ピッコロ便り

ピッコロシアター、県立ピッコロ劇団、ピッコロ演劇学校・ピッコロ舞台技術学校など、劇場のトピックをご紹介します。

ピッコロSide Story(4) 中学生と劇場

2011年11月23日 | piccolo side story

今秋、ピッコロシアターには兵庫県内から多くの中学生たちがやってきた。

本格的な劇場で、生の演劇に触れてもらう中学生のための鑑賞事業『ピッコロわくわくステージ』が今年度から本格スタート。10月の県立ピッコロ劇団公演「しんしゃく源氏物語」(作=榊原政常)を13校の約2,600人が鑑賞した。



★終演後、演出家と舞台監督が舞台の仕組みなどを解説。(左より)紅組演出:吉村祐樹・舞台監督:鈴木田竜二


「しんしゃく~」は、光源氏を待ち続ける一途で(ブサイクな)お姫様・末摘花と女官たちの、おかしくてちょっぴり切ない恋物語で、ピッコロ劇団の若い二人の演出家・吉村祐樹(33)と眞山直則(35)が紅組と白組に分かれ、それぞれ個性的な舞台を創りあげた。

開演とともに場内が暗くなると「わ~っ」と歓声が上がり、音楽が流れると拍手が鳴る。難しい年代と思っていた中学生たちの新鮮な反応に、驚くやらホッとするやら。

★紅組公演 (左より)森万紀・平井久美子・山田裕

★白組公演 (左より)濱大介・孫高宏・今井佐知子・森好文


生徒たちのアンケートを読むと・・・

「初めて劇場で観て迫力があった」

「俳優の声が遠くまで響いて格好いい」

「とてもリアルで不思議な気分になった」など、生身の人間の表現に素直に驚いた様子が伝わってくる。

終演後、舞台に登場した白組演出の眞山は「スタッフ・キャストだけで舞台は成立しません。最後は皆さんの想像力が大事」と、役者と観客が空間を共有しながら、観客の自由な想像力で完成される演劇の本質に触れた。そんな解説に「劇を成功させようとする色んな人の努力が見えた」という生徒も。


9月の「トライやる・ウィーク」(※注)で「しんしゃく~」の稽古を見学した、尼崎市立南武庫之荘中学校の女子生徒二人も家族と観に来てくれ、「稽古の時より面白かった」、「始まりや終わりの所がきれいでよかった」と笑顔で話してくれた。

★「トライやる」で中学生が制作した「しんしゃく源氏物語」のポスターを公演会場で展示。


ピッコロでは「トライやる」で年間約20人の生徒を受け入れる。期間中、可能な限りピッコロ劇団の稽古を見学してもらう。プロの俳優たちの真剣な表情や息遣いに触れてもうことが将来の演劇ファンにつながれば、演劇でなくてもいい、何か将来のヒントになれば、と期待するからだ。

それは、演劇少女だった自らの体験からもきている。入学した中学校に演劇部がなく、一人で創部、部員が一人増え、ようやく宮沢賢治の「注文の多い料理店」を二人芝居にして上演した。手探りの部活を支えたのは、当時観たプロの舞台の感動だった。女優に憧れた時期もあったが、演劇が役者だけでなく様々な人によって成り立っていることを知り、今の劇場の仕事へとつながった。

 

今月の「トライやる」では、8名の中学生がピッコロ劇団員の中川義文(32)による演劇ワークショップを受けた。演劇の要素を取り入れたゲームでコミュニケーションを深め、最後は2人一組で短いワンシーンを創って演じた。4組それぞれが違う表現を見つけているのが面白かった。集団で何かを創造する大変さと、楽しさを感じてくれただろうか。

★演劇ワークショップを受ける中学生たち

様々な人が集まり、色んな考え方をぶつけ合い、すり合わせながら創造する空間。そんな人間ドラマ渦巻く劇場の空気をめいっぱい吸い込んで欲しい。そう、劇場はオモシロイのだ!

                                           (業務部 古川知可子)

※「トライやる・ウィーク」

阪神・淡路大震災と神戸連続児童殺傷事件を機に、地域活動を通して“生きる力”を実感してもらおうと、県内の中学2年生を対象に実施されている職場体験事業。略称「トライやる」


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