たちは「東京ローズ」と呼んだ。
終戦後、アイバが行っていたことは、日本軍がおこなった連合国側向けプロパガンダ放送であったとされ、本国アメリカに強制送還され、国家反逆罪で起訴されてしまう。
本国アメリカから、戦中日本の悪名高きラジオアナウンサー「東京ローズ」であった罪を問われることとなったアイバ。彼女は本当に罪人だったのか…?
同じ人物を6人の女性がリレー形式で演じる、主役だけでなく登場人物全員を代るがわる?しかもオールオーディション。そして演出は藤田俊太郎氏
でも、一番の動機は、アイバ・ドグリさんの境遇が、やはり日系二世だった亡き義父と酷似していたことでした。アメリカで生まれ、アメリカ人として育ち、教育を受け、明るい未来を描いていたのに、様々な事情で来日しているうちに日米開戦となり、帰れなくなった人たち。
東京ローズとされる人は複数だったにもかかわらず、アイバ・ドグリだけがインタビューという形でその名を引き受けてしまったことから悲劇が始まってしまいます。
自分の育った国と自分のルーツがある国。引き裂かれる心。アイバ・ドグリのことをよく知る義父は「あの人は本当に気の毒だった」という以外多くを語りませんでした。
本当に理不尽な仕打ちを受けながらも、一歩も引かなかった彼女の強さに圧倒されました。歴代大統領からも恩赦を拒否され、ようやくフォード大統領によって恩赦が認められ市民権が復活した時には、思わず涙がこみあげてきました。
シルビア・グラブさん以外はたぶんお初の女優さんばかりでしたが、どの方もすごい熱量、力強い歌声で圧倒されました。
観に行ってよかった。
劇場を出たあたりで、後ろを歩いていた方々が、「それでも、あの方はアメリカ国籍を持っていたから殺されなかったけれど、もし日本人だったら命がなかったかもね。『私は貝になりたい』の人みたいに戦犯で裁判にかけられて処刑されてたかも」と話していたのが妙に心に残りました。