ピッコロ便り

ピッコロシアター、県立ピッコロ劇団、ピッコロ演劇学校・ピッコロ舞台技術学校など、劇場のトピックをご紹介します。

ピッコロ Side Story (8) 『読んでから観る?観てから読む?』

2014年05月14日 | piccolo side story

 “本のコンシェルジュ”という言葉をご存知ですか? 

コンシェルジュは、もともと仏語で、アパートの管理人などを指すそうだが、現在では、ホテルなどで宿泊客の様々な相談や要望に応える職業として定着している。

 今年2月、兵庫県立ピッコロ劇団の『お家さん』(兵庫県立芸術文化センター阪急中ホール)上演にあわせて、県立芸術文化センターの展示コーナーで開催した企画展「鈴木商店が残したもの」で、この“本のコンシェルジュ”が大活躍、『お家さん』の世界をより深める案内役として好評を博した。

 “本のコンシェルジュ”は、兵庫県立図書館(明石市)が始めた司書の派遣事業で、上記企画展では、芝居の題材となった鈴木商店や主人公の鈴木よねに関する図書館所蔵の書籍や資料などを展示、解説を加えたり、見学者からの質問に答えた。

 

鈴木商店の女主人・鈴木よねの歌集「波のおと」「鈴乃音」、鈴木商店大番頭の評伝「金子直吉伝」「柳田富士松伝」など、貴重な本も。

 

 公演会場で、3日間にわたりコンシェルジュを務めた県立図書館利用サービス課の次田早智子さんは、「本のコンシェルジュは、今回が初めての取り組みだったので、『いったい何が起こるだろうか』と、期待と不安が入り混じった気持ちでした。当日は超満員。展示スペースの中で身動きが取れなくなることも。普段はなかなか目に触れることがない本を、多くの方に見ていただける良い機会になりました。鈴木商店の子孫にあたる方とお会いするなど、私自身も図書館ではあまりできない体験をさせていただきました。」と、感想を話してくれた。

 

本のコンシェルジュを務めた次田早智子さん

 

 ピッコロシアターでは平成23年から、県立図書館との連携企画展を開催してきた。上演演目にあわせて図書館がテーマを設け、関連図書や所蔵品の中から普段は開架されていない貴重な資料などを館内展示するもので、当シアターからも公演チラシ・パンフレット・企画書・台本・舞台写真・演出家コメントなどを提供している。図書館と劇場が手を組み、文学から演劇、演劇から文学へ、ファンの相互交流を目指す取り組みだ。

 これまでの企画展の一部をご紹介すると…

『源氏物語~末摘花を中心に』 『開高健の世界』『近松門左衛門と浄瑠璃』『中島敦「山月記」を読む』などが挙げられる。

また、ピッコロ劇団員の島守辰明が講師となり、『時空を超えたドラマ~近松とチェーホフ~』『シェイクスピアの旅~世界で変貌する物語~』などの講座も行った。

 

島守辰明の講座には、高校の演劇部員や地元の図書館利用者が多く参加した。

 

県立図書館に続き、地元尼崎の市立中央図書館とも連携企画を行った。きっかけは、その年、「スーホの白い馬」など、国語の教科書でもお馴染みの物語を原作とした舞台上演が重なったことだ。同図書館に相談すると、過去から現在までの市内小中高校で使われた教科書や原作本を熱心に集めて下さり、「教科書の中の物語と演劇」展が実現した。授業で出会った物語をあらためて読んでもらおう、さらに、その世界を俳優の肉体で表現する演劇でも味わってもらおう、というユニークな企画となった。

 

尼崎市立中央図書館での「教科書の中の物語と演劇」展示の様子

 

 現在、県立図書館では、5月16日から始まる図書展示「九鬼一族の系譜~九鬼嘉隆から白洲次郎まで~」の準備が進められている。今回は、ピッコロ劇団公演『海を走れば、それは焰……――九鬼一族流史――』(6月6日から15日まで、ピッコロシアター大ホール)にあわせて開催されるもので、「明治を生きた三人の九鬼さん」「九鬼史料」「織田水軍・九鬼一族」など、実在した九鬼一族の歴史や、ゆかりの人物を紹介する珍しい書籍が展示される。公演期間中は、展示物の一部をピッコロシアター大ホールでも披露し、6月7日は、今回も次田さんが“本のコンシェルジュ”を務める予定だ。

『海賊~』は、日本を代表する劇作家・清水邦夫が、兵庫県を舞台に、戦国時代に活躍した九鬼水軍の末裔の生き様を、史実と幻想を交錯させて描いたロマンあふれる歴史ドラマだ。

演劇・文学・歴史など、多彩なジャンルの愛好家が劇場で出会うことを楽しみにしている。

 

公演チラシ

図書展示チラシ

 (ピッコロシアター広報 古川知可子)

 


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