地球散歩

地球は広いようで狭い。言葉は違うようで似ている。人生は長いようで短い。一度しかない人生面白おかしく歩いてしまおう。

2009-01-16 01:03:50 | ペルシャ語

برف (バルフ)

去年の冬のこと。
テヘランで初めて過ごす冬、私を迎えたのは新年早々の大雪であった。
高地のテヘランでは、秋深まる頃には市の北側に聳えるダマーヴァンド山の頂きが雪帽子を深くかぶり、12月を迎えると平野部でも少しずつ雪が降り始める。

イラン北部の冬は雪深い。イランのイメージとしては少し意外であろうか。いや、それどころか、イランでははっきりした四季の変遷が見られることさえ、案外知られていないように思う。イランの季節の変遷はいつもヴィヴィッドで、冬の訪れも、真っ白な粉雪と共に鮮やかな印象を私の記憶の中に残した。

さて、12月に降り出した雪は、1月に入るとその勢いを増した。テヘランの街中は雪化粧を施し、街路樹は日に日に真っ白に染まっていった。
道端や家々のベランダには、雪だるま(日本のように二つの球体を重ね合わせた雪だるまではなく、円錐形の土台に球体の頭部を乗せたもの)が登場し、道行く女性の纏う黒いチャドルが一面の銀世界に映える。軒下に下がる氷柱にも、日本の「南国」育ちの私は、温暖化の昨今、20数年ぶりにお目にかかった。

掃けども掃けども降り積もる雪・・・。
日が経つにつれ、テヘラン北部の積雪量は50cm近くにもなっていた。
テヘランの空港は、国内線・国際線問わず閉鎖され、「陸の孤島」と化した2日間をテヘランは迎える。
イラン北部でガスの供給が追いつかず、死者をも多数出したこの記録的な大雪は、国境を挟んでイラクのバグダッドでも、100年ぶりの雪を降らせたという。
イランの南西部、温暖なペルシャ湾に比較的近い位置にある、有名なペルセポリス遺跡でさえ、この時季には微かな雪を観測した。かつてアレクサンダー大王が、ペルセポリスの宮殿(春分を祝うための離宮)に火を放った時、この巨大な遺物の上には、しんしんと降り積もる雪のように
、静かに灰が降り続けたことだろう。

テヘランを含めたイラン北部は、もともと雪が多い地域である。標高5,671mのダマーヴァンド山は豊かな水源を湛える一方、冬の厳しい寒さをも、麓の街にもたらす。
ダマーヴァンド山では、冬にはスキー場がオープンし、イランのみならず近隣の湾岸諸国からもスキー客が訪れる。
そういえば、イランの小学校の国語の教科書には、「イランでは冬にスキーをします」という一文があるという。そして、「夏は屋根の上で寝ます」という一文も。こちらは酷暑を乗り切るための、イラン人の習慣。夜になっても熱気がこもる室内よりも、露天で眠る方が涼しいというわけ。まったく、イランの四季には曖昧さの欠片もない。(m)

*イミテーションの雪(エジプト白沙漠)、遺跡と雪の風景(ギリシャ)、アテネからの「雪レター」(ギリシャ鍛冶神の神殿に積もる雪)

 今年も美しい雪景色が見られるかな?
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15 コメント

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Unknown (yokocan21)
2009-01-17 04:07:36
イランの気候も、暑い・寒いが、はっきりとしているんですね。ディヤルバクルを思い出します。夏、屋根の上で寝るあたりも、ディヤルバクルと同じですね。いえ、うちは屋根では寝ませんでしたけど。(笑)
テヘランって、意外と寒いんですね。乾燥地の雪って、シーン・キーンとしてますよね。ディヤルバクルの雪は、水分の少ない雪でしたので、雪だるま作りが大変でした。なかなか上手くまとまってくれないんで。

話が飛ぶんですけど、イスタンブルのプロフィテロール、「インジ」というお店で食べられたんでしょうか?美味しいですよねぇ。
今年も、イランの楽しいお話、「へぇ~っ」って面白いお話、楽しみにしています!
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Unknown (タヌ子)
2009-01-17 08:13:22
日本に閉じこもって狭い世界で暮していた時は、ギリシャに雪が降ることにも驚き、イランは太陽の国だと思っていました。
日本の外に飛び出し、ギリシャも北部は雪が多いと知り、そしてイランにも雪が降るのだということを知りました。
標高5000mを超える山、夏でも雪を頂いているぐらいではないでしょうか。
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yokocan21さん (mitra)
2009-01-17 17:57:36
昨年ディヤルバクルを訪れた際、イランに、とっても気候風土が似ているなあと思いました。それまで私が知っていたトルコの西側の世界より、むしろイランに近いものを風景や人々から感じさせられました。
そうですか、yokocanさんは屋根では寝ていなかったのですね(笑)。
そして、イランでもやはり粉雪です。雪だるまを作るときは、水をかけながら作ってました。そうしないとなかなか固まらないんでしょうね、やはり。
プロフィテロール、お店の名前を忘れてしまったんですが、イスティクラルをタクシムに向かって進んで行った場合、広場のすぐ手前の左側のお店でした。イスタンにはまた行きますので、おススメのパスタネ、ぜひご紹介くださいね!
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タヌ子さん (mitra)
2009-01-17 18:04:33
現地に行ってみて、また住んでみて、意外だと思う風景や風土ってありますよね。ギリシャもわりと狭い国ながら、北と南では気候が違うでしょうし、季節によってずいぶん空の色が違いますよね!
ところで5000メートルを越える山、なのですが、真夏には雪が消えてしまいます。いつごろかしら?確か5月ごろには全部消えて、また10月終わり頃から雪が積もり始めたように記憶しています。
テヘランは大気汚染が酷いのですが、もし空気が澄んでいたら、一年中高山をバックに綺麗な光景が見られるのになあと、残念です。
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こちらは (yuu)
2009-01-18 14:01:02
北陸では、日本海の湿気をたっぷり含んでいるので、例えば北海道とは全く違うタイプの雪です。だから雪が溶けかけると、あちこち水溜りになります。イランでは乾燥した雪が降るのかしら?
雪に閉ざされた、究極の静けさ…
春の訪れを知らせる雪解け水の音…
これも雪が降る地域ならではの楽しみですね^^
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yuuさん (mitra)
2009-01-18 20:30:03
ああ、そうか!日本でも場所によって雪の種類が違うのですね~。北海道の雪はさらさらなのかしら?イランの雪は乾燥した粉雪です、完全に。最近流行の台湾式カキ氷に似ています(笑)。但し、歩道に積もったものは、人に踏まれ次の日には氷と化してしまい、かなり危ないです。
「究極の静けさ」と「雪解け水の音」。ふたつの文章をもとに、美しい言葉を紡ぎ出してくださってありがとう!
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Unknown (sue)
2009-01-19 20:52:53
イランに雪が降るんですね。
びっくりです。
1年中暑い国なのかとおもっていました。
でもよく考えたら、昔訪れたエジプトも夜寒くなって夏なのに長袖を重ね着した記憶が・・
世界は自分の知らないことがまだまだ沢山あるんだな~なんて思いました(笑)
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sueさん (mitra)
2009-01-21 01:02:35
イランで雪のイメージって、やはり一般にはあまりないですよね。でも、沙漠にも雪が降ることもあります。ひとつにはイランは全体的に標高が高いっていうこともあるんでしょうけれど。エジプトもそうでしょうが、沙漠地帯は昼夜の寒暖の差が激しくて旅行中は衣類の準備が大変ですよね。私も世界で訪れた場所はほんの少しで、まだまだ知らないことだらけなんだろうなと思います。でも、知らないことが多いって、好奇心が尽きないから良いことだなあ・・・と。
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意外ですよね (wacky)
2009-01-22 23:20:53
mitraさんに聞くまでイランと雪は関係ないと思っていました。雪に慣れない者にとって、雪国はきついです。
イランでスキーとなると、女子はどのような格好なんでしょう・・・。チャドルは着ているのかな? 
そういえば、先日、女性が自転車に乗るようの服があるというのを読みましたが~。
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wackyさん (mitra)
2009-01-23 00:18:17
雪国、私も無理!です(笑)。でも、wackyさんは事実上、雪国暮らしですね。
イランのスキー場、私もまだ未体験なので、人から聞いた話になるのですが・・・
チャドルはさすがに着ていないですが(危ないですよね!)、コート着用が望ましい、とされている様子。
それでも危ないとは思いますが。実際には、普通のスキーウエア(但し、色は地味なもの)を着て、つまり普通のスキー場と変わらない状態で滑っているようです。スカーフも、代わりに帽子をかぶることで、一応OKなようです。
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