地球散歩

地球は広いようで狭い。言葉は違うようで似ている。人生は長いようで短い。一度しかない人生面白おかしく歩いてしまおう。

2007-12-06 17:55:08 | ペルシャ語

چای(チャーイ)

イランを旅した経験がある方はご存知かもしれないが、イラン人は一日に何杯も紅茶を口にする。ロシアのそれで有名なサモワール(サマーヴァル)は、イランでもかなりの割合で一般家庭に普及していて、サマーヴァルの上であらかじめ蒸された濃い目の紅茶を、お湯でその都度薄めて飲むのがイラン式紅茶の作法である。
昨今日本でも有名なイランの喫茶店チャーイハーネでは、透明の小さなグラスに注がれた熱々の紅茶が供される。チャーイハーネと言えば、水タバコの煙を燻らす男達の姿も思い浮かぶだろうか。幾何学模様の絨毯の上でお喋りや水タバコに興じながらゆっくりと紅茶を啜る人々の姿からは、社交場としてのチャーイハーネの役割と、紅茶好きな国民性が垣間見られるのである。

イラン人の日常に溶け込んでいる紅茶文化。ゆえに長い伝統を保持しているだろうと思いきや、イランで紅茶が普及したのはガージャール朝(1796~1925)時代のこと、つまり近代に入ってから。サファヴィー朝(1501-1736)時代にトルコからイランに入ったと考えられているコーヒーよりも歴史が浅いのである。イランでの紅茶の浸透度を鑑みると、紅茶の方が歴史が新しいというのは意外な気がした。

さて、前回イランの詩について書いたが、かつてはチャーイハーネでも詩が娯楽のひとつとして存在していたことに言及せねばなるまい。ここで詠まれた詩は、神話上の英雄や殉教したイマームについて。中でも、国民的叙事詩『王書(シャーナーメ)』(11世紀成立)は人気があった「演目」。勇猛なリズムを持つペルシャの英雄叙事詩は、少々大袈裟な身振り手振りも伴い、一種の演劇として存在してきたのである。『王書』を「演じる」専門の職業家も存在した。彼らは約5万行からなる『王書』の全てを記憶していたというから驚異的だ。残念ながらイスラーム革命(1979)後、この伝統は徐々に廃れてしまい、今ではチャーイハーネで『王書』の朗読を聞く機会はほぼなくなってしまったようだが、それでも尚、イラン文化を知りたいなら、ぜひ旅程にチャーイハーネ巡りを入れて頂きたい。チャーイハーネの扉を開くということは、深淵なイラン文化の扉を開く鍵ともなるのだから。[m]

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6 コメント

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歴史が浅いとは!? (マーク)
2007-12-07 14:37:45
紅茶の歴史が浅いとは、確かに意外ですね。
コーヒーは、トルコがあちこちにばら撒いているのは面白いです。(確か、ヨーロッパに普及したきっかけはオスマントルコのウィーン包囲の時ですものね!?)

それにしても、紅茶を前にゆっくりとくつろぐ風景は結構あこがれます。

是非、親しんでみたいものです。。。
でも、言葉が全然ダメなんですが、チャーイハーネが間が持つかちょっと心配です(汗)
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紅茶か~ (yuu)
2007-12-08 00:18:59
紅茶といえば、今イギリスではコーヒーの消費量の方が多いそうです。
イランでは紅茶の方が多そうですね!
それにしても、イランと紅茶…その姿を想像するに、私的には意外な新発見です♪
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マークさん (mitra)
2007-12-08 20:50:26
さすがマークさん。トルコ的視点からのコメントをありがとうございます。トルコが世界に「ばら撒いた」ものは、たくさんありますよね。あたらためてオスマントルコという国の強大さを思い知らされます。
イランのチャーイハーネでは、ペルシャ語ができなくてもまったりとできると思いますよ。それに、イランではトルコ語が「少し」出来るっていう人、けっこう多いですから、ぜひトルコ語で!
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yuuさん (mitra)
2007-12-08 20:59:12
そうなんですよね。イギリスもついにコーヒー文化圏に?!
イランでは、まだまだ紅茶の普及率の方が高そうです。特に一般家庭では。でも、最近はテヘランでもお洒落なカフェがありコーヒーを飲める場所も多いですから、コーヒー好きの私としては嬉しいです、「イランと紅茶」、yuuさんには意外ですか?
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トルコも (yokocan21)
2007-12-09 08:15:35
チャイの煎れ方、トルコと同じです。そしてサモワールを使って、というところも!でも一般家庭ではさすがにサモワールで煎れているお宅は殆どないですけれど。色んなところがトルコと同じで、単純に驚いています!まぁ、お茶の伝わった道(東から西へ)を考えると、トルコへはペルシャから伝わったのかなぁ、と思うので、当たり前といえばそうなんですよね。
面白いお話を聞かせていただきました!
ところで、イランに近いトルコの東部地方では、角砂糖や砂糖の塊を少しずつかじりながらチャイを飲む人をよく見かけたのですが、イランではどのように飲まれているんでしょうか?
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yokocan21さん (mitra)
2007-12-10 21:47:01
トルコとイランは、歴史上様々な影響を与え合ってますよね。
コーヒーはトルコから。。。紅茶はイランから、西へ東へ物が流れて行った様子を見ていると、歴史の流れが見えてきて興味深いです。
ところで、角砂糖の話。yokocan21さんが書かれているのと同じように、イランでも舌の上に角砂糖を乗せて少しずつお茶で溶かしながら飲んで行きます。トルコでも一部の地域(東部地方ということは、イランと接した地域ってことですよね?)では、同じような飲み方をするのを知って驚いています。
余談ですが、トルコのお茶と言えば、アップルティー。お気に入りです。
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